マイナンバー 〜 結局、何をすれば良いの ?


平成27年(2015年)10月から制度が開始される通称「マイナンバー制度」。正式名称は「社会保障・税番号制度」と言います。


この制度では、前述の通り、平成27年(2015年)10月から、日本国民全員に、12桁のマイナンバーが記載された「通知カード」が郵送され、平成28年(2016年)1月から、社会保障や税金、および災害対策の行政制度で利用が開始されます。


「何、それ ? 聞いてないよ !」と言っても手遅れ、この制度は、平成25年(2013年)5月の通常国会で成立し、もう、ほとんどの企業においても、使用準備が整っている制度です。


と言えれば良いのですが・・・平成27年4月の時点で、利用準備が整っている、あるいは準備中の企業は、全体の約10%、これから準備予定が約30%、何もする予定が無いが約50%、何も解らないが約10%となっている状況だそうです。


何を隠そう弊社でも、現時点(平成27年5月の段階)では、対応方法の調査/検討と準備を行っている段階ですが、今年の秋頃、本ブログを公開する頃には、準備が完了していれば良いな〜なんて、軽く考えています。



この「マイナンバー制度」、名称が決まる前は「国民総背番号制度」等と呼ばれていましたが、個人のみならず、当然の事ながら、企業でも使用することになります。


そこで、今回は、「マイナンバー制度」に関して、個人、および企業において、行うべき事柄を、簡単に紹介したいと思います。


マイナンバーの基本情報
●今後のスケジュール
●個人で注意する点
●企業で注意する点


ちなみに、上記画像は、「マイナちゃん」と呼ばれるロゴマークで、このロゴを使用するためには、「内閣府大臣官房番号制度担当室長」の許可を得る必要があります。


弊社でも、面倒ですが、内閣府に申請を出して許可してもらっています。


それでは今回も宜しくお願いします。

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マイナンバーの基本情報


最初にマイナンバー制度の基本情報を紹介します。


マイナンバーとは
今後、一生涯に渡り、政府が個人を管理するために発行する12桁の番号となります。基本的に番号の変更はありません。


●導入目的は
政府としては、次の3つの導入目的を挙げています。

(1)事務手続きの効率化
(2)行政手続きの利便性向上
(3)公平/公正な社会の実現

確かに、マイナンバー制度の導入で、上記3点に効果があると思いますが、一番の目的は「(3)公平/公正な社会の実現」だと思います。

何を持って「公平/公正」と言っているかと言うと、「税金」の管理です。この点は、後述する「各個人で注意する点」で触れたいと思います。


●個人番号カードとは
通知カード到着後、平成28年1月以降、地方自治体の準備が整い次第、市町村に申請すると、チップが埋め込まれたカードを発行してもらうことが出来ます。これは、現在の「住基カード」と同じようなカードになります。個人番号カードには、氏名、住所、および写真が掲載されると思います。


住基カードとの違い
「住基(住民基本台帳)カード」が、「個人番号カード」に置き換わる形になります。「住基カード」は、今後は発行されず、現在の有効期限までは使用可能となるようです。

住基カード」と「個人番号カード」の重複保持は出来ないとされていますので、「個人番号カード」の交付の際には、「住基カード」を破棄する必要があるかもしれません。


●何に使うのか
平成28年1月時点では、次の3つのケースで、マイナンバーが必要になるとの事ですが、社会保障、税、および災害対策分野の中でも、法律や地方公共団体の条例で定められた行政手続にしか使えない、との事です。

(1)社会保障関連
・年金の資格取得、確認、および給付の時に必要になります。
雇用保険の資格取得、確認、および給付の時に必要になります。
医療保険の給付請求の時に必要になります。
・福祉分野の給付、生活保護、等の時に必要になります。

(2)税金関連
・税務当局に提出する確定申告書、届出書、調書などに記載する必要があります。

(3)災害対策関連
・被災者生活再建支援金の支給の時に必要になります。


後は、上記事務手続きにおける内部処理で必要になると思いますが、それは単なる事務手続きの話ですので割愛します。

●その他
その他、よくある質問(FAQ)に関しては、内閣官房の下記ページを参考にして下さい。

★よくある質問:http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bangoseido/faq/index.html

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■今後のスケジュール

マイナンバー制度」の今後のスケジュールですが、前述の通り、今後は次のようなスケジュールになっているそうです。

1.平成27年10月 :各個人の住民票の住所宛てに「通知カード」が書留にて郵送される。
2.平成28年1月 :マイナンバーの利用開始
3.平成29年1月 :マイナンバー用のポータル・サイトの運用開始


●通知カード
自治体により異なると思いますが、マイナンバーが記載された紙のカードが書留郵便にて郵送されると思います。


マイナンバーカード
「個人番号カード」とも言いますが、前述の基本情報に掲載したようなカードが交付されます。これも各自治体の準備状況によって異なると思いますが、平成28年1月以降になると思われます。


●ポータル・サイト
インターネットから国の行政機関のサイト「マイナポータル」にログインして、次のような事を行える様になります。
・自分の個人情報をいつ、誰が、なぜ提供したのか確認できます。
・行政機関などが持っている自分の個人情報の内容を確認できます

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■個人で注意する点


マイナンバー制度」の概要や、カードの到着時期等を紹介して来ましたが・・・正直、最初から今回の仕様を考慮して「住基カード」を作成して欲しかったと思います。


新しいカードを作成するためには、制度を決定するための打合せ、システム構築のための打ち合わせ、さらにシステム構築のための費用等、莫大な税金が必要になります。


詳しい予算は解りませんが、全国規模のシステムですから「億単位」では済むはずもなく、おそらく「数十億〜数百億円」単位の予算が必要になると思います。


そして、これらのシステム構築で儲けるのは、大手企業ばかりで、弊社のような小さいIT企業には、何の恩恵もありません。全く・・・と言う感じがします。



さて、この「マイナンバー制度」ですが、前述の通り、大きくは3つの目的があると思いますが、一番の効果を期待しているのは「税金」対策だと思います。


全ての収入と支出を、「マイナンバー制度」で一括管理できるようになりますから、今まで以上に「脱税」は難しくなると思います。


と言うか、国内での収支に関しては、収支を上手に(と言うのも変ですが、)管理しないと、ほぼ不可能になると思います。


例えば、扶養控除を兄弟姉妹で二重に申請している様な場合、簡単に二重申請がバレてしまうようになります。

また、サラリーマンが、アフィリエイトや株等、何らかの副収入を得ている場合も、収支が「マイナンバー」で一本化されてしまいますので、所得税を逃れることは不可能になると思います。


これまで、上手く税から逃れていた人達は、一旦「脱税」がバレてしまうと、過去5年(悪質な場合は7年)まで遡って追徴課税されますので、覚悟しておいた方が良いかもしれません。



あと、前述の手順で通知される「マイナンバー制度」の情報ですが、住民票の場所にしか情報が届きませんので、現住所と住民票の住所が異なる場合、今のうちに変更届けを出しておいた方が良いと思います。


「俺は関係ないし・・・」と思っている方も沢山いると思いますが、それは間違いです。


これも前述の通り、サラリーマン、およびアルバイトやパートの方も、勤務先に「マイナンバー」を通知する必要があります。


バイトだからとか、パートだからでは済みません。


何らかの所得を得ている人は、絶対に必要になりますから、今の内から、きちんと「マイナンバー」の通知が届くように準備をして置く必要があります。



今年の10月を過ぎたら、勤務先から「直ぐに番号を教えてくれ!」と言われます。そうなると、直ちに休みを取って、住民票の変更をしに行かなければならなくなります。


そんな事態は、出来れば避けた方が良いと思います。

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■企業で注意する点


企業での「マイナンバー対応」ですが、パート・アルバイトを含む社員数が多い企業は大変だと思います。


弊社のように、少人数の企業で、社内システムもそれ程大規模でない企業は、それ程大変だとは思いません。


しかし、それでも、社員からマイナンバーを取得し、かつその番号が正しいことを確認した後は、マイナンバーを個別に管理し、外部に遺漏しないように、注意する必要があります。


万が一、正当な理由なく、故意にマイナンバーを外部に遺漏させた場合には、罰則が課せられるようになりますが、罰則は、個人情報保護法よりも重い罰則になります。


まずは、企業におけるマイナンバーの入手と管理までの手順を紹介し、次に、マイナンバー制度が始まる前までに、対応すべき項目について紹介したいと思います。


●企業におけるマイナンバーの入手から管理/破棄まで







最初に、企業におけるマイナンバーの入手、および管理方法を簡単に紹介したいと思います。

(1)マイナンバーの入手

マイナンバーは、正社員は当然、パート・アルバイトを含む全社員から取得する必要があります。
・但し、派遣社員に関しては、派遣元企業が管理しますので、派遣先企業は取得する必要はありません。
マイナンバーを取得する際には、必ず本人から番号を申告してもらい、かつ、その番号が正しい番号である事を確認する必要があります。(確認方法は後述)
・さらに、社員に扶養控除が居る場合には、扶養家族に関しても、マイナンバーを申告してもらう必要があります。

(2)本人確認
・社員のマイナンバーを入手する際には、電話やメールで番号を聞き出すのは余り進められません。
・社員からマイナンバーを入手する場合、可能な限り社員に対面し、利用目的を明示した上で番号を入手する方法が良いとされています。
・直接対面するのが難しい場合には、郵送で番号を入手した方が良いと思われます。
・また、直接対面して番号を入手する場合は問題ないが、郵送で番号を入手する場合には、番号が本院のもので間違いないことを確認する必要があります。
・特に郵送の場合には、後日、本人の写真付きカードである「個人番号カード」で確認した方が良いと思います。

(3)システム登録
・社内で人事・会計システム等、社員情報を管理するシステムを使用している場合、該当システムに、社員のマイナンバーを登録する必要があります。
マイナンバーを入力/登録したシステムに関しては、情報漏洩を防ぐために閲覧制限を付けて、関係者以外は閲覧出来ない仕組みにする必要があります。

(4)保管・管理
・上記の様に、マイナンバーを管理するシステムに対しては、閲覧制限/アクセス制限を付けて、関係者以外は、閲覧/アクセス出来ないようにして管理する必要があります。
・またシステム以外で管理する場合も、社員情報を管理するサーバーやフォルダーにはパスワード等で保護する必要があります。
・管理・保管方法に問題があれば、マイナンバーの監督組織である「特定個人情報保護委員会」から指導や命令を受ける可能性もあります。

(5)利用制限
マイナンバーの利用は、法律に規定された社会保障、税、および災害対策に関する事務に限られています。
・上記、法律で限定的に明記された場合を除き、マイナンバーの提供を求めたり、マイナンバーを収集したりしてはいけません。

(6)情報の破棄
・入手したマイナンバーは、社員、パート、およびアルバイトが退職した場合には、一定期間経過後、破棄する必要があります。
・破棄するまでの保存期間ですが、所管法令で定められた個人番号を記載する書類等の保存期間を経過するまでの間は、当該書類だけでなく、システム内においても保管することが出来ます。


マイナンバー制度が始まる前に行うべき事

平成28年1月から運用が開始される「マイナンバー制度」。様々な対策を考えなければならないと思いますが、その中でも、代表的な対策を紹介したいと思います。

1.業務の洗い出し

(1)現在の業務で、社会保障、および税金に関わる業務の洗い出しが必要です。
(2)社会保障関連としては、次の項目を取り扱う業務があります。
・厚生年金
・健康保険
・労働保険
雇用保険
(3)税金関連としては、次の項目を取り扱う業務があります。
源泉徴収
・給与支払調書
(4)社内情報としては、次のような情報があります。
・社員台帳
・給与台帳
(5)上記業務の内、システムで管理している物に関しては、システム改修が必要になります。
(6)特に、帳票類を出力している業務に関しては、内部データの修正のみならず、出力帳票も修正する必要があります。

2.システム改修
(1)上記作業で洗い出した業務の内、システムに影響する物を、さらに洗い出します。
(2)次のようなシステムには影響が及ぶと思われます。
・会計システム
・人事システム
・給与システム
(3)また、洗い出した対象システムが、パッケージ・ソフトウェアなのか、あるいは自社専用ソフトウェアなのかを調査する必要もあります。
(4)パッケージ・ソフトウェアの場合、ソフトウェア提供元に、何時から対応可能なのかを問い合わせて、システム移行スケジュールを、情報システム部と共に検討する必要があります。
(5)自社専用ソフトウェアの場合には、自社でソフトウェアを修正する必要があります。
(6)システム改修に関しては、大きく、次の2点が問題になると推測しています。
・内部レコード・フォーマットの変更(含む、データベース)
・出力帳票の変更
(7)その他、個人情報に紐付けられている情報を変更する必要があるかもしれません。

3.社内運用/管理方法の決定
(1)業務の洗い出し、システムの洗い出しを行うと共に、誰が、どうやって管理するのかを決定する必要があります。
(2)マイナンバー制度は、これまでの個人情報より厳しく管理する必要があります。
(3)マイナンバーを取り扱う部署、責任者、および担当者を明らかにし、それ以外の社員は、アクセス出来ない管理/運用方法を決める必要があります。

4.社員への告知
(1)社内管理/運用方法が決定したら、その内容を社員に通知する必要があります。
(2)社員への通知は、「通知カード」の郵送が開始される、平成27年10月より前に行っていた方が、社員は安心すると思います。
(3)「通知カード」が、社員の手元に届くより前に、社内体制等を決めておくことで、社員からの問い合わせにも対応出来るようになります。

5.予算確保
(1)「マイナンバー制度」は、はっきり言って、既存業務への「アドオン業務」です。つまり、企業にとっては、余計な業務になります。
(2)「余計な業務」とは言え、政府から要請ですので無視する訳にも行きません。
(3)「アドオン業務」ですから、上記に記載した作業を行う場合、全ての作業に関して「追加予算」が必要になります。
(4)例えば、総務が業務を洗い出すとしますが、総務にも通常の業務があるので、業務の洗い出しには、残業が必要になるかもしれません。また、業務の洗い出しを外部に委託する場合、当然、外注費が必要になります。
(5)システム改修を行う場合も同様です。特に、自社システムの改修を行う場合で、かつ大規模システムの場合は、「億単位」で予算が必要になる可能性が高いと思います。
(6)あとシステム改修に関する補足ですが、予算を確保しても、実際の要員が確保出来ない可能性もあります。早めの対応が必要になると思います。

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今回は、ここまで、「マイナンバー制度」について、次の点を紹介してきました。


マイナンバーの基本情報
●今後のスケジュール
●個人で注意する点
●企業で注意する点


正直なところ、結構、面倒です。


私も、これまで作業を放置してきましたが、今回のブログを作成している内に、やはり早めの対応が必要だと思いましたので、少し予定を早めて作業を開始したいと思います。


皆さんも、対応作業を前倒しすることをお勧めします。


それと、本ブログをアップする直前に、日本年金機構で情報漏洩が発生しましたが・・・ニュースで聞く限り、あらためて政府機関のセキュリティへの意識の低さが明らかになった感じがします。


政府は、「マイナンバー制度での情報漏洩は絶対に発生しない。」と言っていますが、まず「絶対」などと言っている時点で、意識や知識の低さ、そして常識の欠如を露呈しています。


物事に「絶対」などど言う事は有り得ません。


「絶対」が無いからこそ、まずは職員のモラルを向上させ、かつ情報漏洩が発生したら、どのような対応を取るのかを事前に決めて通達し、日頃から訓練を含めた対応を取る必要があるのです。


こんな基本的な運用も出来ていないのに「絶対に漏洩しない!」なんて、よく言えた物だと思います。


まあ、「絶対」発言をしたのは官僚ではなく政治家ですから、嘘は当たり前と言えば、当たり前ですが・・・


もう手遅れだとは思いますし、恐らく情報漏洩は時間の問題だと思いますが、2015年の10月以降、マイナンバーの監督官庁では、職員の意識・態度が変わること期待しています。



それでは次回も宜しくお願い申し上げます。


【画像・情報提供先】
政府広報オンライン(http://www.gov-online.go.jp/tokusyu/mynumber/)
内閣官房マイナンバー(http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bangoseido/)

以上

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