本当の意味での作業効率化とは - その1

今回は、「本当の意味での作業効率化」と題して、ソフトウェアを活用して作業効率化を検討中の企業様、および担当者様向けに、その考え方や効率化の進め方の一例をご紹介したいと思います。

弊社は、システムの受託開発やITコンサルティング業務を請け負っております関係で、業務の効率化に関しては、これまでに数百件の問い合わせを受けております。

弊社が取り扱う業務には、その他にも、パッケージ・ソフトウェアの作成依頼や、大手IT企業からのアウトソーシング業務、既存システムの改修等の案件もありますが、これは業務効率化とは直接関係ありません。

また、お問い合わせ頂いた案件に対しては、弊社が全てシステム開発を行った訳ではありませんが(全部受注できれば嬉しいですが)、ほとんど全てのお客様に対して、業務効率化のご提案だけは行っております。

そこで、今回は、次の様な内容について、業務効率化の考え方、進め方等を、2回に分けてご紹介します。

●第一回
・お客様が抱える作業・業務に関する問題点
・効率化すべき作業とは
・効率化の進め方
●第二回
・システム化の検討
・システム化の注意点
・人間が行うべき作業とは
・効率化した後の取り組み

それでは今回も宜しくお願い致します。

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■お客様が抱える作業・業務に関する問題点

最初に、弊社に寄せられたお問い合わせ事例をご紹介したいと思いますが、前述の様に、数百件のお問い合わせがありますために、全てを本ブログに掲載することはできません。

そこで、ある程度カテゴリーに分類してご紹介したいと思います。

弊社へのお問い合わせのある業務は、ほとんどが事務作業の効率化になります。そして、一般的に事務作業は、データを入力して、何らかの処理を行い、その結果を帳票に出力したり、あるいは他の業務に引き渡したりしますが、これを、IT用語では、次の様に分類します。

入力 : Input
処理 : Process
出力 : Output

略して【IPO】です。そこで、お問い合わせ業務を【IPO】毎に紹介したいと思います。


●入力(Input)系作業の問題点
・データの入力方法が複雑、簡単に行いたい
・データを入力するためには、ITスキルが必要、誰でも行える様にしたい
・入力ミスを減らしたい、ゼロにしたい
・他システムが作成したデータを、手作業でなく自動的に取り込みたい
・複数のデータを自動的にマージ(結合)したい


●処理(Process) 系作業の問題点
・どの事業所でもデータを作成したい
・大量データを瞬時に集計・変換・作成したい
・大量データから必要情報だけを取り出したい
・エラーの判定を行いたい
・データの自動計算を行いたい


●出力(Output) 系作業の問題点
・出力帳票を自動的に作成したい
・帳票を作成するために長時間掛かってしまう、短時間で帳票を作成したい
・使用する帳票のフォーマットを統一したい
・作成したデータを、他システムにシームレス(業務が途切れる事なく)に渡したい
・処理結果の表示方法を変更したい


業務効率化に関するお問い合わせは、これらの問題点に関して、1件ごとで対応するケースもありますし、複合的に対応するケースもあります。

しかし、全てのお問い合わせは、必ず、上記問題点の何れかになります。


■PCの性能とは

現時点で、おそらく個人向けPCの性能は、3Ghz(ギガヘルツ)程度が最高性能だと思います。

コンピュータの処理能力は、大型汎用コンピュータ等の場合には、MIPS(Million Instructions Per Second:1秒間当りに100万回の命令を何回実行できるか)と言う指標で現されます。

また、俗に言うスーパーコンピュータ等の場合には、FLOPS(Floating-point Operations Per Second:1秒間当りに浮動小数点計算が何回実行できるか)と言う指標で現されます。

そして、PCの場合には、クロック数で現されますが、クロック数とは、別名「クロック周波数(Hz:ヘルツ)」と言い、コンピュータ内部の回路間での信号の発信数を意味しており、この発信数が大きい程、処理能力が高いとされます。

その他にも、CPU(コア)の数(シングル/デュアル/クアッド)や、メモリ容量も処理能力に影響を与えますが、一般的にPCの性能は、このクロック数で判断されます。

ところで、このPCのクロック数ですが、ムーアの法則(※1)によると、2014年にはクロック数の上限に達し、それ以上の高速化はできなくなると言われております。

ちなみに、3Ghzの場合、3,000,000,000hzですから、1秒間に30億回の信号のやり取りが可能となりますが、クロック数の場合、MIPSやFLOPSとは意味が異なります。これは、アーキテクチャ(技術)の違いによります。

MIPSやFLOPSの場合、単純に1秒間に実行できる命令の数ですが、クロック数の場合は、1秒回にやりとりできる信号の数です。

そして、PCにおける命令は、単純な命令の場合、1個の命令で4クロック(※2)必要となります。

これを単純に計算すると、3Ghzの性能のPCにおいては、1秒間に7億5000万回の命令が実行できることを意味します。(※3)

1秒間に7億5000万回もの命令が処理できるなら、PCで何でもできる、と思われるかもしれませんが、そうでもありません。


1秒間に7億5000万回の命令が実行可能と言っても、当然PC本体や、PCにインストールされたソフトウェアを稼働させるためにも、様々な多くの命令を処理する必要があります。

PCを起動させて、「Cntl」+「Alt」+「Delete」キーを押して、【タスクマネジャー】を起動させて見て下さい。

そして、「プロセス」タブをクリックし、かつ画面下の「全ユーザのプロセスを表示する」をチェックして、PCで稼働中のプログラムを表示させて見て下さい。

少なくとも、70個以上のプロセス(プログラム)が稼働中であることが解ると思います。(XPの場合、60個位かも?)

常に全てのプログラムが処理を実行中と言う訳ではありませんが、何も業務を行わなくても、これだけのプログラムが稼働します。

その上で、業務を実行させる訳ですから、PCの負担もそれなりに増加します。

次に、効率化できる作業と効率化し難い作業について説明します。


※1ムーアの法則 :「半導体に集積されるトランジスタの数は18〜24カ月ごとに倍増する」と言う1965年に提唱された法則で、この法則によると2014年に限界値に到達するそうです。
※2命令のクロック数 : 次の4つの過程が最低必要となります
F :命令の取り出し
D :命令の解読
E : 有効アドレスの計算と命令の実行
WB :演算結果のメモリへの書き出し
※3性能 :PCの処理性能の算出には、IPC(Instructions Per Clock cycle)値が必要になります。そして、処理性能は、クロック数×IPC値にて算出されます。


■効率化すべき作業とは

次に、効率化を目指す業務の内、どのような作業が、ソフトウェアを用いる事で効率化できるのか、と言う点を考えてみます。

コンピュータの仕組みを良く知らない方は、「コンピュータなのだから、何でも効率化できるだろう」、と考えられるかもしれません。

しかし、コンピュータは、現時点で、まだ万能ではありません。特に、皆さんが業務で使われるPCは、
その名前が示す通り、パーソナル、つまり個人向けの性能しかありません。

また、通常のPCには、向き/不向きな作業があります。

●コンピュータ向きの作業

IPO(Input/Process/Output)が明確な作業
・特定作業の繰り返し(ルーチン化)
・何らかの基準値を元に計算・チェックを行う作業
・大量データの処理(数十万件程度のデータ件数)
・データの共有(データベース化)


●コンピュータに不向きな作業

・例外ケースが多い処理
・勘と経験に頼る処理
・推測が入る処理
・大量データの処理(数百万件以上のデータ件数)
・基準が不明確な処理


コンピュータは、決まったデータを、決まった場所から、決まった形式で入力し、決まった処理を行って、決まった結果を出力する、と言う作業を効率化するには最高のツールです。

しかし、例えば、次の様なケースは苦手です。

例1 :今日は、Cドライブのデータを入力して、明日は、Fドライブのデータを入力する
例2 :今日は、CSV形式のデータを入力して、明日はdoc形式のデータを入力する
例3 :今日は、個数10個以上のデータをエラー扱いにして、明日は、20個以上をエラー扱いにする
例4 :今日は、きっと事務所Aからは入金がないと思うから、合計金額は100万円位でOKにする
例5 :通常は室温30℃でエラーだが、今日は暑いから室温28℃以上ならエラーにする


人間ならば、目(目検)でチェックし、エラー扱いにできるデータも、コンピュータは、何らかの基準が明確に決まらないと、エラーと判定できません。

コンピュータは、その起源が、大砲の弾道計算の必要性から生まれた機械ですから、統計・算術計算は得意ですが、人間の様に、その都度、ケース・バイ・ケースで物事を判断するのは苦手です。

また、上記、向き/不向き作業の両方の項目に「大量データの処理」を入れましたが、通常の3Ghz程度の処理能力のPCでも、数百万件、あるいは数千万件のデータを処理することは可能です。

しかし、データ件数が、数百万件、あるいは数千万件のデータを処理する場合、処理結果が出るまでに、30分以上、場合によっては数時間掛かってしまいます。これは作業の効率化とは言えません。

作業効率化とは、せいぜい長くても10分程度の処理時間だと思います。数百万件以上のデータの処理は、PCには不向きとしました。



つまり、ソフトウェアを使った作業の効率化を検討する場合、次の点を明確にする必要があります。

・データの入力場所
・入力データの形式やフォーマット
・データを入力する(取り込む)タイミング
・データを処理するタイミング
・データの処理基準・判定基準
・データの処理時間の妥当性
・データの出力・作成タイミング
・データの出力形式やフォーマット


上記の点(仕様)を、明確に定義できない業務は、ソフトウェアでの作業効率化は難しいと思います。

しかし、業務を絞り込む事で、仕様が明確にできる可能性があります。

例えば、一連の業務でも、ある特定作業だけをシステム化対象から除外すれば仕様が明確になる、と言うケースも存在します。

ソフトウェアによる業務効率化を検討する場合、まずは、業務仕分けから行うのが基本だと思います。


■効率化の進め方

次に業務仕分けの行い方について説明します。

通常、業務の効率化を検討するのは、経営者・経営陣、あるいは部門長となりますが、これら会社の上層部と言われる方々は、現場の業務作業には精通しておりません。

業務内容は熟知しても、作業方法は具体的には知りませんから、業務効率化を考える場合、業務単位に、作業担当者に、作業内容をヒアリングすることになると思います。

ヒアリングで、どこまで詳しく情報を取得できるかが、効率化の検討において重要な点となります。

このため、ヒアリングを開始する前に、社内で業務改善のためのチームなり組織を発足させ、きちんとした体制で組織を運営する必要があります。

また、全てを組織に任せるだけでなく、経営陣もステークホルダーとして、積極的に関与する必要があります。仕事の【丸投げ】では、業務改善など、できるはずがありません。

部下に作業を【 丸投げ 】するだけの経営陣なら、業務効率化を始める前に、経営陣の意識改革、あるいはメンバー変更から開始すべきだと思います。

業務効率化チームが始動したら、ヒアリングの方法や項目、あるいは集計方法等を検討することになると思います。

しかし、ヒアリング項目に、下記のような項目しか無い場合には、最初から業務効率化は失敗したも同然です。


・何か問題点はないか?
・改善したい業務はあるか?
・何か良い案はあるか?


ヒアリング項目は、企業、業務、およびヒアリング担当のレベルによって大幅に異なります。このため、本ブログには掲載しませんが、ヒアリングの最終目的は、改善すべき業務を洗い出すことにあります。

ヒアリングにより、問題点がありそうな業務を見つけ出し、該当業務がシステム化により改善するのか否かを検討しなければなりません。

このため、ヒアリング項目は企業毎に異なりますが、ヒアリング情報を収集・集計した結果として、問題業務が炙りだせる仕組みを取り入れる必要があります。

企業の業務において、問題が無い業務など存在しません。多かれ少なかれ、何らかの問題は存在します。

ヒアリングを実施した結果、全ての業務に重大な問題有り、となれば、それはきっと業務改善以前の問題だと思います。

業務改善結果の集計方法に関しては、あらかじめ数値、あるいは決まった文字で判定できる方法を取り入れた方が良いと思います。要は、アンケートの集計と同じです。

ヒアリング項目を、文章で回答する様にしてしまうと、回収したヒアリングシートを、全て人間が読んで判断する必要があります。

社員数が50人以下の会社であれば、人海戦術を取り、全ての回答を人間が読んで、問題点の有無を判断しても良いでしょう。

しかし、それでも大変だと思います。また、問題点の有無を判断する際に、回答を読んだ人間の主観が入り込む可能性があります。これは問題です。

回答者が問題を指摘したのに、集計する人が「これ位は問題ない」と判断してしまったら、ヒアリングを実施した意味がありません。

回答結果は、客観的に判断するためにも、機械的に処理する必要があります。


と、ここまでヒアリング方法と結果集計方法について記載しましたが、何か気が付きませんか?

感が鋭い方はお気付きだと思いますが、ヒアリングの実施と回答の集計方法も、業務効率化と同じ考えで進める必要があります。

回答結果を人海戦術で集計する方法と、機械的に集計する方法、どちらが効率的だと思いますか?

答えは明らか、『 機械的に集計する方法 』です。

つまり、今までの業務の進め方は、人に頼る方法でしたが、ソフトウェアによる業務効率化とは、作業を機械的に行う事になります。

例えば、ヒアリング項目の回答を、次の様にすれば、機械的に判断することができます。

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Q1.○○業務における、△△の作業に問題があると思いますか? 次の3段階で回答して下さい。
A1.3:重大問題有、2:軽微な問題有、1:問題無

Q2.Q1で2以上を付けた方に質問です。それは、どのような問題ですか?
A2.

Q3. Q1で2以上を付けた方に質問です。何か改善策はお持ちですか?
A3.

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上記の様な設問を用意し、Q1の回答だけを集計し、Q1の回答が「2」以上の数で、問題の多さを判定すれば、どの業務の、どの作業に問題が多いのかを、機械的に判断することができます。

そして、問題が多い業務・作業に関しては、Q2の内容を見て、詳しい分析を行うことが可能になります。

さらに、優秀な社員は、Q3に回答している場合もあります。後日、対応策を検討する際に、参考にすれば良いと思います。
このような集計、分析方法を行い、最終的に抽出した問題点に関して、システム化が可能か否かの判定を行えば、ソフトウェアによる業務効率化を進めることができるようになります。

また、詳しい結果を得るためには、設問は、業務単位で、かつ作業単位に作成する必要があります。

全社員に同一の設問をするのは無意味です。ちゃんと、業務単位で、かつ作業単位に作成しないと、必要なデータは得られません。

他方、ソフトウェアによる業務効率化ができない場合でも、その他の対応策を検討する機会にはなると思います。このため、業務のヒアリングは無駄にはなりません。

それと、集計結果の結果に関しては、最終的には、全関係者が目を通す必要があります。

業務効率化のためのヒアリングですが、その他にも、単純に考えただけでも、次の様な付加価値があると思います。


・業務への精通度合が解る
・業務への貢献度合いが解る
・会社への貢献度合いが解る
・ドキュメント作成能力が解る
・仕事の仕方が解る


自分の業務を、常日頃から分析する社員は、業務の問題点も簡単に解ると思います。

前にも述べましたが、問題の無い業務は存在しません。軽微な問題でも、少しずつ改善することで業務効率は上がります。

また問題点の書き方を見ただけで、ドキュメント作成能力の判断が付きます。営業だから、総務だからドキュメント能力はいらない、と言う訳ではありません。

営業なら「ドキュメント能力 = 提案書作成能力」、総務なら、報告書の作成能力等、どのような業務でもドキュメント作成能力は必要になります。

また、ヒアリングの提出時期を守れるか、と言う点でも、仕事の仕方が解ります。提出物の〆切を守れない社員は、おそらくお客様との約束も守れないと思います。

このように、ヒアリングには、色々な付加価値があります。別に問題点を洗い出す以外でも、定期的に実行した方が良いかもしれません。

但し、ヒアリング結果で別の問題点が明らかになった社員については、人事考課には反映せず、社員の教育のための資料とすることをお勧めします。

最後に、ヒアリングを行う際の注意点ですが、社員には、次の点を明確に説明し、かつ約束を守るようにして下さい。


ヒアリング結果を元に部署を廃止しない
ヒアリング結果を人事考課に使用しない
ヒアリング結果を元に配置転換は実施しない


上記の点を明確に提示し、かつ約束を守らないと、次回以降のヒアリングにおいては、社員は疑いを抱き、正確なデータが得られなくなります。注意して下さい。

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次回は、ソフトウェアによる業務効率化の検討の仕方や、本ブログの主題である「本当の意味で効率化」について、次の内容を記載します。ご期待下さい。

・システム化の検討
・システム化の注意点
・人間が行うべき作業とは
・効率化した後の取り組み


それでは、次回も宜しくお願いします。

以上

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