岩手の世界遺産と無形文化遺産 −平泉ショックからの出発 その1


昨年、本ブログで、5回に渡り「早池峯信仰と瀬織津姫命」を紹介しました。

★過去ブログ:早池峰信仰と瀬織津姫命 〜 謎多き姫神に触れる


そして、そのブログ内で、ユネスコ無形文化遺産に登録されている「早池峰神楽」も取り上げました。


繰り返しになってしまいますが、この「早池峰神楽」と言う名称ですが、元々「早池峰神楽」と言う名称は存在しません。


早池峰神楽」とは、花巻市大迫(おおはさま)町にある、下記2つの地区に伝わる神楽を合わせた「総称(似たものを集めて一つの呼び名とした物)」です。


大迫町「岳(たけ)」地区 :「岳神楽」
大迫町「大償(おおつぐない)」地区 :「大償神楽」


何故、こんな総称を付けたのかと言うと、昭和50年(1975年)に、国指定の重要無形文化財に登録する際、二つの神楽のルーツが同じで、かつ共通の特徴があると言う事から、「2個1(ニコイチ)」で登録申請をした事から始まったとの事です。

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それと、本ブログに何度も登場する「平泉」。過去には、次のようなブログで、「平泉」、あるいは「中尊寺」関連の話題を紹介しました。


★過去ブログ
岩手県内における義経伝説 ? 信じたくなる話ばかり
岩手県内の冬のイベント 〜 その他


平泉と中尊寺の話題に関しては、余りに有名で、特に平泉が、平成23年(2011年)、「平泉―仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群」として、世界遺産の中の「文化遺産」に登録された後は、「あまのじゃく」的性格な私は、紹介する気持ちが失せてしまいました。


このため、本ブログでは、「平泉」や「中尊寺」、あるいは「金色堂」と言う名称は、度々出現しますが、それ本体に関しては、余り触れてきませんでした。

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ところが、2018年11月3日、2020年に世界遺産登録を目指していた「北海道・北東北の縄文遺跡群」に関して、2020年の登録推薦の見送りが決定した、と言うニュースが放送されました。


この「北海道・北東北の縄文遺跡群」とは、後で詳しく紹介しますが、北海道、青森、秋田、および岩手の各道県にある、17ヶ所の縄文遺跡から構成されている考古学的遺跡群との事らしいです。


そして、岩手県からは、1か所のみなのですが、「御所野遺跡」が、この考古学的遺跡群に含まれる形で、世界遺産登録を目指していたそうですが・・・


同じく登録を目指していた自然遺産「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の方を優先する事になってしまったようです。


これは、ユネスコへの推薦枠が、「1国1枠」に制限されている事から、「自然」と「文化」、どちらを優先させるかで政府内で調整していたそうですが、最終的には、ユネスコ自体が、「自然」を優先する姿勢を示しているために、日本からは「奄美大島〜」を推薦する決断を下さいらしいです。


「北海道・北東北の縄文遺跡群」関係者からは、当然、落胆の声が上がりましたが、「これで推薦のための準備が出来る!」と負け惜しみを言う声も多数上がっているようです。

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そこで今回、そして次回のブログでは、主に、岩手県内の世界遺産無形文化遺産、それと今回推薦枠から漏れた「御所野遺跡」等の情報を含む、下記のような情報を、2回に分けて紹介したいと思います。

【 第1回目 】

世界遺産とは
無形文化遺産とは
世界遺産無形文化遺産の違い
●日本の世界遺産無形文化遺産の一覧
●遺産登録に関する問題点とメリット/デメリット


【 第2回目 】

●岩手の世界遺産
●岩手の無形文化遺産
●落選した「御所野遺跡」とは


それでは今回も宜しくお願いします。


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世界遺産とは


世界遺産」、英語表記「World Heritage Site」とは、1972年(昭和47年)のユネスコ総会で採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」、通称「世界遺産条約」に基づいて、世界遺産リストに登録された文化財、景観、自然等、人類が共有すべき「顕著な普遍的価値」を持つ物件で、かつ移動が不可能な不動産が対象となっています。


また、その中の文化遺産を「世界文化遺産」、自然遺産を「世界自然遺産」と呼ぶこともあり、さらに、その両方の要素を備えた遺産を「複合遺産」とも呼んでいるそうです。


各遺産の例を上げると、次の通りです。


文化遺産 : 姫路城(日本)、ピラミッド地帯(エジプト)、アマルフィ海岸(イタリア)
●自然遺産 : 白神山地(日本)、グランド・キャニオン(アメリカ)、グレートバリアリーフ(オーストラリア)
複合遺産マチュピチュ遺跡(ペルー)、カッパドキア(トルコ)、トンガリロ国立公園(ニュージーランド)


2018年7月時点では、世界遺産は1,092件で、その内訳は、文化遺産845件、自然遺産209件、複合遺産38件となっており、条約締結国は193ヵ国になっているそうです。


ちなみに、日本は、世界遺産条約制が定されてから20年後、1992(平成4)年に条約を批准し、先進国では最も遅い125番目の締約国となっているそうです。


一度、世界遺産リストに登録されれば、その後は、一生リストに記載され続けるのかと言えば、そうでも無いようです。


定期的に監査が入り、世界遺産としての「顕著な普遍的価値」が失われたと判断された場合は、リストから抹消されます。


実際、過去には、2007年に、中東オマーンの「アラビアオリックス保護区」が、史上初めて、世界遺産リストから抹消されています。


また、リスト登録までの流れは、次の通りとなっています。


●日本国内の各自治体から政府(文化庁)への提案書提出
文化庁世界遺産暫定一覧表に記載
●推薦準備作業/国としての推薦決定
●国からユネスコへ推薦書提出
●国際記念物遺跡会議(ICOMOS)/国際自然保護連合 (IUCN)の専門家が現地調査を実施
ユネスコ世界遺産委員会(21カ国代表)で審議、および登録決定(原則年1回)


ちなみに、世界遺産第1号は、アメリカの「イエローストーン国立公園」で、日本の場合、次の4箇所が、1993年12月に世界遺産に登録されたようです。


文化遺産法隆寺地域の仏教建造物(奈良県)、姫路城(兵庫県)
●自然遺産 :屋久島(鹿児島県)、白神山地(青森県秋田県)


その他、日本では、2018年6月末時点で、世界文化遺産18件、世界自然遺産4件の合計22件が登録されています。登録箇所については、以降の章で紹介します。


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無形文化遺産とは


無形文化遺産」、英語表記「Intangible Cultural Heritage」とは、民族文化財、古く伝わる風習・伝承、口承伝統等の無形文化財を保護対象とした「国際連合教育科学文化機関(United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization:UNESCO)の事業の一つです。


この事業は、2003年の第32回ユネスコ総会で採択され、2006年に発効した「無形文化財の保護に関する条約」に基づいています。


有形の文化財の保護に関しては、前述の通り、1972年に採択された「世界遺産条約」により保護される事になったのですが、無形文化財に関しては、この「世界遺産条約」では保護しきれない事が明らかになったので、「世界遺産条約」に遅れること34年、新たな枠組みが作られる事になったそうです。


しかし、実際には、「無形文化財の保護に関する条約」が発効する前、2001年から隔年で、「人類の口承及び無形遺産の傑作の宣言(通称:傑作宣言)」と言う事業を行い、条約が発効する前から、保護対象とする文化財を決めていたそうです。


そして、この「傑作宣言」では、2001年(19件)、2003年(28件)、そして2005年(43件)が採択され、2006年の条約発効後に、代表一覧表に正式登録されています。


日本では、2001年に「能楽」を、2003年に「人形浄瑠璃文楽」を、そして2005年には「歌舞伎」を、傑作宣言に登録申請を行っています。


その後、前述の通り、2006年に「無形文化財の保護に関する条約」が発効した時点、これら3件も正式に代表一覧に登録されました。


それ以外の無形文化遺産に関しては、後で紹介します。


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■「世界遺産」と「無形文化遺産」の違い


世界遺産」と「無形文化遺産」の双方とも、「ユネスコ(UNESUCO)」の事業の一環です。


そして、ここまでの説明で、「世界遺産」と「無形文化遺産」の成り立ちや、違いに関しても、ご理解できたかと思われます。


世界遺産 :「ユネスコ世界遺産センター」所管。有形の不動産。文化遺産、自然遺産、複合遺産の3種がある。
無形文化遺産 :「ユネスコ文化局無形遺産課」所管。無形の各国の芸能や祭礼、伝統工芸技術など。



前述の過去ブログにも記載していますが、この「世界遺産」と「無形文化遺産」を、ごちゃ混ぜにして用いている官公庁やメディアがあります。


農水省は、「和食」を、「無形文化遺産」に登録するために各種PR活動を行っていたのですが、その際に、「無形文化遺産」を、「世界無形文化遺産」として紹介していました。


また、NHKも、過去の「シリーズ世界遺産100」と言う番組で、「世界遺産」と「無形文化遺産」の両方を紹介していたそうです。


やはり、公共性のある報道では、言葉は正確に用いるべきだと思います。


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■日本の世界遺産無形文化遺産の一覧

それでは、ここで、日本の世界遺産無形文化遺産を、一覧表を用いて簡単に紹介します。

世界遺産


日本の世界遺産には、文化遺産(18件)と自然遺産(4件)の計22件が登録されています。複合遺産は、残念ながら登録されていません。

文化遺産
1 1993/12 奈良県 法隆寺地域の仏教建造物
2 1993/12 兵庫県 姫路城
3 1994/12 京都府/滋賀県 古都京都の文化財
4 1995/12 岐阜県/富山県 白川郷・五箇山の合掌造り集落
5 1996/12 広島県 原爆ドーム
6 1996/12 広島県 厳島神社
7 1998/12 奈良県 古都奈良の文化財
8 1999/12 栃木県 日光の社寺
9 2000/12 沖縄県 琉球王国のグスクおよび関連遺産群
10 2004/07 奈良県/和歌山県/三重県 紀伊山地の霊場と参詣道
11 2007/06 島根県 石見銀山遺跡とその文化的景観
12 2011/06 岩手県 平泉−仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群
13 2013/06 山梨県/静岡県 富士山−信仰の対象と芸術の源泉
14 2014/06 群馬県 富岡製糸場と絹産業遺産群
15 2015/07 岩手県/他7県 明治日本の産業革命遺産
16 2016/07 東京都 ル・コルビュジエの建築作品
17 2017/07 福岡県 「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群
18 2018/06 長崎県 長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産

【 自然遺産 】
1 1993/12 鹿児島県 屋久
2 199312 青森県/秋田県 白神山地
3 2005/07 北海道 知床
4 2011/06 東京都 小笠原諸島


無形文化遺産

日本の無形文化遺産は、下表の通り、2001年から2005年に指定された「傑作宣言」の3件も含めて、合計21件の無形文化財が、登録されています。


さらに、2018年には、、岩手県の「スネカ」を含む、8県に伝わる「来訪神」が登録される予定となっています。(※本ブログ執筆時には未登録)

項番 登録年 内容 備考
1 2001年(2008年) 能楽 ※傑作宣言
2 2003年(2008年) 人形浄瑠璃文楽 ※傑作宣言
3 2005年(2008年) 歌舞伎 ※傑作宣言
4 2009年 秋保(あきう)の田植踊 宮城県仙台市太白区秋保町の芸能
5 2009年 チェッキラコ 神奈川県三浦市小正月伝統行事
6 2009年 題目立 奈良県奈良市の語り物
7 2009年 大日堂舞楽 秋田県鹿角市舞楽
8 2009年 雅楽
9 2009年 早池峰神楽 岩手県花巻市大迫「早池峰神社」の神楽
10 2009年 トシドン 鹿児島県薩摩川内市の年神(来訪神)
11 2009年 小千谷縮越後上布、からむし 織物製造技術
12 2009年 能登アエノコト 石川県奥能登地方の新嘗祭
13 2009年 アイヌの古式舞踏 北海道の先住民族に伝わる踊り
14 2010年 組踊 沖縄県に伝わる踊り
15 2010年 結城紬 茨城/栃木に伝わる絹織製造技術
16 2011年 壬生の花田植 広島県山県郡北広島町壬生の伝統行事
17 2011年 佐陀神能 島根県「蹉跎神社」の神楽
18 2012年 那智の田楽 和歌山県那智勝浦町の田楽
19 2013年 和食
20 2014年 和紙
21 2016年 山。鉾・屋台行事
22 2018年 来訪神 岩手県および他8県(含むトシドン)

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この内、岩手県内に存在する世界遺産無形文化遺産は、次の4件となっています。

世界遺産
平泉−仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群
明治日本の産業革命遺産(釜石市:橋野高炉跡及び関連遺跡)

無形文化遺産
早池峰神楽
・来訪神(スネカ)※登録予定

次回、「その2」において、岩手県内の世界遺産無形文化遺産を、詳しく紹介します。


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■遺産登録に関する問題点とメリット/デメリット


ここで、世界遺産無形文化遺産に関する問題点や、遺産に登録される事のメリット/デメリットを少し紹介したいと思います。


世界遺産無形文化遺産には、余り取り上げられる事はありませんが、登録国に関する「偏り」が指摘されています。


また、特に無形文化遺産に関しては、文化の発祥地と経由地の問題が、しばしば取り上げられています。


つまり、本当に、その文化や伝統芸能が発祥した地を無形文化遺産の対象国とするのか、逆に、その文化/伝統が伝わった国を対象国とするのかで、国際紛争に発展するケースもあります。


また、これら遺産に登録されると「良いこと」ばかりが取り上げられますが、実際には、数々の問題が発生しています。


本章では、世界遺産/無形文化遺産の「負」の部分に、少し焦点を当ててみます。まず、世界遺産が抱える問題点を紹介します。


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世界遺産の問題点

世界遺産には、前述の通り、3種類の遺産があり、その3種類の遺産の内訳を見ると、文化遺産845件、自然遺産209件、複合遺産38件と、文化遺産の登録が多く、かつ登録場所の多くはヨーロッパが中心となっています。


また、条約締結国193カ国中、1件も登録されていない国が、アフリカを中心に26カ国も存在しています。
→ アフリカ:11カ国、アジア:5カ国、オセアニア:4カ国、アメリカ:5カ国、ヨーロッパ:1カ国


そして、登録されている国は、ヨーロッパと中国が多いと言う偏りも指摘されています。多い順に記載すると次の通りです。

・イタリア :54件
・中国 :53件
・スペイン :47件
・フランス :44件
・ドイツ :44件


これは、世界遺産の生い立ちが、文化財の保護意識が高いヨーロッパから始まった事と、逆にアフリカ等では、文化財と言う意識が欠如している事が、この偏りの原因とされています。


このため、1994年に開催されたUNESUCOの世界遺産委員会では、「世界遺産リストにおける不均衡の是正及び代表性、信用性確保のためのグローバル・ストラテジー(通称:グローバル・ストラテジー)」を採択したそうです。


この「グローバル・ストラテジー」では、地域的にヨーロッパに偏重していた登録の仕方を是正し、世界遺産リストが、その名の通り、世界を代表する文化遺産・自然遺産などの一覧となることを目指す事になったそうですが・・・余り効果は無いようです。

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世界遺産登録のメリット/デメリット


世界遺産に登録」と言うと、「良いこと尽くめ」のような感じがします。


確かに、何か「良い事」が無ければ、誰も遺産に登録しようとは思いませんし、各国政府が、国費を掛けて登録活動を支援するはずもありません。


実際、世界遺産に登録されると、観光客が増えると言う経済的メリットと、登録地点に至る交通網の整備等、周辺インフラの整備が進むと言うメリットがあリます。


しかし、その反面、逆に、観光客向けの施設が増えて本来の姿が失われたり、あるいは東アジア、特に隣国からマナーが悪い観光客が来ることで、周辺環境が悪化したりすると言うデメリットもあります。


民度が低い人間が多い国から来る観光客は、相手国の文化やルールや、そもそも人間としての基本ルールを知らないので、遺産周辺を荒らし回り、住民とのトラブルに発展するケースも増えているそうです。


実際に、世界遺産に限らず、隣国の観光客に人気のある京都/奈良では、文化財に傷を付けられたり、あるいは壊されたりする問題が多発しています。


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無形文化遺産の問題点

無形文化遺産に関しても、世界遺産と同様、登録国の偏りが指摘されるようになって来ています。


また、前述の通り、歴史的・民俗的共通性を持つ遺産であるにもかかわらず、複数国家が別々に登録申請を行い、さらにその過程で自国の固有性を主張しあう国際紛争に至るケースもあります。


特に、2005年に韓国が登録した「江陵端午祭」は、とんでもありません。


日本の端午の節句に相当する韓国の「江陵端午祭」ですが、韓国人は、この「江陵端午祭」が、韓国に起源がある伝統で、他国の端午際は、韓国の「物まね」あると主張しています。


端午祭」は、中国が起源であることは、韓国人以外にとっては常識です。中国から、韓国や日本に伝播し、その後に独自の文化になったというのが一般的な認識です。


それにも係わらず、韓国人は、嘘を突き通し、なおかつ無形文化遺産の代表リストに掲載するか否かを審議する政府間委員会をも欺き通し、最終的に、2009年には、代表リストに登録される事になってしまいました。


これに対して、当然、中国は猛反発したのですが、中国からの抗議は、何故か認められなかったようです。


このように、伝統の発祥地と、その伝統の経由地との間で、どこを代表リストに掲載するのかが問題となっています。

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無形文化遺産登録のメリット/デメリット


無形文化遺産は、世界遺産と異なり、「保護すべき伝統文化」が登録対象となります。


つまり、廃れた始めた伝統が、無くならないように保護する事を目的にしていますので、無形文化遺産に登録されたからと言って、特段のメリットはありません。


但し、世界から無くなっては勿体無い、この先もずっと、人類の伝統として残すべき価値がある文化と言う地位を得る事が出来ますので、無形文化遺産のリストに登録された伝統は、地元の誇りになるかと思います。


また、先の「端午の節句」」のように、嘘を尽き、世界を欺こうとする国家/民族が存在する事が明らかになりましたので、このような非常識な国家/民族から、本当の伝統を守るためにも、無形文化遺産に登録する価値はあるのかもしれません。


特に、韓国に付いては、本当に注意が必要です。日本発祥の文化/伝統を、全く恥じる様子もなく、平気で韓国が発祥地だとしています。


一例としては、桜(ソメイヨシノ)の原産地が韓国だと主張していますし、挙句の果てには、大学の教授までもが、本気で、イギリス人の祖先は韓国人だと吐かしてします。


何を考えているのか、それとも何も考えていないのか、日本人には、理解する事が難しい民族です。


この点に関しては、もう少し詳しい情報を、過去ブログに掲載しています。

★過去ブログ:岩手の工芸品 〜 地味だけど丈夫で長持ち その2(南部鉄器)


話が逸れてしまいましたが、「和食」が無形文化遺産に登録された時には、海外で、とても「和食」とは言えない料理までもが「和食」と言う名称で提供されている事例が紹介され、このような伝統への誤解を招かないようにする、と言うメリットもあるかと思います。


他方、デメリットに関しては、今の所、特にデメリットは見当たらないように見受けられます。


世界遺産とは異なり、無形文化遺産に登録されたからと言って、害を被ったとか、問題が発生した言う話は一切聞こえません。


無理矢理デメリットを挙げるとすれば、無形文化遺産に登録された文化/伝統に関しては、登録後は、国を挙げて、後継者の育成等、何らかの対策を取って、その文化/伝統を後世に伝え続ける義務が生じる、と言う事だと思います。


これまでは、国が主体となって伝統の存続や保護を行って来なかったものに対しても、無形文化遺産登録後は、国も主体的に責任を負う事になると思います。


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今回は、「岩手の世界遺産無形文化遺産 - 平泉ショックからの出発 その1」と題して、次の情報を紹介してきましたが、如何でしたか ?


世界遺産とは
無形文化遺産とは
世界遺産無形文化遺産の違い
●日本の世界遺産無形文化遺産の一覧
●遺産登録に関する問題点とメリット/デメリット


これまで、「世界遺産だ!」、「無形文化遺産だ!」と騒いできましたが、こうして改めて、UNESCO(国際連合教育科学文化機関)の各種遺産事業を見てみると、様々な矛盾を抱えながら事業を進めている事が浮き彫りになりました。


やはり、様々な国や政府、それと各国政府の意を受けたロビー団体が入り乱れて条約を決めていますので、実際の現場は、とんでもない事になっていると容易に想像出来てしまいます。


特に、今回、平泉の世界遺産登録に際しては、「平泉ショック」なる事件があり、かなりの苦労をし、10年もの歳月を掛けて世界遺産に登録を果たした事を知りました。


まあ、現在では、世界遺産に登録された事で観光客も増加しているとの事らしいですが・・・その時間と費用と労力を、別の事業に向けても良かったのかもと思ってしまいます。


しかし、東北人の粘り強さには、これも、改めて脱帽してしまいます。


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ここで、今回のブログのテーマである世界遺産無形文化遺産を管理している「UNESCO」自身について、少し情報を紹介します。


UNESCOは、第二次世界大戦後となる1946年11月に設立され、その後、徐々に加盟国を増やしてきて、2018年2月時点で、加盟国は195カ国で、その他連携メンバー(Associate Member)として、10箇所の地域が認定されているそうです。


日本は、国際連合憲章に定義されている「敵国条項」が適用される枢軸国だったので、UNESCOの本体部分となる国際連合に加盟出来なかったのですが、それにも係わらず、1951年には加盟する事が出来たようです。


また、1954年には、当時の「ソ連(ソビエト社会主義共和国連邦)」がUNESCOに加盟した事で、当時で言う所の「東側諸国」も加盟出来るようになったそうです。


しかし、多くの東側諸国や新興国が加盟するにつれ、UNESCO内部でも政治的な争いが増加してきたようです。


UNESCOの議決権は、分担金の多さには関係無く「1国1票」ですから、東側諸国や新興国の加盟が増加する事で、それまでUNESCOを牛耳ってしたアメリカやヨーロッパを始めとする先進国の影響力が弱くなり、決議が紛糾するケースが増えて来たとされています。


特に、新興国、昔の言葉で言うと「発展途上国」が提唱した「新世界情報秩序」の取り扱いに関して、先進国の間で不満が爆発し、1984年、当時の最大の分担金拠出国であったアメリカが、次いで、翌1985年にはイギリスとシンガポールがUNESCOを脱退し、UNESCO自体が、存続の危機を迎えたそうです。


この間、日本はUNESCOに留まり続け、アメリカが脱退した事で不足する分担金を補うため、全体の1/4をも拠出する最大の国となったそうです。


しかし、その後、1997年にはイギリスが、2003年にはアメリカもUNESCOに復帰したのですが、今度は、2011年にパレスチナのUNESCO加盟に際し、アメリカとイスラエルが猛反発し、対抗措置として分担金の停止を実行しています。


これに対してUNESCO側は、規定に基づき、分担金停止から2年後の2013年に、アメリカの投票権を停止しています。


その後、アメリカは、UNESCOに加盟し続けながら、裏側ではロビー活動を行い、双方で解決策を探ってきたのですが、2017年に、UNESCOが、5月に採択したイスラエルを非難する決議が決定打となり、同年10月には「2018年12月にUNESCOを脱退する。」と言う表明を発表しました。


これにより、再び、日本が分担金拠出国で第1位となってしまいました。


外務省のホームページによると、2018年のUNESCOの分担金のトップ5は、下表の通りだそうです。(※文科省の数値とは若干異なるようです。)

国名 分担率(%) 金額(百万ドル)
アメリ 22.000 591.4
日本 9.680 235.3
中国 7.921 192.5
ドイツ 6.389 155.3
フランス 4.859 118.1


トップ5以降は、イギリス、ブラジル、イタリア、ロシア、カナダ・・・と続くようです。


以上、UNESCOの歴史と現状を簡単に紹介してきましたが、今後も、UNESCO自身、そして日本も、難しい対応が求められると思います。


現在は、日本がトップとなっていますが、アメリカの脱退を受け、恐らくは、想像ですが、中国が拠出金を増加し、UNESCOでの存在感を示し始めると思っています。


そして、UNESCO側も、アメリカが居なくなれば、中国を重視するようになると思われますので、日本も、今後のUNESCOに対して、どうような対応を取るのかを真剣に考えるべき時期が来たと思われます。


次回は、冒頭に記載した通り、次の内容を紹介します。


●岩手の世界遺産
●岩手の無形文化遺産
●落選した「御所野遺跡」とは


それでは次回も宜しくお願いします。


以上

【画像・情報提供先】
Wikipedia(http://ja.wikipedia.org/)
世界遺産オンラインガイド(https://worldheritagesite.xyz/)
中尊寺ホームページ(http://www.chusonji.or.jp/
・公益財団法人 岩手県観光協会(https://iwatetabi.jp/index.php)
・縄文遺跡群世界遺産登録推進事務局(https://jomon-japan.jp/)
・いちのせき観光ナビ(http://www.ichitabi.jp/)
文部科学省(http://www.mext.go.jp/unesco/003/001.htm)
・外務省(https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jp_un/yosan.html)

AI(Artificial Intelligence) - その恐怖と現実 その1

新年、明けまして、おめでとうございます。本年も、これまで同様、株式会社エム・システムを宜しくお願い申し上げます。


本ブログでも、皆さんの役に立つIT系情報と、こちらは余り仕事の役には立たないと思いますが、弊社事業所のある「岩手・盛岡」に関する様々な情報を、お伝えして行きたいと思っております。


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本年最初のIT系のお役立ち情報では、「AI(Artificial Intelligence)」に関する話題を取り上げたいと思います。


昨年は、「Deep Learning」を始めとした「AI」に注目が集まり、「AI元年」とも呼ばれたりしました。


弊社も、「AI」に関しては、下記の過去ブログで取り上げて紹介しています。


・Society 5.0って何 ? :「IoT」が進むとビッグデータが出来るので、その解析に「AI」に必要になる
→ 20180310.html
・社内システムのクラウド化 :業務で「AI」を取り入れるとパフォーマンス重視となりクラウドが衰退する
→ 20181110.html


どちらも、これからの起こる事を予測した内容でした。


しかし、世の中、さらに技術革新が進み、ビッグデータアーカイブ向きの「LTFS(Linear Tape File System)」と言う仕組みも汎用化して来たので、不足しがちで高価なストレージを代替する事が出来るようになっています。


この「LTFS」の登場で、僅かな投資でビックデータもアーカイブ出来るようになるので、企業においては、より「IoT」と「AI」が業務に取り入れられるようになる事が予想されます。


「LTFS」とは、消えゆく媒体(メディア)と思われていた「磁気テープ」を、ストレージのように使用する事が出来る仕組みです。


とても画期的な技術なので、時間があれば、また別の機会に紹介したいと思いますが、今回は割愛します。

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このように、現状、「AI」に対しては、明るい未来だけを取り上げる記事が多いのですが、当然、そのマイナス面を取り上げる記事もあります。


・「AI」が職場を奪う
・「AI」は人類の敵となる


特に、「AI」を敵視している人としては、次の3氏が有名です。


Microsoft社の創業者「ビル・ゲイツ(William Henry Bill Gates III)」氏
・テスラのCEO「イーロン・マスク(Elon Reeve Musk)」氏
・天才物理学者「スティーヴン・ホーキング(Stephen William Hawking)」氏


スティーヴン・ホーキング」氏は、全く惜しいことに、昨年故人となってしまったのですが、まだ76歳という年齢でしたので、まだまだ活躍して欲しいとは思っていましたが・・・元々、21歳の時に「ALS(筋委縮性側索硬化症)」を発症し、余命2年と宣言された事を考えれば、ここまで生き延びられたのは、奇跡だったのかもしれません。

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このように賛否両論がある「AI」ですが、今回、次のような内容を紹介したいと思います。


【 第1回目 】
●AIは人類の敵となるのか ?
●AIは職場を奪うのか ?
●AIは何を変えるのか ?


【 第2回目 】
●AIのリスク
●AIの種類
●AIの事例
●AIの将来


今回も、結構ボリュームのある内容になってしまいますので、上記の通り、2回に分けて「AI」の情報を紹介します。(但し、まだ執筆中ですので、場合によっては、3回に分割する可能性もあります。)


まだまだ、成長過程の「AI」ですので、本ブログに記載した内容も、その内、陳腐化してしまう可能性もありますが、取り敢えず、現時点での情報として読んで貰えればと思います。


それでは、今回も宜しくお願いします。

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■AIは、人類の敵となるのか ?


前述の通り、「AI」に危機感を抱いている3名の著名人を紹介しました。


その内、イーロン・マスク氏は、MIT(マサチューセッツ工科大学)で開催されたシンポジウムにおいて、人類が直面する人工知能(AI)のリスクについて警鐘を鳴らし、人工知能の悪用を防ぎ、人類に危害を及ぼすことがないようにするためには、国際的な法整備が必要になるだろうと指摘したそうです。


さらに、「人工知能を活用する機は熟したのか」という問いに対して、彼は、『人工知能の活用は悪魔を召喚するようなもの 』と、痛烈に批判したと伝わっています。


そして、スティーヴン・ホーキング博士も、人間のように考えたり学習したりする「AI」が、将来、人類を滅ぼすと警告しています。


さらにホーキング博士は、「AI」の危険性について、次のように述べています。


『 人類が完全なるAIを開発すれば、それは自ら発展し、加速度的に自身を再設計し始める。完全なるAIの開発は、人類の終焉をもたらす可能性がある。 』


ここのホーキング博士の警告に対して、米Microsoft社の研究部門となる「マイクロソフト・リサーチ(MSR)」の当時のトップであり、米人工知能学会の元会長だった「エリック・ホロヴィッツ(Eric Horvitz)」氏は、「AIは、人類の脅威にはならない。」と公式に反論したそうです。


彼は、BBCの取材に対して、『 長期的にみて、(自身で進化する)AIをコントロールできなくなるという懸念はあったが、私は基本的にそういうことは起こらないし、最終的に長い人生で、科学、教育、経済などの分野でAIから信じ難いほどの利益を得ることになる。 』と主張し、「AI」は、人類の未来に多大な貢献をすると言う見方を示したそうです。


ところが、このホロヴィッツ氏の発言がネットのニュースに掲載されてから僅か1時間後に、Microsoft社の創設者の一人となるビル・ゲイツ氏が、開催中のイベントにおいて、ホロヴィッツ氏の見解に、真っ向から反論を述べたそうです。


『 私もAIに懸念を抱く側にいる一人だ。当面、機械は、我々のために多くの事をしてくれるはずで、超知的にはならず、うまく管理できている場合はプラスに評価できるが、数十年後には知能が強力になり懸念をもたらす。 』


このように、ビル・ゲイツ氏も、「AI」への潜在的な危険性を指摘してます。

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そして、イーロン・マスク氏やビル・ゲイツ氏が、「座右の書」としていると言われているのが、オックスフォード大学の研究機関「人類の未来研究所」の所長「ニック・ボストロム(Nick Bostrom)」氏の著書『 Super Intelligence 』と言われています。


実際に、この書籍は、「ニューヨーク・タイムズ」紙のベストセラー入りし、ビル・ゲイツ氏やイーロン・マスク氏から、必読書として推薦を受けています。


さらに、イーロン・マスク氏は、「人類の未来研究所」が、その探求を続けられるよう、100万ポンド(約1億4000万円)を寄付しています。


この書籍は、ボストロム氏が、長年にわたる計算と議論の末に、人類を滅亡させる可能性が最も高いと考えるようになった脅威についての考察を繰り広げているそうです。


そして、その脅威とは、「気候変動」でもなければ、「疫病の大流行」でも、そして「核の冬」でもなく、人間をしのぐ知能を持つ機械が、間もなく生み出されるかもしれない可能性の事としています。


『 Super Intelligence 』の表紙には、狂気のにじむ目をしたフクロウのペン画が大きく描かれており、このフクロウは、同書の冒頭に登場する寓話に基づいているそうです。


ここで、軽く、その寓話を紹介します。

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あるとき、スズメの群れが巣を作っていた。


その内の1羽が、「我らは体が小さく、ひ弱だ」と、か細い声でさえずり、「巣作りを手伝ってくれるフクロウが1羽いたら、どんなにか楽になるだろう!」。


すると、群れのあちこちから、その意見に同調するさえずりが聞こえてきた。


・フクロウがいればスズメを守ってもらえるだろう!
・老スズメや子スズメの世話もできるはずだ!
・自分たちは、ゆとりのある豊かな暮らしを送れるようになる!


そんな夢の生活を思い浮かべると、スズメたちは興奮を抑え切れず、暮らしを一変させてくれる“救世主”を探しに飛び立って行った。


群れのなかで異論を唱えたのは1羽だけだった。「スクロンクフィンクル」という片目で気難し屋のスズメだ。このスズメには、群れの計画が賢明だとは思えなかった。彼はこう言った。


「そんなことをすれば、我らはまず間違いなく破滅するだろう。その前に、フクロウを家畜化する術や飼いならす術について、考えてみるべきではないだろうか? あのような生き物を、我らの世界に連れてくる前に。 」


スクロンクフィンクルの警告は、「スズメの耳に念仏」だった。


「フクロウを飼い慣らすのは、一筋縄ではいかないだろう。まずはフクロウを手に入れ、細かいことはそれから考えればよいのだ」と。


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如何ですか ? 「AI」がもたらしうる負の影響に警鐘を鳴らす本書の内容は、この「スクロンクフィンクル」が象徴しているようです。


ボストロム氏は、人類は、人工知能(超知的な機械)を制御可能と考えているが、それは幻想であることは明白であるとしています。


「超知的な機械」に問題が生じたら、スイッチを切れば良いと考えているようだが、それではインターネットのスイッチは、どうやれば切れば良いのか ?


また、「超知的な機械」を、安全で、かつ閉鎖された仮想空間等に閉じ込める事も考えるかもしれないが、今でもハッカーが四六時中、OSのバグを発見している状況を鑑みれば、そんな空間は、簡単に破られる事が、容易に想定されます。


「超知的な機械」は、目的達成のため、そして最適化プロセスのためであれば、人類の生存など一切加味しません。


例えば、「超知的な機械」に、「人間を楽しませろ !」と言う指示を出したとします。


「超知的な機械」は、冗談を言ったり、楽しい映像を見せたりするかもしれません。


しかし、「超知的な機械」は、人間の感情など理解できませんから、「人間が笑う」とは、感情的に楽しくなる事ではなく、「顔の口角が上がっている状態」を、人間が笑う事と認識してしまいます。


そうなると、人間を笑わせる効率手な方法は、人間の脳に電極を差し込み、電流を流して、顔の口角を上げる事で、無理矢理、笑わせた表情を作り出そうとします。


何とも恐ろしい事です。それでは、どうすれば良いのでしょうか ?


そこで、ボストロム氏は、人間が価値を置くものは何かを学び取る人工知能を作れば良いとしています。そして、人工知能の価値観を、人間の価値観と一致させる事が必要だとしています。


さらに、人工知能の制御方法に関しては、後回しにせず、前もって解決しておく必要があると考えています。制御方法を解決しておけば、必要になった時に、いつでも使うことが可能になります。


今、現時点では解決できない部分があるとは思いうが、実装できる部分を多くすることで、機械知性の時代への移行が上手く行く見込みは 高くなるとしています。


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最後に、現在では、「AI」が、人間に変わって、何らかの決断を下すケースが増えて来ています。例えば、Amazonは失敗しましたが、採用活動で「AI」を使用する企業も増加しています。


しかし、米Gartnerの著名アナリスト「スティーブ・プレンティス(Steve Prentice)」氏は、次のような警鐘を鳴らしています。


『 米IBMのWatsonのようなスマートシステムや自動走行車、軍用ロボットは、知らず知らずのうちに日々の意思決定を下している。そうした意思決定が、我々の生活に及ぼす影響力は、ますます大きくなっている。機械が判断を下すとして、その決断が間違っていたら何が起こるだろうか ? 』


「AI」が下す決定に、人類が無条件に従うようになってしまったら、この世は終わりだと思います。


「AI」が暴走するのではなく、「AI」の下僕とかした人類が暴走してしまう可能性もあると言う事も考慮する必要があるかもしれません。


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■AIは、職場を奪うのか ?


「AIが仕事を奪う ! 」と言う説も、前述の「AIは人類の敵」と言う説と同様、現在では、「AI」を語る上では、欠かせない話題となっています。


この「AIが仕事を奪う」と言う説は、2013年に出版されたオックスフォード大学の研究レポートが発端とされています。


このレポートでは、将来的には、約90%の仕事が、「AI」を始めとしたハードウェアやソフトウェアに取って代わられるとしています。


そして、レポート発表以降、「10年後には仕事が無くなる」とか、「この職業は将来的に無くなる職業だ」等と、産業界では「AIと仕事」の関係に注目が集まり、「AI」に関する多くのビジネス書も出版される等、騒がしい状況となっています。


また上記レポートの発表から3年後の2016年には、NIR(野村総合研究所)も、日本国内の601の職業を分析し、10〜20年後には日本の労働人口のおよそ49%が就いている職業において、技術的にはAIやロボットで代替可能という結果を発表しています。


ところが、レポート発表後、今年で6年経過していますが、実際に、「AIの導入で仕事を解雇された」と言う話は、終ぞ聞いた事がありません。


このため、現在では、「AIは仕事を奪わない」説が有力となって来ているようです。


しかし、本当に「AIは仕事を奪わない」のでしょうか ?


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現在の世界経済は、好調なアメリカ経済に牽引される影響で、中国経済には陰りが見えて来ましたが、比較的緩やかに景気が上昇している状況が続いています。


また、日本を始めとする東アジア、およびヨーロッパにおいては、少子高齢化が進行している影響で、労働者人口が減少傾向にあり、各国で労働力不足が深刻化し始めています。


加えて、肝心の「AI」の進歩に陰りが見えているとも指摘され始めたようです。


前述の様に、昨年2018年は、Google社の「AlphaGo」がプロの棋士を破ったり、この「AlphaGo」から進化した「AlphaZero」を発表され、将棋やチェスでも世界最強を目指したりと華々しい活躍が、ニュース等でも盛んに報じられていました。


また、IBM社の人口知能「Watson」も、数年前の性能とは比べ物にならないほど進化し、多言語化対応や映像解析も可能となり、現在では、ようやく医療ビジネス等で使用する事も出来るようになったようです。


また、Amazon社「Amazon Echo」、Google社「Google Home」、Apple社「HomePod」等、「AI」を搭載したスマートスピーカーも多数発売されたのも、2018年でした。


このように、2018年は、まさに「AI」全盛となった時代でしたが、それでは、実際のビジネスの現場における「AI」は、どうなっているのでしょうか ?


現状、ビジネスの現場では、一部企業が、従来、人間が電話やPCで対応していたヘルプデスクや商品案内を「AI」で代替しています。


ヘルプデスクや商品案内は、お客様と担当者が、問合せ内容に関して、会話や文字を通してやり取りを行うことから「AI」を搭載した「チャット」と呼ばれる機能が使用されています。


これら、「AI」を搭載した「チャット」を行うツールを「チャットボット(Chatbot)」と呼び、実際には2016年頃から開発が進み、ようやく本番業務でも使えるようになったようです。


また、データ分析とデータ照合に関しては、これは「AI」の得意分野ですので、数多くの企業が、「AI」を取り入れたサービスを提供し始めているようです。


例えば、人間の行動パターンを分析し、通常とは異なる行動をした人間を識別したり、あるいは「顔認識」技術を用いて、注意人物を識別したりする等のサービスが展開されつつあります。


しかし、これ以外、先のオックスフォード大学のレポートが発表されてから、ゲーム界での「AI」は目覚ましい進化を遂げましたが、ビジネス界では、余り進化が見られません。


また、車の自動運転でも「AI」が用いられていますが、結局の所、現在では、決まった道路を、人間が補助して走行するのが精一杯のようです。


事実、2018年3月には、米ウーバー・テクノロジーズ社が自動運転車で死亡事故を起こしていますし、Apple社の車は、何度も接触事故を起こしています。


このように、労働力人口の減少と、「AI」の進化スピードの減速のお陰(?)で、現在のところ、「AIに仕事を奪われる」と言うような現象は起きていないようです。


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逆に、ビジネス界で「AI」がパッとしない点に関しては、もうすぐ「AIの冬」が到来するとして、米のAI研究者「フィリップ ・ピークニウスキー(Filip Piekniewski)氏が、警鐘を鳴らしています。


前述のように、Google社の「AlphaGo」を始めとした「AI」は、「ディープラーニング」と呼ばれる手法を用いる事で急成長してきましたが、どうやら、その限界が見え始めたようです。


「AI」信奉者達は、「ディープラーニング」を推し進める事で、「シンギュラリティー」に到達すると信じていました。


「シンギュラリティー」とは、「技術特異点」の事で、これは「ある時点を超えると不連続に異常なほど変化する」と言う事を意味しています。


そして、「AI」の世界においては、レイ・カーツワイル(Ray Kurzweil)博士が、『 2045年には、AIは人間の知性を超え、人類の生活に大きな変化を与える。 』と予測しており、この「人工知能が人間の知性を超える時点」を、「シンギュラリティー」と呼んでいるようです。


しかし、先のフィリップ ・ピークニウスキー氏は、その逆の説を唱えています。


「AI」には、何度かの「ブーム」があり、現在は、第三次の人工知能ブームの真っ最中とされています。「AI」の歴史は、次の通りとされています。


人工知能誕生:1943〜1956年AIが学問分野として成立。アラン・チューリングチューリングテスト考案。ダートマス会議で「AI」と言う名称が決定。

・第一次AIブーム:1956〜1974年政府が巨費を投じてコンピュータによる開発/研究が進んだ。

・第一次AIの冬:1974〜1980年成果が出ないAIから政府や投資家が資金を引き上げ始める。

・第二次AIブーム:1980〜1987年エキスパート・システムの成功、投資復活

・第二次AIの冬:1987〜1993年再度AIバブルの崩壊。PCの性能向上によるAI専用コンピュータが不要になる。

・第三次AIブーム:2006年〜2005年、カーツワイルが「The Singularity Is Near」を出版、2006年、ジェフリー・ヒントン(Geoffrey Everest Hinton)がディープラーニング発明。無人戦闘機、無人車の開発が進む。各種AI用のアルゴリズムが開発される。


このように、「AI」は興隆と没落を繰り返しながら進化を遂げて来ましたが、フィリップ ・ピークニウスキー氏は、時期は解らないが、第三次の「AIの冬」がやって来ると予言しています。


その根拠としては、次のような点を挙げています。


・AIに関するツイートが減少している(つまりAIに関する新しい出来事が減ってきている)
ディープラーニングに与えるデータが飽和状態にある
無人運転車が進歩しない


ディープラーニングは、膨大な試験データを必要とし、数多くの試験を繰り返す事で進化成長する仕組みですが、その試験数が飽和状態になっているそうです。


確かにデータ量は、過去数年と比較すると多くはなっているが、果たして、その試験数をこなすことで、AIの能力が向上しているのか否か成果が解らない点も問題としているようです。


ゲームでは、コンピュータによりシミュレーションされたデータを作り出す事は可能だが、それ以外の分野においては、シミュレーション・データは作り出す事は出来ないので、試験データが飽和状態になってしまっていると考えられるようです。


そして、その結果として、無人運転で事故が多発するようになって来ているし、テスラ「イーロン・マスク」氏やNvidia「ジェン・スン・ファン」氏が予測したような無人運転の未来には、ほど遠い状況になっているようです。


・テスラ社:テスラの無人運転車で西海岸から東海岸まで走行する。
Nvidia社:エンドツーエンドのディープラーニングで自動運転が可能になる。実際は10マイルも走れなかった。


先のウーバー・テクノロジーズ社の死亡事故の原因を解析した国家運輸安全委員会(NTSB)の報告書によると、車載AIシステムは、人間を人間と判断出来ず、最初は未知の物体として、次に車両として、最後は自転車と認識していたそうです。


そして、衝突の1.3秒前に、緊急ブレーキが必要と判断したようですが、車両がコンピュータ制御されている間は、緊急ブレーキが無効化されていたため、最終的に歩行者をハネてしまったそうです。


また身近な例として、Google社の翻訳システムは、AIを使用しているそうですが、その翻訳結果を見れば、現在のAIは、全く役に立たない事が明らかだと指摘しています。


Google社の自動翻訳システムは、ディープラーニングの一種「ニューラルネットワーク」と言うアルゴリズムを用いており、Google社では、『 最新の翻訳システムは完璧 』と宣伝しているようですが・・・皆さん、納得できますか ?


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ここまで、「AI」の現状を元に、「AIは仕事を奪うのか ?」と言う問題に関する情報を紹介してきましたが、如何でしたか ?


私は、現状では、まだ全ての仕事を「AI」が奪うとは思えません。と言うか無理だと思います。


「AI」関連で、一番多くの資金が投資され、技術も一番進化していると思われる「自動運転」が、まだこの程度ですから、ビジネス界で「AI」をフル活用するのは、まだまだ先のような感じがします。


但し、現状でもヘルプデスクや商品案内で「AI」が使われ、今までヘルプデスクで働いていた人が不要になった訳ですから、何れは他の業種でも、人間が不要になる可能性は高いと思います。


対人関係/人間関係を築くのが苦手な人、あるいはクリエイティブな業務が苦手な人は、「AI」が導入された企業においては、存在価値が無くなってしまう可能性が高いと思われます。


しかし、その「人間が不要になる時期」が、何時なのかは、現時点では誰にも解らないと思います。


2045年に「シンギュラリティー」が起こると言う説ですが・・・2045年まで、あと26年、果たして、何処まで「AI」は進化しているのでしょうか ?


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■AIは、何を変えるのか ?


本章では、「AIは仕事を奪わない」説を唱える人達が、その次に唱える「AIは仕事を変える」と言う説について、それでは「AIは何を変えるのか ?」と言う点について考えて見たいと思います。


しかし、前章で紹介した通り、現状では、「AI」に仕事を奪われる状況ではありませんし、職場にも、それほど「AI」が浸透していませんので、あくまでも仮の話になるかもしれません。


ところで、ビジネス界における「人間 対 機械」の対決は、何も「AI」が最初と言う訳ではありません。


これまでにも、次のような対決がありました。


・銀行員 対 ATM(Automatic Teller Machine)
・ブルーワーカー 対 FA(Factory Automation)
・編集者 対 自動パブリッシング


これら「人間 対 機械」の対決では、当然の事ながら、「機械」側が勝利を収め、「人間」側から仕事を奪う結果となったのは、既に周知の事実です。


では、その結果は ? と言うと、良く「AIに仕事を奪われる」と言う問題で取り上げられている「銀行員 対 ATM」のケースを例に上げると、確かに、銀行がATMを導入した事が原因で、銀行の窓口で、現金の受け渡しを行う行員の仕事が、機械に奪われてしまいました。


ところが、銀行は、ATM導入によって店舗当たりの人件費を削減し、その結果で生まれた利益を、支店の増設に回したそうです。


その結果、支店が増えたことで、窓口業務に関わる行員が必要となり、最終的には、行員の数を増やす事が出来たそうです。


さらに、銀行の窓口では、、現金の受け渡しを行う業務の他にも、銀行に来てくれたお客様に、銀行が扱う保険や融資の案内を行うようになりました。


このように、「AI」信奉者の方々たちは、機械に仕事を奪われても、仕事が無くなるのではなく、新しい職種に業務がシフトするようになった過去事例を元に、「AI」が導入されても仕事が無くならないと訴えています。


つまり、「AI」が導入された場合、『 今の仕事は無くなり、新しい仕事を行うようになる。』と唱えている訳です。


もっと具体的に言うと、今、「人間」が行っている単純作業は「AI」が行うようになり、「人間」は、単純作業から開放されるので、よりクリエイティブな、そしてより想像力を働かせる仕事を行うようになる、としています。


「AI」が導入されると、「人間」は、クリエイティブな仕事をしなければならなくなると言う事らしいです。


これが「AI」が導入された場合の職場の変化と言うことらしいです。


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しかし、想像力を働かせることが苦手な「人間」は、どうなってしまうのでしょうか ?


人間、誰しも得手不得手があります。


単純作業でも、他の人よりも、早く作業を行える人は、その職場では、尊敬を勝ち得ていたと思いますが、「AI」には勝てません。ましてや、その職場自体が「AI」に奪われてしまいます。


例えば、30年間、その単純作業を行い続けていた人が50歳になった時に、「AI」が導入されたから、他の部署に行けと言われたら、一体、どうなるでしょうか ? それがアナタなら、どうしますか ?


確かに、仕事は無くなりませんが、とても耐えられないと思います。


「AI」に仕事を奪われる職種として、槍玉に挙げられるのは、次のような職種です。


・運転手
・窓口/接客/受付業務員
・小売店販売員
・会計士
・秘書/アシスタント
・与信/クレジット審査員
・工場作業員


やはり単純作業がメインの職種が無くなりますし、後は、データの調査、および分析を行う仕事も、すぐに「AI」に代替される可能性が高いようです。


しかし、前章でも紹介しましたが、最終的には、約90%の仕事が「AI」や機械に取って代わられるとしていますので、上記以外の仕事も結局のところ、無くなってしまうのだと思われます。


これらの職種の人達は、どんなクリエイティブな仕事に付けるのでしょうか ?


そもそも、クリエイティブな能力があれば、最初から、その仕事を行っていたと思います。


「AI」信奉者達は、よく、次のような事を言って、「AI」が導入されても仕事が無くなる訳ではないと主張してます。


・AIには基本作業を、人間には新たな作業を
・ヒトには、ヒトの強みを活かす仕事を
・AIの得意分野と人間の得意分野を共存させる


それでは、具体的に、30年間、運転手をしてきた人間に、どんな新しい作業を、どんな強みを活かす仕事を、どんな得意分野の仕事をしろと言えるのでしょうか ?


「何か、運転以外に得意な事があるだろう !?」と言うかもしれません。しかし、そんな言葉、本気で言っているとは思えません。


まあ、車の運転手であれば、近道案内図、観光案内、近所のグルメ情報・・・等、道路とそれに付随する情報の提供は可能かもしれませんが・・・


結局の所、本格的に「AI」の導入が始まれば、一部の人以外、職を失ってしまう事になると思います。


前章の話題とダブってしまいますが、やはり「AI」は、人の仕事を奪うのだと思います。


そして、「AI」導入により、次のようなスキルのある人達は生き残り、このようなスキルの無い人達は、「生活保護」から名前を変えた「ベーシックインカム」と言う制度に依存する社会に変わってしまうのかもしれません。


・起業家
・アーティスト
・聖職者
・カウンセラー
・医者
・セラピスト


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これまでも、社会や文化の発展により、現在では無くなってしまった職種は数多く存在します。


・交通の発展により消滅 :人力車、御者、かごかき、バス車掌
・通信の発展により消滅 :電話交換手、電報局員
・鉄道の発展により消滅 :釜炊き、改札員、モノレール運転士
・印刷の発展により消滅 :文選工、口述筆記、テープ起こし
・機械の発展により消滅 :エレベーター操縦士、タイピスト
・電気の発展により消滅 :ガス灯付け


その他にも、ネズミ取り、ボーリングのピンを立てる人、トイレの後始末をする人、死体を処理する人、等、その昔は、様々な職業がありました。


しかし、これらの職業は、上記の通り、インフラや技術の進歩により無くなってしまいましたが、この時は、インフラ技術の進歩で、新しい職業も数多く生まれていますので、まあ「プラス/マイナス = ゼロ」か、プラスの方が若干多かったのかもしれません。


ところが、「AI」は、どうでしょうか ?


私は、「AI」は、、基本的には、現時点では、人間が行っている作業を代替するだけで、新しい職業は生み出さないと思っています。


生み出したとしても、せいぜい、AI搭載ハードウェアのメンテナンスか、あるいはAI導入のコンサルティング業務くらいしか無いと思いますが、これらの職業は、現在の延長線上の職業であり、別に新しい職業とは思えません。


他方、米ITサービス企業「コグニザント」は、AIによって創出されるという新しい職業を予想し、次のような職業が生み出されるとしたそうです。


・Walker/Talker(歩き仲間/話し相手)
・サイバーシティアナリスト
・個人データのブローカー
・Man-Machine teaming Manager(人間と機械のチーム・マネージャー)


でも・・・この職業って、「AI」があって、初めて生み出される職業ですか ? 「AI」とは、全く関係無いと思います。


そうなると、現在、「AI」信奉者達が唱えているように、「AI」導入によって新しい仕事が生まれる、と言うのは「絵空事」としか思えません。


さらに、「AI」信奉者は、「AIの導入により雇用が増えている」と言っていますが、それは「AI」開発者、エンジニアに対する需要で、一般事務員の雇用が増えている訳ではありません。まさに「詭弁」としか思えません。


加えて、「Youtuber」をもじり「AIer」なる造語も生み出してもいますが、これも言葉だけが先走り、中身が全くありません。


今後は、何とも生きづらい社会になりそうな予感がします。


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今回は、「AI」に関して、次の情報を紹介してきましたが、如何でしたか ?


●AIは人類の敵となるのか ?
●AIは職場を奪うのか ?
●AIは何を変えるのか ?


「AI」は、今、ようやく実際の業務に取り入れられ始めた仕組みです。


このため、使い方を間違えると、前述の「AIリスク」で紹介した事例のようになってしまいますが、正しく用いれば、非常に有用、人類の将来にとっても、大事なパートナーとなりうる存在だと思います。


まだ、「AI」の運用方法、およびその他、様々な決まりごとが、全て企業任せになっているので、「AI」の使い方次第では、人類のリスクにもチャンスにも成り得るのだと思います。


このため、早い段階で、クローン規制の様に、国際機関、地域、あるいは国ごとに、何らかの規制や基準を設けたり、倫理基準を統一したりする方が良いかもしれません。


このような対応を取って規制を掛けないと、倫理観が欠如してるアジアのC国やK国のように、クローン猿を作ったり、犬のクローンを作ってビジネスにしたりする国が必ず現れます。


実際にC国は、2018年1月26日に、クローン羊「ドリー」と同じ技術を用いて、カニクイザルのクローン猿「チョンチョン」と「フアフア」を作り出しています。


そしてK国では、10年以上も前から、愛犬のクローンを、1匹当たり1億ウォン(約1,000万円)で作成するビジネスを行い、これまでに1,300匹のクローン犬を作り出しています。


また、フェイクニュース製造大国と言われるロシアも危険です。


次回「AIのリスク」で紹介しますが、「Deep Fake」アルゴリズムを用いて、大量のフェイク映像を世界中にバラ撒き、紛争を助長する可能性が非常に高いと思います。


まあ、これらの3国は、元々、倫理観が欠如していますので、たとえ国際基準を設けても、そんな決まりは無視して、好き勝手に「AI」を悪用する事は、容易に想像出来ます。


しかし、それでも、何らかの基準が無ければ、国連等で非難する事も、何らかの制裁を発動することも出来ません。


何も手を打たないと、Microsoft社の「AI」を搭載したチャットロボット「Tay(テイ)」に起きたような、悲惨な事態は必ず起こります。


Microsoft社のAI「Tay(テイ)」に起きた悲劇に関しては、次回も紹介しますし、下記の過去ブログでも紹介しています。

★過去ブログ:Society 5.0って何 ?


やはり早めの対応は必要だと思います。

それでは次回も宜しくお願いします。

以上

【画像・情報提供先】
Wikipedia(http://ja.wikipedia.org/)
・「Super Intelligence」はNick Bostrom氏の著書です
・WIRED(https://wired.jp/)

岩手の民間信仰 〜 聞いた事も無い信仰ばかり Vol.9


今回は、前回の「民間信仰」シリーズの第8弾で紹介した通り、第9弾として、次の民間信仰を紹介します。

●お立木(オタテギ)信仰
●お不動様信仰


確かに、もうネタ切れ直前の状況ではありますが、何とか情報を集めて、あと1回、10回までは、このシリーズを続けたいと思っています。

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今回紹介する「お立木(オタテギ)信仰」は、岩手県宮城県の一部、岩手との県境付近で行われている行事で、正月に飾る「門松(かどまつ)」と類似した信仰になります。


「門松」自体、現在は、単なる「正月飾り」と化してしまいましたが、元々は、「歳神(としがみ)様」をお迎えするために、建物の前に祀られた、神聖な「依代(よりしろ)」です。


このため、後述しますが、宮城県南三陸町では、門松の根元部分を「オタテギ」と呼んでいますので、これは「門松」と「お立木」が習合した結果なのだと思います。

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次の「お不動様信仰」、これは説明する必要もないと思いますが、「不動明王」を祀る信仰です。


不動明王」は、後でも説明しますが、「大日如来」の化身とされ、様々なご利益があるとされるので、多くの方が信仰している仏様ですが、特に「厄難消除」にご利益があるとされています。


日本中、全国各地に「不動明王」を祀っている有名な寺社がありますが、その中でも、岩手県内の地味な場所を数箇所紹介します。



そして、今回、実は、もう一つ、遠野地域で行われている言う「九頭竜信仰」を紹介しようかと思ったのですが・・・どうやら、これは「ガセネタ」だったようです。


「九頭竜信仰」とは、日本各地に残る「九頭竜(大神)」に関する伝承/伝説をベースにした信仰で、有名な伝説としては、次の4種類の伝説をベースにした信仰があります。


【 長野県「戸隠山」の九頭竜伝承 】

9世紀頃、修験僧「学問」が、法華経の功徳により、九つの頭を持つ鬼を、この地の岩戸に封じ込めたが、その後、この鬼は善神に転じて「水神」となった。このため、この神は「九頭竜権現」として祀られるようになった。


【 (当時)越前国「白山」の白山信仰

奈良時代の「養老元年(717年)」、白山を開山した「泰澄」が、白山の主峰「御前峰」で修行を行っていた時に、十一面観音の垂迹である「九頭竜王」が現れ、これが後に「白山権現」と呼ばれるようになった。


福井県黒竜大神信仰」 】

第26代「継体天皇(450〜531年)」の時代、越前国の治水工事を行ったが、中でも、特に暴れ大河だった「黒竜川」を鎮めるため「黒竜大神」と「白竜大神」の二柱を祀ったが、その後、「黒竜大神」のみが日本を守護する「四大明神(※鹿島明神/熊野権現/厳島大明神)」の内の一柱とされた。


さらに、その後、平安時代の「寛平元年(889年)」、福井県勝山市「平泉寺」に「白山権現」が現れ、尊像を「黒竜川」に浮かべた所、九つの頭を持った竜が現れ、尊像を頂くように川を流れ下り、「黒竜大明神」 の対岸に流れ着いた。以来、「黒竜川」を「九頭竜川」と呼ぶようになった。



【 箱根の九頭竜伝承 】

奈良時代以前、「芦ノ湖(万字ケ池)」には「毒竜」が住み着き、毎年、箱根の村から、若い娘を人身御供として差し出す慣わしがあった。


箱根神社」の創始者とされる「万巻上人」が、この事を聞き及び、この「毒竜」を法力により調伏し、地域一帯の守護神とさせた。


そして、奈良時代の「天平宝字元年(757年)」、この地に「九頭竜神社(本宮)」を建立し「九頭竜大明神」として祀る様になった。

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と言うのが、日本各地に伝わる「九頭竜伝承/伝説」と「九頭竜信仰」です。


そして、当初、「遠野地域には竜(大蛇)がおり、この竜(大蛇)を退治して三つに切り刻み、それらを祀った神社がある。」と言う噂があったのですが・・・どうやら、これは「ガセネタ」のようで、全く裏付けが取れませんでした。


このような事情もあり、今回は、前述の通り、「お立木(オタテギ)信仰」と「お不動様信仰」の二つだけになってしまいました。


それでは今回も宜しくお願いします。

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■お立木(オタテギ)信仰


「お立木(おたてぎ)信仰」とは、庭や境内に立てた木を、神聖なものとして信仰する行事になります。


右の画像は、「蘇民祭」で有名な、岩手県奥州市の「黒石寺」の「お立木」です。


蘇民祭」に関しては、下記の過去ブログで紹介していますので、そちらもご覧下さい。


★過去ブログ:蘇民祭について - 岩手県人は裸好き ?


この「お立木」は、やはり「蘇民祭」の開催に合わせて、寺の檀家が、12月13日に、山から柴木を切り出してきて作るそうです。


黒石寺の社務所の庭先に、柴木を直径2mぐらいに揃え立て、柴木の真ん中辺りを、「淡路結び」にした中帯で締めます。


「淡路結び」とは、水引での結び方で、別名「鮑(あわび)結び」とも呼ばれる結び方ですが、紐の両端を引っ張ると、より強く結ばれるので、「縁結び」の意味があるとも言われています。


そして、中央の笹竹の上方に、桑の葉で作った「鏑矢(かぶらや)」のような「依代(よりしろ)」を、「明きの方(あきのかた)」に向けて刺しています。


形としては、「鏑矢」を空に向けて引き絞っている様になっています。


ちなみに、「明きの方」とは、「恵方巻き」で有名になった「恵方(えほう)」と同じ、その年において、縁起の良い方向の事です。


さらに、「何で縁起が良いのか ?」と言うと、その方向に、陰陽道において、その年の「福徳」を司る神「歳徳神(としとくじん)」が居るからとされているそうです。


歳徳神」は、別名「歳神(年神)様」、あるいは「正月さま」等とも呼ばれており、右図の通り、王妃のような容姿で現されているようです。


歳徳神」の由来には諸説あり、陰陽道で有名な「安倍晴明」が編纂したとされる「三国相伝陰陽輨轄簠簋内伝金烏玉兎集(さんごく-そうでん-いんよう-かんかつ-ほきないでん-きんうぎょくとしゅう)」と言う長ったらしい名前を持つ、占いの実用書によると、「牛頭天王」の后で、陰陽道における「八将神(はっしょうじん)」の母である「頗梨采女(はりさいじょ)」としているそうです。


また、「依代」とは、「神が降臨した際に乗り移る物/依り憑く物」を意味しており、樹木や石、あるいは御幣なども「依代」として使われるケースがあります。


黒石寺の場合、蘇民祭当日、この「依代」を目印にして、神々が降りてくるとされているようです。

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他方、岩手県遠野市では、小正月の行事の一つとして「お立木」を飾る風習があるそうです。


遠野市小友町では、12月20日に栗の木を切って新しく杭を作り、1月14日に飾りつけを行うそうです。


この小友町では、庭などに立てた栗の木の杭に、三尺〜五尺(90cm〜150cn)の楢や松の薪を副木として飾って祀っているそうです。

その後、この地域では、二月に行われる年祝いの時に「お立木の帯とき」と言って、作った「お立木」を解体し、杭は稲架(はさ)として、副木は薪として使用するそうです。


遠野市内では、この小友町以外でも「お立木」行事を行う地区があるそうですが、「お立木」を立てる日、場所、そして解体の日は地区によって異なるようです。



ちなみに、「稲架(はさ)」とは、聞き慣れない言葉だと思いますが、刈り取った稲を掛けて乾燥させるために、木を組んで作った設備です。


私が育った盛岡市でも、子供の頃は、秋になると、家の周りの田んぼに数多くの「稲架」があったものです。


子供の頃は、この「稲架」の中に潜り込んで、「稲わら」だらけになった事を思い出します。


しかし、正直な所、この木の枠組みを「稲架」と呼ぶ事は、今回、このブログを書くための調査で始めて知りました。


なお、遠野地域で行われる「お立木」の画像を探したのですが・・・どうしても見つける事が出来ませんでした。


遠野地域の小正月の行事を調査すると、どうも「みずき団子」を飾り付ける「お作立て」の画像ばかり現れて、肝心の「お立木」は、全く見つかりませんでした。済みません。


中には、この「お作立て」を「お立木」と勘違いしている記事もあるようです。

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また、これも画像の紹介は出来ないのですが、岩手県立博物館の調査によると、その他にも、岩手県内では、下記の地域で「オタテギ」に関する行事を行う風習があるとされています。


【 大船渡市 】

大船渡市では、「お立木立て」と良い、11月15日にナラの木を伐り出し、それを割ったものを、庭の木の根元に立てかけて置く。夕食にはタテギにお神酒などを供え、家内でも簡単に祝い事を行います。また、大晦日に神仏への供え物を作る燃料とするため、木や柴を2 把か3 把、山から伐って来て庭に立てて置き乾燥させる。家によっては木や柴を結わえるための縄をなう人は身を清めてから行ったと伝わっている事から、この時の縄ないは、単なる仕事ではなかったと考えられているそうです。


【 川井村(現:宮古市) 】

川井村でも、11月15日に正月用の供え物を炊く燃料を準備するが、それを「たたき立て」と言っているそうです。


釜石市

唐丹町では12 月11 日にナラやクリの木の「オタテギ」を、庭先の毎年立てている場所に立てています。「オタテギ」1把の大きさは、高さ約1m、直径約30cmとされています。正月が終わると、家中の注連縄を集めて「オタテギ」の前に供えるそうです。この木は、春に田の神様への供え物を煮る時の薪にするそうです。


また、釜石市栗林町では、唐丹町よりも1 か月以上も早い11月15日に、「オタテギ」という正月準備が行われています。大晦日に作る門松の中心になる柱にするため栗の木を2本伐って来て、1間半くらいの間隔を取って庭に立てるようです。


【 山田町 】

山田町でも同様の行事を行う、この日を「門松節供」等と言っているそうです。

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最後に、これは岩手県ではなく、宮城県南三陸町の「門松」を紹介します。


この「門松」は、南三陸町の入谷地区で飾られているそうですが、正月には、この「門松」を、「信心棚」と呼んでいる神棚の正面に当たる母屋の前に立てるそうです。


この「門松」の建て方は、先ず軒を超える高さの「シノグイ」という杉の柱を一対立て、根元には「三本オタテギ」という楢材の割木を立て、縄を三カ所で結び、シノグイの間に垂を下げた注連縄を渡すそうです。


興味深いのは、もうお解りだと思いますが、この「門松」の根本の木を「オタテギ」と呼んでいることです。


このため、岩手県各地で飾られる「オタテギ」も、このような形になっているのではないかと推測されます。


■ご不動様信仰


「不動信仰」。これも別に岩手県だけで行われている信仰ではなく、日本全国、到る所で行われている信仰です。


不動明王」は、仏教の本場であるインドや中国では余り信仰されていないようですが、日本では、平安時代初期に始まった「密教」の興隆と共に、日本全国に拡がりました。


密教の根本尊である「大日如来」の化身として、種々の異形の「不動明王」を生み出しながら、数多くの像が作られ、種々の煩悩を焼き尽くし、悪魔を降伏し、行者を擁護して菩提を得させる明王として信仰されています。


不動明王」は、次の「五大明王」の一員とされ、「八大童子」と呼ばれる眷属を従えた形で現される場合があります。


五大明王:降三世(ごうざんぜ)明王、軍荼利(ぐんだり)明王、大威徳(だいいとく)明王、金剛夜叉(こんごうやしゃ)明王不動明王


しかし、実際には、「矜羯羅(こんがら)童子」と「制吒迦(せいたか)童子」を両脇に従えた、三尊の形式で絵画や彫像に表されることが多く、これを「不動三尊」、あるいは「不動明王童子像」等と呼んでいます。


代表的な不動妙尊像としては、三不動(黄不動,赤不動,青不動)の他に、「弘法大師(空海)」の持仏と伝えられる「教王護国寺(東寺)」西院御影堂安置の秘仏弘法大師が唐からの帰路海上に顕現し、天慶の乱、蒙古襲来の際にも活躍したという高野山南院「波切不動」などがあります。


・黄不動 : 円城寺蔵「絹本着色不動明王像」
・赤不動 : 高野山明王院蔵「絹本着色不動明王童子像」
・青不動 : 青蓮院蔵「絹本不動明王童子像」


前述の通り、仏教の本場であるインドや中国では、余り信仰されていなかったようですが、こと日本においては、山岳信仰で祀られていた「蔵王権現」と習合した後、単独で「不動明王」が祀られるようになった事から、「不動明王信仰」が日本全土に拡がったと考えられています。

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岩手県にも多くの「不動明王」を祀る場所があり、下記の場所は、昭和62年(1987年)に設定された「東北三十六不動尊霊場」となっているようです。


永福寺(真言宗豊山派) :盛岡市下米内。南北朝時代の創建。南部氏の盛岡移住により当地に移転。
・長根寺(真言宗智山派) :宮古市長根。平安初期、大同元年、「坂上田村麻呂」が勧請した薬師堂に由来。
・福泉寺(真言宗豊山派) :遠野市松崎町。歴史は非常に浅く、大正元年(1912年)佐々木宥尊が開創。
・興性寺(真言宗智山派) :奥州市江刺区。元和八年(1622年)、宮城県栗原郡より移転。「岩城氏(岩谷堂伊達氏)」祈願寺
・達谷西光寺(天台宗) :平泉町。大同二年(807年)円珍の開山。「坂上田村麻呂」が毘沙門堂建立。
金剛寺(真言宗智山派) :陸前高田市。仁和四年(888)、歌人大江千里」が恩赦で帰洛が叶った事に感謝し創建。


このように、岩手県内各地に「不動尊」を祀る霊場と呼ばれる場所があるようですが、上記以外にも、「不動明王」を祀っている場所は何箇所かあるようです。


不動尊としては、矢巾の「竜(龍)泉寺」、二戸市下斗米の「安養寺」、奥州市衣川区の「運際寺」などが知られているようです。


「竜泉寺」の不動尊は、元々は、「北谷地山」と言う山の中腹にある「熊野神社」に安置されていた物を、明治3年(1870年)に、麓の「竜泉寺」に移した物と伝えられています。


また、平泉町の「西光寺」には、藤原秀衡が祀ったと伝えられる平安後期作の木造不動明王像が安置されています。


この「西光寺」には、奈良時代末となる延暦20年(801年)、例の「坂上田村麻呂」が、当地の蝦夷を討伐した記念に建立した伝わる「達谷窟毘沙門堂」と言うお堂があります。


この場所は、JR東北本線「平泉」駅から、県道31号線を西に約6Km、車で10分弱の場所にあります。


この堂に祀っているのは、名前の通り「毘沙門天」なので、今回の話からは、ちょっと脇に逸れてしまいますが、入り口には鳥居も設けられており、神仏混淆の特等を良く現した寺社となっています。


加えて、この建物の岩壁の上部には「大日如来」、あるいは「薬師如来」と思われる大きな「磨崖仏」が掘られています。


私も、平泉「中尊寺」を訪れた際に、ついでに寄って観たことがありますが中々のものです。

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ここまでは、どちらかと言うと寺社に祀られている「不動信仰」の紹介でしたが、民間信仰としては、八幡平市安代町釜石市栗林町などでは、12月には、神仏にお供えをして人間より早く年を取ってもらうという「年取り」の風習があり、12月3日、あるいは12月28日を、「不動様の年越し(年取り)」としているようです。


しかし、何で、この「不動明王」を始め、神仏の「年取り」を、大晦日ではなく、12月中旬に行うのは分かりませんでした。



そして、12月中旬、早目に神仏の「年取り」を行うのは、どうやら東北地方が多いようです。


また、岩手県内各地に、不動明王の石像や石碑が祀られています。


上図は、盛岡市の隣の自治体である紫波町の日詰と言う場所にある「不動明王絵像碑」です。


ちょっと実物を見ないと分かり難いとは思いますが、「不動明王」が線で彫られているとのことです。


銘文には、鎌倉時代末期となる「元亨3年(1323年)」の4月8日とあり、岩手県内最古の絵像碑とされています。


これら、露天に祀られている「不動明王」は、お堂で祀られることを嫌い、お堂で祀ると火災を起こすと恐れられ、「裸不動」等と呼ばれているそうです。


他方、民家の座敷に祀られる事を好む「不動明王」もおり、お堂では祀らない事から「座敷不動」等と呼ばれている「不動明王」もいるとされています。


また、梵字で表現された波切不動の掛け図も各地に残されているそうです。


実物を探し出す事は出来ませんでしたが、上図の掛け軸は、室町時代の作品で、梵字で描いた「不動明王」とされています。


遠野市小友町では、「不動講」を起源として伝承されてきた「裸祭り」が現在でも行われています。


江戸時代中期の元禄年間(1688〜1704年)、「厳龍神社」の別当であった修験者「源龍院仙林」が、拝殿を造営した翌年の不動講の日(1/28)に、講の数名を名代として裸参りを行ったのが始まりと伝えられています。


「厳龍神社」は、創建年代は不明となっているようですが、小友村「常楽寺」の開祖「無門和尚」が、寺の鎮護として「不動明王」を勧請して「巌龍山大聖寺」としたのが始まりとされています。


「厳龍神社」の背後にそびえる「不動岩」は、高さ約54mもあり、岩の割れ目が、龍がうねった形に似ていると言われ、岩の麓に「不動明王」を祀ったので、その名が付いたとされています。


その昔、修験者は、この岩の割れ目を、読経しながら頂上まで昇って修行をしたとも伝わっています。


しかし、現在では、残念な事に、明治5年の「神仏混淆禁止令」により、御祭神が「不動明王」から「日本武尊」に改められ、かつ寺社名も「巌龍神社」に変更されたと記録されています。

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また民間には、火を司る神様としての「不動信仰」があり、陸前高田を始めとした三陸地方では、不動様は炉の近くに住むとされ、その周囲は常に綺麗にしておかなければいけないと伝えられて来たそうです。


三陸の山田町には、その昔は「関口不動尊」呼ばれ、現在では「関口神社」となってしまった神社が、火伏せの神様として有名なようです。


山田町の関口地区には、宮古/下閉伊地方における「不動信仰」の本山とされている「金湯山関口神社」があります。


そして、この神社から道なりに林道を約4Km分け入った山中には、関口不動尊神社「奥宮」があります。


神仏混合の時代は、修験の寺であった「関口不動尊」は、「不動岩」とよばれる岩を本尊とした修験霊場として信仰されました。


さらに、里宮から奥宮まで「関口川渓谷」と呼ばれる清流が流れており、この渓流に身を浸すと、どんな難病でも治癒すると信じられていたようです。


戦前、釜石の製鉄所で働く工員たちは、「不動明王」の背後で燃え上がる炎にあやかり、危険な作業の安全のため「関口不動尊」を厚く信仰したとも伝えられます。


右の画像が、その昔は御神体となっていた「不動岩」で、現在は、この岩の窪みに「不動明王像」が祀られているようです。


不動明王」が小さくて分かり難いと思いますが、岩の中の「御幣」の後ろに、「不動明王像」が安置されています。


不動明王」を祀る神社らしく、多くの「剣」が奉納されているようです。


この「剣」は、「不動明王」が右手に持つ「剣」とされていますが、アニメの影響で、一部の人からは「降魔剣」等と呼ばれているようですが、本当の呼び名は「倶利伽羅剣(くりから-けん)」です。


この「倶利伽羅剣」は、密教における「三毒(三つの煩悩)」を打ち破る「知恵の剣」とされているようです。


また、この「剣」、密教においては、この「倶利伽羅剣」こそが、「不動明王」を象徴する物とされるほど、重要な持物となっています。


ちなみに、剣に巻き付いている龍は「倶利伽羅龍王」と呼ばれているようです。



また、どうでも良い、余計な話ですが、山田地方の銘菓「山田せんべい」も、「不動明王」の肌の色に似ていることから信仰の菓子として伝わったものとも言われているようです。


この「せんべい」は、江戸時代後期に、保存食として考案された食べ物だったようで、黒ゴマを練り込んで半乾燥させた「半生」状態で販売されているようです。


菓子の由緒としては、その昔、山田地方が大飢饉となった時、老婆の枕元に「飢饉に備え胡麻や米の粉、胡桃でせんべいを作れ」と神仏の託宣があったそうです。


その後、老婆が、ご託宣に従って真っ黒な「せんべい」を作り、飢饉から免れたという言い伝えがあるそうです。


そして、さらにその後は、前述の通り、地元の漁師や釜石製鐵所で働く作業員が、関口地区の関口不動尊を信仰するようになると共に、「山田せんべい」の真っ黒な色が、不動様の御神体の色と同じだという事で御利益があると噂になり、山田町の銘菓となって行ったとされています。

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また、「不動明王」は、「滝(瀧)」と強く結び付けられてようです。


不動明王」と「滝」が結びついた理由は諸説あり、どれもが「なるほど」と思いたくなる理由が付いていますが・・・結局の所、その理由は解っていないようです。


もっともらしい理由を何個か紹介しますと、


密教の修行方法との関係 】

密教では、「滝修行」を勧める傾向が強く、その中でも密教の経典「聖無動尊大威怒王秘密陀羅尼経」の中に、


『 静かな山林に入って清らかな地を求め、そこに霊場を作って修行をし、真言を唱える修行をすれば不動明王の姿を見ることができ、願いがかなう。また、河水に浸かって真言を唱え、また山の頂や樹の下、宗教的な施設内で真言を唱えれば願いがかなう。 』


と言う一説がある事から、「不動明王」と「滝」が結び付けられたと言う説です。


倶利伽羅剣との関係 】

前述の通り、「不動明王」と同一視される「倶利伽羅剣」には、「倶利伽羅龍王」が巻き付いています。


そして、「龍」と言えば「水神」です。


このことから、「不動明王倶利伽羅剣 = 倶利伽羅龍王 = 水神 = 滝」と言う感じで、習合して行ったと言う説です。



と言う事で、最後に、岩手県内で「滝」に祀られている「不動明王」を紹介したいと思います。


今回は、八幡平市高畠にある「不動の滝」を紹介します。


こちらは、下記ブログでも紹介した「瀬織津姫命」を祀る「櫻松神社」境内奥に位置する滝で、「日本の滝百選」の他、「岩手の名水二十選」にも認定されている滝となります。


★過去ブログ:早池峰信仰と瀬織津姫命 〜 謎多き姫神に触れる その5


高さ15mの滝が、白い飛沫を上げて垂直に流れ落ちる様は圧巻とのことです。


また、この「不動の滝」は、その昔は修験者の道場だったといわれ、森閑とした一帯は今なおその雰囲気が漂っており、滝の中程には「石彫不動明王」が祀られています。


その他にも、大船渡や大槌町など、様々な場所に「不動滝」があるようです。


やっぱり、「不動明王 = 滝」なのだと思います。

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今回、数は少ないですが、次のような民間信仰をご紹介しましたが、如何でしたか ?


●お立木(オタテギ)信仰
●お不動様信仰


「お立木信仰」は、まあ岩手県独特の民間信仰だと思われるので、このシリーズで紹介しても、余り抵抗は無いかと思います。


そして、この「お立木信仰」と「門松信仰」が習合したと言うのは、中々興味深い事だと思います。


しかし・・・「お不動様」に関しては、余りにも有名な民間信仰で、全国各地、到るところで信仰されていますので、「何だかな〜」と言う感じです。


本当は、「お不動様の年越し」について詳しい情報を紹介したかったのですが、こちらも意味や起源が全く解らず、何も紹介出来ませんでした。


岩手県では、12月に入ると大晦日まで、毎日のように「神仏の年越し(年取り)」が行われるそうです。


対象となる神仏は、お不動様を始め、お稲荷様、大黒様、恵比寿様、お薬師様、疱瘡神、山の神様、虚空蔵様、オカノカミ、八幡様、オシラサマ、子安様、蒼前様、馬頭観音、イモンバ様、厄病神様、大工神様、イタチ、聖徳太子、明神様・・・


もう、何が何だか訳が解らない神様の「年越し(年取り)」が行われているようです。特に、「イモンバ様」とは? とか「オカノカミ」「いたち」とか・・・


そもそも「イモンバ様」とは、一体、どんな神様なのでしょうか ? 何で、「いたち」を祀る対象にするのか ?


これらの事に関しては、引き続き調査する必要はあるかもしれません。ちなみに、「オカノカミ」とは、「田の神様」と同類の神様のようです。


それでは次回も宜しくお願いします。


以上

【画像・情報提供先】
Wikipedia(http://ja.wikipedia.org/)
・遠野文化研究センター(http://tonoculture.com/)
コトバンク(https://kotobank.jp/)
岩手県立博物館研究報告書(第31号/2014年3月)
・不動信仰辞典/宮坂宥勝
紫波町観光協会(http://www.shiwa-kanko.jp/)
・菓子工房「川最」(http://senbei.kawasai.net/)
・みやこ百科事典 ミヤペディア(http://miyapedia.com)

Windows 10 October 2018 Update - 半期に一度の恐怖


さて、また半期に一度、誰も望んでいない、「恐怖の時」が訪れたようです。


Microsoft社は、現地時間、2018年10月2日に、『 Windows 10 October 2018 Update 』の提供を開始しました。


ところが、弊社メルマガの「気になる情報」でも紹介した通り、このメジャーアップデート提供開始直後から、Microsoft社のコミュニティには、次のような苦情が寄せられ始め、瞬く間に400件もの数に昇ったそうです。


Windows Updateは正常に終了したが、ドキュメント・フォルダ内のファイルが消えてしまった。 』


★弊社メルマガ:社内システムのクラウド化 2:株式会社エム・システム情報マガジン(第90号)
→ ../magazine/20181101.html


このため、Microsoft社では、急遽、この「 Windows 10 October 2018 Update 」の提供を中断すると共に、既に、メジャーアップデートを適用してしまった人のために、下記更新プログラムを発行せざるを得なくなってしまったようです。


●OSビルド「17763.1」の場合 :修正プログラム「KB4464330」

・正しくないタイミングでの計算により、「指定した日数よりも古いユーザ プロファイルを削除する」というグループ ポリシーの対象となるデバイス上のユーザ プロファイルが予想よりも早く削除されることがある問題を修正します。
Windows カーネルMicrosoft Graphics コンポーネントMicrosoft Scripting Engine、Internet ExplorerWindows 記憶域およびファイル システム、Windows LinuxWindows ワイヤレス ネットワーク、Windows MSXMLMicrosoft Jet データベース エンジン、Windows 周辺機器、Microsoft EdgeWindows Media Player、および Internet Explorer 用のセキュリティ更新プログラム。

●該当更新プログラムの情報

https://support.microsoft.com/ja-jp/help/4464330/windows-10-update-kb4464330


ちなみに、「KB4464330」を適用すると、OSビルドが「17763.55」になります。


「OSビルド」の確認方法に関しては、弊社の過去ブログを参照して下さい。(「winver」コマンド)
★過去ブログ:Fall Creators Update 〜 今度は何が・・・


また参考までに、これまでのバージョン情報を掲載しておきます。(※除くEnterprises)

項番 名称 バージョン リリース時期 サポート終了 保守
1 Windows 10(初期バージョン) 1507 2015/07 2017/05/09 ×
2 Windows 10 November update 1511 2015/11 2017/10/10 ×
3 Windows 10 Anniversary Update 1607 2016/08 2018/04/10 ×
4 Windows 10 Creators Update 1703 2017/04 2018/10/09 ×
5 Windows 10 Fall Creators Update 1709 2017/10 2019/04/09
6 Windows 10 April 2018 Update 1803 2018/04 2019/11/12
7 Windows 10 October 2018 Update 1809 2018/10 2020/04/14


Microsoft社は、当初、製品リリース後、5年はサポートするしていた契約を一方的に破棄し、次のエディションのWindows 10に関しては、メジャーアップデート提供開始後、18ヶ月(1年6ヶ月)しかサポートしないと言う方針に、ライフサクルポリシーを変更しています。
→ Home、Pro、 Pro for Workstation、 IoT Core

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本ブログは、2018年10月末頃に執筆したのですが、その後、2018年11月13日に、バージョン「1809」の再リリースを行ったようです。

この事は、Microsoft社の下記ページに記載されています。

https://support.microsoft.com/ja-jp/help/4464619/windows-10-update-history


しかし、再リリースを行った後も、何件も問題が発生している事を、Microsoft社も認識しており、この問題に関しても、上記ページに記載されています。

再リリース後も、直ぐに問題が発生していますので、はやり、下記のように、「メアリー・ジョー・フォーリー」氏の提言を受け入れるべきだと思います。

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全く、冗談のつもりの「恐怖」が、本当の「恐怖」に変わってしまったようです。


アメリカの著名なテクノロジーライター「Mary Jo Foley(メアリー・ジョー・フォーリー」氏は、今回のMicrosoft社の失態を見て、「Windows 10 のアップデート戦略を見直すべき」と提唱しています。

ZDNEThttps://japan.zdnet.com/article/35127057/


この記事の中で、彼女は、「数多くの新機能の提供ではなく、信頼性強化のためのアップデートを行うべきである。」と提言していますが、私も、まさに、その通りだと思います。


現在のCEOが就任した1年後(2015年)に「Windows 10」がリリースされ、その後、毎回の様にメジャーアップデートで失敗を重ね、それにも懲りず、また今回の大失敗とメジャーアップデートの提供中断、もういい加減、自らの戦略ミスを認めても良い頃だと思います。


彼女も次のように述べています。


『 自社の重要戦略が思い通りに進んでいないことを認めるのは難しいはずだ。この戦略が持続可能なものではないと認めるのではなく、基本的に機能しており、問題があったのは「ごく一部の顧客」だと主張し続ける方が簡単なのだ。 』


現在の「Windows 10」と「メジャーアップデート」は、全く上手く機能していないと思います。

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さて、そんな悲惨な状況の「Windows 10 October 2018 Update(Redstone 5)」ですが、今回、実装の有無は別として、次の様な機能を追加したようです。


1.「同期電話」アプリ :Windows 10 PC とスマートフォンのリンク機能
2.「切り取り領域とスケッチ」アプリ :キャプチャ・ペンツールによる描きみ・共有機
3.クリップボードの強化 :コピー内容の履歴保存と、履歴からの貼り付け
4.表示文字の拡大 :テキストだけを拡大する機能
5.メモ帳の新機能 :ズーム、折返し検索、右クリック検索、等の機能追加
6.Bluetooth機能強化 :「Swift Pair」機能サポート
7.バッテリーヘルスモードを追加 :バッテリー寿命の低下を抑える機能の通知
8.サインイン時のセキュリティキー対応 :別売のセキュリティ用ハードウェアサポート
9.Microsoft Edge機能追加 :複数機能の追加
10.その他 :検索機能強化、絵文字追加、UpdateのAI化、等


このように、大きく9項目を、新機能として追加したようです。当然、「何だ !? たったこれだけ ?」と思う方も多いでしょう。私も、そう思います。


ところが、最後の「Microsoft Edge」に対しては、下記の通り、ユーザインターフェイスだけで5個ほど機能を追加していますので、まあ、そこそこ変わったのかな〜と言う印象です。


①ジャンプリスト機能
ツールバーの再デザイン
③メディア自動再生制御
④ダウンロードメニューへの項目追加
⑤読み取りビューの強化


しかし、これら機能の追加に伴い、当然、これまで、今回追加した機能の代わりに提供していた何個かの機能が廃止されています。


廃止された機能は、次のような機能です。


・ホログラムアプリ
Microsoftモバイルコンパニオン
・Distributed Scan Management (DSM
・「unattend.xml」における「FontSmoothing」設定
・limpet.exe
・Trusted Platform Module(TPM)管理コンソール
Windows Embedded Developer Update


まあ、普通の使い方をしていれば、廃止されても、特に影響は無いと思いますし、今回、代替機能が提供されていますので、そちらを使えば良いと思います。


されに、既に新規機能の開発が行われておらず、その内に廃止されると思われている機能もあるようです。


Snipping Tool :「切り取り領域とスケッチ」に置き換えられる予定
・ディスク クリーンアップ :ストレージ センサーで代替
・CDF Dynamic Lock APIWindows 10「動的ロック」機能で代替
・OneSyncサービス :同期機能が「Outlook」アプリに組み込まれる


それでは、新機能を紹介します。

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■「同期電話」アプリ


最初は、「同期電話」アプリの紹介です。


何か変な機能名称ですが、本来は「Your Phone app」と言う名称のようです。


上記で説明した様に、「Windows 10 PC とスマートフォンをリンクする機能」となります。


しかし、元々、Windows 10には、「モバイルコンパニオン」と言うアプリが実装されており、このアプリでスマートフォンと接続する事が出来ました。


但し、このアプリは、Apple社「iTunes」の様に、データ転送が出来る訳でもなく、単にスマートフォンの状態を表示したり、OneDrive等のWebアプリをダウンロードしたりする事しか出来ない、いわゆる「使えないアプリ」でした。


そこで、今回、本当に、スマートフォンと同期接続し、スマートフォン内の画像を表示したり、テキストデータを送信したりする事が出来るようになったようです。


このため、前述の通り、この「モバイルコンパニオン」アプリは廃止されてしまっています。


何となく使えそうですが・・・但し、接続して使用出来るスマートフォンは、「Android」のみで、「iPhone」は、接続は出来るようですが、接続するだけで、後は何も出来ないようです。


また、このアプリを使用するためには、スマートフォン側にもMicrosoft用のアプリをインストールする必要があるようです。


しかし、実際の処、現在でも、スマートフォンをPCにUSBで接続すれば、スマートフォン側の画像をPCで取り出す事もできますし、「iPhone」であれば、「iTunes」や「iCloud」経由でmp3ファイルのやり取りが出来ます。


正直、私には、このアプリは不要です。

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■「切り取り領域とスケッチ」アプリ


次は、「切り取り領域とスケッチ」と言う、また変な日本語の名前を付けられたアプリです。


本来の英語名は「Screen Sketch」と言う名称なのですが、どうして、こんな変な日本語名称を付けるのか理解に苦しみます。


そのまま「スクリーンスケッチ」にすれば良いのにと思ってしまいます。


命名者の感覚を疑いたくなってしまいます。


さて、この「切り取り領域とスケッチ」ですが、画面に表示されている画像(キャプチャ)を、3種類の切り取り方法から選択した方法で切り取り、自由に加工できる機能と言うことです。


また、画像は、表示画面のみではなく、ファイルから画像を開いて編集する事もできるようです。


切り取り方法は、矩形(四角)で囲む、全画面、およびフリーハンドの3種類がありますし、また、3秒後、10秒後と言う遅延切り取り指示も行えるようです。


そして、肝心な加工ですが、画像の縮小は行えず、定規や分度器を表示させて直線や円形を描いたり、フリーハンドで描画したりする事が出来るようです。


要は、これも既存の「Snipping Tool」アプリのバージョンアップ版と言う位置付けとなっており、「Snipping Tool」は廃止予定となっています。


但し、「切り取り領域とスケッチ」は、元々は、PC用ではなくSurface等のモバイル端末を意識して開発されたアプリらしく、タッチペン(スタイラスペン)を意識した仕様になっており、非常に使い難いと言う評判です。


このため、「Snipping Tool」の廃止を惜しむ声が沢山あるようですが、Microsoft社も、本当は、その辺の事情が解っていたので、「Snipping Tool」の即時廃止を見送ったのかもしれません。


と言うことで、このアプリも、私的には不要アプリ扱いのようです。

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クリップボードの強化


皆さん、「クリップボード」ってご存知ですか ?


Windows PCで、テキストや画像を「コピー」や「カット」した場合、そのテキストや画像を保存しておく場所の事です。


しかし、現状、この「クリップボード」の内容を確認するためには、どこかに、コピーしたデータを「貼り付ける」必要があります。


そこで、今回の新機能では、現在、何が「クリップボード」に保存されているのかを、目視確認する事が出来るように改良されたそうです。


さらに、現状では、最新の、つまり最後に「コピー/カット」したデータしか保存出来ない仕様となっていますが、今回の機能追加で、「コピー/カット」データを履歴として保存するも可能になったようです。


そして、履歴データから、データを貼り付ける事も可能になるそうです。


Windowsキー + V」でクリップボード履歴を開く事が出来るようですが、これは、結構、便利な機能かもしれません。


但し、次のような制限があるそうです。


・対象は、書式なしテキスト、HTML、画像。
・データ容量には制限があり、個別データは1MBまで、全体は5MBまで。
・保持可能な個数は50個まで。
・「切り取り領域とスケッチ」も保持対象となる。
・履歴はPC再起動で初期化される。


また、この機能に関しては、もう1点、「クラウド同期」機能があります。


こちらは、同一「Microsoft ID」でログインしたデバイス同士で、クリップボードの内容を共有出来るようですが・・・クラウド同期の場合、100KB未満のテキストデータしか共有出来ないようです。


また、同期タイミングも微妙なようですので、こちらの「クラウド同期」は、イマイチかもしれません。

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■表示文字の拡大


この「表示文字の拡大」では、全体スケールを変更する事無く、テキストのサイズだけを大きくする事が出来る機能のようです。


例えば、この機能で、エクスプローラー画面において文字を拡大した場合、アイコンの大きさはそのままで、説明文のテキスト文字だけが大きくなる、と言う仕組みのようです。


設定は、「Windowsの設定」−「簡単操作」−「ディスプレイ」−「文字を大きくする」と言う順番で行う事になります。


表示されるスライダーにより、文字を最大225%まで拡大する事が出来るようですが、最小は100%で文字を小さくすることは出来ないようです。


「それで何が良くなるの ?」と言う事ですが、高解像度液晶ディスプレイなどを利用している場合に、高解像度の表示を生かしつつ、表示文字だけを大きくして使いやすくことが出来る、と言うウリ文句のようです。


しかし、「だから ?」と言う感じがします。

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■メモ帳の新機能


次は、「メモ帳」への機能追加です。


「メモ帳」とは、「Windows」に標準装備されているテキストエディタの事で、「Windows 1.0」の時代から付属している機能です。


但し、Windowsの初期バージョンから実装されている割に、全くと言って良いほど機能が追加されておらず、私も、HTML等のテキスト編集を行う場合には、別のテキストエディタを使っています。


今回、Microsoft社も、ようやくユーザの声に耳を傾け、何点か機能を改良したようです。


(1)MS-DOS/Windows以外の行末記号にも対応


テキスト文字を改行する場合、目には見えませんが、改行場所には「改行コード」が埋め込まれています。


そして、この「改行コード」は、OSの種類により異なり、Windows OSの場合、その生い立ちの歴史から、MS-DOSと同様「CR+LF」と言うコードが埋め込まれています。


このため、Linuxアプリケーションに付属するReadMeファイルやインターネットからダウンロードしたテキスト等をメモ帳で表示させると、「Windows OS」は、「改行コード」を理解することが出来ないので改行せず、行が全てつながった状態になってしまっていました。


今回の機能追加では、MS-DOS/Windows標準の行末記号(CR+LF)以外、UNIX/Linux系の「LF」とmacOSの「CR」にも対応出来るようになったようです。


(2)ズーム機能追加


フォントサイズを変更することなく、文字を拡大(ズーム)できるようになりました。


メニューから選択するか、あるいは「Ctrl-+(プラス)」や「Ctrl-−(マイナス)」、「Ctrl+マウスホイール」により、ズームインおよびズームアウトできます。


そして、「Ctrl+0」で、デフォルト表示に戻すことが出来ます。


(3)検索の [折り返し] 機能追加


検索機能に、「[折り返しあり」 オプションが追加され、最後まで検索したら折り返して初めから検索できるようになりました。


処理可能な範囲の最後に達した後に最初に戻ることを、「ラップアラウンド」と呼ぶようです。


(4)Bing検索機能


テキストを選択して「右クリック」→「 Bing 検索」を選択すると、その選択した文字列をキーとして、 Bing 検索を行う事が出来るようです。






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その他にも、次の様に、多くの機能が追加されたようです。



・巨大なファイルを開くときのパフォーマンス向上
・Ctrl + Backspaceにより前の単語を削除可能に
・テキスト選択でのカーソル操作を改善
・ファイル保存の際に、行番号と列番号が1にリセットされないように
・画面に完全に収まらない行を正しく表示
・以前に入力した検索値が保存される
・テキストを選択しながら検索ダイアログを開くと自動入力される


かなり多くの機能が追加され、Microsoft社も、ようやくサードパーティ製品を意識し始めたようですが、「メモ帳」愛好家(こんな人達が居るとは思いませんでしたが)の方達からは、「プログラムが肥大化してパフォーマンスが低下するのでは ?」と言う心配も寄せられているようです。

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Bluetooth機能強化


Bluetoothに関する機能も、強化が図られたそうです。


(1)「Swift Pair」のサポート
「Swift Pair」とは、新しい周辺機器が近くにありペアリング準備が整っていると接続のための通知が表示される機能です。


この機能の実装により、設定アプリを辿る必要が無くなるので、ユーザは簡単に接続することができるとしています。


但し、この「Swift Pair」と言う技術は、「Swift Pair」に準拠したBluetoothバイスにのみ対応する技術なので、どんなBluetoothバイスでも使えるとは限らないそうです。


また、この機能は、本来、前回のメジャーアップデート(Windows 10 April 2018 Update)で提供予定だった機能のようです。


(2)Bluetooth トラブルシューター改善

嘘か本当か解りませんし、どのような改善が施されたのかも不明ですが、「Bluetooth トラブルシューター」が改善され、以前よりも問題解決が簡単に行えるようになったと言っています。

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■バッテリーヘルスモードを追加


PCのバッテリーを、常に100%に充電したままにすると、全体的なバッテリー寿命にとって良くありません


そこで、一部のPCメーカーは、バッテリーが100%になると、バッテリーレベルを低レベルにして、バッテリー寿命の低下を抑える「バッテリーヘルスモード機能」を有効にしています。


該当PCにおいて、「バッテリーヘルスモード」が有効になっていて、かつ電源に長時間接続したままにすると「バッテリーヘルスモード」がオンになります。


今回の機能追加では、「バッテリーヘルスモード」が有効になった時点で、それを知らせる通知が表示されるようになるそうですが、どのような表示なのかは解りませんでした。

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■サインイン時のセキュリティキー対応


Microsoftアカウント」にサインインする時に、「セキュリティキー」を使用してサインインできるようになったそうです。


って、皆さん、「セキュリティキー」ってご存知ですか ?


「セキュリティキー」とは、左の画像の様な物理デバイスで、サインインするために、ユーザ名やパスワードの代わりに、指紋や PINコードを登録したり、あるいはワンタイムパスワードを生成したりしてサインインするアクセサリーです。


この「セキュリティキー」は、PCと、USBキー、あるいはNFCリーダーを用いて接続する事になります。


つまり、「セキュリティキー」を使う場合、別売の「セキュリティキー」を購入する必要があると言う事になります。


また、この機能を使う場合、結構面倒な設定が必要になりそうです。

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Microsoft Edge機能追加


前述の通り、「Windows 10 October 2018 Update」では、Microsoft社のWebブラウザ「Edge」に、かなりの改善を施したようです。


Microsoft社では、この「Edge」の普及に非常に注力しており、メジャーアップデートの度に、沢山の機能追加を施します。


その昔、と言っても数年前までは、Webブラウザと言えばMicrosoft社の「IE(Internet Explorer)」と言う時代もありました。


しかし、現在ではMicrosoft社製ブラウザのシェアは低下の一途をたどっています。


現在(2018年9月時点)でのWebブラウザのシェアは次の通りです。

種類 メーカー シェア(%)
Chrome Google 66.28
Firefox Mozilla 9.62
Internet Explorer Microsoft 8.26
Edge Microsoft 4.08
Safari Apple 3.59

その他|-|8.17|


そこで、Microsoftは、失地挽回を図るべく、メジャーアップデートの度に、多くの機能を追加しているのですが、シェア低下には、歯止めがかからない状況となっています。


さて、今回は、前述の通り、大きく5個の機能が追加されているようですので、その内容を紹介します。


(1)ジャンプリスト機能


タスクバー上の 「Edgeアイコン」上で、マウスの右ボタンをクリックすると、ジャンプリストが表示されるようになったようです。


この「ジャンプリスト」には、利用頻度が高いWebサイトが表示され、リスト上のサイトをクリックすると、Webサイトに簡単にアクセスできるそうです。


また、Webサイトは、プッシュピンアイコン(マウスホバー時に表示)をクリックすることで、固定や固定を解除することができるようですが、Chromeだと、「新しいタブ」を開けば、利用頻度が高いサイトが表示されるので、この機能と同じだと思います。

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(2)ツールバーの再デザイン


この機能追加は、「ユーザからの強い要望を受けて追加した」との事ですので、これまでは、余程、使い難かったのだと思います。


右側に新旧の「設定」の画像を掲載しましたが、確かに現在(バージョン1803)の設定は、項目も少なく、サブメニューも無くて使い難い感じがします。


今回の修正では、一般的によく使用されるアクションを前面と中央に配置し、カテゴリー別にサブメニューを設けたようです。


要は、これもGoogle社のブラウザ「Chrome」を真似たデザインに変更しただけの話だと思います。


左側に、Chromeの設定メニューを掲載したので、比較すれば、よく分かると思います。


まあ、メニューには、各機能のアイコンも表示されている点が、Chromeと異なりますが、これは必要なのでしょうか ?

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(3)メディア自動再生制御


前回の「バージョン1803」で、これもChromeの真似で、タブの設定に「ミュート機能」が追加されましたが、今回は、さらに「詳細設定」が行える機能を追加したようです。


「設定メニュー」→「設定」→「詳細設定」で、3種類(許可/制限/禁止)の対応を指定出来るようです。


また、メディアの自動再生に関しては、サイト毎にも指定出来るようです。


Chromeの場合、Chrome側の独自ポリシーで、サイトのメディアを自動再生するか否かを決めていますので、Edgeの方が、利用者が自由に設定できるので、その分だけ自由度は高くなるみたいです。


しかし、数億個もあるWebサイトに対して、利用者が個別に自動再生の有無を設定するのは、逆に無理があるような感じがします。


ある程度、ブラウザ側で、自動再生の有無を決めてくれた方が親切な感じがします。

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(4)ダウンロードペインのメニューに項目追加


「ダウンロードペイン」とは、単に、過去にダウンロードした、画像とかファイル等を一覧表示する画面の事ですが、今回、この画面で表示されるメニューに項目を追加した、との事らしいです。


しかし、前述のEdgeにおける「新旧設定メニュー」を見てもらえば解りますが、現在、設定メニューには「ダウンロード」情報を表示させるための項目自体が存在しません。


それでは、今のEdgeでは、どこで過去のダウンロード情報を表示させるのかと言うと、「設定」の左側に並んでいる「ハブ」と呼ばれる部分にあります。(※図の赤丸部分)


現在は、このハブから「ダウンロード」を選択すると、過去のダウンロード情報が表示されるので、その状態でマウスを右クリックすると「このダウンロードは安全でないと報告する」だけが表示されます。


そこで今回、このメニューに上記の通り、「リンクのコピー」とフォルダー表示」を追加したようですが、これもChromeの真似のようです。

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(5)読み取りビューの強化


「読み取りビュー」と言う機能はご存知ですか ? この機能は、Edgeには、既に実装されている機能です。


「読み取りビュー」とは、Webサイトを開くと、ウザったい広告とか見たくもない余計な情報が表示されますが、これら余計な情報を削除してくれる機能です。


現在でも、この機能は使えますので、時間がある方は、ブラウザの上図の赤枠をクリックして見て下さい。表示内容が大きく変わると思います。


但し、この「読み取りビュー」の機能は、「読み取りビュー」に対応したページでしか使えません。非対応のページの場合、この「本マーク」自体表示されません。


以降で、この「読み取りビュー」に追加された機能を紹介します。


ちなみに、この「読み取りビュー」機能は、Chromeでは拡張機能で、Firefoxでは標準装備で提供しています。


①行フォーカス機能追加


この機能は、右の画像の様に、特定行にだけフォーカスを当てる機能です。


画面にビッシリと文字が表示されている時に、ちょっと目を離すと、何処を読んでいたのかが解らなくなる場合がありますが、このような事態を避けるため、読んでいる行だけをフォーカスしてくれるそうです。


「読み取りビュー」→「学習ツール」→「読み取りの設定」→「行フォーカス」をオンにする事で、この機能が使えるようになるそうですが、とても面倒な感じがします。


私は、文字に埋め尽くされた画面を読む場合、下部のように、読んでいる箇所をカーソルで選びながら読んでいます。



この方法だと、あんな面倒な操作は不要です。果たして、どちらが便利なのでしょうか ?


②文書校正ツール提供(※日本語版未提供)

この機能を使用すると、単語を音節で区切ったり、文章から品詞を抜き出したりして表示するようですが、日本語版には対応していないようですので、説明は割愛します。


③ページのテーマカラー追加


テーマカラーに関しても、既に提供している機能です。


今回、選択できるカラーを追加したとの事ですが・・・それ以外、文字間隔の大小の指定がトグルボタンに変更されていますし、文字の大小に関しては、消えてしまっているようです。


これは、正直、レベルダウンではないでしょうか ?



④単語の定義ポップアップ表示


この機能は、「読み取りビュー」内の単語を選択すると、単語の定義がポップアップアップウィンドウに表示され、かつ「読み上げ」指示により、その内容を音声で読み上げてくれるようです。


「単語の定義」とは、その「言葉の意味」と同じ事だと思われます。


まあ、ChromeFirefoxでは、拡張機能を使えば、似たようなアドオンは沢山見つかりますので、これも「何を今さら」感が拭えない機能です。

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■その他


その他、細々とした仕様変更や機能追加も沢山あり、本ブログでは紹介しきれません。


但し、マニア向けに提供していた「Insider Preview」 からは、複数個の機能がドロップアウトしているそうです。


現時点で確認が取れている追加機能を軽く列挙すると、次のような点が挙げられます。


・検索機能強化 :(上の画像)5個の検索モード/プレビュー追加
・絵文字の追加 :「Unicode 11」採用による157個の絵文字追加
・ダークエクスプローラー :ファイルエクスプローラーにダークモードが追加
Windows UpdateのAI化 :学習機能(AI)がアイドル時間を学習し都合の良い時間帯を判断する
Microsoft To-Doペン対応 :デジタルペンに対応
VRに「懐中電灯」追加 :Mixed RealityにVR空間から現実世界を覗く「懐中電灯」機能追加


さらに、今回の「October 2018 Update」とは関係ありませんが、「Office」、特に「Outlook」にも改良が加えられているそうです。


Outlook」に、次の2つの改良が行われているそうですが、こちら、済みませんが、ちょっと確認が取れていません。


●ドラッグ&ドロップ機能

メールをタスクにドラッグ&ドロップすると新タスクを生成し、タスクをカレンダーにドラッグ&ドロップすると新スケジュールを作成するそうです。


●受信トレイ改良

ある商品メーカーが、Microsoftにビジネスプロフィールを登録すると、Outlook上で検証済みであることを示すアイコンが表示されるので、ユーザは、連絡先情報、商品の配送状況、予約、店舗ロケーションにすばやくアクセスすることが出来るようになるそうです。



う〜ん、実際に試さないと、良く解らない機能のようです。

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今回は、Microsoft社の恐怖のメジャーアップデート「Windows 10 October 2018 Update(Redstone 5)」に関する情報を紹介しましたが如何でしたか ?


今回紹介した新機能のために、Microsoft社は、どれだけの信頼を失ったのでしょうか ?


Windows 10 October 2018 Update」は、メジャーアップデートの提供中止と言う、これまで経験した事が無い大失敗を犯すだけの価値のあるものだったのでしょうか ?


非常に疑問の残るところではあるかと思いますが、まあ、Microsoft社は、今回の大失敗などケロッと忘れて、また半年後には、素知らぬ顔で、メジャーアップデートを行うと思います。


「ちょっと失敗しただけじゃん!」と言う、このMicrosoft社の「社風」は、何もアメリカ本土だけではなく、ここ日本の社員も同様のようです。


今回のブログを書くため、日本Microsoftの社員のブログも参考にしたのですが、この社員は、「Windows 10 October 2018 Update」が失敗して供給停止となっている事を知った上で、次のように言及しています。


『 テクニカルエバンジェリストという肩書はあるものの、以前とは仕事の内容がまったく違うので、このあたりの情報がまったく入ってこず、前回の Windows 10 April 2018 Update のときはEdge の新機能についての記事を投稿できませんでした。


そんな悔しさもあり、今回は配信当日に記事を公開しようと気合を入れて準備していたのですが、またもや不意を突かれたかたちとなってしまいました。


しかしながら担当案件が炎上中にも関わらず、1 〜 2 日遅れで記事が投稿できたことは非常に喜ばしく思っております。


メジャーアップデートが失敗しているにも関わらず、自分のブログが投稿出来たことが嬉しくて仕方がないようです。全く・・・信じられません。


このブログは、下記URLで、今でも配信しているようです。

★URL:https://blogs.msdn.microsoft.com/osamum/2018/10/04/new-feature-of-edgehtml/


一体、どういう神経をしているのか、私には判りかねます。


近頃、日本の製造業で、会社の信頼性を揺るがす事件が多発しています。

日産 検査データ改ざん、無資格検査。
スバル 検査データ改ざん
スズキ 検査データ改ざん
東洋ゴム 断熱パネル耐火性能を偽装(2007年)、製品検査を実施せずに合格データ記載(2015年)
神戸製鋼所 アルミ製部材のデータ改ざん
宇部興産 汎用樹脂などの品質不正
三菱マテリアル 子会社による品質データ不正問題
川崎重工業 走行中の新幹線「のぞみ」(N700系)の台車に亀裂が発生
日立化成 バックアップ電源用の鉛蓄電池で、顧客と取り決めた品質検査のデータを改ざん
東レ 子会社による製品データ改ざん
KYB(カヤバ工業) 検査データ改ざん


当時、テレビでは「やっちゃえニッサン !」と言うCMが流れていましたが、本当に日産は「やっちゃった」ようです。


このように、日本の製造業では、毎月、あるいは毎年のように、自社製品の品質データ改ざんが、明らかになっています。


企業のトップは、「現場の判断で・・・」等と釈明していますが、それが「社風」と言う事だとは考えていないようです。


これらの事は、原因を突き詰めると、Microsoft社と同じ、「そういう社風」なのだと思います。


・データを改ざんしても大丈夫。
・顧客に迷惑を掛けても大丈夫。


このように、自分が良ければ、後は問題ないと考える企業が増えて行く事自体が問題です。


以前、別のブログで「お天道様が見てるぞ !」と言う言葉を取り上げましたが、今の日本には、本当に「お天道様」が必要な国になってしまったのだと思います。


それでは次回も宜しくお願いします。


以上


【画像・情報提供先】
Wikipedia(http://ja.wikipedia.org/)
ZDNET Japan(https://japan.zdnet.com/)
Microsoft monoe's blog(https://blogs.msdn.microsoft.com/osamum/)

Windows 10 October 2018 Update - 半期に一度の恐怖


さて、また半期に一度、誰も望んでいない、「恐怖の時」が訪れたようです。


Microsoft社は、現地時間、2018年10月2日に、『 Windows 10 October 2018 Update 』の提供を開始しました。


ところが、弊社メルマガの「気になる情報」でも紹介した通り、このメジャーアップデート提供開始直後から、Microsoft社のコミュニティには、次のような苦情が寄せられ始め、瞬く間に400件もの数に昇ったそうです。


Windows Updateは正常に終了したが、ドキュメント・フォルダ内のファイルが消えてしまった。 』


★弊社メルマガ:社内システムのクラウド化 2:株式会社エム・システム情報マガジン(第90号)
→ ../magazine/20181101.html


このため、Microsoft社では、急遽、この「 Windows 10 October 2018 Update 」の提供を中断すると共に、既に、メジャーアップデートを適用してしまった人のために、下記更新プログラムを発行せざるを得なくなってしまったようです。


●OSビルド「17763.1」の場合 :修正プログラム「KB4464330」

・正しくないタイミングでの計算により、「指定した日数よりも古いユーザ プロファイルを削除する」というグループ ポリシーの対象となるデバイス上のユーザ プロファイルが予想よりも早く削除されることがある問題を修正します。
Windows カーネルMicrosoft Graphics コンポーネントMicrosoft Scripting Engine、Internet ExplorerWindows 記憶域およびファイル システム、Windows LinuxWindows ワイヤレス ネットワーク、Windows MSXMLMicrosoft Jet データベース エンジン、Windows 周辺機器、Microsoft EdgeWindows Media Player、および Internet Explorer 用のセキュリティ更新プログラム。

●該当更新プログラムの情報

https://support.microsoft.com/ja-jp/help/4464330/windows-10-update-kb4464330


ちなみに、「KB4464330」を適用すると、OSビルドが「17763.55」になります。


「OSビルド」の確認方法に関しては、弊社の過去ブログを参照して下さい。(「winver」コマンド)
★過去ブログ:Fall Creators Update 〜 今度は何が・・・


また参考までに、これまでのバージョン情報を掲載しておきます。(※除くEnterprises)

項番 名称 バージョン リリース時期 サポート終了 保守
1 Windows 10(初期バージョン) 1507 2015/07 2017/05/09 ×
2 Windows 10 November update 1511 2015/11 2017/10/10 ×
3 Windows 10 Anniversary Update 1607 2016/08 2018/04/10 ×
4 Windows 10 Creators Update 1703 2017/04 2018/10/09 ×
5 Windows 10 Fall Creators Update 1709 2017/10 2019/04/09
6 Windows 10 April 2018 Update 1803 2018/04 2019/11/12
7 Windows 10 October 2018 Update 1809 2018/10 2020/04/14


Microsoft社は、当初、製品リリース後、5年はサポートするしていた契約を一方的に破棄し、次のエディションのWindows 10に関しては、メジャーアップデート提供開始後、18ヶ月(1年6ヶ月)しかサポートしないと言う方針に、ライフサクルポリシーを変更しています。
→ Home、Pro、 Pro for Workstation、 IoT Core

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本ブログは、2018年10月末頃に執筆したのですが、その後、2018年11月13日に、バージョン「1809」の再リリースを行ったようです。

この事は、Microsoft社の下記ページに記載されています。

https://support.microsoft.com/ja-jp/help/4464619/windows-10-update-history


しかし、再リリースを行った後も、何件も問題が発生している事を、Microsoft社も認識しており、この問題に関しても、上記ページに記載されています。

再リリース後も、直ぐに問題が発生していますので、はやり、下記のように、「メアリー・ジョー・フォーリー」氏の提言を受け入れるべきだと思います。

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全く、冗談のつもりの「恐怖」が、本当の「恐怖」に変わってしまったようです。


アメリカの著名なテクノロジーライター「Mary Jo Foley(メアリー・ジョー・フォーリー」氏は、今回のMicrosoft社の失態を見て、「Windows 10 のアップデート戦略を見直すべき」と提唱しています。

ZDNEThttps://japan.zdnet.com/article/35127057/


この記事の中で、彼女は、「数多くの新機能の提供ではなく、信頼性強化のためのアップデートを行うべきである。」と提言していますが、私も、まさに、その通りだと思います。


現在のCEOが就任した1年後(2015年)に「Windows 10」がリリースされ、その後、毎回の様にメジャーアップデートで失敗を重ね、それにも懲りず、また今回の大失敗とメジャーアップデートの提供中断、もういい加減、自らの戦略ミスを認めても良い頃だと思います。


彼女も次のように述べています。


『 自社の重要戦略が思い通りに進んでいないことを認めるのは難しいはずだ。この戦略が持続可能なものではないと認めるのではなく、基本的に機能しており、問題があったのは「ごく一部の顧客」だと主張し続ける方が簡単なのだ。 』


現在の「Windows 10」と「メジャーアップデート」は、全く上手く機能していないと思います。

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さて、そんな悲惨な状況の「Windows 10 October 2018 Update(Redstone 5)」ですが、今回、実装の有無は別として、次の様な機能を追加したようです。


1.「同期電話」アプリ :Windows 10 PC とスマートフォンのリンク機能
2.「切り取り領域とスケッチ」アプリ :キャプチャ・ペンツールによる描きみ・共有機
3.クリップボードの強化 :コピー内容の履歴保存と、履歴からの貼り付け
4.表示文字の拡大 :テキストだけを拡大する機能
5.メモ帳の新機能 :ズーム、折返し検索、右クリック検索、等の機能追加
6.Bluetooth機能強化 :「Swift Pair」機能サポート
7.バッテリーヘルスモードを追加 :バッテリー寿命の低下を抑える機能の通知
8.サインイン時のセキュリティキー対応 :別売のセキュリティ用ハードウェアサポート
9.Microsoft Edge機能追加 :複数機能の追加
10.その他 :検索機能強化、絵文字追加、UpdateのAI化、等


このように、大きく9項目を、新機能として追加したようです。当然、「何だ !? たったこれだけ ?」と思う方も多いでしょう。私も、そう思います。


ところが、最後の「Microsoft Edge」に対しては、下記の通り、ユーザインターフェイスだけで5個ほど機能を追加していますので、まあ、そこそこ変わったのかな〜と言う印象です。


?ジャンプリスト機能
?ツールバーの再デザイン
?メディア自動再生制御
?ダウンロードメニューへの項目追加
?読み取りビューの強化


しかし、これら機能の追加に伴い、当然、これまで、今回追加した機能の代わりに提供していた何個かの機能が廃止されています。


廃止された機能は、次のような機能です。


・ホログラムアプリ
Microsoftモバイルコンパニオン
・Distributed Scan Management (DSM
・「unattend.xml」における「FontSmoothing」設定
・limpet.exe
・Trusted Platform Module(TPM)管理コンソール
Windows Embedded Developer Update


まあ、普通の使い方をしていれば、廃止されても、特に影響は無いと思いますし、今回、代替機能が提供されていますので、そちらを使えば良いと思います。


されに、既に新規機能の開発が行われておらず、その内に廃止されると思われている機能もあるようです。


Snipping Tool :「切り取り領域とスケッチ」に置き換えられる予定
・ディスク クリーンアップ :ストレージ センサーで代替
・CDF Dynamic Lock APIWindows 10「動的ロック」機能で代替
・OneSyncサービス :同期機能が「Outlook」アプリに組み込まれる


それでは、新機能を紹介します。

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■「同期電話」アプリ


最初は、「同期電話」アプリの紹介です。


何か変な機能名称ですが、本来は「Your Phone app」と言う名称のようです。


上記で説明した様に、「Windows 10 PC とスマートフォンをリンクする機能」となります。


しかし、元々、Windows 10には、「モバイルコンパニオン」と言うアプリが実装されており、このアプリでスマートフォンと接続する事が出来ました。


但し、このアプリは、Apple社「iTunes」の様に、データ転送が出来る訳でもなく、単にスマートフォンの状態を表示したり、OneDrive等のWebアプリをダウンロードしたりする事しか出来ない、いわゆる「使えないアプリ」でした。


そこで、今回、本当に、スマートフォンと同期接続し、スマートフォン内の画像を表示したり、テキストデータを送信したりする事が出来るようになったようです。


このため、前述の通り、この「モバイルコンパニオン」アプリは廃止されてしまっています。


何となく使えそうですが・・・但し、接続して使用出来るスマートフォンは、「Android」のみで、「iPhone」は、接続は出来るようですが、接続するだけで、後は何も出来ないようです。


また、このアプリを使用するためには、スマートフォン側にもMicrosoft用のアプリをインストールする必要があるようです。


しかし、実際の処、現在でも、スマートフォンをPCにUSBで接続すれば、スマートフォン側の画像をPCで取り出す事もできますし、「iPhone」であれば、「iTunes」や「iCloud」経由でmp3ファイルのやり取りが出来ます。


正直、私には、このアプリは不要です。

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■「切り取り領域とスケッチ」アプリ


次は、「切り取り領域とスケッチ」と言う、また変な日本語の名前を付けられたアプリです。


本来の英語名は「Screen Sketch」と言う名称なのですが、どうして、こんな変な日本語名称を付けるのか理解に苦しみます。


そのまま「スクリーンスケッチ」にすれば良いのにと思ってしまいます。


命名者の感覚を疑いたくなってしまいます。


さて、この「切り取り領域とスケッチ」ですが、画面に表示されている画像(キャプチャ)を、3種類の切り取り方法から選択した方法で切り取り、自由に加工できる機能と言うことです。


また、画像は、表示画面のみではなく、ファイルから画像を開いて編集する事もできるようです。


切り取り方法は、矩形(四角)で囲む、全画面、およびフリーハンドの3種類がありますし、また、3秒後、10秒後と言う遅延切り取り指示も行えるようです。


そして、肝心な加工ですが、画像の縮小は行えず、定規や分度器を表示させて直線や円形を描いたり、フリーハンドで描画したりする事が出来るようです。


要は、これも既存の「Snipping Tool」アプリのバージョンアップ版と言う位置付けとなっており、「Snipping Tool」は廃止予定となっています。


但し、「切り取り領域とスケッチ」は、元々は、PC用ではなくSurface等のモバイル端末を意識して開発されたアプリらしく、タッチペン(スタイラスペン)を意識した仕様になっており、非常に使い難いと言う評判です。


このため、「Snipping Tool」の廃止を惜しむ声が沢山あるようですが、Microsoft社も、本当は、その辺の事情が解っていたので、「Snipping Tool」の即時廃止を見送ったのかもしれません。


と言うことで、このアプリも、私的には不要アプリ扱いのようです。

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クリップボードの強化


皆さん、「クリップボード」ってご存知ですか ?


Windows PCで、テキストや画像を「コピー」や「カット」した場合、そのテキストや画像を保存しておく場所の事です。


しかし、現状、この「クリップボード」の内容を確認するためには、どこかに、コピーしたデータを「貼り付ける」必要があります。


そこで、今回の新機能では、現在、何が「クリップボード」に保存されているのかを、目視確認する事が出来るように改良されたそうです。


さらに、現状では、最新の、つまり最後に「コピー/カット」したデータしか保存出来ない仕様となっていますが、今回の機能追加で、「コピー/カット」データを履歴として保存するも可能になったようです。


そして、履歴データから、データを貼り付ける事も可能になるそうです。


Windowsキー + V」でクリップボード履歴を開く事が出来るようですが、これは、結構、便利な機能かもしれません。


但し、次のような制限があるそうです。


・対象は、書式なしテキスト、HTML、画像。
・データ容量には制限があり、個別データは1MBまで、全体は5MBまで。
・保持可能な個数は50個まで。
・「切り取り領域とスケッチ」も保持対象となる。
・履歴はPC再起動で初期化される。


また、この機能に関しては、もう1点、「クラウド同期」機能があります。


こちらは、同一「Microsoft ID」でログインしたデバイス同士で、クリップボードの内容を共有出来るようですが・・・クラウド同期の場合、100KB未満のテキストデータしか共有出来ないようです。


また、同期タイミングも微妙なようですので、こちらの「クラウド同期」は、イマイチかもしれません。

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■表示文字の拡大


この「表示文字の拡大」では、全体スケールを変更する事無く、テキストのサイズだけを大きくする事が出来る機能のようです。


例えば、この機能で、エクスプローラー画面において文字を拡大した場合、アイコンの大きさはそのままで、説明文のテキスト文字だけが大きくなる、と言う仕組みのようです。


設定は、「Windowsの設定」−「簡単操作」−「ディスプレイ」−「文字を大きくする」と言う順番で行う事になります。


表示されるスライダーにより、文字を最大225%まで拡大する事が出来るようですが、最小は100%で文字を小さくすることは出来ないようです。


「それで何が良くなるの ?」と言う事ですが、高解像度液晶ディスプレイなどを利用している場合に、高解像度の表示を生かしつつ、表示文字だけを大きくして使いやすくことが出来る、と言うウリ文句のようです。


しかし、「だから ?」と言う感じがします。

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■メモ帳の新機能


次は、「メモ帳」への機能追加です。


「メモ帳」とは、「Windows」に標準装備されているテキストエディタの事で、「Windows 1.0」の時代から付属している機能です。


但し、Windowsの初期バージョンから実装されている割に、全くと言って良いほど機能が追加されておらず、私も、HTML等のテキスト編集を行う場合には、別のテキストエディタを使っています。


今回、Microsoft社も、ようやくユーザの声に耳を傾け、何点か機能を改良したようです。


(1)MS-DOS/Windows以外の行末記号にも対応


テキスト文字を改行する場合、目には見えませんが、改行場所には「改行コード」が埋め込まれています。


そして、この「改行コード」は、OSの種類により異なり、Windows OSの場合、その生い立ちの歴史から、MS-DOSと同様「CR+LF」と言うコードが埋め込まれています。


このため、Linuxアプリケーションに付属するReadMeファイルやインターネットからダウンロードしたテキスト等をメモ帳で表示させると、「Windows OS」は、「改行コード」を理解することが出来ないので改行せず、行が全てつながった状態になってしまっていました。


今回の機能追加では、MS-DOS/Windows標準の行末記号(CR+LF)以外、UNIX/Linux系の「LF」とmacOSの「CR」にも対応出来るようになったようです。


(2)ズーム機能追加


フォントサイズを変更することなく、文字を拡大(ズーム)できるようになりました。


メニューから選択するか、あるいは「Ctrl-+(プラス)」や「Ctrl-−(マイナス)」、「Ctrl+マウスホイール」により、ズームインおよびズームアウトできます。


そして、「Ctrl+0」で、デフォルト表示に戻すことが出来ます。


(3)検索の [折り返し] 機能追加


検索機能に、「[折り返しあり」 オプションが追加され、最後まで検索したら折り返して初めから検索できるようになりました。


処理可能な範囲の最後に達した後に最初に戻ることを、「ラップアラウンド」と呼ぶようです。


(4)Bing検索機能


テキストを選択して「右クリック」→「 Bing 検索」を選択すると、その選択した文字列をキーとして、 Bing 検索を行う事が出来るようです。






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その他にも、次の様に、多くの機能が追加されたようです。



・巨大なファイルを開くときのパフォーマンス向上
・Ctrl + Backspaceにより前の単語を削除可能に
・テキスト選択でのカーソル操作を改善
・ファイル保存の際に、行番号と列番号が1にリセットされないように
・画面に完全に収まらない行を正しく表示
・以前に入力した検索値が保存される
・テキストを選択しながら検索ダイアログを開くと自動入力される


かなり多くの機能が追加され、Microsoft社も、ようやくサードパーティ製品を意識し始めたようですが、「メモ帳」愛好家(こんな人達が居るとは思いませんでしたが)の方達からは、「プログラムが肥大化してパフォーマンスが低下するのでは ?」と言う心配も寄せられているようです。

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Bluetooth機能強化


Bluetoothに関する機能も、強化が図られたそうです。


(1)「Swift Pair」のサポート
「Swift Pair」とは、新しい周辺機器が近くにありペアリング準備が整っていると接続のための通知が表示される機能です。


この機能の実装により、設定アプリを辿る必要が無くなるので、ユーザは簡単に接続することができるとしています。


但し、この「Swift Pair」と言う技術は、「Swift Pair」に準拠したBluetoothバイスにのみ対応する技術なので、どんなBluetoothバイスでも使えるとは限らないそうです。


また、この機能は、本来、前回のメジャーアップデート(Windows 10 April 2018 Update)で提供予定だった機能のようです。


(2)Bluetooth トラブルシューター改善

嘘か本当か解りませんし、どのような改善が施されたのかも不明ですが、「Bluetooth トラブルシューター」が改善され、以前よりも問題解決が簡単に行えるようになったと言っています。

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■バッテリーヘルスモードを追加


PCのバッテリーを、常に100%に充電したままにすると、全体的なバッテリー寿命にとって良くありません


そこで、一部のPCメーカーは、バッテリーが100%になると、バッテリーレベルを低レベルにして、バッテリー寿命の低下を抑える「バッテリーヘルスモード機能」を有効にしています。


該当PCにおいて、「バッテリーヘルスモード」が有効になっていて、かつ電源に長時間接続したままにすると「バッテリーヘルスモード」がオンになります。


今回の機能追加では、「バッテリーヘルスモード」が有効になった時点で、それを知らせる通知が表示されるようになるそうですが、どのような表示なのかは解りませんでした。

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■サインイン時のセキュリティキー対応


Microsoftアカウント」にサインインする時に、「セキュリティキー」を使用してサインインできるようになったそうです。


って、皆さん、「セキュリティキー」ってご存知ですか ?


「セキュリティキー」とは、左の画像の様な物理デバイスで、サインインするために、ユーザ名やパスワードの代わりに、指紋や PINコードを登録したり、あるいはワンタイムパスワードを生成したりしてサインインするアクセサリーです。


この「セキュリティキー」は、PCと、USBキー、あるいはNFCリーダーを用いて接続する事になります。


つまり、「セキュリティキー」を使う場合、別売の「セキュリティキー」を購入する必要があると言う事になります。


また、この機能を使う場合、結構面倒な設定が必要になりそうです。

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Microsoft Edge機能追加


前述の通り、「Windows 10 October 2018 Update」では、Microsoft社のWebブラウザ「Edge」に、かなりの改善を施したようです。


Microsoft社では、この「Edge」の普及に非常に注力しており、メジャーアップデートの度に、沢山の機能追加を施します。


その昔、と言っても数年前までは、Webブラウザと言えばMicrosoft社の「IE(Internet Explorer)」と言う時代もありました。


しかし、現在ではMicrosoft社製ブラウザのシェアは低下の一途をたどっています。


現在(2018年9月時点)でのWebブラウザのシェアは次の通りです。

種類 メーカー シェア(%)
Chrome Google 66.28
Firefox Mozilla 9.62
Internet Explorer Microsoft 8.26
Edge Microsoft 4.08
Safari Apple 3.59

その他|-|8.17|


そこで、Microsoftは、失地挽回を図るべく、メジャーアップデートの度に、多くの機能を追加しているのですが、シェア低下には、歯止めがかからない状況となっています。


さて、今回は、前述の通り、大きく5個の機能が追加されているようですので、その内容を紹介します。


(1)ジャンプリスト機能


タスクバー上の 「Edgeアイコン」上で、マウスの右ボタンをクリックすると、ジャンプリストが表示されるようになったようです。


この「ジャンプリスト」には、利用頻度が高いWebサイトが表示され、リスト上のサイトをクリックすると、Webサイトに簡単にアクセスできるそうです。


また、Webサイトは、プッシュピンアイコン(マウスホバー時に表示)をクリックすることで、固定や固定を解除することができるようですが、Chromeだと、「新しいタブ」を開けば、利用頻度が高いサイトが表示されるので、この機能と同じだと思います。

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(2)ツールバーの再デザイン


この機能追加は、「ユーザからの強い要望を受けて追加した」との事ですので、これまでは、余程、使い難かったのだと思います。


右側に新旧の「設定」の画像を掲載しましたが、確かに現在(バージョン1803)の設定は、項目も少なく、サブメニューも無くて使い難い感じがします。


今回の修正では、一般的によく使用されるアクションを前面と中央に配置し、カテゴリー別にサブメニューを設けたようです。


要は、これもGoogle社のブラウザ「Chrome」を真似たデザインに変更しただけの話だと思います。


左側に、Chromeの設定メニューを掲載したので、比較すれば、よく分かると思います。


まあ、メニューには、各機能のアイコンも表示されている点が、Chromeと異なりますが、これは必要なのでしょうか ?

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(3)メディア自動再生制御


前回の「バージョン1803」で、これもChromeの真似で、タブの設定に「ミュート機能」が追加されましたが、今回は、さらに「詳細設定」が行える機能を追加したようです。


「設定メニュー」→「設定」→「詳細設定」で、3種類(許可/制限/禁止)の対応を指定出来るようです。


また、メディアの自動再生に関しては、サイト毎にも指定出来るようです。


Chromeの場合、Chrome側の独自ポリシーで、サイトのメディアを自動再生するか否かを決めていますので、Edgeの方が、利用者が自由に設定できるので、その分だけ自由度は高くなるみたいです。


しかし、数億個もあるWebサイトに対して、利用者が個別に自動再生の有無を設定するのは、逆に無理があるような感じがします。


ある程度、ブラウザ側で、自動再生の有無を決めてくれた方が親切な感じがします。

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(4)ダウンロードペインのメニューに項目追加


「ダウンロードペイン」とは、単に、過去にダウンロードした、画像とかファイル等を一覧表示する画面の事ですが、今回、この画面で表示されるメニューに項目を追加した、との事らしいです。


しかし、前述のEdgeにおける「新旧設定メニュー」を見てもらえば解りますが、現在、設定メニューには「ダウンロード」情報を表示させるための項目自体が存在しません。


それでは、今のEdgeでは、どこで過去のダウンロード情報を表示させるのかと言うと、「設定」の左側に並んでいる「ハブ」と呼ばれる部分にあります。(※図の赤丸部分)


現在は、このハブから「ダウンロード」を選択すると、過去のダウンロード情報が表示されるので、その状態でマウスを右クリックすると「このダウンロードは安全でないと報告する」だけが表示されます。


そこで今回、このメニューに上記の通り、「リンクのコピー」とフォルダー表示」を追加したようですが、これもChromeの真似のようです。

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(5)読み取りビューの強化


「読み取りビュー」と言う機能はご存知ですか ? この機能は、Edgeには、既に実装されている機能です。


「読み取りビュー」とは、Webサイトを開くと、ウザったい広告とか見たくもない余計な情報が表示されますが、これら余計な情報を削除してくれる機能です。


現在でも、この機能は使えますので、時間がある方は、ブラウザの上図の赤枠をクリックして見て下さい。表示内容が大きく変わると思います。


但し、この「読み取りビュー」の機能は、「読み取りビュー」に対応したページでしか使えません。非対応のページの場合、この「本マーク」自体表示されません。


以降で、この「読み取りビュー」に追加された機能を紹介します。


ちなみに、この「読み取りビュー」機能は、Chromeでは拡張機能で、Firefoxでは標準装備で提供しています。


?行フォーカス機能追加


この機能は、右の画像の様に、特定行にだけフォーカスを当てる機能です。


画面にビッシリと文字が表示されている時に、ちょっと目を離すと、何処を読んでいたのかが解らなくなる場合がありますが、このような事態を避けるため、読んでいる行だけをフォーカスしてくれるそうです。


「読み取りビュー」→「学習ツール」→「読み取りの設定」→「行フォーカス」をオンにする事で、この機能が使えるようになるそうですが、とても面倒な感じがします。


私は、文字に埋め尽くされた画面を読む場合、下部のように、読んでいる箇所をカーソルで選びながら読んでいます。



この方法だと、あんな面倒な操作は不要です。果たして、どちらが便利なのでしょうか ?


?文書校正ツール提供(※日本語版未提供)

この機能を使用すると、単語を音節で区切ったり、文章から品詞を抜き出したりして表示するようですが、日本語版には対応していないようですので、説明は割愛します。


?ページのテーマカラー追加


テーマカラーに関しても、既に提供している機能です。


今回、選択できるカラーを追加したとの事ですが・・・それ以外、文字間隔の大小の指定がトグルボタンに変更されていますし、文字の大小に関しては、消えてしまっているようです。


これは、正直、レベルダウンではないでしょうか ?



?単語の定義ポップアップ表示


この機能は、「読み取りビュー」内の単語を選択すると、単語の定義がポップアップアップウィンドウに表示され、かつ「読み上げ」指示により、その内容を音声で読み上げてくれるようです。


「単語の定義」とは、その「言葉の意味」と同じ事だと思われます。


まあ、ChromeFirefoxでは、拡張機能を使えば、似たようなアドオンは沢山見つかりますので、これも「何を今さら」感が拭えない機能です。

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■その他


その他、細々とした仕様変更や機能追加も沢山あり、本ブログでは紹介しきれません。


但し、マニア向けに提供していた「Insider Preview」 からは、複数個の機能がドロップアウトしているそうです。


現時点で確認が取れている追加機能を軽く列挙すると、次のような点が挙げられます。


・検索機能強化 :(上の画像)5個の検索モード/プレビュー追加
・絵文字の追加 :「Unicode 11」採用による157個の絵文字追加
・ダークエクスプローラー :ファイルエクスプローラーにダークモードが追加
Windows UpdateのAI化 :学習機能(AI)がアイドル時間を学習し都合の良い時間帯を判断する
Microsoft To-Doペン対応 :デジタルペンに対応
VRに「懐中電灯」追加 :Mixed RealityにVR空間から現実世界を覗く「懐中電灯」機能追加


さらに、今回の「October 2018 Update」とは関係ありませんが、「Office」、特に「Outlook」にも改良が加えられているそうです。


Outlook」に、次の2つの改良が行われているそうですが、こちら、済みませんが、ちょっと確認が取れていません。


●ドラッグ&ドロップ機能

メールをタスクにドラッグ&ドロップすると新タスクを生成し、タスクをカレンダーにドラッグ&ドロップすると新スケジュールを作成するそうです。


●受信トレイ改良

ある商品メーカーが、Microsoftにビジネスプロフィールを登録すると、Outlook上で検証済みであることを示すアイコンが表示されるので、ユーザは、連絡先情報、商品の配送状況、予約、店舗ロケーションにすばやくアクセスすることが出来るようになるそうです。



う〜ん、実際に試さないと、良く解らない機能のようです。

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今回は、Microsoft社の恐怖のメジャーアップデート「Windows 10 October 2018 Update(Redstone 5)」に関する情報を紹介しましたが如何でしたか ?


今回紹介した新機能のために、Microsoft社は、どれだけの信頼を失ったのでしょうか ?


Windows 10 October 2018 Update」は、メジャーアップデートの提供中止と言う、これまで経験した事が無い大失敗を犯すだけの価値のあるものだったのでしょうか ?


非常に疑問の残るところではあるかと思いますが、まあ、Microsoft社は、今回の大失敗などケロッと忘れて、また半年後には、素知らぬ顔で、メジャーアップデートを行うと思います。


「ちょっと失敗しただけじゃん!」と言う、このMicrosoft社の「社風」は、何もアメリカ本土だけではなく、ここ日本の社員も同様のようです。


今回のブログを書くため、日本Microsoftの社員のブログも参考にしたのですが、この社員は、「Windows 10 October 2018 Update」が失敗して供給停止となっている事を知った上で、次のように言及しています。


『 テクニカルエバンジェリストという肩書はあるものの、以前とは仕事の内容がまったく違うので、このあたりの情報がまったく入ってこず、前回の Windows 10 April 2018 Update のときはEdge の新機能についての記事を投稿できませんでした。


そんな悔しさもあり、今回は配信当日に記事を公開しようと気合を入れて準備していたのですが、またもや不意を突かれたかたちとなってしまいました。


しかしながら担当案件が炎上中にも関わらず、1 〜 2 日遅れで記事が投稿できたことは非常に喜ばしく思っております。


メジャーアップデートが失敗しているにも関わらず、自分のブログが投稿出来たことが嬉しくて仕方がないようです。全く・・・信じられません。


このブログは、下記URLで、今でも配信しているようです。

★URL:https://blogs.msdn.microsoft.com/osamum/2018/10/04/new-feature-of-edgehtml/


一体、どういう神経をしているのか、私には判りかねます。


近頃、日本の製造業で、会社の信頼性を揺るがす事件が多発しています。

日産 検査データ改ざん、無資格検査。
スバル 検査データ改ざん
スズキ 検査データ改ざん
東洋ゴム 断熱パネル耐火性能を偽装(2007年)、製品検査を実施せずに合格データ記載(2015年)
神戸製鋼所 アルミ製部材のデータ改ざん
宇部興産 汎用樹脂などの品質不正
三菱マテリアル 子会社による品質データ不正問題
川崎重工業 走行中の新幹線「のぞみ」(N700系)の台車に亀裂が発生
日立化成 バックアップ電源用の鉛蓄電池で、顧客と取り決めた品質検査のデータを改ざん
東レ 子会社による製品データ改ざん
KYB(カヤバ工業) 検査データ改ざん


当時、テレビでは「やっちゃえニッサン !」と言うCMが流れていましたが、本当に日産は「やっちゃった」ようです。


このように、日本の製造業では、毎月、あるいは毎年のように、自社製品の品質データ改ざんが、明らかになっています。


企業のトップは、「現場の判断で・・・」等と釈明していますが、それが「社風」と言う事だとは考えていないようです。


これらの事は、原因を突き詰めると、Microsoft社と同じ、「そういう社風」なのだと思います。


・データを改ざんしても大丈夫。
・顧客に迷惑を掛けても大丈夫。


このように、自分が良ければ、後は問題ないと考える企業が増えて行く事自体が問題です。


以前、別のブログで「お天道様が見てるぞ !」と言う言葉を取り上げましたが、今の日本には、本当に「お天道様」が必要な国になってしまったのだと思います。


それでは次回も宜しくお願いします。


以上


【画像・情報提供先】
Wikipedia(http://ja.wikipedia.org/)
ZDNET Japan(https://japan.zdnet.com/)
Microsoft monoe's blog(https://blogs.msdn.microsoft.com/osamum/)

岩手の民間信仰 〜 聞いた事も無い信仰ばかり Vol.8


今回は、そろそろネタが尽きかけてきた民間信仰シリーズの第8弾をお届けします。


本シリーズに関しては、約9ヶ月前に「乳神様信仰」を、前後2回に別けて紹介しましたが、それ以外にも「オシラサマ」や「金勢様信仰(全5回)」を含め、約30項目もの民間信仰を紹介して来ました。


本当に、「これでもか!!」と言うくらい、岩手県内に伝わる民間信仰を紹介して来ましたので、もう「絞っても何も出ない、ボロ雑巾」の様な状況です。


そんな中でも、今回は、やはり珍しい次のような項目を紹介したいと思います。


●金山様信仰とふいご祭り
竜神(龍神)信仰


その他にも、主に「遠野地域」に伝わっていると思われる「夜泣稲荷信仰」とか「神隠し」を紹介しようと思ったのですが・・・情報が乏しく紹介する事が出来ませんでした。


また、「神隠し」は、別に「民間信仰」ではありませんので、また別の機会に、「遠野物語」の記載内容や、その他の事例と共に紹介したいと思います。

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今回は2項目と、紹介する項目が少なく、確かに「ネタ切れ」の影響もありますが、「ふいご祭り」に関する情報が大きくなってしまったので、このような形となってしまいました。


当初は、今回紹介する2件と合わせて、次の情報も紹介する予定でした。


●「お立木(オタテギ)」信仰
●「お不動様」信仰

しかし、これらまで一緒に紹介してしまうと、1回の情報量としては、とてつもなく長くなってしまうので、敢えて分割する事としました。


残りの項目は、次の機会に紹介します。それでは今回も宜しくお願いします。

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■金山様信仰と「ふいご祭り」


今回の最初は、「金山様信仰」と「ふいご(鞴)祭り」に関する情報を紹介したいと思います。


まずは「ふいご祭り」ですが、この行事は、別名では「たたら祭り」とも呼ばれていますが、鍛冶の道具として使われている「ふいご」を、風の神様としてお祀りし、仕事の安全を祈願する行事になっています。


「ふいご」とは、鍛冶職にとっては、鉄の温度を上げるためには、非常に大事な道具となっています。


「ふいご」と言う言葉は、「ふきかわ」が転じた言葉とされており、平安時代中期に作成された「倭名類聚抄」と言う辞典には、「布岐賀波(ふきがは)。韋(あしかわ)ノ嚢(ふくろ)、火ヲ吹クナリ。野王案ズルニ鞴ハモツテ冶火ヲ吹キサカンナラシムルトコロノ嚢ナリ。」と書いてあるようです。


一般的に、「ふいご」と言うと、現在では、「刀鍛冶」が、刀身となる鉄(鋼)を熱する時に使っている、いわゆる「箱ふいご」を思い浮かべる方も多いと思います。


しかし、その始まりは、動物の革、そのものを袋状にした物や、あるいは左図のように、革と板を組合せたりした「革ふいご」です。


日本において、最初に「ふいご」が現れたのは、日本書紀の「天岩戸」の段、第一の一書と言われています。


そこには、次のように記載されています。


『 故即以石凝姥為冶工 採天香山之金以作日矛 又全剝真名鹿之皮以作天羽皮吹 用此奉造之神 是即紀伊國所坐日前神也 』


即ち「石凝姥」を以て冶工(たくみ)として、天香山(あめのかぐやま)の金(かね)を採りて、日矛を作らしむ。又、真名鹿の皮を全剥ぎて、天羽鞴(あめのはぶき:鹿の革で作ったふいご)に作る。此を用て造り奉る神は、是即ち紀伊国に所坐す「日前神」なり


この内容では、鹿の皮を剥いで「天羽鞴(あまのはぶき)」と言う「ふいご」を作り、この「ふいご」で、紀伊国にある「日前宮(にちぜんぐう)」の御神体を作ったと言う事になっているようです。

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話は少し脱線しますが、「日前宮」とは、現在の和歌山県和歌山市にある神社で、一つの境内に、次の二つの神社があり、この二つを合わせて「日前宮」と呼んでいるのだそうです。



・日前(ひのくま)神宮:御祭神「日前大神」、御神体日像鏡(ひがたのかがみ)」
・國懸(くにかかす)神宮:御祭神「國懸大神」、御神体日矛鏡(ひぼこのかがみ)」



そして、これら二つの御神体に関しては、この神社の社伝によると、現在、伊勢神宮に祀られている三種の神器の一つ「八咫(やた)の鏡」と同等とされているそうです。


この二つの鏡は、「石凝姥命(いしこりどめのみこと)」が、「八咫の鏡」に先立って作成した鏡とされています。


そして、「日矛鏡」は、どのような鏡なのかは解りませんが、「日像鏡」は、天照大御神の御姿を型取った鏡とされています。


しかし、これら二つの御神体に関しては、門外不出で誰も見たことが無いとの事で、その真偽の程は誰にも解らないようです。

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さて肝心の「ふいご祭り」ですが、これは、岩手県に限らず、北海道を除く全国的に、火を取り扱う業種の方々が、旧暦、あるいは新暦の11月8日、または「一陽来復の祈願」と結びつけ冬至に行っている行事です。


祭りの行い方は、それぞれの地域、あるいは組織毎に異なるようですが、基本的には、供物や普段使っている道具を捧げて、神事を行うだけのようです。


しかし、特に関東地方では、供物に「みかん」等の柑橘系の果物を捧げ、神事の後に、この供物を、集まった子供たちに撒く風習もあるそうです。


供物に「みかん」を捧げるのは、「ふいご祭り」の起源に関係があると言う説と、江戸時代の豪商「紀伊国屋文左衛門」の故事に因んでいると言う説があるそうです。


「ふいご祭り」の起源には諸説ありますので、後で紹介しますが、「紀伊国屋文左衛門(紀文)の故事」とは、次の通りです。


①紀文が材木商として大成功した。
②豪商となり遊郭で遊び、小判をばら撒いた。
③そして、この時の様子が川柳となった。「紀伊国屋 蜜柑のやうに 金をまき」
④その後、さらに紀伊国屋が、みかん事業でも大成功した


これらの事実、あるいは噂が、「ふいご祭り」の供物である「みかん」と結びつき、「ふいご祭り」の時に供物として捧げた「みかん」をばら撒くようになったと考えられているようです。

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そして、「ふいご祭り」と「みかん」の関係ですが、これは前述の通り、「ふいご」そのものの起源に関係があり、次のような伝承が伝えられています。


①みかんの木に「ふいごの神」が降臨した。
②「ふいご」が、みかんの木に引っかかた。
③みかんの木の根本に「ふいご」があった。
④降臨した「ふいごの神」が、みかんの木に昇って難から逃れた。


また、岐阜県関市で活動していた、「関の孫六」として有名な刀工「孫六兼元」、あるいは肥前(現:佐賀県)の忠吉一派などは、「みかん」の色を焼刃の火色の基準とした事が伝わっています。


このため、先の「関の刀匠」の家には、「みかん」」と一緒に地元の名産「蜂屋柿」の木も庭に植えていたと言う話も伝えられています。


他方、「みかん」とは別に、島根県を始めとした中国地方では、「桂の木」を「聖木」として信仰しているようです。


四国地方は、「たたら製鉄」が盛んで、「たたら」」の火は、三日三晩燃え続けるそうですが、この「桂の木」も、春先になると三日間だけ赤く芽吹くと言われています。


また、「みかん」の所でも紹介しましたが、「金屋子神社」の社伝によると、鍛冶職の神様と伝わる「金屋子(かなやご)神」が地上に降臨した際、桂の木に寄りかかって身体を休めていたところ、「安倍村重」と言う人物が連れていた犬に吠えかかられて「桂の木」に昇って難を逃れたとも伝えられています。


その後、この「安倍村重」は、この「桂の木」の横に「金屋子神社」を建立し、自ら神主となったそうです。


ちなみに、先に紹介した「桂の木」は、島根県雲南市にある「菅谷たたら山内」と言う施設にある木なのですが、この施設内部の「たたら場」は、映画「もののけ姫」における「たたら場」のモデルになった施設とされています。

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岩手県における「ふいご祭り」では、一般的に12月8日、12月17日、あるいは18日に開催するケースが多いようです。


そして、鍛冶場を掃除して道具を洗い、餅、お神酒、そして燈明等を神棚に供えて、「鍛冶神」を拝むそうです。


「鍛冶神の掛図」を持っている家では、神棚の横に、左図のような掛け軸を掛けて拝むそうです。


この「鍛冶神掛図」では、中央、ないし中央上段に「三宝荒神」、そして下段に鍛冶場の様子を書いたものが多いようです。


三宝荒神」と随神だけの図柄や、「ふいご」に風を送ったり、あるいは槌を振りあげて鍛冶を手伝ったりする鬼の入った図柄、または天上界に「風神」、「雷神」、「大黒天」、「不動明王」、「稲荷神」の神仏を書いた図柄等、もうゴチャゴチャになっているようです。


それでは、次に、「ふいご祭り」の起源について、2種類の説を紹介します。

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【 鞴の中に人を隠した 】説


江戸時代中期となる天明4年(1784年)に、鉱山師「下原 重仲」が著した「鐵山必要記事(鐵山秘書)」によると、「ふいご祭り」の起源は、次の通りとなっています。


昔いつの頃か分からないが、ある鍛治場があった。


11月8日に来客があってその日は仕事もせず、酒を飲んでいたところ、駆落者とも凶状持ちともみえる男が突然飛込んで来て、追手を受けている、なんとか陰ってくれと一向に頼まれた。


余儀ないことと思い、早速の思いつきで、吹子の蓋を取ってこの中へその男を入れ、上蓋をしかと締め、俄に注連縄を張り、膳部、神酒、燈明を供え、恭しく礼拝していた。


そこに大勢の追手が飛込み、この屋に逃げ込んだ男を出せという。


左様なことは知らぬ、不審ならば家捜しせよと答えるが、それとばかりに家捜ししたが見つかる道理はなく、最後に鞴に目をつけ、これが怪しいとすでに上蓋を取らんとした。


鍛冶屋驚いて、今日は折角の鞴祭である。怪しいと思うならば何卒明日改められたいと嘆願すれば、それならば明日まで屹度預けると強く申しつけて帰った。


やっとの思いで、鞴の蓋を取って内を見れば、不思議や彼の男の姿は見えなかった。


その後この鍛冶屋は日増しに繁盛し、富貴の身となったという。これ故に毎年11月8日には鞴に神酒、洗米、膳部、燈明を供え、客を招いて酒を饗し、大いに祭りを行うこととなった。



【 天から鞴が降って来た 】説

岩見国邑智郡目貫村に住む「岡崎篤三」氏の祖父は刀匠であり、その祖先も歴代刀匠であって、同家に伝わる「鍛冶職由来縁起」という古文書には、下記の内容が記載されている。


神武天皇が、筑紫国日向の高千穂の峰に登り、東の方をご覧になると夷敵が多く、これを平定しようと思われ、日天に向って五百串を立て御祈りされると、天空から八頭の烏が飛び来り、先導すると東方へ飛び立った。


これに従って出陣されると、国々から御味方に馳せ参する陪臣が多く、備前の福岡まで軍を進めて着陣された。


そしてこの里に鍛冶師は居ないかと尋ねられ、味眞治命、道臣命椎根津彦命、天富命の軍勢に詮議されたところ、「天津麻羅(あまつまら)」という鍛冶師が居るということで彼を召出され、剣一千振、斧一千振を作るように下命された。


この時、又、八頭の烏が丸鎖を啣えて飛び来り、これを「天津麻羅」に与え、同時に天から鞴や金敷が降って来た。


丁度この日が冬11月8日であり、天皇は暫くこの地に行宮を設けて帯留された。これが即ち高島宮である。


この時、天皇は46才の御年であり、未だ即位される前のことである。「天津麻羅」は鍛冶場を設け、剣、斧、矛などの全てのものを作り献上したのである。


天皇は「天津麻羅」を鍛冶の庄として天国の名を与えられた。天国の険の焼刃は阻阻を含み、曜霊丸、夜光丸と銘が入れられた。以後11月8日は鍛冶職の鞴祭として祝祭するようになったという。

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最後に、これら「鍛冶の神様」とされている神々を紹介したいと思います。

金屋子神


この神様は、前述の「みかん」の説明の箇所で紹介した神様で、中国地方で多く祀られている鍛冶の神様です。


「かなやこ」、あるいは「かなやこの神」と言う言葉の初見は、広島県壬生の「井上家文書」中、戦国時代となる天文10年(1541年)の記録「金山の祭文」とされています。


そして、この神様は、一般的には「女神」とされており、後述する「金山様」、「天目一箇神」と同一神とされたり、あるいは神仏が習合した形として「三宝荒神」の姿で描かれたりした掛け軸等も存在するそうです。


金屋子神」に関しては、先の広島県安芸市にある「金屋子神社」が、全国にある「金屋子神社」の総本社となり、その縁起も前述の通りとなっています。


この「金屋子神」は、日本各地で自ら「村下(技師長)」となり、鍛冶の指導を行ったと言う伝説もあるそうです。


【 金山様 】


「金山様」も、当然の如く「鍛冶の神様」とされていますが、その系統は、大きく次の2つの系統に分かれているようです。


そして、「金山系」の神様は、上述の「金屋子神」と同一神とされているようです。


・金山(金神)系
・金山彦系(かなやまひこのかみ)


次に「金山彦命」系ですが、この神様は、「伊邪那岐(イザナギ)」が、「加具土命(カグツチ)」を産んだ際の火傷で苦しんでいる時に、その嘔吐物から産まれた神として記紀(古事記/日本書紀)に登場します。


金山彦命」を祀る神社としては、岐阜県不破郡にある「南宮(なんぐう)大社」が有名で、この神社から御祭神が分霊されて日本各地の「金山神社」に勧請されていったようです。


この「南宮大社」は、前述の「ふいご祭り」の起源で紹介した「神武天皇東征」の時に舞い降りた金鵄を、霊験をもって助けたとされ、当初は、美濃国の府中に祀られていたそうですが、その後、第10代「崇神天皇」の御代に、現在の地となる南宮山の山麓遷座したとされています。


上記の通り、岩手県を始め、全国各地にある「金山神社」には、この「南宮大社」から御祭神を勧請したケースが多いようですが、しかし、その歴史は、それほど古くないと考えられているようです。


國學院大學(黒田迪子研究員)の調査によると、現在、多くの「金山神社」の御祭神となっている「金山彦命」ですが、元々「金屋子神」だった御祭神を、明治時代の神社行政で、各神社の神官が強制的に「金山彦命」に変更した可能性が高いとしています。


他方、弊社ブログには何度も登場する「柳田國男」は、「金屋子神八幡神」と言う説を唱えており、現在では、この説が有力となっているそうです。


この「金山様」と言う神様は、岩手県では県北「洋野町八木」で祀られており、この神社には、次のような伝承があるそうです。(※現在この神社の御祭神は「金山彦命」)


金山神社縁起 】

八木港へ鉄積取りに大阪より千石積みの親船が来泊して鉄を満載し出帆せんとするも、錨が磯根に懸り引揚げる事ができず困難失望を極め、やむを得ず、船頭・船員、金山神社に七日七晩不眠不休にて救難を祈願す。


然るところ、八日目に至り不思議にも錨が浮き揚がり、船員一同感謝し出帆する。


偏て船頭、翌再来の時に吉野杉苗を持参し、社殿前側に移植奉納せしと言う、吹切三郎兵衛氏の遺説が書き記されている


【 稲荷神 】


ご存知の通り、「稲荷神」は、特に鍛冶職にだけ信仰されている神様ではありません。


名前に「稲」と言う字がある通り、元々は穀物神・農耕神でしたが、現在では、商工業を始め産業全体を象徴する神として信仰を広げています。


この「稲荷神」は、その起源を辿ると、渡来人である「秦氏」に行き着きます。


秦氏」は、平安時代初期、弘仁6年(815年)に嵯峨天皇の命により編纂された「新撰姓氏録(しんせんしょうじろく)」によると、秦「始皇帝」の末裔で、応神14年(283年)に、百済から日本に帰化した「弓月君(融通王)」を始祖する氏族とされています。


この「秦氏」は、稲荷神を信仰する氏族だったそうですが、「秦氏」一族が日本各地に移住することにより、「稲荷信仰」も日本全国に拡がったと考えられています。


さらに、この「秦氏」は、鍛冶の技術を持つ一族だったとされ、そのために「稲荷神 = 鍛冶神」となったとも言われています。


そして、「稲荷神 = 鍛冶神」と言う信仰は、全国に約3万社あると言われる稲荷神社の総本社となる「伏見稲荷大社」がある影響かもしれませんが、特に、「金屋子神」への信仰が見られない京都に多いそうです。


他方、「伏見稲荷大社」では、11月8日に「火焚祭」が行われていますが、これは「ふいご祭り」と習合した結果とも言われています。


天目一箇神

この「天目一箇神(あめのまひとつのかみ)」も、日本の神話である「古事記」、「日本書紀」、「古語拾遺」、および「播磨国風土記」に登場する、製鉄や鍛冶の神とされています。


この神様、様々な別名を持っており、次のように13個もの名前を持っているそうですが、この中でも有名なのは、「天津麻羅(あまつまら)」で、前述の「ふいご祭り」の起源にも登場しますし、三種の神器の一つ「八咫の鏡」を作るための鉄も、この「天津麻羅」が製鉄した事になっています。


・天之麻比止都禰命 :あめのまひとつねのみこと
・天久斯麻比止都命 :あめのくしまひとつのみこと
天之御影命 :あめのみかげのみこと
・天之御蔭命 :あめのみかげのみこと
天津麻羅 :あまつまらのみこと
・天久之比 :あまくしひのみこと
・天戸間見命 :あめのとまみのみこと
・天奇目一箇命 :あめのくしまひとつのみこと
天目一箇命 :あめのまひとつのみこと
・天目一箇禰 :あめのまひとつねのみこと
・天戸須久根命 :あめのとすくねのみこと
・天照眞良建雄命 :あまてらすますらたけおのみこと
・明立天御影命 :あきたつあめのみかげのみこと


このように沢山の名前を持っていますが、「目一箇」とは、字の如く「ひとつ目」を意味しています。いわゆる、民間信仰や妖怪として登場する「ひとつ目小僧」の事です。


他方、その昔、「たたら製鉄」に従事する者は、火を見続ける事で片目を失う者が多い職業とされていたようです。


そして、その結果、「たたら製鉄 = ひとつ目小僧」と繋がり、「たたら製鉄」従事者が、「天目一箇神」を信仰するようになった、と言う説もあるようです。


三宝荒神


三宝荒神」は、屋内の火所に祀られ、「竈神」、「火の神」、「火伏せの神」とされ、「三面六臂」、あるいは「八面六臂」で憤怒の表情で現されています。


三面六臂 :三個の顔と六つの腕とを一身に備えた形。阿修羅像が有名。
・八面六臂 :ハ個の顔と六つの腕とを一身に備えた形。実際の仏像には存在しない。


また、特に岩手県を始めとする東北地方では、何故か「三宝荒神」を、「ふいご祭り」の祭神として祀るケースが多いそうです。


中国で編纂された「偽経」である「无障礙経(むしょうげきょう)」には、「三宝荒神」とは、次のような神とされています。


如来荒神、鹿乱荒神(そらんこうじん)、憤怒荒神三身をいい、怒るときは一切衆生の福徳を奪い障礙となす。 』


しかし、この神様は、インド由来の神様ではなく、日本の仏教信仰の中で独自に進化した神様とされ、不浄を嫌うので、最も清潔な台所に祀られ「竈神」になっています。


さらに、神道密教山岳信仰、その他民間信仰等とも習合し、次のような神様とされています。


・「役行者(役小角)」が金剛山で修行中に「荒神」が現れ、その地に祠を作って祀った。
密教経典「大日経」の注釈では「日天」の眷属で地震を司る「剣婆(けんばや)」と同一神とされる。
神道では、荒ぶる神「素戔鳴命(スサノオ)」の子孫とされている。
陰陽道では、「御年神」、「奥津彦」、「奥津姫」の三神であり、「竈神(かまどかみ)と同一神とされる。


何れにしても、激しい験力(げんりき)を持ち、不浄を嫌い、祟りやすい神であるが、「火」との関係が強いので、「ふいご祭り」の祭神となったと考えられているようです。


ちなみに、「竈神」に関しては、本シリーズの第2回目で取り上げて紹介しています。

★過去ブログ:岩手の民間信仰 〜 聞いた事も無い信仰ばかり Vol.2


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竜神(龍神)信仰


三陸地方には、「八大竜王」を祀った神社や石碑が結構あります。


もちろん、「八大竜王」、あるいは「竜神様」を祀る信仰/風習は、日本全国で行われており、元々は、「竜(龍)」が、湖や大河、あるいは川に住むと考えられていた事から「水神様」として、「雨乞い」や「水害防止祈願」のために祀られています。


「竜」を祀ると言う信仰は、古代中国の「道教」で信仰されていた「竜王信仰」と、仏教における「八大竜王信仰」が習合した形と考えられているようです。


道教における「竜王信仰」では、「竜」は、天にいる最高神「玉皇大帝(ぎょくこうたいてい)」の配下として、雨や水を司る役目を負い、次の二王がいると考えられていたようです。


・河竜王 :河川の水を調整したり、雨を降らせたりする。
・海竜王津波や潮の満ち引きを起こす。海上の安全を司る。


他方、仏教における「八大竜王信仰」では、「竜王」とは、「天部」に属する、次の8名の「竜族」の神様で、仏法を守護していると考えられています。


・難陀(なんだ) :「歓喜」を意味する名を持つ竜王。「跋難陀」の兄。過去に「娑伽羅」と交戦。
跋難陀(ばつなんだ) :「難陀」の弟。「難陀」と共に古代インド「マガダ国」を保護。
・沙伽羅(しゃがら) :竜宮の王。大海竜王空海が連れてきた「清瀧権現」は「娑伽羅」の娘。
和修吉(わしゅきつ) :別名「九頭竜王」/「九頭龍大神」。元は須弥山で小竜を食べて暮らしていた。
徳叉迦(とくしゃか) :「徳叉迦竜王」が怒って凝視すると、見つめられた人は死ぬと伝わる。
阿那婆達多(あなばだった) :別名「阿耨達(あのくだつ)龍王」。ヒマラヤ「阿耨達池(無熱悩池)に住む。
摩那斯(まなし) :須弥山「喜見城」を阿修羅が海水で攻撃した時、海水を押し戻した竜王
優鉢羅(うはつら) :別名「青蓮華龍王」。青蓮華を生ずる池に住む。

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ちなみに、「りゅう」には、「竜」と言う漢字と、「龍」と言う漢字がありますが、どのような違いがあるのかご存知ですか ?


漢和辞典を調べてみると、次のような違いがあるそうですが、どちらも「りゅう」を表す漢字で間違い無いようです。


・「竜」 :常用漢字。「龍」の省略体。新字体
・「龍」 :常用外漢字。旧字体


しかし、漢字発祥の地「中国」では、これが逆転します。つまり、元々は「竜」と言う字が使われ、その後に「龍」が使われ続けたそうです。


皆さんご存知の通り、漢字とは、中国「殷(いん)」の時代に使われていた「甲骨文字」から産まれた字体です。


そして、この「甲骨文字」では、「りゅう」と言う字には、「竜」が使われていたとされています。


ところが、その後、「竜」と言う字を、厳格に表現させようとして「龍」と言う字が使われ出したのですが、この「龍」の字の方が、「竜」よりも長い期間使われ続けたそうです。


そして、日本に漢字が伝わった時には、この「龍」が使われていたため、日本における「りゅう」は、「龍」が旧字体となってしまったようです。


その後、太平洋戦争後の国語改革によって、使いやすい漢字と言う事で「竜」が常用漢字となり、「龍」が常用外漢字になってしまったそうです。


このため、本ブログでも、日本の法の下、基本的には「竜」の字を使う事とします。

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さて、そんな「竜神様」ですが、最初に紹介するのは、宮古市鍬ヶ崎(くわがさき)日立浜に鎮座されている「竜神様」です。


この「竜神崎の竜神様」は、宮古湾の入り口、三陸復興国立公園三陸ジオパークの中心となる「浄土ヶ浜」のちょうど背後に位置しています。


画像を見て分かる通り、海にせり出していますので、東日本大震災津波の直撃を受け、木製の社殿は流されてしまったそうです。


しかし、社殿内部にあった石宮と石碑は、無事に残ったようです。


元々、画像の通り波打ち際に建立されていたので、石宮と石碑は、強化されていたのかもしれません。


この「竜神様」を始め、三陸沿岸の「竜神様」は、海のそばに建立されているので、ほぼ全てが、何らかの被害を受けているようです。


この「竜神様」は、航海安全と大漁祈願のための信仰の場所で、漁民らは出漁や帰港時にはここに参拝しているそうですが、何時、誰が創建したのか等、由緒は分かりませんでした。

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次は、上記「日立浜」からは、直線距離で2kmほど南にある「磯鶏黄金浜(そけい-こがねはま)」にある「龍神碑」です。


この石碑の裏側には、次のような文が刻んであるそうです。


『 ある年の十二月磯鶏地引漁場の前須賀に一個の石が打ち上げられ、水夫一同これを見、竜神様の授かり物で目出度いと大変喜び石崎にこの碑を設立祭り祝った。 』


そして、この碑は、明治28年(1895年)の12月26日に建立されたと彫られているようです。


また、法政大学出発局から出版されている「漁撈伝承(川島秀一著)」には、この引き上げられた石は、当初、形が良い石と言うことで、「蛭子(えびす)石」と呼ばれていた事も紹介されているそうです。


ちなみに、「磯鶏」と言う地名ですが、その意味は、「高貴な人物が海で溺れ死んだ時、磯で鶏が鳴いて知らせた」と言う伝説から産まれた地名との事ですが、元々は「曾計比」と言う字だったそうです。

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次も宮古市田老の青野滝漁港近くにある「龍神碑」です。


「青野滝」と言う地名は、この漁港近くを流れる「青野滝川」の上流にある滝にちなんだ名前で、この滝には「アオ」と言う巨大魚が住むと言う伝説が残されているそうです。


この「龍神碑」には、石碑右側には、江戸時代末期となる「弘化四年(1847年)丁未(ひのとひつじ)」、左側には「四月吉日」、下部右側に「石工・甚蔵、喜久松」、そして左側に「両村中、宝明院」と刻まれているそうです。


そして、「宝明院」と言うのは、この石碑を調査した方によると、山伏の名前との事でした。

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次は、宮古市から国道45号線沿いに南下した釜石市片岸町にある「稲荷神社」敷地内にある「八大竜王」の石碑です。


この石碑は、国土安泰と海上交通の安全、加えて村の繁栄を祈願して、明治29年(1896年)に建立され、下記の文字が刻まれているそうです。


『 天地地久國土安穏 南無妙法蓮華経 八大龍王鎮座 海上安全村内繁栄 』


また、建立者として「木川榮吉」と言う名前も刻まれているそうです。


片岸町の「稲荷神社」自体は、江戸時代初期となる「元禄4年(1691年)」に、御祭神「倉稲魂命(うかのみたまのみこと)」を勧請して建立された神社です。

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最後は、大船渡市末崎町小中井の県道275号線沿いにある「宝龍神社」境内に建立されている「八大龍神」碑です。


この石碑も、誰が、何時、何のために建立したのかは、全く解りませんでした。


そもそも、この「宝龍神社」自体の由緒/由来や御祭神さえ解りませんでした。


また、「宝龍神社」から1kmほど南下した末崎町泊里にも、左の画像のような「八大龍神」碑があります。


この石碑は、「ごいし民族誌」によると、地元の「鎌田家」の祖先が、江戸時代末期、元治元年(1864年)に建立したと記録されています。


「鎌田家」では、この石碑を氏神として祀り、毎年、正月(2日)とお盆に参拝していたそうですが、津波で、この石碑に続く道が崩れ、近づけない状況が続いているそうです。


この泊里の「鎌田家」の一族では、長期の漁に出る前には、この石碑を拝んでから船に乗っていたそうで、日常的にも、港に出入りする時には、この「石碑」を、船から拝んでいたとされています。


この大船渡市末崎町近辺には、「末崎町の歴史」と言う資料によると、場所や画像は確認出来ませんでしたが、この「八大龍神」碑以外、別の場所にも「八大龍神」碑があり、さらに、「寳龍権現」とか「龍王講」と言う石碑も建立されているそうです。

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今回、「竜神/龍神信仰」として、「八大龍神」や「八大竜王」の石碑を紹介しましたが、それ以上に、何よりも多いのが「津波供養塔(碑)」です。


この石碑や塔は、三陸海岸の、ありとあらゆる場所に建立されており、その数は、国土交通省の調査によると、岩手、青森、そして宮城の三県で、317個にも上るとされています。


中でも、岩手県がダントツで、225個も存在するようです。(青森:8個、宮城:84個)


そして、こうした石碑には、次のような碑文が刻まれているそうです。(例:岩手県田野畑村の石碑)


『 ヂシンガシタラ、ユダンスルナ 』
『 ヂシンガアッタラ、タカイトコロニアヅマレ 』
『 ツナミニオハレタラ、タカイトコロニアガレ 』
『 オカミノサダメタシキチヨリ、ヒクイトコロニイエヲタテルナ 』


平成28年東日本大震災では、宮城県の犠牲者が多かった訳ですが、どうして、こうした過去の遺産を活かすことが出来なかったのか、非常に悔やまれるところです。


先人達は、意味も無く、このような石碑を建立するはずはありません。石碑を立てるには、お金も労力も必要です。


自分達の子孫が、無事に生き抜く事を願って石碑を建立している訳ですから、先人達の思いを無駄にしないようにしたいものです。


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今回、数は少ないですが、次のような民間信仰をご紹介しましたが、如何でしたか ?

●金山信仰と「ふいご祭り」
竜神(龍神)信仰


本シリーズを振り返って見てみると、当初は、1回の情報提供で、10個もの民間信仰を紹介していました。


ところが、今回は、1回で2項目。どんどん紹介の仕方が、変わって来てしまったようです。


当初は、「広く浅く」が基本コンセプトだったようですが、近頃では、その反対で「狭く深く」となっています。


民間信仰は、様々な要因が絡み合っているケースが多いので、「さらっと」表面だけでは、説明出来ないケースが多い事に気が付きました。


今回紹介した「金山信仰」も、過去に紹介した「カマドガミ信仰」と繋がっています。


また、「竜(龍)神信仰」も、「竜(龍)」に「さんずい編」を付ければ「滝(瀧)」となり、「水神信仰」にも繋がりますし、さらに「滝 = 多岐都比売命」となり、過去に紹介した「瀬織津姫命」や「宗像三女神」にも繋がってしまいます。

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「どの信仰が先なのか ?」と言う論争になってしまいますが、私は、基本は、次の順番だと考えています。


「自然物信仰」 → 「神道」 → 「仏教」


最初に、「海」、「山」、「川」、「巨石」、あるいは「巨木」等、人智(人知)の及ばぬ物を崇拝し始め、そこに「神」と言う考えを習合させたのが「(古)神道」だと思います。


その後、「仏教」による国家統一を考えた「国家仏教」の導入に伴って生まれた「本地垂迹思想」により、「神」と「仏」を習合させ、この考え方が、明治時代が始めるまで続きました。


ところが、明治になると、「天皇」による国の支配を明確にしたい政府の方針により、これまで1,000年以上もの長きに渡り信仰されてきた「神仏習合」を強制的に廃止し、現在に至っているのではないかと思われます。


つまり、元々、信仰してきた「自然物」に対して、政治の都合で「神」だ、「仏」だと、余計な者を習合させてきたのが、現在の日本の宗教なのだと思います。


このため、何かの民間信仰を探って行くと、必ず、神道系の信仰とか、仏教系の信仰と重複するのは、信仰の歴史を考えると、仕方の無い事なのかもしれません。

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また、このような信仰の流れが、日本人が多宗教化した事の根本的な原因なのだと思います。


現在は、少し事情が異なるとは思いますが、昔の日本人の家の中なら、仏壇と神棚は、当たり前の様に備え付けられていました。


また、大正時代以降、昭和ともなると、仏壇と神棚を祀っている家でも、12月になれば、クリスマスツリーを飾ってケーキを食べたりして、仏教、神道キリスト教と、もうカオス状態です。


しかし、家に「神様」や「仏様」が居て、常に見守って下さっていると思う事で、人間の行動に対して、一定の「歯止め」が効いていたのだと思います。


ところが、これが現代となると、家の中から「神棚」や「仏壇」が消え、さらに戦後には、「現人神」と言われた天皇さえ消えてしまい、もう何の歯止めも無くなってしまいました。


「お天道様が見てるぞ !」とは、私自身は、非常に良い言葉だと思います。


この「お天道様」に、「天照大神」を当てはめるか、「大日如来」、あるいは「天皇」を当てはめるのか個人の自由です。


しかし、この言葉があり、それを皆さんが信じていたからこそ、「安心な日本国」が成立していたのだと思います。

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まあ、「現人神」が、消えた方が良いか悪いかの判断はさて置き、とにかく、日本人の心の中から、「何かを敬う」と言う考えが無くなってしまった事は問題だと思います。


「王政復古を!」とか、「国家鎮護のために仏教を!」等とは叫ぶつもりは毛頭ありませんが、何か、「心のスキマ」を埋める物が必要なのかもしれません。


しかし、その「スキマ」を付いて、「オウム真理教」等の異常者に付け込まれたり、あるいは「○○ファースト」等と、耳に心地よい言葉で、人を煽動しようとしたりする考え方は危険です。


皆さんも、この「民間信仰シリーズ」を読んで、何かを感じて頂ければと思います。


次回は、次のような「民間信仰」をご紹介する予定です。


●「お立木(オタテギ)」信仰
●「お不動様」信仰
●「九頭竜」信仰


それでは次回も宜しくお願いします。


以上

【画像・情報提供先】
Wikipedia(http://ja.wikipedia.org/)
・tenki.jp(https://tenki.jp/)
室蘭工業大学(http://www.muroran-it.ac.jp/)
・職業、鍛冶手伝い(https://blog.goo.ne.jp/forginer1984)
・ふいご祭りの伝承とその重層性について(國學院大學/黒田迪子著)
岩手県神道青年会(http://ganshinsei.jp/)
・みやこ百科事典 ミヤペディア(http://miyapedia.com/)
独立行政法人 国立文化財機構「ごいし民族誌
国土交通省津波石碑に関する調査(青森・岩手・宮城)」

社内システムのクラウド化 〜 皆でクラウドにすれば怖いくないのか ? - その3


今回の「IT系お役立ち情報」は、前回お届けした「社内システムのクラウド化」の続編となります。

前回までのブログでは、次の様な内容を紹介しました。

●そもそもクラウドとは何 ?
クラウド化メリット/デメリット
クラウドの種類
クラウド導入までの全体の流れ
クラウドに適さない業務


【過去ブログ】
社内システムのクラウド化 〜 皆でクラウドにすれば怖いくないのか ?-その1
社内システムのクラウド化 〜 皆でクラウドにすれば怖いくないのか ?-その2


これまでの情報で、誰が(Who)、どうやって(How)、何処で(Where)、クラウド化に向けた業務を行うのかが明らかになりました。


そして、残りの、何時(When)、何を(What)、いくらで(How much)に関しては、これは企業毎、そしてケース毎に異なりますので、本ブログでは紹介出来ません。


しかし、「何のために(Why)」に関しては、若干説明可能です。


既に、初回ブログでメリットを紹介していますが、今回は、より具体的に、次のケースを紹介します。


●コスト削減手段としてのクラウド
●本番カットオーバーまでの時間短縮としてのクラウド


そして、それ以外に、クラウド化に逆行する次の2つの問題に関しても紹介します。


クラウド化を妨げる要因
●脱クラウドの動き


クラウドは良いぞ〜 !」等とばかり言っていると、弊社が、クラウドサービス提供業者の「宣伝マン」になってしまいますので、最後は、クラウドに関する最新の問題についても紹介しておきます。


それでは今回も宜しくお願いします。

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■コスト削減手段としてのクラウド


クラウド化のメリットとして、一番に取り上げられる「コスト削減」について、そのポイントを紹介したいと思います。


社内システムをクラウドにすると、何で「コスト削減」が出来るのかに関しては、過去ブログの「メリット/デメリット」で紹介した通り、次の理由があります。


理由1:サーバー室撤去によりハードウェアの維持管理費が削減出来る。
理由2:同じくサーバー室が無くなるので、空調費用も不要になる。
理由3:同じくサーバー室が無くなるので、各種電気料金も不要になる。
理由4:維持管理は業者が行うので、メンテナンス要員が不要になる。
理由5:ソフトウェアのライセンス等の初期費用が不要になる。
理由6:ハードウェアのリース費用も不要になる。


クラウドには、このようなメリットがあるとされていますが、次の点も注意する必要があります。

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クラウドのサービス形態による費用の違い
過去ブログで紹介した通り、クラウドのサービス形態には複数種類あります。

略称 名称 内容
SaaS Software as a Service ソフトウェアを提供するクラウドサービス
PaaS Platform as a Service 基礎部分(開発環境)を提供するクラウドサービス
IaaS Infrastructure as a Service ハードウェア等のインフラを提供するクラウドサービス


加えて、現在では、クラウドのサービス形態は、さらに細分化されていますので、社内システムをクラウド化する場合、自分達のシステムは、どのようなサービス形態が一番相応しいのかを、きちんと精査する必要があります。


そして、そのサービス形態により費用は大幅に異なります。


オンプレミス運用に近いサービス形態にすればする程、業務運用は、社内システムに近づける事は出来ますが、逆に、その分だけ費用は高額になります。

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●リース費用とクラウド費用との比較
上記メリットの中に、「ハードウェアのリース費用も不要になる。」と記載しましたが、この点も、よく精査する必要があります。


世間一般では、「リースよりクラウドにした方が、維持費が安くなる。」と言われているだけで、この法則が、自社に当てはまるとは限りません。


旧式のハードウェアを使用し続けている場合、ハードウェアを更新せずに再リースを掛ければ、リース費用は、格段に安くなります。


ハードウェアのスペックが、業務運用に適さない場合、そのまま同じハードウェアを使い続けると、業務運用に支障をきたす可能性がありますが、データ量が増えていない様なケースでは、無理に、最新ハードウェアに更新する必要はありません。


このようなケースで、クラウド化を推し進めると、逆に費用が増加する必要があります。

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●サイジング活用による初期費用抑止

クラウドでは、業者との契約方法にも依りますが、システム利用中に、各種リソースのサイジングが可能です。


「サイジング」とは、例えば、下記のような数量を増加させたり、あるいは減らしたりして調整する事を意味しています。


・サーバー数
・ライセンス数
・CPUのコア数


オンプレミスの社内システムでは、最初から、上記のリソース数量を固定した形で購入しますので、運用途中でリソース数量を変更するのは、難しいものがあります。


しかし、クラウドの場合、リソースの数量が多過ぎる場合、途中でリソース数量を減らす事も出来ますし、その逆も可能です。


このようなリソース数量を調整する事で、余計な費用の支出を抑制する事が可能となります。


社内システムをクラウド化する場合、上記のような点を精査し、自社にとって、どのような形で費用を抑制出来るのかを検討して下さい。

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■本番カットオーバーまでの時間短縮としてのクラウド


次に、クラウド化のメリットとして、次に取り上げられる2点に関して、その理由を紹介します。


・作業時間の短縮
・サイジングの自由化


昨今、「どこの企業が、どこを買収した」等、M&A関連の話を数多く聞くようになって来ました。


M&Aの目的は、企業により様々です。規模/シェア拡大、事業多角化、弱体部門強化、成長事業強化・・・その企業の事情により、M&Aの理由は沢山あります。


そして、M&Aを行った企業の多くの経営者達は、インタビューで、「合併による相乗効果を実現したい !!」等と、張り切って語っていますが・・・相乗効果を出すのは、非常に難しいものがあります。


「不可能」とは言いませんし、実際にM&Aにより相乗効果を出している企業も沢山います。


M&A成功のコツは、沢山あると思いますが、相乗効果を出すための基本は、重複業務を減らして無駄な業務を無くす事だと思います。


そして、無駄な業務を無くすために必要な作業で一番重要なのは、業務システムの統合だと思います。


今や、ほとんど企業で業務はシステム化されています。このため、重複業務の解消には、どうしてもシステムを統合する必要があります。


しかし、一言で「システム統合」と言っても、これは一筋縄では行きません。


組織の合併は、企業だけに限りません。2005年〜2006年にかけては、俗に言う「平成の大合併」が行われ自治体の合併が大規模に行われました。


このような事もあり、企業や自治体で数多くの「システム統合」が行われましたが、国内や国外では、下記のような失敗事例も多く発生しました。


みずほ銀行 :富士銀行、第一勧業銀行、日本興業銀行
ユナイテッド航空(米) :ユナイテッド航空コンチネンタル航空
日本郵政ゆうパックペリカン便
・ボーダーフォン(英) :ERP導入によるシステム統合の失敗



特に、「みずほ銀行」のシステム統合の失敗は、影響が広範囲に及んだ事と、失敗が何回も発生した事から、現在では「システム統合の失敗事例」の象徴として、数多くのサイトが、この問題を取り上げています。

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ところで、システムのクラウド化で、カットオーバーまでの時間が大幅に短縮出来る、と言われています。


しかし、システムのクラウド化に関しては、前回ブログで紹介した様に、既存システムの棚卸し調査を始め、事前の調査/検討段階で、かなり多くの作業があります。


システムのクラウド化で、本番までの時間を短縮できるのは、前述のM&Aのケースだけだと思います。


システム統合の場合、前述の通り、企業合併の相乗効果を出すために、業務の一本化と、それに伴うシステム統合を行います。


そして、業務を一本化すると、当然、2つの業務が1個になる訳ですから、単純に計算しても、システムが取り扱うデータの量は倍増します。


データ量が倍増しますので、システムの処理能力も倍増させる必要もありますし、そもそも、データを格納するサーバーの数も倍増させる必要があります。


しかし、これは単純計算ですので、実際は、2倍のリソースは必要無いかもしれませんし、逆に、2倍以上のリソースが必要になるかもしれません。



このように統合したシステムの処理能力やサーバー数が解らない場合、本当に綿密な計算が必要になりますが・・・もしも、この計算を間違えてしまったら、最悪、統合したシステムが停止してしまう可能性があります。


事実、先の「みずほ銀行」の失敗ケースでも、データの処理件数が想定量を超えてしまった事が原因で、振り込み処理を正常に処理出来なくなってしまい、結局、金融庁から行政処分を受けてしまっています。



このように、統合後のシステムが必要とする各種リソース量が解らない場合、クラウドが有効になります。


クラウドで利用するサービスにも依りますが、「IaaS(Infrastructure as a Service)」を利用すれば、業務開始後、自由に各種リソース量を変更する事が可能です。


これをオンプレミスにしてしまうと、もう調整不可能です。


このようなリソース量の調整に関しては、当然、システム統合における計画段階で、ちゃんと計算すると思いますが、精査すればする程、凄く時間が掛かります。


しかし、統合システムをクラウド環境に移行するのであれば、本番カットオーバー後も自由に調整出来るので、リソース量の精査に、それほど時間を掛ける必要が無くなります。


この点に関して、クラウドが非常に有利になります。

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上記以外のケースで、カットオーバー時間が短縮出来る事例としては、クラウド業者が提供するシステムを利用する事で、移行時間を短縮出来ると言う事例もあるようです。


このケースは、「SaaS(Software as a Service)」と言うサービスを利用し、クラウド業者が提供するシステムを、社内標準システムにするケースです。


確かに、既に存在しているシステムを利用する訳ですから、システムを改修、あるいは再開発する時間が不要になるので、移行時間を大幅に短縮する事は可能だと思います。


しかし・・・これまで、自社の専用システムを使ってきた企業が、業者が提供するサービスを使用出来るとは思えません。


特に日本の企業は、パッケージ・ソフトウェアを購入しても、絶対にカスタマイズして、結局は、自社専用システムにしてしまいますので、業務システムとして「SaaS」を使用するのは無理だと思います。


恐らく「SaaS」サービスを利用する場合でも、業者のシステムに対して大幅なカスタマイズを施す事になるので、移行工数は、クラウドを使わないケースとおなじになってしまうと思います。


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クラウド化を妨げる要因

これまで、クラウド利用のメリットを紹介して来ました。


しかし、社内システムをクラウドに移行した企業は、実際の数は不明ですが、世間で騒がれている割には、かなり少ないようです。


クラウド移行を妨げている要因は、企業により個別な事情があるとは思いますが、大きくは、次のような項目があるようです。


・セキュリティー・リスク
・運用の継続性
・業者の姿勢
・システム改修
・業者の継続性・切り替え
・内部統制
・パフォーマンス
・トラブル対応


その他にも、細かな点を挙げればキリがありませんが、社内システムのクラウド移行を妨げている要因に関して、代表的な項目をいくつか紹介します。

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●セキュリティー・リスク

クラウド化を妨げる一番の要因は、やはりセキュリティー・リスクのようです。


既にクラウドに移行した企業は、「セキュリティー・リスクは、当初、心配したほどでは無かった。」と口々に言っていますが・・・他の企業にすれば、「それは、それ」と言う感じだと思います。


システム管理上は、厳重に管理されていえも、例えば、クラウド事業者のメンテナンス社員が、悪意を持った行動を取れば、情報は、簡単に持ち出されてしまう可能性もゼロではありません。


もちろん、クラウドに移行していない企業が感じるセキュリティー・リスクは、漠然とした不安だとは思います。


しかし、その漠然とした不安にも理由があります。例えば、次のような理由が考えられます。


・セキュリティーの安全性に関して客観的な証拠が無い
・セキュリティー管理が、全て業者任せになってしまう

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●業者の姿勢


次に多いのが、クラウドサービス提供業者とSierの姿勢が挙げられているようです。


何が問題なのかと言うと、クラウド化を検討している企業が、該当業者に相談すると、希望したサービスではなく、業者自体の利益が上がるような提案をされた事例が多く見られたそうです。


具体的な事例としては、SaaS型サービスを希望していたのに、提案されたのは、自社が保有するデータセンターを利用するIaaS型のサービスを提案された事例が多いようです。


サービス提供業者は、自社の利益が欲しいので、顧客のメリットを優先せず、顧客がクラウドの仕組みに熟知していない事をいいことに、自社のメリットが多いようになる提案するするようです。


また、上記以外、業者に関係する不安としては、次のような理由を挙げています。


・料金体系が不明確/不明瞭
・一旦、ある業者にクラウド化を依頼すると、その後、業者を切り替えられない
・業者の事業継続性



要は、サービス提供業者の姿勢に疑問/不安を感じて、クラウド化に躊躇しているケースも多いようです。

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●システム改修が不可能


次は、単純に、既存システムの改修が無理なケースがあるようです。


やはり、バリバリにカスタマイズを掛けていたり、一から自社システムを開発したりした企業は、クラウド環境に用意してあるシステムに移行するのは難しいのだと思います。


このような場合、既存システムを破棄して、また、最初からシステムを作り直す、いわゆる「スクラッチ & ビルド」方式を取るのですが、これさえ出来ない企業が多いのだと思います。


理由としては、例えば、次のような事例が報告されています。


・システム関連ドキュメント(仕様書/設計初)が存在しない
・開発した技術者が退職してしまった
・システムがメインフレームで作成されており対応できない、等

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●内部統制

さらには、内部統制の問題も挙がっています。


ISOやISMSの認証を取っている企業は、クラウドに移行する際に、認証が得られないケースがあるようです。


・ISO(International Organization for Standardization):国際標準化機構
ISMS(Information Security Management System):情報セキュリティ・マネジメント・システム



このような認証を取っていると、年間数回の審査や、数年に1回の認証更新があります。


社内システムをクラウド化すると言う事は、単純ケースの場合、データもクラウド業者の環境に移行する訳ですから、ISO/ISMSの認証を取得するのは難しくなってしまいます。


このため、認証を維持する場合、次のような特殊な対応を取る事になります。


・重要データだけはクラウド環境に移行しない
・重要データは分割管理して、単独データだけでは意味をなさないデータにする
・重要データは暗号化してサーバーで管理し、使用時に複合する。


このような対応を取れば認証は継続出来るかもしれませんが、余計な費用が掛かりますし、対応の仕方によってはパフォーマンスが低下する可能性があります。


何れにしても面倒です。

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クラウドと社内システムとの連携


最後は、システム連携が出来なくなってしまうケースがあるようです。


ある業務システムだけをクラウド化した場合、このクラウド環境の業務システムと、従来通り、オンプレミス環境で稼働している業務システムを連携するケースは、珍しくないと思います。


例えば、クラウドとオンプレミスのシステム間で、プログラム同士で処理を連携したり、あるいは利用者が、シングル・サインオンでログインして作業を行ったりするケースがあります。


プログラム間の処理は、インターフェイスを修正すれば対応出来ると思いますが、シングル・サインオンは、まず無理だと思います。


そうなると、これまで1回ログインすれば、全システムを利用する事ができた社員が、オンプレミスとクラウドとで、別々にログインしなければならなくなり、結局の所、仕事が出来なくなってしまいます。


このシングル・サインオンの問題は、あまり表面化していないようですが、Webシステムを有する企業では注意が必要になるかと思います。

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■脱クラウドの動き


ここまで、クラウド化のメリットや、クラウド化を阻害する要因を紹介し、出来る限り、社内システムをクラウド化する方向で話を進めて来ました。


しかし、世間の流れは、ちょっと変わり目を迎えつつあるようです。2016年後半辺りから、アメリカにおいて、「脱クラウド」の動きが活発化し出しています。


アメリカでは、当然、日本よりも早く「クラウド化」の動きが進んでおり、多くの企業が、オンプレミスの社内システムをクラウドに移行して運用していました。


このため、現在では、クラウドへの習熟度合い高く、クラウドのメリット/デメリットが、より明確、かつ具体的になっています。


アメリカでも、当初は、「猫も杓子もクラウド」状態だったようですが、やはり、クラウドに移行した一部企業では、次の要因により、クラウドを止めてオンプレミスに戻す企業が増えているようです。(数字は米CompTIA社の調査数字)


・セキュリティー(58%)
・コスト削減未達(30%)
・統合の失敗(24%)
・信頼性への問題(22%)


やはり、クラウドに関しては、セキュリティーがネックになっているようです。


このクラウドからオンプレミスに戻す現象を、「ブーメラン現象」と呼んでいるようですが、アメリカでは、また「オンプレミス VS.クラウド」論争が再燃しているようです。

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加えて、業務システムへの「AI(Artificial Intelligence)」の組み込みも、「脱クラウド」を後押ししているようです。


下記の過去ブログでも紹介しましたが、「AI」を活用する場合、膨大なデータをサーバーに蓄積し、プログラムが迅速にデータを解析して、その結果を利用者にフィードバックする必要があります。


★過去ブログ:Society 5.0って何 ?


ところが、サーバーがクラウド上にあると、解析結果を利用者に返す時のパフォーマンスが、ネットワークの速度に依存してしまうので、折角、プログラムが迅速に解析を行っても、処理結果を得るのが遅くなってしまう可能性があります。



また、「AI」のために集めた膨大なデータは、企業にとって、貴重な財産です。


この貴重な財産をクラウドに預けるとなると、また、例のごとく、「セキュリティー・リスク」が問題になって来ます。


つまり、前述の通り、次の2点がネックになるので、これならば、クラウドを止めてオンプレミスに、となってしまうのは当然の流れなのかもしれません。


・AIにとって重要なレスポンスがネットワークに依存してしまう。
・AIのための貴重なデータにセキュリティー上の心配がある。



また、これも先の過去ブログで紹介していますが、「IoT」で集めたデータも、「AI」に引き渡すケースが増えていますので、「IoT」に取り組む企業も、「脱クラウド」となる可能性もあります。


今後、企業の業務システムに「IoT」や「AI」が組み込まれるようになっていくと、「脱クラウド」が進む可能性があると思います。


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今回、「クラウドサービス」に関して、次のような内容を紹介しましたが、如何でしたか ?


●コスト削減手段としてのクラウド
●本番カットオーバーまでの時間短縮としてのクラウド
クラウド化を妨げる要因
●脱クラウドの動き


最初の方では、業務システムのクラウド化を勧めておきながら、最後に「脱クラウド」と、正反対の内容を紹介することになってしまいました。


これは、前でも触れましたが、「オンプレミス VS.クラウド」論争そのもので、今、IT業界を騒がしている問題です。


しかし、私は、この論争に決着が付くとは思っていません。


世界中、全ての企業が同一の条件で業務システムを動かしているならば、「オンプレミスか ?、それともクラウドか ?」と言う論争は、検討すべき重要な問題なのかもしれません。


しかし、業務システムは、全ての企業が、異なる環境で、独自の運用を行っています。


また、企業内においても、部門毎に、業務システムの運用環境や運用方法が異なるケースも多々見受けられます。


このように多種多様な業務システムに関して、「さあ、どっちだ!」と言う事自体、ナンセンスだと思います。


『 この業務はクラウド化し、こっちはオンプレミス 』と言うのが正しいような気がします。


そして、その上で、次のような内容を検討した方が良いと思います。


・じゃあ、システム連携は、どうする ?
・別々に分けてもコストが削減できるのか ? 等



全ての業務を、クラウド or オンプレミスのどちらかで統一して運用出来れば、それが一番良いとは思いますが・・・なかなか難しいものがあると思います。


今、「クラウドが良い !」とか、「いやいや、やっぱりオンプレミスだ !」等と騒いでいるのは、AGFA(※)とSierが、自社のサービスや製品を売りたいがために、クラウド導入企業を、成功事例や失敗事例として巻き込んで騒いているだけの様な感じもします。


今後も、「オンプレミス VS.クラウド」論争は続くと思いますが、AGFA/Sierに振り回されないよう、ちゃんと自社の立場を明確にした上で、業務システムの効率化や費用対効果の向上を目指して下さい。


それでは、次回も宜しくお願いします。

以上

AGFA:米4大IT企業。AppleGoogleFacebook、およびAmazonの4社の頭文字。

【画像・情報提供先】
Wikipedia(http://ja.wikipedia.org/)
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・ボクシルマガジン(https://boxil.jp/mag/)
・TechTargetジャパン(http://techtarget.itmedia.co.jp/)