岩手の世界遺産と無形文化遺産 −平泉ショックからの出発 その1


昨年、本ブログで、5回に渡り「早池峯信仰と瀬織津姫命」を紹介しました。

★過去ブログ:早池峰信仰と瀬織津姫命 〜 謎多き姫神に触れる


そして、そのブログ内で、ユネスコ無形文化遺産に登録されている「早池峰神楽」も取り上げました。


繰り返しになってしまいますが、この「早池峰神楽」と言う名称ですが、元々「早池峰神楽」と言う名称は存在しません。


早池峰神楽」とは、花巻市大迫(おおはさま)町にある、下記2つの地区に伝わる神楽を合わせた「総称(似たものを集めて一つの呼び名とした物)」です。


大迫町「岳(たけ)」地区 :「岳神楽」
大迫町「大償(おおつぐない)」地区 :「大償神楽」


何故、こんな総称を付けたのかと言うと、昭和50年(1975年)に、国指定の重要無形文化財に登録する際、二つの神楽のルーツが同じで、かつ共通の特徴があると言う事から、「2個1(ニコイチ)」で登録申請をした事から始まったとの事です。

--------------------------------------------------------------------------------------------------------

それと、本ブログに何度も登場する「平泉」。過去には、次のようなブログで、「平泉」、あるいは「中尊寺」関連の話題を紹介しました。


★過去ブログ
岩手県内における義経伝説 ? 信じたくなる話ばかり
岩手県内の冬のイベント 〜 その他


平泉と中尊寺の話題に関しては、余りに有名で、特に平泉が、平成23年(2011年)、「平泉―仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群」として、世界遺産の中の「文化遺産」に登録された後は、「あまのじゃく」的性格な私は、紹介する気持ちが失せてしまいました。


このため、本ブログでは、「平泉」や「中尊寺」、あるいは「金色堂」と言う名称は、度々出現しますが、それ本体に関しては、余り触れてきませんでした。

--------------------------------------------------------------------------------------------------------

ところが、2018年11月3日、2020年に世界遺産登録を目指していた「北海道・北東北の縄文遺跡群」に関して、2020年の登録推薦の見送りが決定した、と言うニュースが放送されました。


この「北海道・北東北の縄文遺跡群」とは、後で詳しく紹介しますが、北海道、青森、秋田、および岩手の各道県にある、17ヶ所の縄文遺跡から構成されている考古学的遺跡群との事らしいです。


そして、岩手県からは、1か所のみなのですが、「御所野遺跡」が、この考古学的遺跡群に含まれる形で、世界遺産登録を目指していたそうですが・・・


同じく登録を目指していた自然遺産「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の方を優先する事になってしまったようです。


これは、ユネスコへの推薦枠が、「1国1枠」に制限されている事から、「自然」と「文化」、どちらを優先させるかで政府内で調整していたそうですが、最終的には、ユネスコ自体が、「自然」を優先する姿勢を示しているために、日本からは「奄美大島〜」を推薦する決断を下さいらしいです。


「北海道・北東北の縄文遺跡群」関係者からは、当然、落胆の声が上がりましたが、「これで推薦のための準備が出来る!」と負け惜しみを言う声も多数上がっているようです。

--------------------------------------------------------------------------------------------------------

そこで今回、そして次回のブログでは、主に、岩手県内の世界遺産無形文化遺産、それと今回推薦枠から漏れた「御所野遺跡」等の情報を含む、下記のような情報を、2回に分けて紹介したいと思います。

【 第1回目 】

世界遺産とは
無形文化遺産とは
世界遺産無形文化遺産の違い
●日本の世界遺産無形文化遺産の一覧
●遺産登録に関する問題点とメリット/デメリット


【 第2回目 】

●岩手の世界遺産
●岩手の無形文化遺産
●落選した「御所野遺跡」とは


それでは今回も宜しくお願いします。


--------------------------------------------------------------------------------------------------------


世界遺産とは


世界遺産」、英語表記「World Heritage Site」とは、1972年(昭和47年)のユネスコ総会で採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」、通称「世界遺産条約」に基づいて、世界遺産リストに登録された文化財、景観、自然等、人類が共有すべき「顕著な普遍的価値」を持つ物件で、かつ移動が不可能な不動産が対象となっています。


また、その中の文化遺産を「世界文化遺産」、自然遺産を「世界自然遺産」と呼ぶこともあり、さらに、その両方の要素を備えた遺産を「複合遺産」とも呼んでいるそうです。


各遺産の例を上げると、次の通りです。


文化遺産 : 姫路城(日本)、ピラミッド地帯(エジプト)、アマルフィ海岸(イタリア)
●自然遺産 : 白神山地(日本)、グランド・キャニオン(アメリカ)、グレートバリアリーフ(オーストラリア)
複合遺産マチュピチュ遺跡(ペルー)、カッパドキア(トルコ)、トンガリロ国立公園(ニュージーランド)


2018年7月時点では、世界遺産は1,092件で、その内訳は、文化遺産845件、自然遺産209件、複合遺産38件となっており、条約締結国は193ヵ国になっているそうです。


ちなみに、日本は、世界遺産条約制が定されてから20年後、1992(平成4)年に条約を批准し、先進国では最も遅い125番目の締約国となっているそうです。


一度、世界遺産リストに登録されれば、その後は、一生リストに記載され続けるのかと言えば、そうでも無いようです。


定期的に監査が入り、世界遺産としての「顕著な普遍的価値」が失われたと判断された場合は、リストから抹消されます。


実際、過去には、2007年に、中東オマーンの「アラビアオリックス保護区」が、史上初めて、世界遺産リストから抹消されています。


また、リスト登録までの流れは、次の通りとなっています。


●日本国内の各自治体から政府(文化庁)への提案書提出
文化庁世界遺産暫定一覧表に記載
●推薦準備作業/国としての推薦決定
●国からユネスコへ推薦書提出
●国際記念物遺跡会議(ICOMOS)/国際自然保護連合 (IUCN)の専門家が現地調査を実施
ユネスコ世界遺産委員会(21カ国代表)で審議、および登録決定(原則年1回)


ちなみに、世界遺産第1号は、アメリカの「イエローストーン国立公園」で、日本の場合、次の4箇所が、1993年12月に世界遺産に登録されたようです。


文化遺産法隆寺地域の仏教建造物(奈良県)、姫路城(兵庫県)
●自然遺産 :屋久島(鹿児島県)、白神山地(青森県秋田県)


その他、日本では、2018年6月末時点で、世界文化遺産18件、世界自然遺産4件の合計22件が登録されています。登録箇所については、以降の章で紹介します。


--------------------------------------------------------------------------------------------------------


無形文化遺産とは


無形文化遺産」、英語表記「Intangible Cultural Heritage」とは、民族文化財、古く伝わる風習・伝承、口承伝統等の無形文化財を保護対象とした「国際連合教育科学文化機関(United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization:UNESCO)の事業の一つです。


この事業は、2003年の第32回ユネスコ総会で採択され、2006年に発効した「無形文化財の保護に関する条約」に基づいています。


有形の文化財の保護に関しては、前述の通り、1972年に採択された「世界遺産条約」により保護される事になったのですが、無形文化財に関しては、この「世界遺産条約」では保護しきれない事が明らかになったので、「世界遺産条約」に遅れること34年、新たな枠組みが作られる事になったそうです。


しかし、実際には、「無形文化財の保護に関する条約」が発効する前、2001年から隔年で、「人類の口承及び無形遺産の傑作の宣言(通称:傑作宣言)」と言う事業を行い、条約が発効する前から、保護対象とする文化財を決めていたそうです。


そして、この「傑作宣言」では、2001年(19件)、2003年(28件)、そして2005年(43件)が採択され、2006年の条約発効後に、代表一覧表に正式登録されています。


日本では、2001年に「能楽」を、2003年に「人形浄瑠璃文楽」を、そして2005年には「歌舞伎」を、傑作宣言に登録申請を行っています。


その後、前述の通り、2006年に「無形文化財の保護に関する条約」が発効した時点、これら3件も正式に代表一覧に登録されました。


それ以外の無形文化遺産に関しては、後で紹介します。


--------------------------------------------------------------------------------------------------------


■「世界遺産」と「無形文化遺産」の違い


世界遺産」と「無形文化遺産」の双方とも、「ユネスコ(UNESUCO)」の事業の一環です。


そして、ここまでの説明で、「世界遺産」と「無形文化遺産」の成り立ちや、違いに関しても、ご理解できたかと思われます。


世界遺産 :「ユネスコ世界遺産センター」所管。有形の不動産。文化遺産、自然遺産、複合遺産の3種がある。
無形文化遺産 :「ユネスコ文化局無形遺産課」所管。無形の各国の芸能や祭礼、伝統工芸技術など。



前述の過去ブログにも記載していますが、この「世界遺産」と「無形文化遺産」を、ごちゃ混ぜにして用いている官公庁やメディアがあります。


農水省は、「和食」を、「無形文化遺産」に登録するために各種PR活動を行っていたのですが、その際に、「無形文化遺産」を、「世界無形文化遺産」として紹介していました。


また、NHKも、過去の「シリーズ世界遺産100」と言う番組で、「世界遺産」と「無形文化遺産」の両方を紹介していたそうです。


やはり、公共性のある報道では、言葉は正確に用いるべきだと思います。


--------------------------------------------------------------------------------------------------------


■日本の世界遺産無形文化遺産の一覧

それでは、ここで、日本の世界遺産無形文化遺産を、一覧表を用いて簡単に紹介します。

世界遺産


日本の世界遺産には、文化遺産(18件)と自然遺産(4件)の計22件が登録されています。複合遺産は、残念ながら登録されていません。

文化遺産
1 1993/12 奈良県 法隆寺地域の仏教建造物
2 1993/12 兵庫県 姫路城
3 1994/12 京都府/滋賀県 古都京都の文化財
4 1995/12 岐阜県/富山県 白川郷・五箇山の合掌造り集落
5 1996/12 広島県 原爆ドーム
6 1996/12 広島県 厳島神社
7 1998/12 奈良県 古都奈良の文化財
8 1999/12 栃木県 日光の社寺
9 2000/12 沖縄県 琉球王国のグスクおよび関連遺産群
10 2004/07 奈良県/和歌山県/三重県 紀伊山地の霊場と参詣道
11 2007/06 島根県 石見銀山遺跡とその文化的景観
12 2011/06 岩手県 平泉−仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群
13 2013/06 山梨県/静岡県 富士山−信仰の対象と芸術の源泉
14 2014/06 群馬県 富岡製糸場と絹産業遺産群
15 2015/07 岩手県/他7県 明治日本の産業革命遺産
16 2016/07 東京都 ル・コルビュジエの建築作品
17 2017/07 福岡県 「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群
18 2018/06 長崎県 長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産

【 自然遺産 】
1 1993/12 鹿児島県 屋久
2 199312 青森県/秋田県 白神山地
3 2005/07 北海道 知床
4 2011/06 東京都 小笠原諸島


無形文化遺産

日本の無形文化遺産は、下表の通り、2001年から2005年に指定された「傑作宣言」の3件も含めて、合計21件の無形文化財が、登録されています。


さらに、2018年には、、岩手県の「スネカ」を含む、8県に伝わる「来訪神」が登録される予定となっています。(※本ブログ執筆時には未登録)

項番 登録年 内容 備考
1 2001年(2008年) 能楽 ※傑作宣言
2 2003年(2008年) 人形浄瑠璃文楽 ※傑作宣言
3 2005年(2008年) 歌舞伎 ※傑作宣言
4 2009年 秋保(あきう)の田植踊 宮城県仙台市太白区秋保町の芸能
5 2009年 チェッキラコ 神奈川県三浦市小正月伝統行事
6 2009年 題目立 奈良県奈良市の語り物
7 2009年 大日堂舞楽 秋田県鹿角市舞楽
8 2009年 雅楽
9 2009年 早池峰神楽 岩手県花巻市大迫「早池峰神社」の神楽
10 2009年 トシドン 鹿児島県薩摩川内市の年神(来訪神)
11 2009年 小千谷縮越後上布、からむし 織物製造技術
12 2009年 能登アエノコト 石川県奥能登地方の新嘗祭
13 2009年 アイヌの古式舞踏 北海道の先住民族に伝わる踊り
14 2010年 組踊 沖縄県に伝わる踊り
15 2010年 結城紬 茨城/栃木に伝わる絹織製造技術
16 2011年 壬生の花田植 広島県山県郡北広島町壬生の伝統行事
17 2011年 佐陀神能 島根県「蹉跎神社」の神楽
18 2012年 那智の田楽 和歌山県那智勝浦町の田楽
19 2013年 和食
20 2014年 和紙
21 2016年 山。鉾・屋台行事
22 2018年 来訪神 岩手県および他8県(含むトシドン)

--------------------------------------------------------------------------------------------------------

この内、岩手県内に存在する世界遺産無形文化遺産は、次の4件となっています。

世界遺産
平泉−仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群
明治日本の産業革命遺産(釜石市:橋野高炉跡及び関連遺跡)

無形文化遺産
早池峰神楽
・来訪神(スネカ)※登録予定

次回、「その2」において、岩手県内の世界遺産無形文化遺産を、詳しく紹介します。


--------------------------------------------------------------------------------------------------------


■遺産登録に関する問題点とメリット/デメリット


ここで、世界遺産無形文化遺産に関する問題点や、遺産に登録される事のメリット/デメリットを少し紹介したいと思います。


世界遺産無形文化遺産には、余り取り上げられる事はありませんが、登録国に関する「偏り」が指摘されています。


また、特に無形文化遺産に関しては、文化の発祥地と経由地の問題が、しばしば取り上げられています。


つまり、本当に、その文化や伝統芸能が発祥した地を無形文化遺産の対象国とするのか、逆に、その文化/伝統が伝わった国を対象国とするのかで、国際紛争に発展するケースもあります。


また、これら遺産に登録されると「良いこと」ばかりが取り上げられますが、実際には、数々の問題が発生しています。


本章では、世界遺産/無形文化遺産の「負」の部分に、少し焦点を当ててみます。まず、世界遺産が抱える問題点を紹介します。


--------------------------------------------------------------------------------------------------------

世界遺産の問題点

世界遺産には、前述の通り、3種類の遺産があり、その3種類の遺産の内訳を見ると、文化遺産845件、自然遺産209件、複合遺産38件と、文化遺産の登録が多く、かつ登録場所の多くはヨーロッパが中心となっています。


また、条約締結国193カ国中、1件も登録されていない国が、アフリカを中心に26カ国も存在しています。
→ アフリカ:11カ国、アジア:5カ国、オセアニア:4カ国、アメリカ:5カ国、ヨーロッパ:1カ国


そして、登録されている国は、ヨーロッパと中国が多いと言う偏りも指摘されています。多い順に記載すると次の通りです。

・イタリア :54件
・中国 :53件
・スペイン :47件
・フランス :44件
・ドイツ :44件


これは、世界遺産の生い立ちが、文化財の保護意識が高いヨーロッパから始まった事と、逆にアフリカ等では、文化財と言う意識が欠如している事が、この偏りの原因とされています。


このため、1994年に開催されたUNESUCOの世界遺産委員会では、「世界遺産リストにおける不均衡の是正及び代表性、信用性確保のためのグローバル・ストラテジー(通称:グローバル・ストラテジー)」を採択したそうです。


この「グローバル・ストラテジー」では、地域的にヨーロッパに偏重していた登録の仕方を是正し、世界遺産リストが、その名の通り、世界を代表する文化遺産・自然遺産などの一覧となることを目指す事になったそうですが・・・余り効果は無いようです。

--------------------------------------------------------------------------------------------------------

世界遺産登録のメリット/デメリット


世界遺産に登録」と言うと、「良いこと尽くめ」のような感じがします。


確かに、何か「良い事」が無ければ、誰も遺産に登録しようとは思いませんし、各国政府が、国費を掛けて登録活動を支援するはずもありません。


実際、世界遺産に登録されると、観光客が増えると言う経済的メリットと、登録地点に至る交通網の整備等、周辺インフラの整備が進むと言うメリットがあリます。


しかし、その反面、逆に、観光客向けの施設が増えて本来の姿が失われたり、あるいは東アジア、特に隣国からマナーが悪い観光客が来ることで、周辺環境が悪化したりすると言うデメリットもあります。


民度が低い人間が多い国から来る観光客は、相手国の文化やルールや、そもそも人間としての基本ルールを知らないので、遺産周辺を荒らし回り、住民とのトラブルに発展するケースも増えているそうです。


実際に、世界遺産に限らず、隣国の観光客に人気のある京都/奈良では、文化財に傷を付けられたり、あるいは壊されたりする問題が多発しています。


--------------------------------------------------------------------------------------------------------

無形文化遺産の問題点

無形文化遺産に関しても、世界遺産と同様、登録国の偏りが指摘されるようになって来ています。


また、前述の通り、歴史的・民俗的共通性を持つ遺産であるにもかかわらず、複数国家が別々に登録申請を行い、さらにその過程で自国の固有性を主張しあう国際紛争に至るケースもあります。


特に、2005年に韓国が登録した「江陵端午祭」は、とんでもありません。


日本の端午の節句に相当する韓国の「江陵端午祭」ですが、韓国人は、この「江陵端午祭」が、韓国に起源がある伝統で、他国の端午際は、韓国の「物まね」あると主張しています。


端午祭」は、中国が起源であることは、韓国人以外にとっては常識です。中国から、韓国や日本に伝播し、その後に独自の文化になったというのが一般的な認識です。


それにも係わらず、韓国人は、嘘を突き通し、なおかつ無形文化遺産の代表リストに掲載するか否かを審議する政府間委員会をも欺き通し、最終的に、2009年には、代表リストに登録される事になってしまいました。


これに対して、当然、中国は猛反発したのですが、中国からの抗議は、何故か認められなかったようです。


このように、伝統の発祥地と、その伝統の経由地との間で、どこを代表リストに掲載するのかが問題となっています。

--------------------------------------------------------------------------------------------------------

無形文化遺産登録のメリット/デメリット


無形文化遺産は、世界遺産と異なり、「保護すべき伝統文化」が登録対象となります。


つまり、廃れた始めた伝統が、無くならないように保護する事を目的にしていますので、無形文化遺産に登録されたからと言って、特段のメリットはありません。


但し、世界から無くなっては勿体無い、この先もずっと、人類の伝統として残すべき価値がある文化と言う地位を得る事が出来ますので、無形文化遺産のリストに登録された伝統は、地元の誇りになるかと思います。


また、先の「端午の節句」」のように、嘘を尽き、世界を欺こうとする国家/民族が存在する事が明らかになりましたので、このような非常識な国家/民族から、本当の伝統を守るためにも、無形文化遺産に登録する価値はあるのかもしれません。


特に、韓国に付いては、本当に注意が必要です。日本発祥の文化/伝統を、全く恥じる様子もなく、平気で韓国が発祥地だとしています。


一例としては、桜(ソメイヨシノ)の原産地が韓国だと主張していますし、挙句の果てには、大学の教授までもが、本気で、イギリス人の祖先は韓国人だと吐かしてします。


何を考えているのか、それとも何も考えていないのか、日本人には、理解する事が難しい民族です。


この点に関しては、もう少し詳しい情報を、過去ブログに掲載しています。

★過去ブログ:岩手の工芸品 〜 地味だけど丈夫で長持ち その2(南部鉄器)


話が逸れてしまいましたが、「和食」が無形文化遺産に登録された時には、海外で、とても「和食」とは言えない料理までもが「和食」と言う名称で提供されている事例が紹介され、このような伝統への誤解を招かないようにする、と言うメリットもあるかと思います。


他方、デメリットに関しては、今の所、特にデメリットは見当たらないように見受けられます。


世界遺産とは異なり、無形文化遺産に登録されたからと言って、害を被ったとか、問題が発生した言う話は一切聞こえません。


無理矢理デメリットを挙げるとすれば、無形文化遺産に登録された文化/伝統に関しては、登録後は、国を挙げて、後継者の育成等、何らかの対策を取って、その文化/伝統を後世に伝え続ける義務が生じる、と言う事だと思います。


これまでは、国が主体となって伝統の存続や保護を行って来なかったものに対しても、無形文化遺産登録後は、国も主体的に責任を負う事になると思います。


--------------------------------------------------------------------------------------------------------

今回は、「岩手の世界遺産無形文化遺産 - 平泉ショックからの出発 その1」と題して、次の情報を紹介してきましたが、如何でしたか ?


世界遺産とは
無形文化遺産とは
世界遺産無形文化遺産の違い
●日本の世界遺産無形文化遺産の一覧
●遺産登録に関する問題点とメリット/デメリット


これまで、「世界遺産だ!」、「無形文化遺産だ!」と騒いできましたが、こうして改めて、UNESCO(国際連合教育科学文化機関)の各種遺産事業を見てみると、様々な矛盾を抱えながら事業を進めている事が浮き彫りになりました。


やはり、様々な国や政府、それと各国政府の意を受けたロビー団体が入り乱れて条約を決めていますので、実際の現場は、とんでもない事になっていると容易に想像出来てしまいます。


特に、今回、平泉の世界遺産登録に際しては、「平泉ショック」なる事件があり、かなりの苦労をし、10年もの歳月を掛けて世界遺産に登録を果たした事を知りました。


まあ、現在では、世界遺産に登録された事で観光客も増加しているとの事らしいですが・・・その時間と費用と労力を、別の事業に向けても良かったのかもと思ってしまいます。


しかし、東北人の粘り強さには、これも、改めて脱帽してしまいます。


--------------------------------------------------------------------------------------------------------

ここで、今回のブログのテーマである世界遺産無形文化遺産を管理している「UNESCO」自身について、少し情報を紹介します。


UNESCOは、第二次世界大戦後となる1946年11月に設立され、その後、徐々に加盟国を増やしてきて、2018年2月時点で、加盟国は195カ国で、その他連携メンバー(Associate Member)として、10箇所の地域が認定されているそうです。


日本は、国際連合憲章に定義されている「敵国条項」が適用される枢軸国だったので、UNESCOの本体部分となる国際連合に加盟出来なかったのですが、それにも係わらず、1951年には加盟する事が出来たようです。


また、1954年には、当時の「ソ連(ソビエト社会主義共和国連邦)」がUNESCOに加盟した事で、当時で言う所の「東側諸国」も加盟出来るようになったそうです。


しかし、多くの東側諸国や新興国が加盟するにつれ、UNESCO内部でも政治的な争いが増加してきたようです。


UNESCOの議決権は、分担金の多さには関係無く「1国1票」ですから、東側諸国や新興国の加盟が増加する事で、それまでUNESCOを牛耳ってしたアメリカやヨーロッパを始めとする先進国の影響力が弱くなり、決議が紛糾するケースが増えて来たとされています。


特に、新興国、昔の言葉で言うと「発展途上国」が提唱した「新世界情報秩序」の取り扱いに関して、先進国の間で不満が爆発し、1984年、当時の最大の分担金拠出国であったアメリカが、次いで、翌1985年にはイギリスとシンガポールがUNESCOを脱退し、UNESCO自体が、存続の危機を迎えたそうです。


この間、日本はUNESCOに留まり続け、アメリカが脱退した事で不足する分担金を補うため、全体の1/4をも拠出する最大の国となったそうです。


しかし、その後、1997年にはイギリスが、2003年にはアメリカもUNESCOに復帰したのですが、今度は、2011年にパレスチナのUNESCO加盟に際し、アメリカとイスラエルが猛反発し、対抗措置として分担金の停止を実行しています。


これに対してUNESCO側は、規定に基づき、分担金停止から2年後の2013年に、アメリカの投票権を停止しています。


その後、アメリカは、UNESCOに加盟し続けながら、裏側ではロビー活動を行い、双方で解決策を探ってきたのですが、2017年に、UNESCOが、5月に採択したイスラエルを非難する決議が決定打となり、同年10月には「2018年12月にUNESCOを脱退する。」と言う表明を発表しました。


これにより、再び、日本が分担金拠出国で第1位となってしまいました。


外務省のホームページによると、2018年のUNESCOの分担金のトップ5は、下表の通りだそうです。(※文科省の数値とは若干異なるようです。)

国名 分担率(%) 金額(百万ドル)
アメリ 22.000 591.4
日本 9.680 235.3
中国 7.921 192.5
ドイツ 6.389 155.3
フランス 4.859 118.1


トップ5以降は、イギリス、ブラジル、イタリア、ロシア、カナダ・・・と続くようです。


以上、UNESCOの歴史と現状を簡単に紹介してきましたが、今後も、UNESCO自身、そして日本も、難しい対応が求められると思います。


現在は、日本がトップとなっていますが、アメリカの脱退を受け、恐らくは、想像ですが、中国が拠出金を増加し、UNESCOでの存在感を示し始めると思っています。


そして、UNESCO側も、アメリカが居なくなれば、中国を重視するようになると思われますので、日本も、今後のUNESCOに対して、どうような対応を取るのかを真剣に考えるべき時期が来たと思われます。


次回は、冒頭に記載した通り、次の内容を紹介します。


●岩手の世界遺産
●岩手の無形文化遺産
●落選した「御所野遺跡」とは


それでは次回も宜しくお願いします。


以上

【画像・情報提供先】
Wikipedia(http://ja.wikipedia.org/)
世界遺産オンラインガイド(https://worldheritagesite.xyz/)
中尊寺ホームページ(http://www.chusonji.or.jp/
・公益財団法人 岩手県観光協会(https://iwatetabi.jp/index.php)
・縄文遺跡群世界遺産登録推進事務局(https://jomon-japan.jp/)
・いちのせき観光ナビ(http://www.ichitabi.jp/)
文部科学省(http://www.mext.go.jp/unesco/003/001.htm)
・外務省(https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jp_un/yosan.html)