生産性向上が必要な働き方改革 - 皆さん、誤解していませんか ?
近頃、政治家やニュースでは、合言葉の様に「働き方改革」、「働き方改革」と言われ続け、ついに平成30年6月29日に国会で法改正が成立しましたが、皆さん、この法律って何が、どう変わるのかを、知っていますか ?
この法案の正式名称は、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案」と言います。
この「働き方改革」では、通称「高プロ」と呼ばれていた「高度プロフェッショナル制度」の問題ばかりが国会やニュースで取り上げられ、その他の点に関しては、余りニュース等でも取り上げられなかった様な感じがします。
--------------------------------------------------------------------------------------------------------
「高プロ」に関しては、当初「ホワイトカラー・エグゼンプション」と言う名称で、労働時間の規制緩和を目指したのですが、当然、「過労死」の問題を指摘され、導入出来ずに廃案となってしまいました。
しかし、それでも安倍政権は、2015年、労働時間に関する規制緩和を目指したのですが、これも審議が終わらずに、再度、廃案になっています。
ところが、安倍政権は、しつこいくらいに労働時間の規制緩和を試み、2018年の第196回の通常国会における「働き方改革」に「高プロ」を潜り込ませ、ようやく成立させた経緯があります。
この「高プロ」の受益者は、明らかに労働者ではなく、経営者側、特に「経団連」のロビー活動の賜物だと思われます。
まあ、私も経営者の端くれですから、「高い給与を払っているんだから、決められた時間内に、ちゃんと成果を出せよ!」と言いたくなる気持ちは分ります。
日本のビジネスマンは、欧米のビジネスマンと比較すると、作業効率が1/2だと指摘されていますので、高給取りが成果を出さない点は、経営者とすれば、頭の痛い問題だとは思います。
--------------------------------------------------------------------------------------------------------
と、このような、数々の矛盾を含んだまま成立した法改正ですが、2019年4月、つまり今年の来月から改正法が施行されます。
この法案に関しては、審議が不十分だった事から、法が成立した時点で、数多くの問題を抱えた状況となっています。
確かに、前述の「高プロ」の様に、経営者には嬉しい内容もありますが、その他、通常のビジネスマンに関しては残業時間の規制強化も盛り込まれていますので、単純に経営者だけが得をする法改正ではありません。
大枠で見ると、逆に、経営者にとっては、頭の痛い法改正となっています。
また、同じ経営者でも、大企業と中小零細、または仕事の発注者と受注者という立場の違いからも、その問題点は全く異なります。
今回、この「働き方改革」に関して、次の内容を紹介します。
- 法改正の内容
- 法改正に伴う注意点
- 日本の現状
- 法改正への対応策
それでは今回も宜しくお願いします。
■法改正の内容
今回の「働き方改革」は、1個の法律が制定された訳ではありません。「働き方」に関係している、次の8個の法律の内容が改正されています。
(1)労働基準法
(2)労働安全衛生法
(3)労働時間等の設定の改善に関する特別措置法
(4)じん肺法
(5)雇用対策法
(6)労働契約法
(7)短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律
(8)労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律
個々の法律を説明してしまうと、「六法全書」になってしまいますので、当然、本ブログでは説明しません。
そこで、今回の法改正において、非常に重要と思われる次の8個の項目について、その内容を紹介します。
●時間外労働の上限規制
現行の労働基準法では、労働者の労働時間は、「1日8時間、週40時間」と決まっていますが、通称「36(サブロク)協定」を労働者との間で締結すれば、実質、無制限に働かせる事が出来る仕組みとなっています。
ところが、今回の法改正では、残業時間の上限の基本ラインを「月45時間、年360時間」と明確に定義しました。
繁忙期など、どうしても残業を行わなければならないケースでも、45時間を超えて残業出来るのは6ヶ月までと制限され、年間の残業時間の上限は720時間となりました。加えて、次の内容もガイドラインとして付加されています。
残業は、「連続する2カ月から6カ月平均で月80時間以内(休日労働含む)」
残業は、「単月で100時間未満(休日労働含む)」
しかし、この内容にも、実は「抜け道」が用意されています。
年720時間の残業時間には、休日の残業時間は含まれていません。このため、毎月、休日出勤をさせ、80時間までは残業が可能と言う解釈が成立します。
その結果、「毎月80時間の残業 × 12ヶ月 = 年間960時間の残業」が可能となります。
ちなみに、この法律の罰則は、「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金を科す。」となっています。
法律の施行に関しては、大企業は、2019年4月から、中小企業は、1年間猶予され2020年4月となっており、かつ、これまで時間制限が無かった建設業、自動車運送業、および医師には、5年間の猶予期間が設定されています。
また、現在、大企業では、月60時間を超えた残業の割増賃金率が「50%」となっていますが、2023年4月以降は、この賃金割増率は、中小企業にも適用されるようになります。
●有給休暇の消化義務
これは簡単です。「抜け道」もありません。
10日以上の年次有給休暇が与えられている労働者には、本人の希望を踏まえ、このうち時季を指定して、5日分取得させることを企業に義務付ける事になりました。
●フレックスタイム制の見直し
「フレックスタイム制」とは、「清算期間(現行、最長1か月)」で定められた所定労働時間の枠内で、労働者が、始業/終業時刻を自由に選べる制度です。
この結果、労働時間が長い日を設定出来ますし、逆に短い日も設定できるので、労働者は、あらかじめ定められている清算期間中の所定労働時間(総労働時間)に達するよう、自由に労働時間を調整して働く事が出来るようになります。
「フレックスタイム制」を導入するためには、就業規則、その他これに準ずるものにおいて、始業及び終業の時刻をその労働者の決定にゆだねる旨を定めた上で、労使協定において、対象労働者の範囲や清算期間などの一定事項を定める必要がありますが、この労使協定は、締結のみで厚生省等への届出は不要です。
ところが、現行の「フレックスタイム制」では、清算期間の上限が、前述の通り1か月とされているので、1か月を超える期間についての労働時間の調整が出来ないと言う問題点がありました。つまり、月またぎの調整が出来ません。
例えば、月の前半に余分に働いて、月の後半を短めにする事は可能ですが、6月に余分に働いて、8月の労働時間を短めにすると言うことは、制度上は不可能でした。
そこで、今回の法改正で、「清算期間」を最長3か月に延長し、より柔軟な働き方を選択する事が可能となりました。
今回の法改正跡は、例えば、「6~8月の3か月」の中で労働時間の調整が可能となるので、子育て中の親が、8月の労働時間を短くすることで、夏休み中の子どもと過ごす時間を確保しやすくなる等のメリットがあると厚生労働省は宣伝しているようです。
●裁量労働制への業務追加
通常の勤務形態の場合は、企業側が、日毎の始業時刻や終業時刻を記録する事で、労働者の労働時間を適正に把握します。
しかし、裁量労働制を採用した場合、労働者は実際の労働時間とは関係なく、何時間働いても、労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなされるようになります。(※みなし労働の一種)
裁量労働制は、業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務にのみ適用する事が許されており、次の2種類に分類されています。
・専門業務型裁量労働制 :研究開発、システムエンジニア、編集者、会計士、税理士、弁護士、等
・企画業務型裁量労働制 :各種企画業務 - 経営、人事、教育、財務、広報、営業、等
そこで、今回、上記2種類の裁量労働制の内、「企画業務型裁量労働制」の方に、次の2つの業務を追加しようと目論んだそうです。
(1)事業の運営に関する事項について繰り返し、企画、立案、調査、分析を行い、かつ、これらの成果を活用し、当該事項の実施を管理するとともにその実施状況の評価を行う業務
→ 品質管理系の業務
(2)法人である顧客の事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析を行い、かつ、これらの成果を活用した商品の販売または役務の提供に係る当該顧客との契約の締結の勧誘または締結を行う業務
→ 取引先のニーズに応える形で新商品を企画・販売する営業職
ところが、「安倍ちゃん」が、国会で『 厚生労働省の調査によれば、裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、平均的な方で比べれば一般労働者よりも短いというデータもある。 』と言う虚偽答弁を行ってしまった結果、この法案は、「働き方改革」から削除されてしまいました。
裁量労働制は、「高プロ」と同様、「残業代カット法案」とされていますので、適用範囲が広がれば、労働者は、堪った物ではありません。削除されて良かったと思います。
このため、経済界からは、この法案が削除されて残念と言う声が多数聞こえています。
しかし、政府は、今回は削除しましたが、今後も、「厚労相の諮問機関の労働政策審議会で制度改革案を議論する」となっていますので、虎視眈々と提出の機会を伺っています。
●高度プロフェッショナル制度
これは前述の通り、「過労死法」、そして「残業代カット法案」です。
この制度は、高度の専門的知識を必要とする業務に従事し、かつ職務の範囲が明確で、一定の年収(年収1075万円以上を想定)がある労働者で、本人が同意している場合、労働時間の規制から外す仕組みです。
同制度が適用された労働者は、年間104日の休日を確実に取得させることなどを要件として、労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規定の適用が除外されるようになります。
また、次のような条件の何れかも実施する必要があります。
・勤務間インターバル
・働く時間の上限設定
・連続2週間の休日確保
・臨時の健康診断
しかし、事実上の残業時間制限が無くなりますので、法律では守ってもらえなくなります。
●勤務間インターバル
勤務間インターバル制度とは、「過重労働による健康被害予防のため、勤務の終業時間と翌日開始の間を、一定時間空けて休息時間を確保する制度」の事を言います。
現時点では、「普及促進」と言うお題目だけで、具体的なインターバル時間の規定はありません。
先行して導入している「ホンダ」等の企業では、8時間、8時間+通勤時間、10時間など、独自のガイドラインを設定して運用しています。
前述の「ホンダ」では、既に40年以上も前から運用しているようですが、現在運用している企業は「1.8%」程度しか存在せず、厚生労働省の調査では、従業員30名以上の企業3,697社を調査した所、「導入予定が無い」と回答したのは、全体の約90%(89.1%)の企業にも上ったとされています。
やはり、お題目だけでなく、助成金等の「アメ」が無いと、話にならないと思います。
●同一労働同一賃金の推進
正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間で、職務内容が同一であるにもかかわらず賃金の格差が生まれていた状況を解消するため、雇用形態が如何に関わらず、どのような状況であっても、同一の貢献をした場合は、同じ給与/賃金が支給しなければならなくなります。
厚生労働省は、「有期雇用労働者の均等待遇規定を整備」することを指定しており、派遣労働者に対し、次の2点を義務化します。
「派遣先の労働者との均等・均衡待遇」
「同種業務の一般の労働者の平均的な賃金と同等以上の賃金であることなど一定の要件を満たす労使協定による待遇のいずれかを確保すること」
もしも格差が存在する場合、企業は、労働者に内容や理由を説明しなければなら無くなります。
この制度の施行日は、大企業が2020年4月1日、中小企業が2021年4月1日となっています。
●衛生管理の強化
企業が、労働者の健康を適切に管理するため、産業医を雇用したり、あるいは環境を整備したりする点を明記しており、企業は、下記の対応を取ることが求められています。
・「事業者における労働者の健康確保対策の強化」
・「産業医がより一層効果的な活動を行いやすい環境の整備」
具体的には、企業は産業医に、労働者の労働時間など必要な情報を提供しなければならなくなります。
また、産業医の面談に役立てるため、企業は、管理職や高度プロフェッショナル制度の対象者を含む全労働者の労働時間を把握しなければならなくなりますが、違反しても、特に罰則はありません。
産業医から労働者の健康管理について勧告を受けた場合は、企業は事業所ごとに労使で構成する衛生委員会で、その内容を報告しなければならない決まりとなったようです。
このように、「働き方改革」は、一部、残業時間の規制に罰則が付いた事は、労働者のためと言えますが、その他、大部分は、多くの「抜け道」が良いされており、経営者側に有利な法改正になっているように見受けられます。
■法改正に伴う影響
前述のような内容の「働き方改革」ですが、一番の注意点は、「残業時間の上限設置」と「罰則規定」だと思います。
それ以外は、「推進」だ、「強化」だと、お題目ばかりの「キレイ事」ばかりなので、特に、何の影響も無いと思います。まあ、「高プロ」の方は、大変かもしれませんが・・・
しかし、何故、今回、この「働き方改革」が問題になったのかと言う点を、皆さん、覚えていますか ?
それでは、何故、女性が過労自殺に追い込まれたのか ? と言うと、業務が効率化出来ていないと言う点に集約されると思います。
つまり、本ブログの冒頭でも触れましたが、日本の労働者の生産性は、欧米諸国の1/2 ~ 2/3と言われるほど、非効率的です。
それゆえ、この「働き方改革」の真の目的は「生産性の向上」なのです。労働者の生産性を向上させることで残業時間を減らす、と言うのが目的です。
ところが、多くの経営者達は、「生産性の向上」は一顧だにせず、「残業時間の削減」ばかりに目を向けています。
これでは「本末転倒」です。
そして、「残業時間を削減」するために何をするのか ? と言うと、業務のアウトソーシング化です。
「業務のアウトソーシング」と言えば聞こえは良いですが、その実態は、外注や下請け、あるいは子会社への「丸投げ」です。
つまり、仕事現場では業務の効率化が出来ていないので、残業時間を削減することは不可能です。いつもと同じ作業の仕方をしているのに、残業時間を減らすことなど出来るはずもありません。
「じゃあ、どうするんだ !」と言う事で、仕事を社外に「丸投げ」する訳です。
それでは、仕事を「丸投げ」された会社は、どうなるのかと言うと、前章の「上限規制」にも書いていますが、中小企業への法令の適用は、2020年からです。
つまり、外注、下請け、そして子会社では、あと1年間は、残業し放題の状況が続くので、大企業から仕事を「丸投げ」された企業では、相変わらず、社員が地獄を見続ける事になるかと思います。
--------------------------------------------------------------------------------------------------------
もう一つの解決策としては、「人員の追加投入」と言う手段もあります。つまり、1つの仕事を2人で行って作業時間を減らすと言うやり方です。
作業を効率化出来ないのであれば、1人では2日掛かる仕事を、2人で行って1日で終わらせる、と言う考え方です。
しかし・・・こんな対応策を取る企業は皆無でしょう。人件費ばかり掛かり、企業経営を圧迫しますし、第一、今の日本は、どこでも「人手不足」の状態ですので、そう簡単に、人は増やせません。
となると、やはり、他社への「丸投げ」が増えていくのだと思います。
■日本の現状
それでは、何故、日本の労働者の作業効率は低いのでしょうか ?
参考までに、本当に日本の生産性が低いのか否かを、ちょっと古い資料ですが、OECD(経済協力開発機構)に加盟する34カ国の中で見てみると、日本の生産性は21位と、本当に低い状態になっています。
順位 |
1980年 |
1990年 |
2000年 |
2010年 |
2016年 |
1 |
|||||
2 |
オランダ |
ベルギー |
アメリカ |
||
3 |
アメリカ |
アメリカ |
アメリカ |
アメリカ |
|
4 |
ベルギー |
イタリア |
イタリア |
||
5 |
イタリア |
オランダ |
ベルギー |
スイス |
スイス |
- |
日本(19位) |
日本(16位) |
日本(22位) |
日本(21位) |
日本(21位) |
この生産性とは、GDP(国内総生産)を就業者数(または就業者数×労働時間)で割って計算しています。
国によって産業構造や人口動態が違うので、一概に「生産性が低い」と言うのは無理があるかもしれませんが、参考にはなる資料です。
そして、日本の生産性が低い理由ですが、・・・まあ数々の理由はあるとは思いますが、私としては、次の4点が大きな理由ではないかと考えています。
- 残業代が生活費になっている
- 社内に「働かないオジサン」が大量に存在する
- 無駄な会議が多すぎる
- サービスの質が高過ぎる
それでは、何故、こうなっているのかを紹介します。
--------------------------------------------------------------------------------------------------------
- 残業代が生活費になっている
私が、まだサラリーマンで、かつ平社員だった頃、今から30数年前の話になりますが、1ヶ月の残業時間は、軽く100時間を超えていました。
このため、基本給よりも残業代の方が多い生活が続いていましたので、当時、遊ぶ時は、結構派手に遊んでいましたが、元々、仕事ばかりで遊ぶ時間などありませんでした。
ところが、これが役付きになると、雀の涙のような「役職手当」が付くだけで、残業代はカットされましたので、途端に悲惨な生活になってしまった事を覚えています。
『 もう、こんな仕事やってられっか !! 』と言う感じでした。
これは前述の通り、30年以上も前の話ですが、恐らくは、今でも事情は似たり寄ったりではないかと思います。
つまり、現在の日本人は、「残業代」が入ることを前提に仕事をしているので、逆に、仕事を効率化して「残業代」が無くなると、生活できないんじゃないかと思います。
このような状況なので、残業しないで家に帰ると、奥さんに怒られてしまうのかもしれません。
しかし、これは笑って済む話ではありません。
言い換えれば、日本の消費経済は、「残業代」に支えられていると言う事になります。
政府は、消費を拡大させる事でデフレからの脱却を目指していますが、業務効率化で残業代が減ってしまうと、消費が冷え込む結果になってしまうかもしれません。
--------------------------------------------------------------------------------------------------------
- 社内に「働かないオジサン」が大量に存在する
ここ4~5年、社内の「働かないオジサン」、「使えないオジサン」が増殖していると話題になっていますが、皆さんの周りにも、こんな「オジサン」は存在しませんか ?
この「働かないオジサン」ですが、別に、4~5年前から急に出現した訳ではありません。
私が社会人になった頃、バブルが始まるちょっと前、1987年には、OL(Office Lady)からの投稿をベースにした「おじさん改造講座」と言うコラムが週刊文春で始まっており、当時も「働かないオジサン」の存在が明らかになっています。
これら「働かないオジサン」は、会社に存在しているだけで何の仕事もしない人種です。
日がな一日、会社に来ては、新聞を読んだり、どこかに休憩に行ったり、昼ごはんを食べると、コックリ、コックリ、平気で船を漕いだりしている人達です。
私がサラリーマン時代に勤めていた会社にも、グループ会社から定年間近の「オジサン」と言うか、もう「オジイサン」状態の人間が役員として天下ってきたのですが・・・
これが・・・全く仕事をせず、朝から新聞を読み、その途中で居眠りを始め、そのまま午前中が過ぎ、午後も同じようなパターンで時間を潰し、定時になると帰ってしまうと言う生活を、毎日続けていました。
居眠りの最中に電話が掛かってくると、「誰が起こすんだよ !? 」と言うことで、皆んなで揉めた事を覚えています。
しかも、掛かってくる電話も、仕事の電話ではなく、家族、それも「アホな娘」からs,しょっちゅう電話が掛かって来て、皆んなで呆れていました。
ちょっと話はズレますが、この時の電話で強烈だった話を、少し紹介しますと、次のような事を大声で喋っていました。
『 ダメだよ、買ってに車なんか買っちゃ! だって、お前、免許が無いんだろう ! 免許が無いのに車買っちゃダメだって ! 』
こんな電話を大声で喋っているので、皆んな、聞こえない振りをするのが大変で、こらえきれない社員は、急いで廊下に出て笑っていました。
話は、少し逸れましたが、これらの「オジサン」が大量に存在するので、企業全体の生産性が低下する結果になってしまっています。
例えば、2人1組のペアで仕事を任されたとします。その内の1人が「働かないオジサン」の場合、もうそれだけで生産性が1/2に低下してしまいます。
これが3人1組のペアで、内2人が「働かないオジサン」だった場合、生産性は1/3に、そして1/4に・・・どんどん生産性は低下して行きます。
--------------------------------------------------------------------------------------------------------
- 無駄な会議が多すぎる
本件に関しては、弊社ブログで過去に取り上げ、いかに日本中で無駄な会議が開かれているかを紹介した事があります。
★過去ブログ:効率的な社内会議の仕方(その1) ~ 無駄な残業を減らす方法
このブログの中では、プロジェクト・メンバー28名構成の場合、毎月、進捗会議、および会議資料作成のためだけに、メンバー全体で、748時間も無駄な時間を費やしている事例を紹介しました。
日本人の美徳として、「協調性」が取り上げられますが、この「無駄な会議」だけは、即刻、止めて欲しいと思っています。
日本の会議が無駄な理由を挙げれば、もうキリがありません。
・必ず決められた時間までグダグタと会議を行う
・定時過ぎに会議を行う
・不必要な人まで会議に参加させる
・事前準備をせずに会議に参加する
・開始時間に遅刻する
・部門長や社長の独演会になる
・必ず誰かを「吊るし上げる」進捗会議
・会議の終わりに、誰かが必ず「ちゃぶ台返し」をする
・会議のための会議を開く・・・・・etc.
会議を開催するたびに、社員のモチベーションを低下させています。部門長の意識一つで、無駄な会議は減らすことが可能です。
会議を開催することで、方向性の統一、(本来の意味での)進捗管理、そして問題点の洗い出しと修正、等、良い事もありますが、ほぼ全ての会議が、無駄に定例化されているように見受けられます。
「会議では何も産み出さない !」と言う点を再認識すべきだと思います。
--------------------------------------------------------------------------------------------------------
- サービスの質が高過ぎる
また、サービスの質が高すぎる事も、生産性を低下させる原因の一つだと思います。
日本は、東京オリンピック誘致の際、意味不明な「おもてなし」とかいう言葉を使って、サービスレベルの高さをアピールしていましたが、過度なサービスは生産性を低下させます。解りますか ?
つまり、業務の適用範囲が不明確なままサービスを提供し続けるので、必然的に残業時間が増えてしまうのです。
「おもてなし」の業務範囲が明確になっていれば、この時間なら、このサービスまでと、無駄な仕事をしなくても済みません。
ところが、「あれも」、「これも」と、業務範囲が不明確なままサービスを行うので、自然と残業が増えてしまいます。
元々、「おもてなし」の業務範囲が不明確なのですから、生産性など関係ありません。仕事が非効率になるのは当たり前です。
「おもてなし」とは、実は、ただひたすら無駄な時間を費やしているだけなのかも、単なる自己満足なのかもしれません。
「本当に、日本の生産性は低いの ?」と疑問に思っている方も多いと思いますが、本当に、日本の生産性は低いのです。その生産性の低さを、これまでは「残業」がカバーしてきただけです。
その昔、私達の世代までは、「モーレツ社員」が大勢存在し、月100時間残業しても、何ともない時代でしたが、これからの日本では、もう、そんな事は許されません。
私も、ちょっと前までは、平気で、次のような事を言っていました。
『 俺が若い頃は、月300時間の仕事は当たり前だった。 それなのに、今の若いもんは何だ ! 月に100時間残業しただけで過労死とか言って・・・ 』
確かに、あの頃は、それが普通でした。
夜の10時に「お先に失礼しま~す。」と言うと、皆から「何だ !? 今日は早いな~」等と言われていた時代です。
仕事の仕方も生き方も、時代と共に変化する事を学ばなければなりません。
■今回の法改正への対応策
それでは、このような法改正対して、どのような対応を取れば良いのでしょうか ?
基本的には、前章で取り上げた「非効率な作業」を効率化、あるいは廃止することで、生産性は、かなり向上すると思います。
それでは具体的には、何を、どのように変えて行けば良いのでしょうか ? 以降に、私なりに考えた、次の3つの参考意見を紹介します。
- 業務棚卸しと効率化
- 「働かないオジサン」対策としての人員配置の見直し
- 残業代減少に伴う給与体系の見直し
「会議の効率化」に関しては、前述の通り、過去ブログに掲載していますので、そちらを見て下さい。
●業務棚卸しと効率化
最初の「業務棚卸しと効率化」ですが、これは単純に考えると「業務のシステム化」の検討になってしまいます。
部門毎に、部門内で行っている全業務に対して、次のような作業を行う事で、問題点を洗い出します。
・全業務を書き出す
・業務毎に作業概要と作業時間を書き出す
・業務毎に問題点の洗い出しを行う
・洗い出した問題点に関して、対応策を検討する
この「対応策」ですが、最初からシステム化に向けた検討を行うのではなく、作業手順や作業タイミングの見直しを行うだけでも効率化出来る可能性もあります。
その上で、どうしても効率化出来ない部分に関しては、システム化の検討をした方が良いと思います。
特に、現在では、ほぼ全ての企業で、基幹系業務には、何らかのシステムが導入され、そこそこシステム化が進んでいると思いますので、これ以上、メイン業務に対するシステム化は、無理があるようにも思えます。
恐らく、システム化出来ていない部分は、基幹系業務から離れた「枝葉部分」の業務になると思います。
例えば、基幹システムから出力したデータを手作業で加工して別データを作成して他のシステムに渡しているとか、同じく、基幹システムから出力したデータを加工して、取引相手に渡しているとか言うケースになると思います。
このような「枝葉部分」の作業の効率化、システム化に関しては、弊社ブログで、過去に対応策を紹介していますので、そちらも参考にして下さい。
★過去ブログ:開発を依頼する前に - 外注会社に連絡する前に自社で行うべき事
●「働かないオジサン」対策としての人員配置の見直し
「働かないオジサン」への対応は、「リストラ」しかありません。
「リストラ」と言っても、アメリカの「ドナルド・トランプ」の様に単に「You are Fired!」と言って、社員をクビに出来れば、それに越したことはありません。
しかし、ここ日本では、アメリカと異なり、一度、雇用した社員に関しては、そう簡単に「クビ」にする事は出来ません。
「働かないオジサン」を、業務怠慢を理由にする場合、次の項目を満足させる必要があります。
(1)就業規則に職務遂行能力の不足や勤務態度不良等を解雇事由として記載しているか
(2)何度も勤務態度不良を繰り返しているか
(3)職務遂行能力の不足や勤務態度不良により会社に対する具体的な損失があったか
(4)本人に問題点を指摘して、書面により何度も是正勧告を何度も行っているか
(5)改善の見込みがあるか
(6)社員全員に同様の対応を取っているか
上記6点を満足していれば、たとえ裁判になった場合でも、解雇事由としては妥当と判断される可能性は、かなり高いと思います。
しかし、これに関しては、特に(2)がネックになります。上記6点を充足する行為が複数回発生している点が問題となります。つまり、時間が掛かると言う事です。
やはり、最初は、社員を「クビ」にするリストラではなく、本人の意向を汲んだ形での「配置転換」と言うリストラを検討した方が良いと思います。
そして、「働かないオジサン」の配置転換先ですが・・・基本的に、「働かないオジサン」は、どのような部署に配属されようと働かないと思います。
このため、給与と成果が連動する営業職に配置転換し、働かなければ給与が下がるようにすれば良いと思います。
但し、これも簡単には給与体系を変更することは難しいので、基本給は現状のままで、その他の手当部分を営業成果に連動させる形に変更させる必要があります。
配置転換で給与が減額されるとなると、裁判になった場合に不利になってしまう可能性があります。
配置転換された「働かないオジサン」を、営業職が普通に働いてもらう給与と同額になる様に調整する必要があると思います。
このような対応をする事で、社内に「働かざる者食うべからず」の雰囲気を作る事も大切だと思います。
●残業代減少に伴う給与体系の見直し
前述の通り、現在の日本は、「残業代 = 生活費」になってしまっています。まずは、この考え方、そして給与体系を、根本から見直す必要があると思います。
つまり、残業しなくても成果を出した社員には、成果報酬を出す形の給与体系に変える事が重要です。
何か、少し前に流行った「成果主義」みたいな感じですが、本来、「成果主義」とは、このように成果を出した社員には、手厚く報いる事を意味しています。
過去に流行った「成果主義」では、経営層や管理職が勝手に決めた目標を、社員に強制的に押し付ける形の「成果主義」でした。
それが顕著に表れたのが「東芝」です。
「チャレンジ」とか言って、実現不可能な課題を社員に押し付け、その結果、不正会計に手を染め、歴代3社長が辞任するハメになってしまいました。
ちゃんと社員と業務課題を話し合い、どのような評価基準にするのかを双方で納得する必要があります。
営業職であれば、売上数字で判断できるので、評価基準を決めるのは比較的簡単ですが、これが技術職や総務/経理等の職種になると、評価基準を決めるのは、非常に困難になります。
しかし、社員に仕事を割り振る前に評価方法を考えれば事は簡単です。
要は、仕事を割り振る時点で、仕事の完成度と納期の早さをベースに評価方法を考えれば良いだけだと思います。手戻りが無ければ「高評価」、かつ納期が早ければ「高評価」を付ければ良いだけです。
その他の評価基準としては、該当業務の他に「プラスα」で他の業務もこなしたとか、あるいは部下や同僚を支援したとかも評価対象にすれば良いと思います。
今の企業は、仕事を割り振るだけで、その仕事の成果を評価しようと思わないの悪いのだと思います。
企業は、本当に、真剣になって、評価基準を決める必要があります。
--------------------------------------------------------------------------------------------------------
前述の「業務の棚卸しと効率化」と重複しますが、兎にも角にも、これからの企業には、業務を、いかにして効率化するかが問われる時代に入ります。
これからは、この法改正の影響もありますが、労働力人口の減少に拍車が掛かりますので、深刻な人で不足の時代となります。
外国人の雇用を増やすのも一つの対応策だと思いますが、外国人雇用の場合、単に外国人を雇用すれば良いだけでは済みません。
相手の文化や生活習慣等も考慮しなければ行けません。
例えば、ムスリムの人を雇用するのであれば、礼拝の時間を考えてあげたり、ドレスコードを変更したり、社員食堂があるならハラールを用意してあげたりと、業務以外に関しても注意を払う必要があると思います。
これは中小企業にとっては、かなりハードルが高いと思います。
一度、制度を整えれば、後は簡単だとは思いますが、それでも社内に専門部署を設けて対応する必要があるので、やはり大変な作業になると思います。
それよりは、やはり現状のままで、何が効率化出来るのかを検討した方が良いと思います。
まあ、業務の棚卸しも結構キツイ作業ではありますが、これも、いつかは着手しなければならない作業ですから、嫌な作業は前倒しで行う癖を付ける意味でも、明日からでも着手した方が良いと思います。
--------------------------------------------------------------------------------------------------------
今回は、「生産性向上が必要な働き方改革 - 皆さん、誤解していませんか ?」と題して、「働き方改革」に関して、次の情報を紹介してきましたが、如何でしたか ?
- 法改正の内容
- 法改正に伴う注意点
- 日本の現状
- 法改正への対応策
こうして改めて日頃の働き方を見てみると、日本人は、なんて非効率的な仕事の仕方をする民族なのかと、つくづく思い知らされました。
まあ、その昔から「和を以て貴しとなす」のが日本人の特性だから、仕方が無いと言えば仕方が無いのかもしれませんが・・・
今後は、「和の持ち方」を工夫する必要があると思います。
今回の「働き方改革」と同時に、「入国管理法改正案」も成立し、どちらも来月から法が施行される事が決まっています。
これにより、先も記載しましたが、外国人を雇用しやすくなるとは思いますので、「働かないオジサン」を駆逐して、オジサンよりも優秀で、かつ給料が安い外国人を雇用する事で、生産性を向上させることも対応策の一つとして検討した方が良いかもしれません。
しかし、「働き方改革 = 残業時間削減 = 仕事の丸投げ」と、本来の趣旨を取り違えて考えている経営者が多い事も事実ですので、中小企業や子会社の方は、これからの仕事の請け負い方を注意した方が良いと思います。
仕事が増えるのは売上が上がるので嬉しいかもしれませんが、今後は、自分の会社の社員が「過労自殺」してしまう可能性が高まります。
何れにしろ、大企業も中小企業も、「働き方改革 = 業務効率化」と言う意識を持ち、自分達の仕事の仕方を考えて見るべき時が来ている事を自覚して下さい。
それでは次回も宜しくお願いします。
以上
【画像・情報提供先】
・Wikipedia(http://ja.wikipedia.org/)
・ITmediaビジネス(http://www.itmedia.co.jp/business/)
・マイナビニュース(https://news.mynavi.jp/)