「Chromebook」について 〜 結局、仕事で使えるの ?


皆さん、「Chromebook」と言うノートPCをご存じですか ?


Chromebook」は、Google社が開発した「Chrome OS」を搭載したPCで、アメリカでは、2011年の5月から販売が開始されています。


日本でも、2014年7月14日に、法人や教育機関限定ですが、「Chromebook」を販売することが発表され、日本AcerDELL、日本ASUSと、相次いで「Chromebook」製品の発表会を行っています。


この「Chromebook」の最大の特徴は、その「価格の安さ」です。

上記の様に、現在は、法人/教育機関向けに、少数の代理店でしか販売されていませんが、Amazon等のサイトを検索してみると、最安値で、30,000円前後で販売しています。

Toshiba CB35-A3120 PLM01U-002005 13.3-Inch Cloud Computer 38,000円
Acer C720 Intel Celeron 1.4GHz/2GB/SSD16GB/11.6inch 28,000円
・HP Chromebook 11 36,500円
・日本サムスン Chromebook Wi-Fi 11.6インチ 28,000円


これだけ安価なPCであれば、現在のPCとの置き換え、あるいは2台目のPCとして、検討してみても良いかもしれない、と思う方も大勢いるかと思います。


価格面の問題がクリアできるとなると、次の問題は、「それじゃ、Chromebookは、仕事で使えるの ?」と言う事になるかと思います。


そこで今回、各社が提供している「Chromebook」の各種スペック(仕様)の話は脇において、単純に、「Chromebook」を業務用PCとして使えるのか否かについて、簡単ですが、次の内容を紹介したいと思います。


Microsoft社のOfficeは使えるのか ?
●現在、Windows PCで使っているソフトウェアは使えるのか ?
●何が、これまでのPCと違うのか ?
●「Chromebook」の用途


それでは今回も宜しくお願い致します。

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Microsoft社のOfficeは使えるのか ?


先に結論を言うと、「Microsoft Office」は、「Chromebook」では使えません。


次章でもお伝えしますが、「Chromebook」は、Google社が、独自に開発したLinuxベースの「Chrome OS」と言うOS(Operating System:基本ソフトウェア)で動作します。


世間一般のPCは、ご存知の通りMicrosoft社の「Windows」と言うOSを搭載しています。(Macファンの方のために付け加えると、「OS X」と言うOSもあります。)


「Office」もMicrosoft社の製品ですので、当然、「Windows OS」で、Officeは稼働できます。







しかし、「Chrome OS」は、「Windows OS」と互換性がありません。このため、「Chromebook」には、Officeをインストールすることさえできません。

その代わり、と言っては何ですが、Google社では、次のようなOffice代替製品を用意しています。

●Word Googleドキュメント
Excel Googleスプレッドシート
Outlook Google Gmail
PowerPoint Googleプレゼンテーション
●OneDrive Google Drive
Skype Googleハングアウト


これら代替機能の内、ドキュメント、スプレッドシート、プレゼンテーションに関しては、完全ではありませんが、それぞれ対応するOffice製品と互換性があります。


このため、例えば、Googleドキュメントで作成した文章をWord形式で保存したり、あるいはExcelで作成した表を、Googleスプレッドシート形式で保存したりする事ができます。


しかし、微妙に罫線やグラフがズレたり、フォーマットが異なったりといった現象が発生しますので、後で必ず手直しが必要になります。


このため、Officeの代替製品を使う時には、「まあ、こんな物だ」と割りきって使う必要があります。

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■現在、Windows PCで使っているビジネス・ソフトウェアは使えるのか ?


この点に関しても、答えは「NO」です。


前述の通り、「Chrome OS」と「Windows OS」には互換性が全くありません。


このため、「Windows OS」で稼働している各種ソフトウェアを、「Chromebook」で稼働させることは不可能です。


Chrome OS」は、当初、Linuxベースの「Ubuntu(ウブントゥ)」と言うOSで作成されていましたが、現在では、「Gentoo(ジェンツー)」と言う、これもLinuxベースのOSで開発が続けられています。


また「Chrome OS」は、オープン・ライセンス方式で開発が行われているので、下記のよう大手企業も開発に協力しています。

・PCメーカー AcerASUS、HP、Lenovo東芝
・IT企業 Adobe Systems、Freescale、QualcommTexas InstrumentsIntel


このため、今後、ノートPC市場で「Chrome OS」のシェアが高まれば、Adobe等も開発に絡んでいるので、「Chromebook」で稼働できるソフトウェアも、増えて行く可能性はあると思いますが・・・


ソフトウェアの普及を阻む、大きな問題は、やはり「OSの非互換」です。


OSの非互換に関しては、表面的には、「Windows OS」と「Mac OS」との関係に似た現象のように見えますが、実際は、もっと根本的な違いが原因です。


この「根本的な原因」に関しては、次章で説明します。

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■何が、これまでのPCと違うのか ?










それでは、何が、これまでのPCと「Chromebook」とでは異なるのでしょうか ?


OSが異なるのは前述の通りですが、それよりも大きな違いは、「Chromebook」は、全てのソフトウェア、つまりアプリケーションが、「Chromeブラウザー」を介して実行される点です。


つまり、「Chromebook」と言うノートPCは、「Chromeブラウザー」を動かすためだけのPCなのです。



従来、Microsoft社の「Windows 7」以前のPCでは、ソフトウェア(アプリケーション)をローカルPCにインストールして使用する、いわゆる「デスクトップ・アプリケーション」と言う使用方法が一般的でした。


ところが、Microsoft社では、「Office2013」の発売と同時に、「Office Web Apps」と言う新機能を発表し、ローカルPCで動作するのではなく、Webブラウザーで動作するソフトウェアを提供し始めました。


このようにWebブラウザーで動作するソフトウェア(アプリケーション)を、それぞれ次のような名称で読んでいます。

Microsoft Office Web Apps
Google Chromeアプリ、Chrome Webアプリ


Microsoft社の「Windows 8x」以降で登場した「Windowsストアアプリ」を、Webアプリと呼んでいる方もいるようですが、厳密には、「Windowsストアアプリ」は、Webアプリではありません。


Windowsストアアプリ」にも、Webブラウザーで動作するアプリケーションもありますが、基本的に「Windowsストアアプリ」は、Webブラウザーで動作するのではなく、「Windows 8x」と言うOS上で動作するソフトウェアだからです。


と、話が、オタク系のディープな世界の話になりそうなので、この辺りで詳しい話は打ち切りますが、「Chromebook」で動作する(この言い方も正確ではありませんが)ソフトウェア(アプリケーション)は、全てWeb環境で動作するソフトウェアになります。


前述のOfficeを代替する下記ソフトウェアも、全てWeb環境で動作します。



●Word : Googleドキュメント
ExcelGoogleスプレッドシート
OutlookGoogle Gmail
PowerPointGoogleプレゼンテーション
●OneDrive : Google Drive
SkypeGoogleハングアウト


Chromebook」の場合は、と言うかWebアプリの場合は、全てのファイルと設定がサーバー上のクラウドに、暗号化されて保存されます。


バイスを紛失、あるいは破損した場合も、データがクラウド上に保存されているので、データ復旧も簡単に行うことができます。


ちなみに、Microsoft社のOfficeのWeb版である「Office Web apps」も、前述の通り、Web環境で使えますので、Microsoftフリークの方は、最初から「Office Web apps」を使った方が良いと思います。但し、「Office Web apps」は、一般のOfficeではありませんので、機能面で非互換があります。


もっとも、Microsoftフリークの方は、「Chromebook」など購入しないと思いますから、余計なお世話かもしれませんが・・・




また、「Chromebook」の場合、まだウィルス感染とかデータ流失の報告がありませんし、Webアプリ自体、Google社が作成しているソフトウェアばかりですので、比較的安全であると言われています。


このため、子どもや教育機関向けのPCとして高い評価を受けているそうです。


もっとも、セキュリティ上で安全と言われているのは、「Chromebook」で稼働できるWebアプリの数が少ないと言う事実の「裏返し」でもあります。



Chromebook」で稼働できるWebアプリが増えてくるに従い、ウィルスの数は増えてくると思います。


このことは、同じくGoogle社が開発した「Android OS」を見れば解ると思います。


Android OS」は、Google社が開発し、ソースを一般公開したことから爆発的に稼働アプリが増え、現在では、スマートフォン用OSではシェア1位ですが、その反面、「Android」に対応したウィルスや偽アプリも爆発的に増え続けています。


安全性が高い事で有名なAppleでさえ、日本時間の2014年11月9日に、セキュリティ大手のTrendMicro社から、偽アプリがAppleストアで販売されていると通報されています。


また、Apple製品に関しては、アメリカのセキュリティ会社「Palo Alto Network」社が、2014年11月6日に、「iOS」と「OS X」をターゲットにした新種のマルウェア「Wirelurker(ワイヤーラーカー)」を発見したと報告しています。


さらに、アメリカのセキュリティ会社「FireEye」社が、2014年11月10日に、ソフトウェアの脆弱性を狙う「マスクアタック(masque attack)」に狙われている、と言う報告をしています。


このように、シェアが高い製品は、ハッカーやウィルスを作る人間に狙われる運命を背負っていますので、「Chromebook」のシェアが高まれば、安全性の確保も難しくなると思います。


ちなみに、「Chromebook」は、現時点では、前述の通り、「Chromeブラウザー」を動かすためだけのOSですから、「Windows OS」や「Apple iOS」、および「Apple OS X」よりは、余計な機能が入っていない分だけ、安全性は高いと思われます。


皮肉なものです。





それと、僅かな相違点かもしれませんが、操作性の面では大きな違いとなりますのでお伝えしておきますと、キーボードが、これまでのPCとは異なります。


これまでのPCのキーボードには存在しない、「Chromeブラウザー」用の特殊なファンクション・キーに変更されているようです。


左の画像の、ファンクション・キーの部分が、変更された「Chromeブラウザー」用の特殊なファンクション・キーです。


また、「Caps Lock」キーが「変換」キーに置き換わっていますし、「矢印」キーが他のキーより小さくなっているので、ゲーマーの方などは、慣れるまでは使い難いと思います。


さらに、タッチパッドにクリックボタンが付いていません。私は使ったことがないので、情報だけなのですが、「Chromebook」では、右クリックは必要無いのだそうです。




あと忘れてはいけない事として、周辺機器との連携の問題もあります。


現時点で、市販の周辺機器がサポートしているOSは、ほとんどの製品が「Windows OS」や「Mac OS X」だけに限られていると思います。


そもそも、「Chromebook」に対しては、前述の通り、周辺機器用ドライバー等はインストールすることは出来ません。


このため、「Chromebook」で使用できる周辺機器は、恐らく、下記の物に限られてしまうと思われます。


●マウス
●SDカード
●(一部)外付けHDD
USBメモリ



その他、例えばフォルムや端子の数、重さや性能に関しては、本ブログでは紹介しませんので、詳しい情報を知りたい方は、キーワード「Chromebook」で、Webを検索してみて下さい。

本章の最後に、Microsoft社が、WindowsノートPCと「Chromebook」の機能比較を行っているページが有りましたので、参考までに記載しておきます。

http://windows.microsoft.com/ja-jp/windows-8/compare-chromebook

皆さん、ご想像の通り、WindowsノートPCには、全機能に対してチェックが付いていますが、「Chromebook」に関しては、わずかに2個の機能(Web閲覧/Webアプリ)にしかチェックが付いていません。

事実ではありますが、Microsoft社のページですから、自社製品を有利に書くのは当たり前かもしれません。

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■「Chromebook」の用途


ここまで、「Chromebook」と、世間一般のPCとの違いを説明して来ましたので、「Chromebook」の使い道に関しては、既にお解りだと思います。


現状の「Chromebook」は、業務に関しては、脇役でしかあり得ません。メインPCになるには、程遠い存在です。


あくまでも、2台目以降のPCとしての価値しかないと思います。


あるいは、既に説明した様に、特定業務、現状では教育機関等に特化した使い方をすれば、安全性の観点から、メインPCとしての存在感を出せるかもしれません。


しかし、通常の業務用PCとしては、正直「使えない」存在だと思います。


ちなみに、「Chromebook」の利用事例として、日本Acer社が、「私立広尾学園高校」の活用事例を、Youtubeにアップしていました。


動画の登場人物は、「Chromebook」に関して多くのメリットを語っていましたが、私の感想では、「Chromebook」独自のメリットは、「Chromebook for Education」と言うソフトウェアの存在が大きいように感じました。

このソフトでは、管理コンソールが用意され、そこで各種設定管理やURLフィルタリングが出来るので、子供達が普段使う場合でも、安心して使えることが出来るのではないかと思います。

その他、ファイル共有とかメール管理等のメリットも語ってはいましたが、別に Chromeアプリ以外でも提供している機能なので、これらは「Chromebook」特有のメリットとは言えないと思います。

つまり、「Chromebook」のメリットを整理すると、次の3つがあると思います。

  • 価格の安さ
  • 安全性が高い
  • メンテナンス性能が良い


しかし、上記の「私立広尾学園高校」の場合、次の点に注目する必要があります。


これらの前提条件があって、初めて「Chromebook」を導入できたのだと思います。事実、現時点では、「Chromebook」を導入している教育機関は「私立広尾学園高校」の1校だけだと思います。


他の教育機関で「Chromebook」を使う場合、もちろん、現状のタブレット端末の代替や買い替えとして、検討材料にはなると思いますが、Google社だけの努力では、難しいと思います。


つまり、現在の教育現場では、タブレット端末の導入が進んでおり、かなりの学校でタブレット端末を用いた授業が行われています。


そして、これらタブレット端末を使った授業では、「Windows OS」、あるいは「iOS」をベースにした教材やシステムが使われており、「Chrome OS」をベースにした教材などは1個もありません。


PCの「価格が安く安全性が高い」だけでは、現状のタブレット端末の代替品にはなり得ません。


逆に、既存の教材やシステムを、「Chromebook」用に修正しなければならないケースがあるので、かえって費用対効果が悪くなる可能性が高いかもしれません。


要するに、教材やシステムを提供している企業が、「Chrome OS」向けのIT教材や仕組みを多数作成するか、あるいは教材をWebベースのソフトウェアに変更しないと、「Chromebook」のシェアは増えないと思います。




これは「対企業」でも同様です。

企業の場合、「iOS」ベースのシステムは皆無ですので、日常行う業務に関しては、そのほとんどが「Windows OS」ベースで構築されています。


とは言え、最重要業務である基幹系、あるいは勘定系業務に関しては、堅牢性からメインフレームUnixで行われています。(金融機関や生損保系企業は、いまだにメインフレームです。唯一、新生銀行だけは基幹系業務をWindowsで行っています。大丈夫なのかな ?)


これら重要業務を、「Windows OS」で行っているのは、中小以下の企業だと思います。


他方、「Google Apps for Business」を導入する企業が増えていますが、これは、あくまでも「グループウェア」として使っているだけで、業務システムではありません。


このような状況で、「Chromebook」が入り込む余地があるのかと言うと・・・本章の最初に述べた様に、難しいと思います。


まあ、「Google Apps for Business」を既に使っている企業であれば、「Chromebook」を導入するための「敷居」は、通常の企業よりは低いとは思います。


それでも、「グループウェア」以外は、おそらく「Windows OS」を業務として使っているので、既存業務をGoogle Webアプリに置き換えるのは無理があると思います。


やはり「対企業」に関しても、業務システム周りのソフトウェアが、いかに「Chrome OS」対応、あるいはWeb対応するのかが、「Chromebook」のシェアを左右する事になると思います。


現状では、どう考えても、2台目以降のサブPCとしての使い道しかないと思います。

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ここまで、話題となっている「Chromebook」を紹介して来ましたが、如何でしたか ?


ところで、本ブログの冒頭で、「Chromebook」は、法人と教育機関向けにしか発売していない、と紹介しましたが、平成26年11月11日、Google社は、個人向けにも「Chromebook」を発売すると発表しました。


早ければ、既に先月(12月)中旬には、店頭に並んでいたと思います。価格も、4万円前後とのことです。


これまで、法人と教育機関向けにしか発売してこなかった「Chromebook」ですが、私は、逆に個人の方が、ニーズがあるように思えます。



会社では、「Windows OS」が支給されるので、仕方なく「Windows」を使ってはいても、家に帰れば、ネットサーフィンや動画サービスしか利用しない、と言う人は結構大勢いると思います。


また、年配の方などは、『 パソコンを使ってみたいが設定が難しい 』と言って避けている人は大勢います。


そのような人達向けに、設定不要で直ぐにインターネットが使え、かつ値段も安く、セキュリティの心配もない「Chromebook」は、将にピッタリの商品だと思います。


特に今年は、「2015年問題」で、団塊の世代の人が大量に退職しますから、この「団塊の世代」の退職者をターゲットとして「Chromebook」を販売すれば、かなり売れると思いますが如何でしょうか ?


まあ、弊社が儲かるわけではないので、どうでも良いことなのですが・・・代理店になれば良いのかな !?


ご精読、ありがとうございました。

以上


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