Windows XPどうするの? − その2

皆さん、PCアップグレードの検討は進んでいますか?


先月号で、弊社ブログでWindows XPの問題を取り上げましたが、その後、NHKを始め各種メディアでも【XP】の問題を取り上げ始めたようです。

ニュース報道によると、【XP】に関しては、企業ベースで1,400万台(約40%)、個人ベースで1,170万台(約28%)が、未だに現役で使われているそうです。
弊社に今月問い合わせがあった企業の中でも、まだ3社が【XP】を使ったシステムを運用されていました。

『まだ、そんなにXPを使っている企業があるんだ!! それならウチも、まだ大丈夫かな』と安心するのではなく、早めの対応が肝心です。

先月のブログでは、OSのグレードアップ方法とデータの移行方法の説明をさせて頂きました。

前回ブログ:Windows XPどうするの? − その1(http://msystm.co.jp/blog/20130323.html)

今月は、先月に引き続き、アプリケーションの移行方法とその他部分(IE/プロファイル)の移行方法について説明させて頂きます。

それでは今回も宜しくお願いします。


■アプリケーション移行

OSを【XP】から【7】にアップグレードする際に、最も気になる点は、【アプリケーションの非互換】です。

【アプリケーション】と言う意味が、良く理解できない方のために、簡単に【アプリケーション】とは何かを説明します。


PCには、大別すると、PC本体のOS(Operating System)を動かす基本ソフトウェアと、それ以外のソフトウェアの2種類のソフトウェアが含まれています。

つまり、【Windows 7】は基本ソフトウェアとなりますので、それ以外の下記のようなソフトウェアは、全て【アプリケーション】と言う事になります。

このような【アプリケーション】の内、上記Office製品、adobe製品、Apple製品等は、当然のごとく【7】対応版を用意していますので、各社のサイトから【7】対応版をダウンロードすることで対応が取れます。

また、Vector窓の杜等、フリーソフトダウンロードサイトから獲得したソフトウェアに関しても、作者のホームページや、ダウンロードサイトを再参照すれば、【7】対応版を獲得できる可能性は高いと思います。

しかし、やっかいなのは、自社用の業務ソフトウェアです。

この自社用業務ソフトウェアは、当然、御社専用に作成したソフトウェアですので、当然サポート(動作保障)しているPCのOSも、御社が、自社用ソフトウェア開発当時に使用していたWindows OSである【XP】となります。

御社用ソフトウェアを開発した業者も、その当時は【7】などは、この世に存在していませんでしたので、【7】対応などできません。

このため、御社用に開発した業務用ソフトウェアに関しては、【7】では動かないと考えた方が良いと思います。

実際には、【7】で動かしてみないと何とも言えない部分はありますが、「たぶん動くだろう」と言う勝手な思い込みで対応するよりは、「きっと動かないだろう」と言う想定の元、ソフトウェアの作り直しを含めた対応策を検討した方が良いと思います。

ソフトウェアの作り直しとなると、当然費用も掛かりますので、【7】への移行のための対策費用には、OSやPCの購入費の他にも、御社専用ソフトウェアの作り直し費用も含めた検討が必要にあります。


それと、もう一点、注意点を追加させて頂きます。

御社専用の業務アプリケーションは、今から十数年前に開発したシステムだと思います。

そうなると、当時、御社のシステムを開発した担当者も、当然ながら10年以上「歳を取って」います。

  • 果たして、その担当者は、まだ会社に在籍しているのでしょうか?
  • 開発担当者は、新しいOSに対応できるスキルを持っているのでしょうか?
  • 会社自体、まだ存在しているのでしょうか?
  • 当時の開発ドキュメントは残っているのでしょうか?

弊社には、よく次の様な問題を抱えている企業様から相談がきます。

  • 当時の担当者が退職してしまったので、システムの保守ができない
  • 担当者は在籍していたが、新しいOSの事は解らないと言っている
  • 10年ぶりに連絡したが、電話が繋がらない
  • 開発ドキュメントが無くなってしまった

このような問題点に対しても、解決策を検討する必要があることを追加させて頂きます。

それでは、ここで【アプリケーション】を【7】に移行する一般的な方法を説明します。【7】に【アプリケーション】を移行させる方法は、だいたい次の5つの方法になります。

  1. 既存【アプリケーション】を、そのまま使用する
  2. 【アプリケーション】を【7】対応版にグレードアップする
  3. 【7】のアプリケーション互換モードを使用する
  4. 【7】で【XPモード】等の仮想デスクトップ環境を使用する
  5. 【アプリケーション】を【7】対応用に作り直す

また、【アプリケーション】の【7】への移行の優先順位は、論理的には、上記の順番通りだと思いますが、これは、あくまでもMicrosoftが提唱している順位であって、実際の業務運用においては、(4)の対応を取り、実運用を行っている企業は皆無だと思います。

ここで、「互換モード」と「XP Mode」について、簡単に説明します。


●「アプリケーション互換モード」とは

「アプリケーション互換モード」とは、簡単に言うと、【アプリケーション】を騙して、【7】を導入したPCが、あたかも【XP】で動作しているかの如く思わせる方法のことです。
もっと簡単に言うと、言葉は悪いですが、「偽装」、「なりすまし」の事です。

【アプリケーション】を騙すタイミングとしては、【アプリケーション】のインストール時と実行時になります。

【7】にアップグレードしたPCで、業務用ソフトウェアを使う場合、当然ですが該当PCに、業務用ソフトウェアを再インストールする必要があります。


業務用ソフトウェアが【7】に対応していない場合、【7】移行作業において最初に「つまずく」のは、このインストール作業です。

この場合、該当ソフトウェアをインストールするプログラムの「プロパティ」を開き、「互換性」タブに、互換条件(XPのSPバージョン)を設定すれば、ほぼ大丈夫なはずです。

なお、この時には、画面上の「管理者としてこのプログラムを実行する」を必ずチェックして下さい。

【7】には【Vista】から実装された「UAC(User Account Control)」の強化版が実装されており、この【UAC】が曲者です。


UAC】は、プログラムが、勝手に管理者権限で動作して、マルウェアスパイウェアをインストールしたりしない様に制御することを目的に実装された機能です。

確かに、今の時代ではセキュリティの強化は必要ですが、【XP】時代には管理者権限など意識せずに動作していたわけですから、互換モードで動かす場合には、【UAC】の制御は外して欲しいものです。

それと、話が逸れましたが、上記対応をしてもインストールできない場合には、「互換性のトラブルシューティング」機能を使えば、この問題も解決できるかもしれません。

この「互換性のトラブルシューティング」では、ウィザード形式で、非互換部分を調査してくれるので、ある程度、非互換部分を絞り込むことが可能になります。

この調査結果を踏まえて、「アプリケーション互換モード」の設定をし直して再インストールすれば大丈夫だと思います。


次に実行時のエラーに関してですが、この場合も、インストール時と同様、実行するプログラムの「プロパティ」を開き、「互換性」タブに、互換条件(XPのSPバージョン)と、プログラムの設定(色、解像度、視覚テーマ、コンポジション、DPI)を設定すれば、ほぼ大丈夫だと思います。

プログラムの設定の部分で専門用語が出てきますが、それは下表のような意味となります。









これらの設定をしてもプログラムがインストールできない/実行できない、と言う場合には、後述する「XPモード」で実行することになります。

「互換モード」関しては、下記に詳しい説明が記載されていますので参考にして下さい。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20100914/352030/


●「XPモード」とは

「XPモード」とは、【7】のPC内に、【XP】の環境そのものを作成してしまうことです。


上述の「互換モード」は、【アプリケーション】を騙して動かす仕組みでしたが、「XPモード」は、【XP】の環境そのものを【7】内に構築する仕組みです。

簡単に言うと、1台のPCの中に、もう1台分の環境を作成しまうことです。


この機能を使えば、事実上【XP】の中で【アプリケーション】が動作しますので、従来通り、何の問題もなく【アプリケーション】が動作するはずです。

ちなみに、この「XPモード」は標準機能としては提供されていませんので、下記サイトの情報を参照してダウンロードして下さい。
http://windows.microsoft.com/ja-jp/windows7/install-and-use-windows-xp-mode-in-windows-7

また、これまでの方法では、ファイル、およびUSBやプリンター等のデバイスに関しては、【7】のOSが管理していましたので、【アプリケーション】がアクセスできないケースがあります。

しかし、「XPモード」では、【アプリケーション】が直接ファイルやデバイスにアクセスできるようになりますので、【アプリケーション】が、ファイル構造に特化したアクセスを行ったり、あるいは特定デバイスに特化したアクセスを行ったりしない限りは、ほぼ問題なくアクセスできるはずです。

また、【7】側と【XP】側とで、クリップボードも共有できますから、相互にコピーやペーストも行うことができます。

さらに、「XPモード」には、【自動公開】という機能が備わっており、【XP】側に【アプリケーション】をインストールすると、【アプリケーション】のショートカットが【7】のスタートメニューに自動登録されますので、「XPモード」を意識することなく、該当【アプリケーション】が、あたかも【7】上で稼働しているようにして使うことができます。

このように便利な「XPモード」ですが、「XPモード」自体を使うためには、次の条件があります。

○エディション :Professional以上が必要(Professional/Ultimate/ Enterprise)
○メモリー :2GB以上
○ディスク容量 :15GB以上の空き容量
「XPモード」に関しては、下記に詳しい説明が記載されていますので参考にして下さい。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20101014/352860/?ST=win&P=1


上記条件さえクリアできれば、【アプリケーション】を作りかえる必要もなく、何の問題もなく【XP】から【7】に移行できます。

と、言いたいところですが、前にも書きましたが、この方法で、社内の全PCを【7】に移行している企業は存在しないと思います。それは、次の理由からです。

  • 社内のIPアドレスが不足する
  • ソフトウェア・ライセンスが2倍必要になる

「XPモード」の説明の最初に、「1台のPCに、もう1台分の環境を作る」と書きましたが、まさに、その通りだからです。

表面上は1台のPCですが、実態は2台のPCとなりますので、インターネットを使えば、1台でIPアドレスを2個使います。

また、セキュリティ・ソフトウェア等、PC1台で1ライセンスと言う使い方をしているソフトウェアの場合、【7】側と【XP】側の2ライセンス必要になります。

これはセキュリティ・ソフトウェアに限った問題ではなく、何らかのクライアント管理用のソフトウェアを使っている場合、全てのライセンスが、従来の2倍必要になります。

当然ですが、Microsoft側の説明には、このような説明は一切掲載されていません。

まあ、Microsoftにしてみれば、IPアドレスの問題やソフトウェアのライセンスの問題は、この「XPモード」とは直接関係ありませんが、不親切、と言えば不親切だと思います。

世間一般の「Windows 7移行の究極の方法」などと言う説明に踊らされて、社内の全PCを、「XPモード」で移行する方法を検討して失敗した企業も存在しますので、皆さんも注意が必要です。

また、前述の「互換モード」に関しても、今現在は「互換モード」で古い【アプリケーション】が動作しているかもしれませんが、それとて、いつまで正常に動作するのかは、Microsoftも保障していません。

やはり、「後顧の憂いを断つ」と言う意味でも、古い【アプリケーション】を破棄して、【7】用にアップグレードした方が良いと思います。

しかし、この古い【アプリケーション】を使うPCが数台程度であれば、わざわざ数台程度のPCのために、【アプリケーション】の再作成の費用を掛ける必要はありませんので、該当のPCだけを、前述の「互換モード」、あるいは「XPモード」で動作させた方が良いと思います。

まずは、次の点を調査し、その上で対応策を検討した方が良いと思います。
・【7】で動作しない【アプリケーション】は存在するのか?
・動作しない【アプリケーション】は、誰が使用しているのか?

何れにしろ、もう、残り時間は少なくなってきましたので、予算の確保、と言う意味でも、調査/検討は急いだ方が良いと思います。


IE(Internet Explorer)の環境移行

【7】に標準搭載されているブラウザは、今でも「IE8」のようですが、現在では、【Windows8】用に開発された【IE10】も、平成25年2月27日から、下記サイトでダウンロード可能となっています。
http://windows.microsoft.com/ja-jp/internet-explorer/download-ie

私も、【7】にアップグレードしたPCにメモリーを増設し、仮想環境を構築して【Windows8】を導入してみたのですが・・・何か使い難いので【Windows8】や【IE10】は使っていません。

そもそも、【Windows8】や【IE10】は、タッチパネルを前提に開発されていますので、何か違和感があります。

使い続けていれば、これまでと同様、いつかは慣れて来るとは思うのですが・・・何もそこまでしてMicrosoftの言いなりになるのも「癪に障る」ので、全然使っていません。

と、話は逸れてしまいましたが、本ブログを書いている時点で、ブラウザ対応のアプリケーションが、【IE6】や【IE7】でしか動かない、と言う現象が発生している方や企業は皆無だと思います。

唯一考えられるケースとしては、『 社内用に開発したWebシステムが、まだ【IE8】以上では動作しない。 』と言うケースではないかと推測します。

このような状態で、社内システムを放置していること自体信じられませんし、私自身も、こんな話は聞いたことはありません。

このため、IEの環境移行に関しては、「そんな企業は存在しない」と言う前提のもと、割愛したいと思います。

もしも、上記現象が今でも発生している、と言う場合には、下記サイトを参考にされて下さい。
IE互換表示 : http://support.microsoft.com/kb/2539126/ja


■システム環境およびユーザープロファイルの移行

皆さんは、PCが使い易いように、壁紙や各種【アプリケーション】の設定を、個別に行っている場合があると思います。

これらの設定情報は、「ユーザープロファイル」としてPC内に保存されています。

しかし、【XP】と【7】とでは、ユーザープロファイルの構造が異なるので、レジストリ情報の単純コピー等で移行することはできません。

そこで有効なのは、先月のブログで何度も説明している【Windows転送ツール】です。【Windows転送ツール】を使用すれば、次の様な情報も移行できます。

  • マイ・ドキュメントのデータ
  • OS設定
  • インターネットの接続設定
  • IE設定

しかし、この【Windows転送ツール】は、あくまでも個人レベルでの支援ツールです。

もしも、社内の多数のPCを、一気に【7】に移行する必要があるシステム管理者の方であれば、【Windows転送ツール】ではなく、【ユーザー状態移行ツールキット(USMT : User State Migration Tool)】を使った方が良いと思います。

【USMT】は、基本的な仕組みは【Windows転送ツール】と同じですが、次の様なメリットがあります。

  • Windows転送ツール】より詳細な設定が可能
  • 操作の自動化が可能(スクリプト対応)

【USMT】は、Windows7用の「Windows自動インストールキット(AIK)」の一部として提供されます。

【AIK】に関しては、下記サイトからダウンロード可能となっています。
http://www.microsoft.com/ja-jp/download/details.aspx?id=5753

システム管理者の方は、1回は読んでみた方が良いと思います。

但し、このツールは、単純ダウンロードでは使用できず、一旦ISOファイルをダウンロードし、ISOファイルをDVDに書込み、DVDからインストール、と言った面倒な手順が必要になるようです。

まあ、何れにしろ、何をするにも面倒だ、と言う事だけは確かなようです。



以上、アプリケーションの移行、プロファイルの移行について説明してきましたが、このブログを読んでいるだけで、「移行作業は行いたくない」と思われた方が多いと思います。

逆に言えば、【XP】を【7】に移行するのは、作業時間が掛かる、と言うことです。

まだ1年も先の話だから、移行の検討は、年が明けてから、来年で良いや、等と考えていると、きっと痛い目をみます。

皆さん、通常の業務を抱えている訳ですから、今から少しづつ、シコシコと作業を開始しないと、来年の4月は、とんでもない事になっているかもしれません。

早めの対応をお勧めします。


それでは、次回も宜しくお願いします。

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