コンピュータ紛争の原因と予防策について

私がIT業界に身を投じて、既に1/4世紀が過ぎてしまいました。その間、コンピュータ・ソフトウェアに係わる問題には、何度も遭遇してきました。

以前在席していた会社では、納品したシステムが想定通りに稼働せず、お客様との間で裁判沙汰になったケースもありました。また別のケースでは、やはり納品したシステムが、マニュアルに掲載していた機能を実現できず、1年以上掛けて保守を行ったケースもありました。

これらの事から、今回のメルマガでは、コンピュータに係わる紛争事例と、その防止方法について簡単ではありますが、記載したいと思います。


■紛争事例

コンピュータ紛争の三大原因は、下記3点が密接に絡み合い、その解決を困難にしていると思います。

●原因1:納期遅れ

→ 多数の仕様変更を安易に受け入れたことで納期が大幅に遅れ、契約解除につながったケース

●原因2:品質不良
→ 仕様書やマニュアルと、納品物との間に実装機能の誤差があり、本番開始後にトラブルになったケース

●原因3:契約の不備

→ 社長や役員同士での口約束で開発を始めてしまい、後でトラブルにつながったケース

→ 曖昧な保守契約(保守範囲)のせいで保守担当者とお客様との間でトラブルになったケース

→ 瑕疵担保期間を曖昧にしたまま開発を行い、納品後に発生した障害への対応でトラブルになったケース


■紛争予防策

私の経験では、紛争を未然に避ける方策として重要なのは、次の3点だと思っています。

●契約書

 → 契約の種類、契約の適用範囲、瑕疵担保期間、仕様変更期限、検収/受領条件、支払方法

●仕様書

 → 提供機能の明確化、制限項目の明確化

●議事録

 → 「言った/言わない」の回避、議事録回覧による双方の承認確認


紛争を未然に避けるためには、上記項目に関して、開発しようとするシステムに見合った契約方式であること、要件が明確なこと、仕様変更への対処方法、テスト方法、検収時に満たすべき項目、代金の支払い方法など、あらゆる点を考慮して、自社になるべく有利な内容の契約を、適切なタイミングで結ぶべきです。

議事録に関しては、契約書や仕様書よりも軽く扱われがちですが、文書管理も重要です。打ち合わせ議事録をきちんとした形で作り、関係各位に回覧して残しておけば、紛争になったときに、言い分を補完する証拠になりますし、やり取りした電子メールも残っていれば良い証拠になります。

なお、議事録に双方の捺印があれば完璧ですが、社内議事録とは違い、印鑑をもらうのは難しいと思います。

しかし、メールに添付して関係各位に送信し、かつメールの文章に「記載ミスがあった場合にはご指摘願います。修正した議事録を早急にお送り致します。なお、ご指摘がない場合には、本議事録をご承認頂いたものとさせて頂きます。」と言う内容を記載すれば良いと思います。

コンピュータ紛争は、発注元、発注先とも疲れるものです。また、折角獲得したお客様との無益な争いは回避すべきです。出来る限り上記予防策を講じて紛争を防ぎ、システム納品後もお客様と良好な関係を築くようにして下さい。