今話題のクラウドについて
今回は、今 IT業界が必死になって売り込もうとしている「クラウド・コンピューティング」について、簡単な説明をしたいと思います。
■クラウドとは
クラウド(Cloud)とは、ご存じのように雲(くも)を表す英語で(FFⅦの主人公ではありません)、もともとは欧米のコンピュータ業界の人達が、システム構成図を作成する時に、ネットワークで繋がれているハードウェア(サーバーやPC等)群を、「雲」の図で表現する使っていました。
しかし、2006年GoogleのCEOが、サーバーサイドにアプリケーション(業務)とデータを配置し、ネットワーク経由でサーバーに置かれたアプリケーションを動かして処理を行うことを「クラウド・コンピューティング」と表現したのが始まりと言われています。
一般的な業務処理では、自らのPCにアプリケーションとデータを配置し、自らのPC内で業務を実行する点が、「クラウド」とは異なっている点になります。
「クラウド」と言っても、その形態は様々なものがあり、実際には、次の3つの形態に分類されています。
(1)SaaS(サーズ) : Software as a Service
インターネット経由のアプリケーションの提供(業務の提供)
(2)PaaS(パース/パーズ) : Platform as a Service
インターネット経由のプラットフォーム(土台)の提供(DB/インターフェイス/ツール等の提供)
(3)IaaS(イアース/アイアース) : Infrastructure as a Service
→HaaS(ハーズ):Hardware as a Serviceとも言う
インターネット経由のハードウェア/インフラの提供(回線/サーバー等)
つまり、一言で「クラウド」と言っても、実際には、上記3つ形態を全て含んだ形を「クラウド」と言っているのです。
サーバーサイド(サーバー側)で稼働できるプログラムだけがあっても「クラウド」は提供できませんし、サーバーだけあってもダメです。これら3つの形態全てが揃わないと、「クラウド・コンピューティング」は実現できません。
また「クラウド」の利用方法にも次の2種類の方法があります。
(1)パブリック・クラウド
一般向けサービス。通常のクラウドコンピューティングサービス
(2)プライベート・クラウド
企業内サービス。ファイアーウォール内で稼働するクラウドコンピューティングサービス
企業で「クラウド」を使う場合には、データへのセキュリティが問題になるので、ファイアーウォールで守られた環境で「クラウドサービス」を使う必要があり、それを区別しているだけです。
そもそも「クラウド」と言うのは、目新しい技術ではなく、従来から存在する技術の組み合わせに過ぎません。
インターネット環境が整備されてきて、やっと実用に耐えうる環境ができあがったので、騒がれているだけです。
もともは、ASP(Application Service Provider )と言う技術があり、業務用ソフトウェアを、個別で購入するのではなく、インターネット経由で配信して使う、と言う考え方が「クラウド」の始まりです。
この技術は、数十年前に提唱された考え方ですが、当時はインターネット環境も不十分で、かつ提供されるソフトウェアも使い勝手が悪く、そのためASPは十分には浸透しませんでした。
現在では、ネットワークの容量も速度も飛躍的に向上しましたし、ソフトウェアに関してもユーザ・インターフェースが改良され、かつハードウェア自体の性能も向上したので、ようやく「クラウド」と言う形でソフトウェアを提供することができるようになったのです。
但し、現状では、言葉だけが先行して用いられており、何が「クラウド」で、何が「クラウド」では無いのかは、明確に定義されていません。
■クラウドのメリット/デメリット
上記のように、ソフトウェアの提供に関しては、夢の様な仕組みが(私ども受託開発業者にとっては悪夢のような仕組みですが)出来上がった訳ですが、物事の定めの通り、当然ながらメリット/デメリットは存在します。
(1)メリット
①一番のメリットは、業務用ソフトウェアを開発、および購入する必要が無いことです。それに伴い開発費用、保守費用も不要になります。月額、あるいは年間の使用料金だけが必要になります。
②PCとインターネットさえあれば、場所を選ばす、何処でも作業を行う事ができようになります。
③USB等によるデータのやり取りも不要となります。
④常に最新バージョンが使用できます。
(2)デメリット
①セキュリティの問題が一番大きいと思います。データが他人の会社のサーバーに保管されている訳ですから、問題視する方は多いです。過去には、クラウド最大手の「Salesforce社」でデータ流失問題も発生しています。
②企業においては、当然プライベート・クラウドを構築することになりますが、その設備投資額が多額になる可能性がある。ソフトウェアは無償でも設備は有償です。
③クラウド環境(データセンター)が、ほとんどの場合、海外に存在している。
④現在、クラウド提供企業は、アメリカが多い。実際にはあり得ない話ではあるが、上記③と合わせ、アメリカと国交を断絶したら、どうなるのか?
⑤これまで築いてきた企業独自のシステムや仕組みが消滅してしまう。企業の独
自性も消滅してしまう。
⑥ネットワークが寸断されると業務が停止してしまう。社内での対応は不可能。
⑦カスタマイズが難しい。日本企業が大好きなカスタマイズが難しくなる。
⑧無償提供のためサポートされない製品も存在する。
⑨ハッカーの標的になりやすい。
「クラウド」は、今始まったばかりですので、メリット/デメリットを、十分に検討する必要があります。
■便利ツールの紹介
「クラウド」は、実運用が始まったばかりの技術ですし、クラウドによりソフトウェアを提供するには、それなりの環境が必要になるので、無償ツールは、まだそれほど出揃っていませんが、下記にいくつか集めてみました。お使いになる場合には、利用条件や使用方法を良く読んでお使い下さい。
(1)オンラインストレージ系
インターネット経由でサーバーに各種データ(業務データ、画像、音楽等)を保存したり、閲覧したりできるツールです。
①firestorage : http://firestorage.jp/
②iCloud : http://www.apple.com/jp/icloud/?cid=MAR-JP-GOOG-IPAD
③SkyDrive : http://welovewindowslive.wordpress.com/
(2)セキュリティ系
インターネット経由でセキュリティ・チェックを行う製品です。
①KINGSOFT Internet Security2011 : http://www.kingsoft.jp/is/
②G Dataクラウドセキュリテ : http://www.gdata.co.jp/personal/cs
(3)その他
①OCN家計簿 : http://kakeibo.ocn.ne.jp/
②Rグループ(グループウェア) : http://www.r-security.jp/r-group/
このような感じですが、いかがでしたか?
また最近では、更に新しい言葉を生みだし、それを「ハイブリッド・クラウド」と呼んでいるようです。
日本人は、基本的に「新し物好き」で、何度も新しい言葉に踊らされて失敗してきましたが、また今度も踊らされるのでしょうか・・・