アンガーマネジメント - 怒りは管理出来るのか(その1) ?
近頃、「キレる老人の増加」とか、「あおり運転」が社会問題として盛んに取り上げられるようになっています。
「老人」の定義は曖昧ですが、私も、段々と、そして確実に「老人」に近付いています。
また、元々、私は、若い頃は「キレやすい」性格だったのですが、子供が生まれた事で、周囲からは「性格が丸くなったねー」等と言われる様になって来たのですが・・・
客観的に自分を見ると、歳を重ねるにつれ、また性格が「短気」に戻って来ているような感じがしています。
つい先日も、大事な友人と口喧嘩をしてしまい、双方、気まずい思いのまま、分かれてしまうと言う事もありました。(後日、ちゃんと仲直りはしています。)
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よく、「歳を取ると丸くなる」等と言いますが、本当なのでしょうか ?
日本アンガーマネジメント協会のホームページよると・・・結局ところ「人それぞれ」と言うのが本当の所らしいです。
歳を取って経験を積む事で、視野が広がり柔軟な発想が出来る人がいる一方、ある年齢になると、視野の広がりが止まり、柔軟性が無くなると怒りやすくなると書かれています。
さらに、歳を取るにつれ身体機能や運動能力が衰え、体力的に無理が効かなくなる事でストレスが溜まり、心の余裕が無くなる事で、些細な事でも抑えが利かなくなりカッとなる人も多いそうです。
確かに、昔は簡単に出来ていた事が出来なくなると、「昔は出来たのに!!」と、ついイライラしてしまいますよね。
加えて、この「イライラ」は、身近な人に対して、特に強く現れる傾向が強いそうです。
要は、「甘え」による怒りなのですが、身近な人の場合、「自分の気持ちを解かってくれる。」と思う気持ちが強く、それが理解してもらえないと、余計に怒りが爆発してしまうのだそうです。
全く、この怒り、イライラは厄介なものです。
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そこで、今回は、私の苦い経験を振り返り、「怒る → 後悔 → 怒る → 後悔」の不毛な連鎖を断ち切るために、「怒り」に関する次の様な話題を2回に分けて紹介します。
【 その1 】
- 「怒り」とは何か
- 何故、老人は「キレる」のか
- 「怒り」の種類
【 その2 】
- 「怒り」を管理する必要性
- 「怒り」を管理する効果
- 「怒り」を管理する方法
これだけ学べば、もう、無駄な「怒り」は無くなると思いますが・・・人間は、昔から「わかっちゃいるけどやめられない」動物です。
これは、私が生まれた昭和36年(19661年)の8月20日にリリースされた「スーダラ節」と言う歌謡曲の有名な一節です。
この「スーダラ節」は、「ハナ肇とクレージーキャッツ」と言う当時の人気グループが歌い、中でも、中心メンバーでボーカルだった「植木 等」氏の人気が高まった作品となっているそうです。
私も、実際の歌を最後まで聞いた事は無いのですが、次のような歌詞になっています。
『 チョイト一杯の つもりで飲んで いつの間にやら ハシゴ酒
気がつきゃ ホームのベンチでゴロ寝 これじゃ身体に いいわきゃないよ
分っちゃいるけど やめられねぇ
ア ホレ スイスイ スーダララッタ
スラスラ スイスイスイ ・・・・ 』
皆さんも、実際のレコード音源は聞いた事は無いと思いますが、コマーシャル等では、一度は聞いたことがあるフレーズだと思います。
他方、「植木 等」氏の父「植木 徹誠」氏は、浄土真宗の僧侶だったそうですが、その父が、この「わかっちゃいるけどやめられない」と言う言葉は、人間の矛盾を言い当てた真理で、浄土真宗の宗祖「親鸞」の教えにも通じるものがあると語っていたとされています。
何か、ふざけた歌詞で、いい加減なメロディーで歌っており、かつ私は、浄土真宗の門徒ではないので、親鸞の教えは分かりませんが、確かに人間の真理を突いた言葉である事は確かなような感じがします。
ちなみに、この「スーダラ節」の作詞家は、東京都知事や「意地悪ばあさん」を演じた、故「青島幸男」氏です。
と・・・ちょっと話が脇に逸れてしまいましたが、この「わかっちゃいるけどやめられない」について、ではなく、「怒り」を分析して管理する事で、人生を有意義に過ごす方法を学びたいと思います。
それでは今回も宜しくお願いします。
■「怒り」とは何か
「怒り」を分析/管理するためには、先ずは「怒り」とは何か。何故、人間は怒るのかを調べたいと思います。
「怒り」は、数百万年にも及ぶ人類の進化の過程で、人類の脳の中に組み込まれてきた本能の一部と言われています。
人間は、「怒り」によって敵を撃退したり、あるいは集団に社会規範を守らせたりして来ました。
そして、「怒り」は、脳の報酬回路に由来しているとも言われます。
あらゆる状況下で、常に私達は、次に起こることを予測し、利害を推し量って行動しています。
そして、これまでの体験を元にして考えた予測と、実際に起きた事が食い違っている場合、脳の報酬回路が警鐘を鳴らし、「扁桃体」という部位が活発化して「怒り」が生まれます。
「怒り」は、身体の闘争反応を引き起こします。
人間は、怒ると副腎を刺激してアドレナリンやテストステロンを大量に分泌させることで、攻撃の準備をします
しかし、実際に相手を罵ったり、パンチを食らわせたりする事になるか否かは、別の脳の領域の動きに掛かっているそうです。
そこは、脳の動きの中で、意思決定や推論を司っている「前頭前野」と言う領域になります。
「前頭前野」は、その時の状況を判断し、社会的に許容される行動を取るように警告を発するのので、ほとんどの場合、「怒り」の原始的本能は抑制され、実際の行動には移されません。
近頃、問題となって「あおり運転」を起こす人間は、この「前頭前野」の活動に問題があるのかもしれませんね。
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と、脳の活動領域の話という難しい話になってしまいましたが、要は、怒りの正体は、各個人の「価値観」と「願望」、そして、それらに対する「許容範囲」の問題です。
「価値観」とは、ある物事に対して、「~は、こうあるべきである。」と言う定義になりますし、「願望」とは「~は、こうなって欲しい。」と言う思いになります。
人間は、子供の頃に親に教えられてきた事や、これまでの実体験を通して、「物事は、こうあるべきだ。」と言う価値観を持って生きています。いわゆる「べき論」です。
例えば、「信号は絶対に守るべきである。」と言うのは、人間誰しも納得する所だと思います。
ところが、その解釈は、個人によって異なります。
「黄色は、注意して渡れなので、黄色の時は、侵入しても構わない。」と思う人もいれば、「黄色では絶対に止まらなければならない。」と思っている人もいるはずです。
「注意して渡れ」と「絶対止まれ」、ここが価値観の相違になります。
そして、この価値観の相違を、どこまで許す事が出来るのかが「許容範囲」となります。特に、この場合、「絶対に止まるべきである。」と言う価値観の人の許容範囲が問題となります。
「絶対に/べきである。」と言う凝り固まった価値観の人は、黄色で侵入する人を絶対に許す事は出来ないと思いますので、黄色で侵入して来た人に対しては「怒り」を感じると思います。
しかし、許容範囲が広い人は、「黄色は、本来は侵入してはいけないけど、今回は、まあ仕方がないか。」となるので、余り「怒り」は感じません。
この価値観の差と許容範囲が「怒りの正体」と言う事になります。
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また、「願望」も同じです。
人間は、社会活動をする上で、常に他人と関わりあって生きています。
そして、他人との関りでは、相手に対して、「あの人なら、こうしてくれるだろう。」とか、「この場合は、こうしてくれるだろう。」と言う「期待」を抱いたり、「あの人なら、私の思いや行動を理解してくれるだとう。」等と言う「願望」を抱いたりする事が多々あると思います。
ところが、人生、そう上手く行くとは限りません。この「期待」や「願望」が裏切られた時点で、人間は、相手に「怒り」を感じます。
「何故、こうしてくれないんだ !」、「何故、私の事を理解してくれないんだ!」・・・これが「怒りの正体」となります。
さらに、本ブログの最初にも記載しましたが、この「願望」の裏切りに対する「怒り」は、身近な人に対してほど「怒り」のレベルが大きくなる点も重要です。
「私の近くで何年も一緒に過ごしているのに、何故、それが理解出来ないんだ !!」となってしまいます。
「価値観」も「願望」も、詰まるところ「理想」と言い換える事ができます。そして、この「理想」と「現実」のギャップが、「怒りの正体」となります。
ちなみに、前述の「黄色信号」の件ですが、道路交通法では、第二条に、「黄色の灯火」は、次のように定められています。
『 二 車両及び路面電車(以下この表において「車両等」という。)は、停止位置をこえて進行してはならないこと。ただし、黄色の灯火の信号が表示された時において当該停止位置に近接しているため安全に停止することができない場合を除く。 』
要約すると、「黄色信号」は、安全に停止できない場合を除いては、必ず停止線の前で止まらなければいけないという内容になっています。
「黄色信号」での進行が認められるのは、「急ブレーキをかけなきゃ停止が間に合わない」場合など、直ちに停止することが、交通の安全を妨げる場合だけというのが道交法の建前になっています。
つまり、この「急ブレーキ云々」と言う箇所がグレーゾーンになっているので、個人の解釈の差が生まれるのだと思います。
さらに参考までに付け加えると、現在の道交法の罰則では、黄色信号の無視は、故意か否かにより、次の様に定まっているようです。
・故意の無視 :懲役3か月以下、または5万円以下の罰金
・過失の無視 :10万円以下の罰金
う~ん・・・しかし、そうなると誰が、何をもって「故意」か「過失」を判断するのかが問題となりそうです。
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一方、「怒り」は、人間の「二次感情」とも言われています。
人間の感情として、よく使われる言葉に「喜怒哀楽」と言う言葉があります。これは、既にお分かりの通り、人間が抱く感情の内、代表的な4つの感情を表しています。
・喜 :喜び
・怒 ;怒り
・哀 :悲しみ
・楽 :楽しみ
この言葉から、「怒り」は、人間が抱く代表的な感情と考えられがちです。
他方、心理学的にとらえると、人間の意識は、次の2つの意識階層で形成されており、表面に現れるのは、「顕在意識」となっています。
・顕在意識 :普段意識する事ができる意識。自分の意思によって、あらゆる物事を捉え、考え、判断する事が出来る意識。
・潜在意識(無意識) :普段意識する事が出来ない意識。無意識とも呼ばれ、感情、感覚、直感、記憶、本能的な欲求などを示している。
そして、この「顕在意識」と「潜在意識」は、よく「氷山」として例えられており、「顕在意識」は、氷山の表面に見えている部分、つまり「氷山の一角」で、「潜在意識」が、表面には見ない残り90%を占めているとされています。
また、「顕在意識」と「潜在意識」。何か難しい心理学用語の様な感じがしますが、人間の身体に例えると簡単です。顕在意識は「手足」で、潜在意識は「臓器」です。
心臓も肺も、私達が意識しなくても動いていますが、これら臓器が、手足を動かす際にも大きな影響を与えています。つまり、顕在意識は、潜在意識の影響を多大に受けていると言う事になります。
心理学と言うと必ず登場する「フロイト」と言う人物名を聞いた事があると思います。
オーストラリア出身の「ジークムント・フロイト」は、あらゆる精神的疾患(心の苦悩)の原因は、無意識(潜在意識)にあると結論付けました。
人間は、顕在意識により、あらゆる物事をとらえて考え、そして判断を下していると信じていますが、実際には、潜在意識からから強力な影響を受けているとされています。
さらに、このフロイトの弟子にあたるスイス出身の「カール・グスタフ・ユング」は、この潜在意識を、さらに次の2つに分類して説明しています。
・個人的無意識 :個人が過去に経験した記憶
・普遍的無意識 :人間誰しも生まれ付き備えている人類共通の本能
そして、ユングは、人間本来の姿は、「普遍的無意識」に存在しており、この「普遍的無意識」は、夢に現れるとして「夢分析」を行ったことは有名です。
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さて、「怒り」が「二次感情」と言われるのは、「怒り」の根底には、「悲しみ」、「辛さ」」、「寂しさ」、「不安」、そして「苦しさ」が潜んでいるとされるからです。
これら「悲しみ」、「辛さ」」、「寂しさ」、「不安」、そして「苦しさ」と言う様な、「本来解かってもらいたい感情」が「一次感情」で、「怒り」は、「一次感情」の下の感情で「二次感情」と言う訳です。
前述の通り、「怒り」は、期待や願望が裏切られた時に生まれます。
例えば、皆さんは、約束が破られた時に怒りを感じると思いますが、その時、同時に「約束を破られて悲しい、寂しい、辛い」と言う感情も抱くと思います。
つまり、「約束を破られて悲しい」が「一次感情」で、その下にある「怒り」が「二次感情」と言う事になります。
さらに、この「二次感情」は、誰にでも生まれる感情ではありません。「怒り」の対象は、前述の通り、身近に居る人により強く感じる感情です。
全く面識の無い人に罵詈雑言を言われても、まあ「何で、お前に、そんな事言われなきゃないんだ!」と思うかもしれませんが、悲しくも寂しくも、何とも無いですよね ?
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ところで、前述の「顕在意識」と「潜在意識」の関係ですが、「潜在意識が一次感情」で「顕在意識が二次感情」とも言われています。
本当の感情は「潜在意識」の中に隠れており、この本当の感情を隠すために「顕在意識」が表面に現れると言う訳です。
つまり、「潜在意識」として感じた「悲しみ」を、「顕在意識」である「怒り」が覆い隠していると言う訳です。
別の言い方をすれば、「悲しみ」を見せないために、「怒り」を表面に出すと言う訳です。「悲しさ」を「怒り」でごまかしているとも言える訳です。
素直に、「悲しさ」を伝えることが出来れば、「怒る」必要も無いと言えるかもしれません。
これらが「怒りの正体」だと言われていますが、皆さん・・・どう思いますか ?
■何故、老人は「キレる」のか
政府統計によれば、65歳以上の高齢者の暴行の摘発が、10年前の4倍に増えているそうです。
ささいなトラブルから他人に手を出すケースが急増し、挙句の果てには、火炎瓶や爆弾で無差別に他人を傷つける重大事件も起こっているそうです。
タバコのポイ捨てを注意された70代の男が、注意をした、当時小学1年の男児の首を絞め逮捕されると言う、とんでもない事件も起こっているとされています。
一体、近頃の高齢者は、どうなってしまったのでしょうか ?
しかし、高齢者が「怒り」をコントロール出来ないと言う事象は、脳科学者の間では、以前から常識とされているそうです。
「怒り」の原因は、前章で紹介した通り、「扁桃体」という部位の活発化ですが、この活性化を抑制するのが「前頭前野」、俗に「前頭葉」と呼ばれる分野です。
ところが、この「前頭葉」は、年齢と共に機能が低下する事があるそうで、そうなると「怒り」を抑える力が弱まり、感情をコントロールする事が出来なくなってしまうそうです。
つまり、「脳は、年齢と共に、知らない内に衰える。」のだそうです。
さらに、脳機能の低下により、聴力が衰えて耳が聞こえにくくなったり、あるいは記憶力が衰えたりします。
そうなると、他人と上手く会話が出来なくなり、「怒り」が爆発するケースも増えて来るのだそうです。
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そして、「脳機能の低下」以外に高齢者がキレる原因として挙げられるのが、生活環境の変化なのだそうです。
一般的な高齢者は、サラリーマン、あるいは経営者として、それなりの地位に上り詰めた後、退職したり、後継者に道を譲ったりして第二の人生を始めます。
社会人時代は、社内、および社外でも、誰もが、それなりに敬意を払ってくれ、かつ自分の意見も傾聴してくれます。
それが、第二の人生を始めたとたん、誰も、自分に敬意を払わなくなり、自分の意見など聞いてくれなくなります。
これも前章で紹介しましたが、「何で誰も自分に気を使ってくれないんだ!」と悲しい気持ちになり、これが「怒り」を誘発するのだそうです。
会社では、部長や課長等、何らかの「肩書き」がありますが、会社を退職すると「単なるジジイ」です。肩書き等ありません。
社内では「部長」でも、それは社内、あるいは取引先だけの事で、会社を辞めれば、そんな肩書きなど無関係です。新たに「単なるジジイ」と言う肩書きが付くだけです。
「キレる老人」は、その事に気が付来ません。
このため、ここに「現実」と「理想」のギャップが生まれ、老人がキレる事となります。
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加えて、現在の社会は「IT社会」です。ところが、一般的な「ジイさん/バアさん」は、IT機器など使いこなせません。
「ジイさん/バアさん」に、インターネットがどうのこうの、iPhoneがどうのこうの等と行っても、一部の人を除いては、全く理解出来ないと思います。
これが高齢者にとってのストレスになります。
その結果、現実社会について行けない、置き去りにされるという「不安」が生まれ、これがまた「怒り」の原因となります。
他方、携帯ショップやパソコン教室などに行って、スキルを身に付けようとする人も居ますが、やはり、進化するデバイスに追いつくのは、至難の業です。
店員や講師が、一生懸命に、操作方法を教えてようとしても、それさえ理解出来ないので、またストレスが溜まります。
「何で、もっと親切に教えてくれないんだ !!」と言う事で、また、ここでも「怒り」が爆発します。
もうIT機器の進化は、高齢者にとっては「負のスパイラル」です。
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ここまで紹介して来たように、老人がキレるのは、全てに関して「社会に冷遇」されていると言う、高齢者の「被害者意識」が問題なのだと思います。
・スマホが使えないのに公衆電話が撤去される。
・駅の改札も自動改札になり切符が使えない。
・スーパーのレジがセルフレジになった。
・免許返納で買い物にも行けなくなった。
確かに、現在、政府が主体となってスマート社会を目指す状況では、高齢者は置き去りになる感覚は確かに強くなっていると思います。
以前、本ブログで紹介した「Society 5.0って何 ?(20180310.html)」では、本当に政府が超スマート社会を目指すとしています。
これでは、高齢者は不安になるかもしれませんが、この「超スマート社会」でも、一部ではありますが、ちゃんと高齢者の事も考えています。
しかし、やはり、社会が進化して行くのであれば、高齢者自体も社会の変化に付いてく努力をすべきだと思います。
私も、親にスマートフォンの使い方を教えようしたのですが、もう最初から「私は解らない!」と言って、説明を聞こうともしません。
これではダメです。また、何度教えても、同じ間違いを繰り返すのも問題です。
人間誰でも間違いを犯します。これは仕方ありません。しかし・・・間違いを犯したなら、その理由を考え、次回、どうしたら同じ間違いを犯さないかを考えて、何か対応を取るべきです。
何も考えずに、「え~、そんなの無理 !」とか言っているアナタ。それじゃ、誰も相手にしなくなります。
私も、同じミスを何度か繰り返す事もありますが、そのミスに関しては、ポストイットに注意すべき項目を書き出して、周辺の目立つ場所に貼り付けています。
「物忘れ」も同じです。
人間の記憶も限界があります。これに関しても、私は、ポストイットやスマホのリマインダーに重要なイベントを書き込んで、忘れないように注意しています。
とにかく、何かミスをしたら、同じミスを繰り返さないように、何らかの対策を取る必要があります。
そして、変化を拒むのであれば、後は、自然に滅んでいくだけだと思います。
人類の歴史も変化の連続です。変化を拒んでいたら、人類は、恐竜と一緒に、とっくの昔に絶滅していたと思います。
私も、あともう少しで高齢者の仲間入りをしますが、その時には、「被害者意識」を持たない高齢者になれれば良いな~と思います。
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とは言え、本章で紹介した高齢者が持つとされる「被害者意識」ですが、この「被害者意識」、何も、高齢者に限った話ではないと思います。
特に、高齢者が多いと言うだけで、それ以外の人達でも、多かれ少なかれ抱く感情だと思いますので、その点、「年寄だけの問題」と言って片付ける事の無いようにした方が良いと思います。
それでは、これら「怒り」とは、全て同じ「怒り」なのでしょうか ? それとも、「怒り」にも種類や違いがあるのでしょうか ?
その点を、次章で説明します。
■「怒り」の種類
前章までで「怒り」の正体と、人間、特に「老人」がキレる原因が分かりました。
老人に限らず、人間、誰しも世間から疎外されれば「怒り」を感じますが、それが自分由来の疎外なのか、それとも社会の問題なのかを冷静に判断する必要があるようです。
しかし、他方、専門家によると、「怒り」には、複数の種類があるとされています。
「怒り」の種類に依っては、高齢者のみならず、その人の特性に依って起こる「怒り」や、人間の本性として起こる「怒り」等、様々な種類の「怒り」があるようです。
本章では、その「怒り」の種類を、次の2つのカテゴリーに分けて紹介したいと思います。
・人間の本性により発生する怒り
・人間の性格により発生する怒り
人間の本性で起こる「怒り」とは、人間が基本的に備えている「怒り」をベースに、この「基本的怒り」が、各個人の感情の変化により、どうのように変遷して行くのかを紹介します。主に、小乗仏教における「怒り」の分類になります。
また、「人間の性格による怒り」とは、各個人が持っている「性格」と言う特性により、起きやすい「怒り」が異なるので、性格別に「怒り」を分類した内容となっています。
ちなみに、「小乗仏教」とは、スリランカ、ミャンマー、タイ、カンボジア、およびラオス付近に拡がった「パーリー語」で仏典を伝える仏教で、正式には「上座部仏教」、「南伝仏教」、あるいは「テーラワーダ仏教」とも呼ばれる仏教です。
日本に伝わった仏教は、「大乗仏教」と呼ばれる仏教で、「小乗仏教」とは、「大乗仏教」側から見た、「小乗仏教」の事で、この「上座部仏教」を見下した呼び方となっています。
それでは、「怒り」の種類をご覧下さい。
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●人間の本性により発生する怒り
(1)基本的な怒り
人間が持つ基本的な「怒り」とは、「嫌だ」と感じる「怒り」、その全てが基本的な「怒り」となるそうです。また、「嫌だ」と同質で、「つまらない」とか「退屈」などの感情も、基本的な「怒り」に含まれます。
つまり、「嫌だ」、「つまらない」、そして「退屈」等の感情から、人間の「怒り」は生まれるとしています。
(2)憎悪による怒り
「基本的な怒り」が増幅され、外見からも「怒り」が分かる程度になった状態で、自分自身でも「怒り」を意識する事が出来る状態です。
「基本的な怒り」を対処せずに放置した事で、「怒りで体が震える」等、見た目にも「怒り」の表情が現れてくる状態まで、「怒り」が育った状態となります。
(3)恨みによる怒り
同一事象に対する「基本的な怒り」の繰り返しにより、「怒り」が増幅された状態です。
「怒り」が繰り返される事で、その「怒り」が、「忘れ難い怒り」となり、さらに、繰り返し思い出す事で「妄想」となり、常に「怒り」を抱え、いつも不幸な状態が続く事になります。
(4)軽視による恨み
他人の長所を軽視する感情で、「怒り」と同質の感情とされ、その感情の始まりは「基本的な怒り」です。
他人の「弱み」や「悪意」を見たいと言う気持ちは、「基本的な怒り」と同段階ですが、実際に、相手が自分よりも優れていたり、あるいは長所を持っていたりする事が明らかになると、より強い「軽視による怒り」が生まれます。
(5)張り合いによる怒り
戦い続けて、相手を負かそう/潰そうとする「怒り」の事です。
戦いの初めは「基本的な怒り」の範囲内に収まっており、単純に「勝ちたい」と言う感情だけに収まっていますが、戦い続ける事で、この感情が度を超えて、相手を潰したいと言う感情になり、攻撃が収まらない「怒り」となります。
(6)嫉妬による怒り
他人の「短所」を見たいと言う暗い気持ちを抱いた時に、逆に相手の「長所」が見えてしまった時に抱く「基本的な怒り」です。
相手の「長所」が見えた時、その「怒り」の矛先が相手に向かうと、前述の「軽視による怒り」になり、逆に「何で自分には、あんな長所が無いのか。」と、「怒り」の矛先が自らに向かった場合が、「嫉妬による怒り」になります。
さらに、長所/短所を比較する相手は無数に存在するので、自分が常に劣っていると、この「嫉妬による怒り」が増幅されて行きます。
(7)物惜しみによる怒り
「物惜しみによる怒り」とは、自分が持っている「幸せ」や「楽しみ」を、他人にあげたくない、奪われたくないと言う「ケチ」な感情です。
自分の「幸せ/楽しみ」を、他人と分け合うと損をしたように思い、「幸せ/楽しみ」を奪われまいとする感情から生まれる「怒り」です。
(8)反抗心による怒り
「反抗心による怒り」は、自我が強く、他人からの忠告や教えに反発する感情から生まれる「怒り」です。
他人からの「忠告/教え」に対して「怒り」を感じるので、最終的には、他者とコミュニケーションが取れなくなってしまう恐ろしい「怒り」です。
(9)後悔による怒り
「後悔による怒り」とは、過去に失敗した経験を思い出した時に、自らに向かって生まれる「怒り」です。「何であんな事をしたのか」と言う「怒り」です。
過去の失敗を何度も繰り返して思い出すので、明るい思考が出来ず、「怒り」が繰り返し生まれ、前に進めなくなってしまいます。
(10)激怒による怒り
これは、「基本的な怒り」が、極端に度を越した時に生まれる「怒り」です。
「基本的怒り」が、自己増殖して他人を攻撃したくなる気持ちが最大になる状況ですが、この状態になると、「怒り」の原因自体を忘れてしまい、ひたすら他人を攻撃したくなってしまいます。
この「怒り」に囚われると「大量虐殺」につながる感情です。
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●人間の性格により発生する怒り
次に、個々の人間が備える性格により生まれる「怒り」を紹介します。
(1)公明正大タイプ
正義感が強く、道徳心も高いので、他人から頼りにされるという長所がある人物に見られる「怒り」です。
しかし、逆に、その長所が短所となり、ルール違反や規則に従わない人を見ると、直ぐに「怒り」が沸き、公共の場でも、我を忘れて「怒り」を表す場合があります。
(2)博学多才タイプ
博学多才なため、何に対しても完璧を追求し過ぎ、困難な状況でも物事をやり遂げようとする性格の人物に見られる「怒り」です。
それ故に、他人に対しても厳しくなりがちで、優柔不断な人や考え方が違う人に対して、直ぐに「怒り」を感じてしまいます。
(3)自信満々タイプ
自分に自信があり、リーダーの素質がある、頼り甲斐がある人物に見られる「怒り」です。
しかし、その反面、プライドが高く、自分の思いと異なる方向に物事が進んだり、あるいは自分が卑下されたりすると、直ぐに「怒り」を爆発させてしまいます。
(4)天真爛漫タイプ
自分の気持ちを相手に素直に伝え、その思いのまま行動する人物に見られる「怒り」です。
しかし、素直さが災いし、その場の空気が読めず、場に相応しくない言葉を口にするので、周りからストップが掛かる事で「怒り」を覚えてしまいます。
(5)外柔内剛タイプ
外見は穏やかに見えますが、確固たる自分の意思を持っている人物に見られる「怒り」です。
仕事や依頼された事柄を必ずやり遂げるので、多くの事を依頼されるようになると、次第に、自分の思いとは異なる事まで依頼されるようになると「怒り」が爆発します。
また、自分のルールを確立しているので、そのルールに反した物事に出会った時にも「怒り」を感じてしまいます。
(6)用心堅固タイプ
真面目で物事を客観的に見定める事が出来る人物に見られる「怒り」です。
慎重に物事を進めて行くので、スピードを求められると「怒り」の感情が生まれる事があります。
また、用心深い性格が災いし、周囲に余り相談しないので、ストレスが溜まって「怒り」の感情が生まれるケースがあります。
さらに、他人の性格を客観的に見定める事が出来るのですが、それも災いし、自分と比較し、妬みの感情を抱くことで「怒り」を感じる事もあります。
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人間の本性の「怒り」の場合、この「怒り」は、言葉通り「人間の本性」なので、何かを契機として生まれた「基本的怒り」が、その「怒り」の種類により、徐々に成長して行くパターンが理解出来たのではないでしょうか ?
例えば、相手に対して、何かを「嫌だ」と思った感情が、恨みになったり、あるいは嫉妬になったりして成長して行くのだと思います。
他方、性格による「怒り」に関しては、どうですか ? どれか一つには、必ず貴方の「怒り」のパターンが見られると思います。
私の場合は・・・強いて当てはめれば「外柔内剛タイプ」の怒りのパターンが多いような感じがします。
特に、サラリーマン時代は、(別に私が優秀と言う訳では全くありませんが))何でもかんでも仕事を押し付けられ、「怒り」が爆発した覚えが何度もあります。
要は、私の周りの人間が、直ぐに仕事を投げ出すので、その尻ぬぐいを私が行っていただけだと思います。優秀云々とは関係無いと思います。
このように人間が本質的に持っている「怒り」と、性格によって生まれる「怒り」ですが、この「怒り」を放置していても、何も良い事はありません。
次章では、「怒り」を管理する事の必要性を紹介しますが、今回のブログでは、ボリュームの関係で、ここまでとさせて頂きます。次章以降は、次のブログをご覧下さい。
■最後に
今回は、「アンガーマネジメント - 怒りは管理出来るのか(その1) ?」と題して、次の内容を紹介しましたが如何でしたか ?
- 「怒り」とは何か
- 何故、老人はキレるのか
- 「怒り」の種類
このブログを書くまでは、「怒り」とは、単なる人間の感情、「喜怒哀楽」の一つだと思っていたのですが、前述の通り、実は、人間の「二次感情」で、最初の「一次感情」として、「辛い/悲しい」と言う感情が引き金になって「怒り」が生まれるのだと言う事に気が付かされました。
確かに、今回、このブログを書くきっかけとなった友人との仲違いですが、その発端は「悲しさ」でした。
『 長年付き合ってきたのに、何でそんな事するんだろう ? 』と言う悲しさが「怒り」に変わり、それが喧嘩となり、絶好寸前までの状態になってしまいました。
最後は、話し合いにより解決する事は出来ましたが・・・でも、まあ、以前のような状態に戻るのには時間が掛かると思われます。
喧嘩状態は解消されましたが、それと「信頼関係」とは、また別な問題です。一度失われた「信頼関係」は、直ぐには元に戻りません。
また、時間を掛けて「信頼関係」を構築して行くしか無いと思っています。
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また、「悲しさ」が「怒り」に変わる時にも、人間の「許容範囲」が、「怒り」の発生に影響を与えていると言う事も新しい発見でした。
「悲しさ」が「怒り」に変わるには、「許容範囲」の境界線を越える必要があります。
また、「怒り」が生まれるのは、一次感情である「悲しさ/辛さ」だけが原因ではありません。
人間、各個人が持つ「価値観」も重要な位置を占めます。
「価値観」とは、様々な事柄を含む膨大な考え方ですが、その中でも、「物事は、こうあるべきでだ。」と言う、各個人の「べき論」です。
そして、この「べき論」から外れた行動や考えを目にすると、人間は怒ってしまうのです。
今回のブログでは、この「べき論」を、「信号機の黄色」での行動で説明しましたが、それ以外、人間の全ての行動や言動に対して「べき論」と、それに伴う「許容範囲」が存在しています。
「短気な人」と言う類の人間は、この許容範囲が狭い人なのだと思います。そして、残念ながら、私も、この「許容範囲」が狭い類の人間である事に気が付かされました。
この「許容範囲」を広げる事で、「怒り」を管理/コントロールする事が可能になるとされています。
「怒り」を管理する方法としては、1970年代にアメリカで始まり、生活やビジネスシーンは勿論の事、映画やスポーツ業界、政治、あるいは教育現場などでも活用されている「アンガーマネジメント」と言う心理トレーニングがあります。
次回のブログで紹介する「怒りを管理する方法」の章では、この「アンガーマネジメント」を紹介したいと思っていますが、それ以外にも、次のような内容を紹介する予定です。
- 「怒り」を管理する必要性
- 「怒り」を管理する効果
- 「怒り」を管理する方法
それでは次回も宜しくお願いします。
以上
【画像・情報提供先】
・Wikipedia(http://ja.wikipedia.org/)
・NHKニュース おはよう日本(https://www.nhk.or.jp/ohayou/digest/)
・モチラボ(https://www.motivation-up.com/)
・日本アンガーマネジメント協会(https://www.angermanagement.co.jp/)
IT業界を震撼させたメルトダウンとスペクター ~ OSは信頼出来るのか ?(その2)
今回のブログは、前回紹介した「メルトダウン(Meltdown)」と「スペクター(Spector)」に関する情報の第2弾となります。
★過去ブログ:IT業界を震撼させたメルトダウンとスペクター(その1)
前回は、第1弾として、次の情報を紹介しました。
- コンピューターの仕組み
- CPUとは
まあ、前回は、「メルトダウン」と「スペクター」と言うCPUの脆弱性を紹介する前段階として、コンピューターの基礎知識を紹介するだけに終わってしまいましたが・・・
しかし、最後に付け加えた「量子コンピューター」に関しては、今後、どんどん発展し続け、あと10年後、早ければ5年後位には、現在の「スーパー・コンピューター」の様に、普通に運用される日が来ると思います。
さらに、次の3つを組み合わせる事で、現在では、不可能とされている様々な事が実現されているのではないかと思います。そう考えると、何かワクワクして来ます。
・量子コンピューター
・AI(Artificial Intelligence )
・5G(第5世代移動通信システム:5th Generation)
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このように、現在のIT業界は、久しぶりに、新しい技術革新を迎え、非常に楽しい状況になってはいますが・・・
一方では、この明るい動きに水を指す、今回のブログで取り上げたCPUに関する致命的な設計ミスも明らかになっています。
そこで、今回は、「メルトダウン」、および「スペクター」関して、次のような内容で、脆弱性を誘発した処理、および実際の原因に関して、詳しく図解したいと思います。
それでは今回も宜しくお願いします。
■脆弱性「メルトダウン(Meltdown)」とは
さて、それでは、今回問題となった「メルトダウン(Meltdown)」が発生する仕組みを紹介します。
「Meltdown」は、CPUの高速処理を実現するための「アウト・オブ・オーダー実行(Out of Order execution)」と言う仕組みが原因で発生します。
この脆弱性に関しては、2018 年 1 月 3 日、オーストリアのグラーツにある「Graz University of Technology(グラーツ工科大学)」の研究者と、Google社の脆弱性発見チーム「Project Zero」、およびドイツにある「Cyberus Technology」社によって発見されたと言われています。
「アウト・オブ・オーダー実行」とは、高性能プロセッサにおいて、クロック当たりの命令実行数(IPC値)を増やし性能を上げるための手法の1つで、機械語プログラム中の命令の並び順に依らず、データなどの依存関係から見て処理可能な命令については、逐次処理を開始して実行させて完了させる仕組みです。
つまり、処理の高速化を図るために、出来る限り処理を並列実行させる事を意味します。
「アウト・オブ・オーダー実行」は、結果(意味)に影響を与えないことを保証しながら、可能な限り順序に従わずに処理をどんどん実行することにより、複数命令の同時実行の可能性を広げる最適化手法の1つとされています。
このため、前処理で「例外エラー」等が発生すると、先に実行していた後処理は、処理結果を保証するために取り消される事になります。
ところが、後処理を、どんどん並行に処理しているため、処理が取り消されても、その処理履歴等は、OSのキャッシュ領域に残されたままになります。
これが、「Meltdown」の引き金となってしまうのです。
ちなみに、「アウト・オブ・オーダー実行」に対して、処理を順序通り、シリアルに実行することを、「イン・オーダー実行」と言います。
それでは、どうして「アウト・オブ・オーダー実行」が「Meltdown」の引き金になるのかを下記で説明します。
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(1)プログラムの処理が、「処理①」、「処理②」、そして「処理③」の順番で実行するプログラム群を用意する。
(2)各プログラム(処理)は、次のような順番で、それぞれの処理を行う。
①「処理①」 :一定時間間隔で、特定のキャッシュ領域を参照して、その特定領域にあるデータを、自身のプログラム内部に取り込む処理を行う。
②「処理②」 :保護された領域に保存されている「パスワード」を参照し、「パスワード」を取得する処理を行う。
③「処理③」 :「処理②」のアクセス履歴を元に、保護領域にある「パスワード」を、OSのキャッシュ領域に移動させる処理を行う。
(3)上記プログラムの内、一定時間間隔で同じ処理を繰り返す「処理①」を実行する。
(4)次に、保護された領域にあるパスワードを取得する「処理②」を実行する。
(5)「処理②」を実行すると、権限不足が原因で保護例外エラーが発生して処理が中断される。
(6)「アウト・オブ・オーダー実行」により、「処理②」の実行前に「処理③」が実行され、「処理②」のアクセス履歴から「パスワード」がキャッシュに移動されてしまう。
(7)この時、一定時間間隔で処理を実行する「処理①」が、キャッシュに移動した「パスワード」を自分のプログラム内部に取得する。
■脆弱性「スペクター(Spector)」とは
それでは次に、「アウト・オブ・オーダー実行」が原因で発生する「Meltdown」の次に、「スペクター(Spector)」の原因を説明します。
「Spector」もCPU高速化の弊害として発生する脆弱性ですが、この脆弱性に関しても、前述のグラーツ工科大学の別の研究チームと「Project Zero」が発見した脆弱性です。
こちらは、CPUが処理高速化のために行う「投機的実行(Speculative Execution)」が原因とされています。
それでは、まず「投機的実行」とは、どのような処理なのかを説明します。
CPUは、処理高速化のために、何らかの分岐処理がある場合、分岐条件が確定する前に、一方もしくは複数の分岐後の処理を先読みして実行します。
この「先読みする」技術は、CPUが遊んでいる時間を減らし、高速化を実現する技術で、先読みが外れた場合は、先読みした処理は取り消されます。
そして、このように、判定処理の結果により、本来は必要としない処理を事前に実行する事から「投機的実行」と呼ばれています。(※投機:成否が不確実)
この処理も、前章で紹介した「アウト・オブ・オーダー実行(Out of Order execution)」処理と同様、「命令パイプライン」と呼ばれるCPUの設計技法で、命令を並列化する事で、全体の処理時間の大幅削減を目的としています。
ちなみに、脆弱性「スペクター(Spector)」の命名の理由は、映画「007シリーズ」に登場する『悪の秘密組織スペクター』が語源と言われており・・・となると映画ファンは嬉しいのだと思いますが、実際は、CPUの処理となる『投機的実行 (Speculative Execution)』 に由来しています。
それでは、どうして「投機的実行」が「Spector」の引き金になるのかと言うと、既にお分かりの通り、その原因は「Meltdown」と同様です。
処理の「先読み」を行ってしまう事で、本来は、参照出来ない領域を、特別な権限を持たないプログラムが、自由に参照する事が出来てしまう点が問題となります。
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(1)判定処理を含む「プログラムA」が起動し、判定処理が行われると、「投機的実行」が発生し、「処理A-③」が先読みで実行される。
(2)「投機的実行」で起動された「処理 A-③」が、保護領域にある「パスワード」を参照して獲得し、キャッシュ領域に移動する。
(3)その時、別の「プログラムB」が起動し、「処理B-①」が実行される。
(4)「処理B-①」は、「処理 A-③」が、「投機的実行」によりキャッシュ領域に設定した「パスワード」を取得して、自身のプログラムの内部領域に獲得する。
(5)これにより、「プログラムB」は、不正に取得した「パスワード」を自由に使う事が可能となる。
■その後の対応
今回、コンピューターの頭脳とも言われる「CPU」に、致命的な設計ミスが存在することが明らかになってしまった訳です。
この事実が公表された事で、2018年の年明け、IT業界は、「上を下への大騒ぎ」となってしまったようです。
これまでは、Windows、iOS、あるいはLinux等のOS部分にバグがあるのは、IT業界では、当然と考えられて来ました。
しかし、コンピューターの頭脳や心臓に例えられる「CPU」のバグとなると、これまでとは全く異なるアプローチが必要になります。
つまり根本的な問題の解決のためには、「Windows Update」等での対応ではなく、CPUを含むハードウェア自体の更新が必要になると言うことです。
これまでは、OSのバグに対しては、「パッチ(Patch)」と呼ばれる「修正(更新)プログラム」を配布して、プログラムにあるバグを修正して来ましたので、あくまでもソフトウェアであるプログラムの修正だけで対応する事が可能でした。
プログラムにバグが見つかった場合、メーカー側でプログラムのバグを修正し、そのプログラムを含む、全システムを入れ直す必要があります。
しかし、システムの「全取っ替え」作業を行うと、数時間もの作業時間が必要になってしまいます。
このため、プログラムを修正する場合、必要最小限の作業でプログラムを修正するため、プログラムの差分だけを入れ替える「パッチ方式」が採用されるようになりました。
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私が作っていたメインフレーム用のプログラムの場合、「IMASPZAP」と言う修正プログラムが、ユーティリティー機能として、IBM等のメーカーから提供されていました。
この「IMASPZAP」と言うプログラムは、機械語ベースで、プログラムを、直接書き換える事が出来ました。
例えば、前回ブログ「CPUとは」の章で取り上げた「MVS」と言うアセンブラ言語ですが、これを機械語に翻訳すると、次のようになります。
【 例:MVC(移動処理)にバグがあった場合 】
(1)処理内容
レジスター1が指すアドレスから、5バイトの文字を、レジスター2が指すアドレスに移動せよ。
→ MVC 0(5,R2),0(R1)
(2)バグ内容
文字の移動先が、レジスター2指すアドレスではなく、レジスター3が指すアドレスだった。
→ MVC 0(5,R3),0(R1)
(3)機械語
①元々のソース :MVC 0(5,R2),0(R1) : D204,2000,1000
②修正したソース :MVC 0(5,R3),0(R1) : D204,3000,1000
(4)IAMSPZAPに与える情報
NAME プログラムA CSECT名
VER D204,2000,1000
REP D204,3000,1000
と言うような情報を与えることで、ソース・プログラム(実際には、コンパイルした後のロード・モジュール)を、直接修正する事が可能でした。
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しかし、これが「ハードウェア」となると、これまでのような「パッチ」では根本的な解決は不可能です。
「ハードウェア」、つまり機械部品が壊れている訳ですから、その部品を交換しない事には根本的な問題を解決する事は不可能です。
今回の件を「車」の故障に例えると、エンジンに欠陥が見つかった様なものです。エンジンが壊れたのに、エンジンを制御するソフトウェアを修正しても話になりません。
根本的な解決を図るのであれば、エンジン本体を交換する必要があります。
と言う事で、CPU提供メーカー、あるいはOSメーカーの対応ですが、下記の状況になっているようです。
一部、主要メーカーの状況だけを紹介します。
- CPUメーカー
メーカー |
影響 |
状況 |
対応 |
有 |
未 |
コード更新を行ったマザーボードを提供したがバグ発生。供給停止中。2019年発売予定のWhiskey LakeとAmber Lakeで対応予定。 |
|
有 |
未 |
||
ARM |
有 |
未 |
2019年にハードウェア・アップデートを予定。 |
Power(IBM) |
有 |
済 |
ファームウェアとOSにパッチが必要。既にリリース済。 |
- OSメーカー
メーカー |
影響 |
状況 |
対応 |
有 |
未 |
2018年1月3日に更新プログラムを配布したが他社セキュリティソフトとの互換性が無く配布中止。 |
|
有 |
済 |
2018年1月8日配布の「macOS High Sierra 10.13.2 Supplemental Updat」にてSpector対応済。、Meltdown対策は10.13.2以降で適用済。 |
|
有 |
済 |
11.2以降でMeltdown対策済。11.2.2でSpector対応済。 |
|
有 |
済 |
2018年初頭にカーネル4.15でリリース済 |
|
有 |
済 |
セキュリティパッチを配信済だが互換性はメーカー依存。 |
|
有 |
未 |
ルーター等に影響がある事は認めているが影響を受ける範囲が限定されているので対応せず。 |
|
有 |
済 |
CentOS6/CentOS7でカーネルアップデートがリリース済。 |
|
有 |
済 |
カーネルアップデートが実施済。 |
--------------------------------------------------------------------------------------------------------
その他、大規模クラウドを提供している下記のメーカー環境が、非常にマズい状況になっているようです。
・Microsoft Azure
・Google Cloud Platform
これらクラウドと呼ばれるサービスは、物理的に存在する1個の筐体(きょうたい)で、複数ユーザーのシステムを稼働させています。
そして、重要なデータが保存されている特権メモリーのロケーションへの不正なアクセスを防ぐ措置は、CPUによるセーフガードに委ねているだけとなっています。
しかし、今回、「CPU」に設計上のミスがある事が明らかになっているので、事実上、このセーフガードが無効になっているに等しい状況です。
故に、悪意を持ったユーザーが、今回明らかになった脆弱性を突いて、他のユーザーのシステムを参照し、保護領域に隠してあるパスワードやクレジット情報等の重要情報を盗み出す事も可能となってしまいます。
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現在、これら「クラウド・コンピューティング」と呼ばれるサービスは、上記3社の寡占状態にあります。(Amazon、Microsoft、Google)
加えて、これらクラウド環境で使われているCPUも、下記3社が提供する何れかのCPUとなっており、全てのCPUにおいて、脆弱性が存在する事が明らかになっています。
・ARM
クラウド・サービス、およびCPUが、どちらも数社の寡占状態にある状況で、今回の問題が発生しています。
現在のところ、この脆弱性を悪用したマルウェア攻撃は確認されていませんが、もしも、この脆弱性を悪用したマルウェアが登場したら、IT業界というか、この世界は、どうなるでしょうか ?
実際、ドイツのセキュリティソフト評価機関「AV-TEST」は、2018年2月1日に、脆弱性「Spector」、および「Meltdown」を利用したマルウェアのサンプルが発見されたと報告しています。
「AV-Test」によれば、1月7日から22日の期間において、この脆弱性を利用しているとみられるマルウェアのサンプルが、計119個発見されたツイートしています。
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「マルウェアのサンプル」とは、マルウェアの解析を行うための「検体」を意味します。
通常、マルウェアには、メール添付ファイル開封とか、Webサイトを閲覧する事で感染しますが、この時のメール添付ファイルが「検体」となります。
つまり、「検体」とは、」「マルウェアを含んでいる可能性があるプログラム」と言う事になります。
今回、AV-TESTが119個も検体を発見したされていますが、さらに、この検体に関して、アメリカのセキュリティ企業「Fortinet」が、その内容を解析した所、約83%、つまり約99個が、実証実験用のコードとして有効である事を確認したそうです。
セキュリティ分野では、脆弱性を発表する際、その脆弱性が、単なる理論的な脆弱性ではなく、実際に攻撃に転用可能であることを証明するため、論文と同時に「実証(PoC:Proof of Concept)コード」も発表さします。
つまり、今回発見された検体の内、99個は、脆弱性の攻撃に転用可能なプログラムであると言う事です。
考えただけでも寒気がしてきます。CPUメーカーは、もう少し本気で対応を考えて欲しいものです。
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今回の問題に対しては、前述の表に記載した通り、各CPUメーカーは、MeltdownやSpector対応を施す予定になっていますが、このパッチを適用すると、やはり当初の想定通り、30%程度パフォーマンスが低下するとされています。
CPUメーカーは、(Amazon関係者によると)20年以上も、この問題を放置したままパフォーマンスの向上だけを追求して来たと糾弾されていますので、今後の姿勢が問われる事態となっています。
とにかく悠長な事を言ってる暇はありませんので、早く対応を取るべきです。
また、現在は、この脆弱性の亜種、つまり別の設計ミスが数多く発見されているそうです。
やはり、CPUメーカーは、これら亜種も含めて、早急な対応が必要です。
■最後に
今回は、前回に引き続き、「IT業界を震撼させたメルトダウンとスペクター ~ OSは信頼出来るのか ?」の第2弾として、次の内容を紹介しましたが如何でしたか ?
CPUの高速化処理の脆弱性は、前回のブログで、20年以上も前から明らかになっていた事が明らかになっていたと言う情報を紹介しましたが、まさに、その通りで、その昔は、このような高速処理は行われていなかったのです。
Intel社、およびGoogle社では、今回の脆弱性は、1995年以降にリリースされた全CPUに共通の脆弱性だと発表しています。
1995年と言えば、今や伝説と化した「Windows 95(コードネーム「Chicago」)が発売され、全世界にPCブームが巻き起こった年でもあります。
20年以上前というか、24年も前から潜在的バグが潜んでいたなんて・・・全く信じられない事態です。
しかし、このバグを発見した研究者も凄いと思います。
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これまで常識と考えられて来たロジックを、最初から見直してバグを発見するとは・・・何てヒマな、じゃなく、根気強いのかと思ってしまいます。
今回の脆弱性の発見は、詳しくは報告されてはいないようですが、「Linux」と言うOSをベースに、「カーネル空間に存在するアドレス空間のランダム化(KASLR)」と言う処理を狙った攻撃への対応方法を検討、および実装した際に発見されたと言う事になっているようです。
この対応のため、「Kernel Address Isolation to have Side-channels Efficiently Removed(サイドチャネルを効率的に取り除くためのカーネルアドレスの分離、KAISER)」と言う新方式を採用し、実装を開始したそうです。
そして、この新方式の実装時に、今回の脆弱性「Meltdown」が発見され、それとほぼ同時に「Spector」も見つかったと言う事らしいです。
何か、余りに複雑過ぎて、私にも理解するのが難しい話です。
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そして、この「Meltdown」と「Spector」への対応に関しては、「その後の対応」の章に記載した通りなのですが・・・未だに対応出来ていません。
やはり、根本的な処理の設計ミスなので、中々対応が難しそうです。
既に紹介した通り、Intel社は、2018年10月に、2019年発売予定の新型CPUで、「Meltdown」と「Spector」に対応すると発表していますが・・・
この対応は、本ブログに記載した基本的な脆弱性に対してのみの対応であり、その後に発見された「変種」には対応していないようです。
また、AMD社も、同じく2019年に発売予定の新世代「Zen 2アーキテクチャプロセッサー」では、「Spector」の変種にも対応するとしています。
そして、残りの1社、ARM社も、ハードウェア・アップデートを約束し、今後、同社がリリースする全てのCPUには「Spector」系の攻撃に対する耐性を持たせるようにすると発表しています。
「これで一安心」と言いたい所ですが・・・
旧型のCPUを使っているPCやスマートフォンには、(何時提供されるのか解らない)パッチを適用する必要がありますし、このパッチを適用すると、恐らく、と言うか、ほぼ100%パフォーマンスは低下すると思います。
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CPUメーカーは、これまで24年もの間、パフォーマンスの向上だけを求めて、脆弱性への対応を疎かにして来ました。
そして、恐らく、まだ発見されていない脆弱性が、CPUの中に潜んでいると思いますし、これら潜在的な脆弱性を取り除くのは、さらに難しい作業が必要になると思います。
隠れているバグ、潜在的なバグを見つけ出すほど、難しい作業はありません。私も、それは身を持って経験しています。
これまでCPUメーカーは、上辺だけの性能アップを図って来た訳ですから、今後は、全てのバグを治すのは不可能だと思いますが、CPUは、コンピューターの頭脳であり、心臓でもありますので、注意深く設計してくれる事を期待したいと思います。
それでは次回も宜しくお願いします。
以上
【 画像・情報提供先 】
・Wikipedia(http://ja.wikipedia.org/)
・「メインフレーム・コンピューター」で遊ぼう(http://www.arteceed.net/)
・富士通「コラム・セキュリティ記事」(https://www.fujitsu.com/jp/solutions/business-technology/security/secure/column/)
・トレンドマイクロ「脆弱性」(https://blog.trendmicro.co.jp/archives/16735)
岩手の食材 - そこそこ美味しい物ばかり 果物(その2)
今回のブログは、前回に引き続き、岩手の食材、果物に関する話題の第2弾を紹介します。
前回は、岩手県を代表する果物として、「りんご」、「ブルーベリー」、そして「さくらんぼ」を紹介しました。
★過去ブログ:岩手の食材 - そこそこ美味しい物ばかり 果物(その1) 20190824.html
まあ、「さくらんぼ」は、それ程、岩手を代表する果物ではありませんが、たまたま行った「さくらんぼ狩り」が楽しかったので、果物ついでに紹介した次第です。
実際、「さくらんぼ」の収穫量に関しては、山形県が断トツのトップで14,500トン、以下、北海道、山梨県となっており、岩手県など全く話になりません。
・第1位 :山形県、14,500トン
・第2位:北海道、 1,520トン
・第3位:山梨県、 1,170トン
・
・
・第10位:岩手県、 29トン
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前回ブログの最後に、岩手県の農産物と言うか、土地や気候が影響し、余り農産業は盛んでは無いと伝えましたが、まさにその通り、数字で見ると明らかです。
岩手県の農業産出額は、2015年で約2,494億円、全国に占める割合は、たったの2.8%程度しかありません。
しかし、それでも全国の順位で見ると、何故か11位なのです。
その理由はと言うと、やはり北海道の存在は非常に大きく、北海道の農業産出額は11,852億円で、ずっ~と1位になっています。
つまり、北海道以外の県は、それほど差がなく、「どんぐりの背比べ」状態になっている事が明らかです。
そんな状態の農産業ですが、今回は、次の3種類を紹介したいと思います。
- すいか
- なし
- いちご
今回紹介する果物も、それほど収穫量が多い果物ではありませんが、農家の方は、頑張っています。
また、今回も、これらの情報と合わせて、果物狩りが出来る場所の情報も紹介したいと思います。
それでは今回も宜しくお願いします。
■すいか
今回、最初に紹介する果物は「すいか」です。
「すいか」は、ご存知の通り「ウリ科スイカ属」に属する植物で、和名「西瓜」、英語名「Watermelon」と呼ばれています。
和名「西瓜」は、鎌倉時代に中国から日本に伝播した「唐音(とうおん)」と言う「字音」と言われています。
「字音」とは、漢字の発音が、日本語化した音のことです。
中国語で「西」を「シー」、「瓜」を「グァ」と言いますから、本来は「シーグァ」だった呼び方が、日本語化して「スイカ」になったと想像されています。
そして、呼び名と同様「すいか」も、記録が無いので何時かは定かではありませんが、室町時代(14世紀)以降、中国から日本にもたらされたと考えられているようです。
「すいか」自体は、紀元前5000年頃には、既に南アフリカで栽培されており、紀元前3000年頃のエジプトでも栽培が行われていたそうです。
その後、10世紀頃には中国に伝わり、「西方から伝わった瓜」と言う事で、中国でも「西瓜」と呼ばれています。
また、日本にもたらされた説としては、上記、室町時代と言う説以外、次の様な渡来説もあるようです。
・安土桃山時代となる天正7年(1579年)、ポルトガル人が長崎に「すいか」の種を持ち込んだ。
・江戸時代となる慶安年間(1648~1652年)、「隠元禅師」が、中国(明朝)から種を持ち込んだ。
・江戸時代となる寛永年間(1624~1645年)、中国から種が持ち込まれた。(農業全書)
要は、何時から日本で食べられ始めたのかは明らかにはなっていないようですが、全国的に広まったのは、江戸時代後期とされているようです。
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「すいか」と言うと、前述の画像を直ぐに思い浮かべますが、結構、種類があります。
項番 |
品種 |
説明 |
1 |
大玉すいか |
一般的なスイカ。主な種類は、縞王、富士光、早生日章、甘泉、祭ばやし等。 重さは平均3~5k |
2 |
小玉すいか |
1.5~3kgと小ぶり。外見や味は大玉と同等。主な種類は、紅小玉、ひとりじめ、姫甘泉、等 |
3 |
黄色すいか |
果皮が緑で果肉が黄色。別名「クリームスイカ」。種類は、おつきさま、おおとり、ひまわり等 |
4 |
マダーボール |
ラグビーボールのような楕円形。2~4kgの小玉。種類は、姫まくら、紅まくら、黒美人、等 |
5 |
でんすけすいか |
|
6 |
角型すいか |
|
7 |
太陽すいか |
果皮が黄色く果肉が赤色。糖度12度程度。大玉7kg程度。種類は、金のたまご、愛娘ひなた等 |
8 |
入善ジャンボ西瓜 |
|
9 |
種なしすいか |
戦後日本で開発。生産が面倒で甘味が少ないため普及せず。糖度が高い品種が開発された。 |
「何だ ! たったの9種類か !!」と思うかもしれませんが、実は、例えば上表の「大玉すいか」と言う品種の中には、表中にも記載していますが、更に次のような種類があります。
→ 祭ばやし、祭ばやし777、縞無双、必勝、春のだんらん、夏のだんらん、竜宝、暁ひかり、日章、翠章、貴ひかり、富士光、マイティー21、朝ひかりSR、サマーキッズ、甘泉、甘喜、甘湧、夏まくら、キャノンボール、月美人、バルビレッジスイカ、アイスクリーム
そして、当然、その他の品種にも、様々な品種があるので、「さくらんぼ」の様に、何千種類とまでは行かないにしても、それなりの種類、150種類くらいはあるようです。
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そして、肝心の岩手県ですが・・・実は、それほどの収穫量は無く、ベスト10どころかトップ30にも入りません。済みません。
日本国内における「すいか」の収穫量のベスト3は、次のとおりとなっています。(2017年)
・第1位 : 熊本県 47,000トン
・第2位 : 千葉県 39,000トン
・第3位 : 山形県 32,200トン
以下、鳥取県、長野県、新潟県・・・と続き、約33万トンの収穫があるそうです。
また、余り気が付かないと思いますが、海外からも「すいか」を輸入しており、そのほとんど全てを、次の3カ国から輸入しているそうです。
・第1位 : アメリカ 141トン
・第2位 : 韓国 82トン
・第3位 : メキシコ 43トン
しかし、この季節、スーパー等で沢山「すいか」を販売していますが、アメリカ産とかメキシコ産の「すいか」など1回も見たこともありません。一体、誰が「輸入すいか」を食べているのでしょうか ?
アメリカ等は、「農産物の輸入を解禁しろ !」と、いつも騒いでいますが、こと「すいか」になると、事情は違うようです。
そもそも、国産の「すいか」自体、その大きさや重さの割には、それほど高価な果物ではありません。まあ中には1個、1万円の「すいか」もありますが・・
つまり、アメリカとしても、重くてかさばり、なおかつ安い「すいか」を、わざわざ輸送コストを掛けて輸出しても、全く割に合わないのだそうです。
さらに、品質自体が、国産の「すいか」には敵わないのだそうです。海外から日本に旅行で来た人が、日本の「すいか」を食べると、その甘さに驚くと言われています。
このため、海外から輸入した「すいか」に関しては、そのまま食用に流通する事は皆無で、ほぼ全てが加工用として使用されているのだそうです。
ちなみに、世界的に見ると、「すいか」の収穫量世界一は、何と言っても中国がダントツの1位のようです。参考までにベスト3を掲載します。(2016年)
・第1位 : 中国 117,000,000トン
・第2位 : トルコ 4,044,184トン
・第3位 :イラン 3,800,000トン
中国は、本当に桁違いで、これは、全世界の収穫量の約80%を占めるそうです。恐るべし中国 !!
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あと、これは余談ですが、その中国の江蘇省丹陽市では、2011年に「すいか爆発事件」なる事案が発生し、大量の「すいか」が爆発してしまったので、地元当局が、特別チームを編成して調査を行ったそうですが、原因不明となってしまったそうです。
「すいか」は、大雨等の影響で、内部にガスが溜まる事があり、その内圧で自然に爆発が起こる事があるそうです。
しかし、中国の「すいか爆発事件」では、「NCAF」と言うアメリカで開発された「膨張促進剤」の使い方を間違えて、やはり収穫直前に使用したため、「すいか」内部の圧力が不均衡になり爆発したと考えられているようです。
この「NCAF」は、過去には日本でも使われていた薬物ですが、この薬を使うと、形が崩れたり、腐りやすくなったりするので、現在では日本では使われていないそうです。
この薬、何か非常にヤバそうな薬のように思えますが、人体に対する影響への報告は無く、植物ホルモンと人体に影響があるホルモンは系統が違うので、人体に影響を与える可能性は低と考えられ、現在のところも副作用の報告も無いそうです。
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ところで、余り「すいか」生産が盛んでは無い岩手県ですが、滝沢市には「滝沢すいか」と言う「ブランドすいか」があります。
滝沢市は、盛岡市の北西に位置し、かつては人口5万人を超える「日本一大きな村」として有名だったのですが、いつの間にか「市」に昇格してしまっていました。
岩手県では、唯一、この滝沢市が、「すいか」の名産地となっています。
滝沢市は、岩手山の南東にあり、市街地は、この岩手山の山麓になっています。
そのため、「すいか」の栽培に適した火山灰を含んだ土壌があるのと、昼夜の寒暖差が激しい気候の中で育った「滝沢スイカ」は、糖度が高く、シャリシャリとした歯触りとみずみずしさが特徴となっているそうです。
滝沢市の「すいか」栽培の歴史は古く、滝沢市で「すいか」栽培が始まったのは、昭和30~40年代頃と言われています。
左の画像は、滝沢市に設置されている「盛岡ガス」のガスタンクです。
この「ガスタンク」、実は二代目で、初代は2015年に、老朽化のために解体されてしまったそうです。
そして、この解体方法が、「りんごの皮むき」として一躍有名になり、SNSなどでも取り上げられ、「滝沢すいか」と共に拡散されたそうです。
しかし、滝沢市民は、どんだけ「すいか」が好きなんでしょうかね ?
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ここで、夏の風物詩として有名な「すいか割り」について、ちょっと調べたので、その調査結果を報告します。
が・・・皆さん、「すいか割り」にルールがある事はご存知ですか ?
何と! 日本には、「日本すいか割り協会(JSWA:Japan Suika-Wari Association)」と言う協会があり、この協会が、平成3年(1991年)に公式ルールを定めていたようです。
そのルールを紹介すると、次の様なルールになっているそうです。
項目 |
決まり |
距離 |
スイカと競技者の距離は9m15cm。 |
棒 |
直径5cm以内、長さ1m20cm以内。 |
目隠し用手拭い |
JSWA公認手拭い、目隠し後は確認のため眼の前に1万円札を落として確認する。 |
使用するスイカ |
|
制限時間 |
3分 |
判定 |
割れたスイカの断面の美しさによって審判員が判定する。 |
その他 |
審判員は、その年にスイカを10個以上食べている必要がある。 |
何とも、凄い公式ルールですが・・・これは、「JA(農業共同組合)」が企画したスイカの販売キャンペーンのための協会で、現在では存在しないようです。
ちなみに、このルールは、「日本すいか割り協会版」のルールなのですが、このルールとは別に、山形県のJAみちのく村山が策定した「日本すいか割り推進協会認定版」のルールもあります。
そして、こちらのルールには、競技開始時に、フォーメーションローリング(回転)の回数まで定義されており、そこには「右回りで5回と2/3回転」する事まで決められていますが・・・まあ、「すいか割り」は、楽しく、怪我をせず、周りに迷惑を掛けなければ、何でも良いと思います。
そして、「すいか割り」の起源ですが、これは諸説入り乱れているようです。
・佐々木小次郎の頭をスイカに見立て、その怨霊を静めたという伝説が発祥
・スイカの豊作を占うアフリカの風習が伝わった
・海の神にスイカを捧げ、海運と漁業、遊泳の安全の願いが込められた
・戦いの前に生きた人間を砂に埋めて頭を叩き割る事で戦勝を祈願した
等など、沢山の起源説があるようですが、中でも最後の「頭を叩き割る戦勝祈願儀式」は、中国で行われていた儀式なのですが、それを「三国志」で有名な「諸葛亮(孔明)」が、儀式が残酷過ぎるとして、人の代わりに「すいか」を使ったのが始まりと言う説があり、この説が、一番信憑性が高いとされているようです。
しかし、これも、まあ、どうでも良いと言えば、どうでも良い話ですので、トリビアとして頭の片隅にでも入れておいて下さい。
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「すいか」の最後に、「すいか狩り」の情報を紹介したいと思ったのですが・・・そもそも「すいか狩り」と言うイベント自体があるとは思いもよりませんでした。
「すいか狩り」とは、これまで紹介した「さくらんぼ狩り」、「りんご狩り」、そして「ブルーベリー狩り」とは全く異なり、「すいか」が食べ放題になる仕組みでは無いようです。
残念ながら、岩手県内には「すいか狩り」を体験できる施設は存在しないようですが、他県にある施設の情報によると、次のような仕組みになっています。
・入園料650円(大人)を支払う
・800円を支払う事で、すいか1個を獲得できる
と言う様な仕組みで、つまりは、入園料とすいか代金を支払って、自分が好きな「すいか」を1個獲得する事が出来るのだそうです。
まあ、「すいか」を食べ放題にしても、普通の人は、すいか1個丸ごと食べるのは無理だと思いますので、このような「すいか収穫体験」が、まともな「すいか狩り」なのかもしれませんね。
でも、1,450円払って「すいか」を獲得するなら、スーパーで「すいか」を買っても同じ様な感じもしますが・・・この施設の場合、大きい「すいか」の場合、1個で10kgの大物もあるとの事ですから、お買い得なのかもしれません。
■なし
さて、次は「なし」を紹介しますが、「なし」も、前回紹介した「さくらんぼ」や「りんご」と同じ「バラ科」の植物です。
皆さん、「なし」には、「(和/日本)なし」と「西洋なし」の2種類がある事はご存知だと思いますが、もう1種類「中国なし」と言う種類があることは知っていますか ?
一般的に「なし」と言うと、「和なし」、あるいは「日本なし」を指しています。(本ブログでは「和なし」採用)
しかし、この「和なし」も、元々は、原産地は中国の「なし」なのですが、この中国原産の「なし」」が日本に渡った後、日本に自生する「ヤマナシ」と掛け合わせた生まれた栽培品種となっています。
それに対して「中国なし」は、中国原産の「ホクシヤマナシ」と言う「なし」を栽培したものとなっており、次のような複数の種類があるそうです。
→ 身不知(別名:千両)、鴨梨(ヤーリー)、慈梨(ツーリー、別名:莱陽慈梨)、紅梨(ホンリー)
19世紀以降、日本にも「中国なし」が持ち込まれたのですが、あまり人気が出ず普及しなかったようです。
現在でも、北海道、青森県、長野県、および岡山県で、ひっそりと栽培され、主に加工食品やお菓子の原料等として使われているようです。
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そして、皆さんご存知の「西洋なし」、別名「洋なし」ですが、こちらはヨーロッパが原産となっています。(本ブログでは「西洋なし」採用)
まあ、名前が「西洋なし」ですから、そのものズバリですよね。
この「西洋なし」、起源は中国、あるいは西アジア一帯とされ、その後、ヨーロッパに渡ったと考えられています。
「西洋なし」の栽培の歴史は非常に古く、紀元前の古代ギリシア時代には、既に栽培が行われていたと考えられています。
また、紀元前の古代ローマ帝国の政治家の記述によると6種類の栽培品種があった事が、また、その後の帝政ローマ時代には、40種類もの品種が栽培されていた事が記録されているそうです。
その後、時代を経て、日本には、明治時代に持ち込まれたとされていますが、当初は、やはり気候が合わなかったので、山形県など、ごく一部の地域でしか栽培が行われなかったようです。
しかし、現在では、東北地方や信越地方などの寒冷地で栽培されるようになり、岩手県の花巻市や紫波町でも盛んに栽培されています。
そして、当初は、見た目が悪いので生食としては用いられず、加工用として栽培されていたのですが、1990年頃から、ようやく食用に栽培されるようになったのだそうです。
何か、私の子供時代、1960年代から1970年代にも、普通に、果物として食べていた覚えがありますが、これは産地に近かったからこそで、産地以外で食用になったのは、ここ20~30年位のようです。
これには驚きです。
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さて、「なし」ですが、その語源は、江戸時代の学者「新井白石」が、「なし」の中心部ほど酸味が強い事から、『中酸(なす)』が転じて「なし」になったと記述していたそうです。
何かイマイチの説ですが、それ以外、次のような説があるようです。
・果肉が白いことから「中白(なかしろ)」あるいは「色なし」
・風があると実らないため「風なし」
・「甘し(あまし)」
・「性白実(ねしろみ)」
・漢語の「梨子(らいし)」が転じたもの
こちらも全部イマイチのような感じがします。
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さて、日本における「なし」は、これも歴史が非常に古く、弥生時代(紀元前10世紀~紀元3世紀)には、既に食用になっていたそうで、静岡県にある有名な「登呂遺跡」でも、多くの種子が見つかっているそうです。
そして、弥生時代以前の遺跡からは、全く「なし」が見つかっていないことから、弥生時代に、人の手により大陸から持ち込まれたと推測されているそうです。
他方、文献に初めて「なし」が登場するのは「日本書記」で、飛鳥時代となる693年に行われた持統天皇による詔に、五穀の栽培を奨励する記述と共に、「なし」を含めた、その他の食物の栽培も奨励する記述があるそうです。
また、ちょっと脇に逸れますが、その昔、5世紀の中国の歴史書「洛陽伽藍記」には、重さ約6kgの巨大な「なし」があった事が記録されているそうです。
さらに、日本でも、江戸時代中期に編纂された辞書「和漢三才図会」には、落下した「なし」に当たって犬が死んだと言う「犬殺しのなし」の逸話が紹介されているそうです。
まあ、今でも「なし」は、結構ずっしりして重いですから、大きな「なし」があるなら、それが頭を直撃したらヤバい事態になるかもしれません。
栃木県で栽培されている「にっこり」と言う品種は軽く1㎏を超えますし、群馬県の「冬将軍伝説」言う商標を持つ「なし」は、最大で3kg近くの巨大な「なし」になります。
右の画像を見ると、「冬将軍伝説」の巨大さが分かると思います。
赤ちゃんの頭と同じくらいの大きさですから、こんな巨大な「なし」が頭を直撃したら、当たり所が悪ければ、ホントに犬でも人間でも死んでしまうかもしれません。
ちなみに、「冬将軍伝説」とは、愛宕、新雪、晩三吉(おくさんきち)と言う品種の「なし」の内、1個の重量が1.1kg以上の大きな梨を「冬将軍伝説」と呼んでいるそうです。
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さて、日本における「なし」の品種と言えば、「幸水」や「豊水」、ちょっと前だと「二十世紀」とかを思い浮かべると思います。
「なし」が登場したのは、前述の通り、弥生時代とされていますが、、「なし」に品種名が付けられたのは、江戸時代中期となる享保20年(1735年)に行われた特産品調査以降となり、当時、既に1500種類もの品種が登録されていたそうです。
そして、その後、「なし」に対する品種改良が施されるようになったのは20世紀後半とされていますので、それまでは、現在の様に甘い「なし」は存在しなかったと考えられています。
明治時代に、「二十世紀(千葉県)」、および「長十郎(神奈川県)」と言う品種が発見されたのですが、戦後までは、「なし」と言えば「長十郎」で、全国の栽培面積の80%を占めるほどだったようです。
そして、戦後になると「幸水(1959年)」、「新水(1965年)」、そして「豊水(1972年)」と言う3品種が生まれ、これら3品種が普及しだし、逆に「長十郎」の生産は激減したそうです。
ちなみに、この3種類の「なし」を、まとめて「三水」と呼んでいるそうです。
また、「和なし」には、大きく「赤梨」と「青梨」の2系統があるそうです。赤梨は「豊水」や「幸水」など果皮が茶色いもので、青梨は「二十世紀」のような果皮が緑色の梨です。
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ところで、岩手県では、花巻市と紫波町で「なし」の栽培が盛んだと紹介しましたが、岩手県で盛んに栽培されているのは「西洋なし」です。
また、下表以外にも、シルバーベル、レッドバートレット、ドワイエネ・デュ・コミス、ブランデーワイン、バラード、エル・ドラド等の多くの品種があり、現在では4,000種類以上あると紹介されているそうです。
しかし、日本で栽培されているのは、希少品種を含めても20品種程度で、その中でも、約63%は「ラ・フランス」なのだそです。
項番 |
品種 |
説明 |
1 |
フランスが原産。1864年に発見された品種。平均サイズは200~250g |
|
2 |
ル・レクチェ |
フランス原産。重さは250~400g。熟すと果皮がきれいな黄色になる。 |
3 |
バートレット |
イギリス原産。世界的生産量の多い品種。果重は250g前後。果皮は黄緑色。 |
4 |
オーロ |
|
5 |
ゼネラル・レクラーク |
フランス原産。「コミス」自然交雑。サイズは平均500g熟すと黄色くなる。 |
6 |
マルゲリット・マリーラ |
1874年にフランスで発見。重さが500g前後。熟すと果皮全体が黄色くなる。 |
ヨーロッパにおける「西洋なし」は、原産地から推測すると、何となく、フランスが生産量1位のような感じがしますが、生産量第1位は、何と「イタリア」で125万トンとなっているようです。
そして、第2位がフランスなのですが、生産量は、イタリアの足元にも及ばす40万トン・・・意外ですよね。
そして、片や日本ですが、「西洋なし」全体で見ると、次のような収穫量になっています。(2015年)
・第1位 :山形県、18,800トン
・第2位 :新潟県、 2,240トン
・第3位 :青森県、 1,850トン
収穫量1位はダントツで、山形県です。2005年までは、岩手県も第5位にランクインしていたようですが、現在では、長野県や福島県に抜かれてしまったようです。残念・・・
しかし! ここで無理矢理、「ラ・フランス」だけの栽培面積を調べて見ると次の通りとなっています。
・第1位 :山形県、766ha
・第2位 :長野県、 46ha
・第3位 :岩手県、 35ha
となり、どうにか3位にランクインしています。苦し紛れの調査結果です。
そして、ラ・フランスの栽培が盛んな紫波町には、その名も「ラ・フランス温泉館」と言う温泉宿泊施設まで作ってしまったようです。
この温泉は、ちゃんとした天然温泉で、泉質はアルカリ性単純温泉(低張性アルカリ性温泉)なので、よく言う「ぬるっとした美人の湯」と呼ばれるたぐいの温泉のようです。
日帰りも700円程度で利用出来ますし、画像を見て分かるように、ウォータースライダーまで備えていますので、ファミリーでも楽しめそうです。
私は、まだ、ここを利用したことはないのですが、盛岡の実家からは30分程度で来れるので、何時かは利用したいと思っています。
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そして、最後に「梨狩り」の情報ですが・・・岩手県には、「梨狩り」を行っている果樹園は非常に少なく、恐らくは1軒だけ「マルシロ農園」という所だけだと思います。
但し、この農園の仕組みだと、入園料は無料のようですが、「もぎとり料金」を徴収するらしく、1kg当たり400円となっているようです。
【 マルシロ農園 】
・電話 :019-624-5978
・営業時間 :直接お問い合わせ下さい。
・営業期間 :9月中旬~10月中旬(梨狩り期間)
・定休日 :土・日曜日・祝日のみの営業です
・駐車場 :有り(台数不明)
・その他 :受入人数に制限有り
・URL(県観光協会) :https://iwatetabi.jp/spot/detail.spn.php?spot_id=1699
■いちご
「いちご」も、これまで紹介した果物と同様「バラ科」の多年草で、世界で流通している、ほぼ全ての「いちご」は、「バラ科オランダイチゴ属」の栽培品種です。
このため、「いちご」を大きく分類すると、「オランダイチゴ」と、「ヘビイチゴ」や「ノイチゴ」を含む「野イチゴ」になってしまうそうです。
「オランダイチゴ」は、18世紀のオランダで、北米産の「バージニアイチゴ」とチリ産の「チリイチゴ」の異種交配によって作られたとされています。
このため、「いちご」の歴史としては、当然、「野イチゴ」の方が古く、スイスの「トゥワン遺跡」から出土した紀元前3830年頃のスープから、「いちご」の種が見つかっているそうです。
また、「いちご」栽培の歴史も古く、紀元前の古代ローマ帝国では、既に「いちご」が栽培されていたことが分かっています。
しかし、その後は、いくつかの品種が栽培されていた事は分かっていますが、前述の通り18世紀になるまでは、現在、皆が食べている「いちご」は登場しなかったようです。
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ところで、「いちご」の語源ですが・・・どうも明確には分かっていないようです。
日本において「いちご」が登場したのは「日本書記」で、その中に「伊致寐姑(いちびこ)」と言う記述があり、これが「いちご」の原形と考えられているようです。
そして、次に、平安時代中期となる昌泰年間(898~901年))に編纂され、現存する最古の漢和辞典と言われる「新撰字鏡(しんせんじきょう)」には、「一比古(いちびこ)」とあるそうです。
その後は、日本現存最古の薬物辞典(本草書)とされ、平安時代中期となる延喜18年(918年)に編纂された「本草和名」、および同じく平安時代中期となる承平年間(931~938年)に編纂された辞書「和名類聚抄」に、「以知古」と言う記述があるそうです。
ちなみに、「和名類聚抄」には、「りんご」の事が、『 利宇古宇(りうこう/りうごう)』として紹介されている事は、前回ブログでも紹介した通りです。
また、「いちご」を表す漢字には、「苺」と「莓」がありますが、これは「異字体/異体字」と言って、旧字など、読み方や使用方法などが一緒で漢字の一部が異なる字体となります。
そして、「苺」と「莓」、どちらが正しいのかと言うと・・・どちらも間違いでは無いようです。
ちょっと難しいのですが、「苺」は本字で、「莓」の方が正字となってそうです。「じゃ、本字と正字って何が違うの ?」って事ですが、これも複雑で・・・
・本字 :略字や俗語に対して、その元となった本来の漢字。
・正字 :用法が正しい文字。従来から正しいとされている文字。
何か、よく解りませんよね。で、結局、何が違うのかと言うと、次の様に使い分けているのだそうです。
・苺 :オランダイチゴ系、英語の「strawberry(ストロベリー)」
・莓 :野いちご系、英語の「berry(ベリー)」
しかし、この英語の「strawberry」と「berry」の違いも複雑で・・・「strawberry」は、「straw(藁:わら)」+「berry(果実)」なのですが、何故「藁」が付いたのかも分からないのだそうです。
その昔、「イチゴが藁に包まれて売られていた」とか、「イチゴは麦藁を敷いて育てられた」とか、様々な説があるそうです。
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さて、世界で流通している「いちご」は、「オランダイチゴ」であることは既に紹介した通りですが、それじゃ「いちご」の品種は1種類だけなのかと言うと、そんな事はありません。
皆さんも、「とちおとめ」とか「あまおう」とか、様々な品種があることはご存知だと思います。
「いちご」の登録品種は、ちょっと古いですが、農林水産省の品種登録データによると、2016年時点では258品種で、その内、登録維持されているのは129種類なのだそうです。
有名な品種としては、「とよのか」、「女峰」、「章姫」、「とちおとめ」、「あまおう」、「紅ほっぺ」・・・本当に、知っているだけでも沢山の品種がありますので、今回は、品種の紹介は割愛したいと思いまうす。
しかし、これらの「日本のいちご」に関しては、隣国の「大韓民国」で無断栽培されているという問題が起きています。
現在、慰安婦や徴用工の件で、外交や経済で問題が起き、かの国では「日本品の不買運動」が起きているそうですが、それなら、これら「日本産のいちご」に関しても、今後、一切栽培しないでもらいたいものです。
「いちご」に関しては、国際法で「知的財産」となっているにも関わらず、知的財産を侵害して無断で栽培し、なおかつ栽培料も支払われてもいません。これでは、泥棒、盗人と同じです。
全く、かの国は、「日本に対しては何をやっても許される。」と思っているから、本当にタチが悪い国民です。まさに、「盗人猛々しい」とは、この民族の事を言うのではないでしょうか ?
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次に、「いちご」の収穫量ですが、これも、皆さん、ご存知のように、第1位は栃木県で、以降は、次の通りです。
・第1位 :栃木県、25,100トン、とちおとめ、女峰
・第2位 :福岡県、17,700トン、あまおう
・第3位 :熊本県、10,800トン、ひのしずく
と言うことで、岩手県は、全く話になりません。
岩手県では、県南の一関市で「いちご」栽培が盛んなようで、「さちのか」と言う品種を中心にして栽培しているようです。
「さちのか」は、「とよのか」×「アイベリー」の交配種で、福岡県久留米市の農林水産省野菜茶業試験場で育成された品種のようです。
この「さちのか」は、一般的な「冬春いちご」で、冬から春にかけて収穫される「いちご」です。
しかし、現在では、「サマーベリー」と「北の輝」を交配した育苗と、「デコルージュ」と「Pajaro 」を交配した育苗の交配によって作った「なつあかり」と言う品種に力を入れているそうです。
この「なつあかり」は、「四季成り性」と呼ばれる夏~秋にかけて収穫される品種らしく、何と! 平成19年(2007年)に、岩手県で誕生した品種です。
しかし、栽培が難しいので、余り流通していないそうです。
「夏いちご」は、酸味が強く生食には適さないとされてきましたが、この「なつあかり」は、今までの価値観を覆すほど食味が優れる品種とされ、糖度測定で平均11以上を出せる品種は、知る限り、「なつあかり」以外に世の中に存在しないとまで言われているそうです。
今後は、この「なつあかり」を中心に、「いちご」栽培も盛んになってもらえればと思います。
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それでは、最後に、「いちご狩り」が出来る果樹園を紹介しますが、これも、今年の春に、友達と行った果樹園を紹介します。
その場所は、「北上いちご園」と言う果樹園です。
東北道「北上江釣子IC」から約3㎞、国道4号線、通称:北上バイパスから、側道に逸れた場所にあります。ICからは、約5分程度です。
ちょっと分かり難い場所ですが、ゆっくり走れば大丈夫です。私も、ちょっと迷いましたが(笑)、大丈夫でした。
「いちご狩り」シーズンは、12~6月となっており、この果樹園では、次のような品種の「いちご」をン楽しむことができます。→ おいCベリー、紅ほっぺ、章姫、恋みのり
その昔、子供達が、まだ小さい頃、栃木県の道の駅に併設されていた果樹園に「いちご狩り」に行った時は、地面に成っている「いちご」を取るので、中腰になるのが結構つらかったのを覚えています。
しかし、現在では、右図のように、立ったままいちご狩りができる高設栽培となっているので、非常に便利です。
今では、多くの果樹園が、このような高設栽培になっているようです。
昔は、「いちご農家は腰を痛める。」と言われていましたが、この栽培方法の方が、農家の方も楽に仕事が出来るそうです。
この果樹園は、予約制になっていますので、予約さえすれば安心して「いちご狩り」を楽しむ事ができます。(ネット予約可)
また、ハウスになっていますので、雨が降っても大丈夫ですし、ハウス内には「いちご」を育てるために温風を送り続けていますので、冬でも暖かく快適でした。
逆に、コートを着たまま入ると暑いくらいですので、その点は気を付けた方が良いかもしれません。
あとは、「いちご」に付ける、練乳とチョコは無料ですし、お替り自由なところも嬉しいサービスです。
まあ、私は、チョコは付けませんでしたし、練乳も、最初こそ付けましたが、途中からは「飽きが来る」ので、そのまま食べていました。
時間は1回40分 なので、十分に食べることができますので安心して下さい。
前述の通り、4種類の「いちご」の食べ比べが出来るのですが、私としては「紅ほっぺ」が、一番美味しかった記憶があります。全ての種類は食べたのですが、途中からは、「紅ほっぺ」だけを食べていました。
また、「いちご狩り」終了後は、有料ですがコーヒーマシンがありますので、「お口直し」にコーヒーを飲むこともできます。
今年の「いちご狩り」は終了したので、来年、楽しいんでください。
【 北上いちご園 】
・電話 :「いちご狩り」期間中のみ掲載
・時間 :40分間
・料金 :12~翌1月:2,000円、2~5月:1,800円、5月~:1,500円(※変更可能性有)
・営業時間 :10~15時(最終受付14時20分)
・営業期間 :12月上中旬~翌5月下旬(予定)
・定休日 :味覚狩り期間中月曜、ほか不定休あり(7~11月は休業)
・駐車場 :有り(50台)、無料
・その他 :受入人数に制限有り
・URL :http://kitakamistrawberrygarden.jp/index.html
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今回は、「岩手の食材 - そこそこ美味しい物ばかり」の第2弾として、次の果物の情報を紹介しましたが、如何でしたか ?
- すいか
- なし
- いちご
今回は、前回と合わせて、岩手県で栽培されている果物を紹介しましたが、当然、本ブログで紹介した以外の果物も栽培しています。
ぶどう、メロン、柿、栗、キウイ、すもも、後は珍しい果物として、山葡萄などもあります。
山葡萄は、県北となる久慈市などで盛んに栽培され、その多くはジャム、ジュース、そしてワインなどに加工されています。
特に、岩手県では、駅前デパート等のお土産品コーナーでは「やまぶどうジュース」が数多く売られているのを目にします。
ポリフェノールや鉄分が豊富と言われていますが・・・結構、酸味が強いので、私は苦手ですね。
前回の「りんご」の章で、盛岡市が、「りんご」購入量日本一である事を紹介しましたが、岩手県自体も、果物の消費量が日本一になっています。
これは、やはり「りんご」の消費量が影響しており、「りんご」の消費量が多い県が、必然的に、果物の消費量が多くなっており、「りんご」の消費量が多い県と少ない県とでは、その差は3倍にもなるそうです。
まさに「地産地消」の典型例で、非常に良い事だと思います。
実は、私も「りんご」大好き人間で、1年中「りんご」を毎日食べています。
今は、「りんご」のオフシーズンなので、価格も高く1個200円もするのですが、そんな事は気にもせず毎日食べています。
「りんご」は、「1日にリンゴ1個で医者いらず」と言われる様に、次のような栄養成分を含んでいます。
・ペクチン :消化を促進させ、胃酸のバランスを整える。アレルギー性疾患の予防にも有効。
・カテキン :抗酸化作用があり、高血圧やがん予防、老化抑制。
・ケルセチン :動脈硬化やがん予防に有効。
また、従来「リンゴ」は、皮をむいて食べるのが一般的でしたが、現在では、皮付近には、果肉以上に食物繊維やビタミンCなどの栄養素が詰まっていることが解かって来ましたので、「皮付き」で食べる事を推奨しています。
その昔は、「りんご」の栽培には、大量の農薬やワックスを使うので、皮は食べちゃダメ! なるべく皮を厚めにむいて食べる事を勧めていました。
事実、昔の「りんご」は、手で触るとワックスでテカテカして、「りんご」を触った後は、石鹸で手を洗わないと、いつまでもテカテカで大変だったのを覚えています。
しかし、現在では、ほとんどワックスは使っていないようです。
また、元々、「りんご」の表面には、「りんご」自身が出す「ろう物質」と呼ばれるものが付いています。
この「ろう物質」とは、天然ワックスとも呼ばれるパラフィンやアルコール、飽和脂肪酸からできている物質なので、身体には何の悪影響も無いそうです。
しかし、これは、あくまでも「国産りんご」だけの話で、外国産の「りんご」には、今でも艶を出すためにワックスを塗っているので要注意だそうです。
また、国産に関しても、今でも「りんご」に人工的にワックスを塗っているケースも若干残っているそうですが、これも、昔と比べると大分無害になっているので、神経質になって洗い流す必要も無いとの事です。
人口ワックスの成分は天然多糖類、タンパク質、動植物性油脂を混ぜて作られている場合が多いので、気になる人でも、軽く洗い流すだけで大丈夫なのだそうです。
「りんご」以外でも、「みかん」等の柑橘類にも、「シェラック樹皮」と言う天然物質を主成分にしたワックスを塗っているそうです。
しかし、「シェラック」は、ガムベースや光沢剤として、チューインガムやチョコレートなどに使われているので、こちらも食べても問題ありません。
つまり、国産の果物であれば、皮ごと食べても大丈夫とのことです。
私も、今では「りんご」を皮ごと食べています。皆さんも、是非「医者いらず」の「りんご」、特に岩手県産の「りんご」を食べてみて下さい。
それでは次回も宜しくお願いします。
以上
【 画像・情報提供先 】
・Wikipedia(http://ja.wikipedia.org/)
・いわて食材倶楽部(https://www.iwate-syokuzaiclub.com/)
・果物ナビ(https://www.kudamononavi.com/)
・国文学研究資料館(https://www.nijl.ac.jp/pages/cijproject/)
・ウィクショナリー(https://ja.wiktionary.org/wiki/)
・食生活研究所 -食☆ラボ-(https://syoku-life-labo.com/)
IT業界を震撼させたメルトダウンとスペクター ~ OSは信頼出来るのか ?(その1)
米国時間2018年1月3日、Intel製プロセッサに 深刻な脆弱性が発見されたとするとする報道がありました。
この脆弱性は、大きく「Meltdown(メルトダウン)」と「Spector(スペクター)と言う」2種類の脆弱性になります。
どちらも、プロセッサの根幹を成す処理の脆弱性のため、IT業界のみならず、全世界でニュース配信されました。気が付きましたか ?
そして、この報道を受け、Intel社は、急遽、次のようなプレスを発表したのですが、これが、また酷い内容で・・・
『 これらのシステム上の弱点(exploits)を「バグ」、「欠陥」と呼び、Intelプロダクト固有の問題だとする現在のメディアの報道は正しくない。
現在までの調査の結果が、多種類のコンピューティング・デバイス、つまり多数のベンダーが製造するプロセッサや複数のOSに共通してこの弱点が存在することが明らかになっている。 』
つまり、Intel社としては、『 この問題は、Intelだけの問題じゃない!! 』と言いたかったのだと思いますが、余計にヒンシュクを買う結果になってしまったそうです。
これら一連の報道を受け、多くの人は、「また、コンピューターの脆弱性が発見されたのか~ 早く治して欲しいな~」位の感じしか抱かなかったと思います。
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しかし、私は、このニュースを見た時、正直、『 あ~、この世は終わった!! 』と思いました。
少しでもコンピューターやCPUに関する知識があれば、これまでに何度も伝えられた「脆弱性」と、今回の「CPUの脆弱性」とは、全く次元が異なるものだと言う事が、直ぐに分かると思います。
まず、大きな違いとしては、これまでの脆弱性は「ソフトウェア」対する脆弱性であって、今回の脆弱性は「ハードウェア」に対する脆弱性である点が挙げられます。
そして、今回の「脆弱性」の原因が「CPU」に対する脆弱性と言う点が非常に重要です。
「CPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)」に関しては、以降の章で詳しく説明しますが、コンピューターの心臓とも頭脳とも呼ばれるハードウェアです。
つまり、この「CPU」に脆弱性があると言う事は、悪意のある犯罪者集団が、この脆弱性を利用するマルウェアを開発し、コンピューターから機密情報を盗み出す事が出来てしまう事を意味します。
そして、現在、世界に流通しているCPUのほとんどは、Intel、AMD、そしてARMと言う3社のメーカー製品となっており、今回の脆弱性は、この3社の製品に共通して存在しています。
このため、この脆弱性を攻撃するマルウェアを作成すれば、全世界のコンピューターの、ほぼ全てから機密情報を盗み出す事が可能となります。
以上の事が理由で、私が「あ~終わった」と思った事は理解して頂けたかと思います。
しかし、幸いにも、事件が発生してから1年以上経過しますが、まだ世界は安泰なようです。
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とは言いつつ、まだ安心は出来ません。何故なら、1年以上経過した現在でも、CPU供給メーカーが、脆弱性を修正出来ていないからです。
本当に、「何やってんだ!!」となるのですが、脆弱性が見つかった箇所の処理が、CPUの高速化処理の根幹を成す場所なので、そう簡単に修正できないと言う事情もあるようです。
ところが、この脆弱性、実は、今に始まった事ではなく、何と!! 20年以上前から解っていたと言う事実も明らかになっています。
つまり、CPUメーカーは、設計ミスがある事が解っていながら、その事実には目をつぶり、20年以上も利用者を欺いていた事になります。
私は、この事実を知った時、アメリカ政府を始め、各国政府は、どうしてCPUメーカーを犯罪者として処罰しないのかと不思議に思っていました。
今では、世界中の政府や軍隊が、コンピューターを利用しています。そのコンピューターに脆弱性がある事が解っているならば、早急に対応するのがメーカーとしての最低限の義務ではないかと思います。
そこで、本ブログでは、今回見つかったと言うか、その昔からCPUに存在していた脆弱性に関して、紹介内容を2回分けて次の情報を紹介します。
【 1回目 】
- コンピューターの仕組み
- CPUとは
【 2回目 】
初回は、主に、コンピューターの仕組みを説明する内容になってしまいますが、まずは、コンピューターが、どのような仕組みで動いているのかを理解しないと、今回発見された脆弱性が、どんなに危ないのかを理解出来ないと思います。
若干、小難しい話になってしまいますが、最後までお付き合い下さい。
それでは今回も宜しくお願いします。
■コンピューターの仕組み
今回問題となったCPUの高速化処理に伴う脆弱性である「Meltdown(メルトダウン)」、および「Spector(スペクター)」の問題を取り上げる前に、まずは、コンピューターが、どのような仕組みでプログラムを動かしているのかを簡単に説明します。
下方に掲載した図が、私が数十年前、会社に入社した当時に学んだ「コンピューターがプログラムを動かす仕組み」です。
まあ、私が学んだのは、「IBM/S370」全盛時代、俗に言うメインフレームと呼ばれるコンピューターの仕組みでした。
当時は、コンピューターと言えば、左図のような巨大なハードウェアを備えた「メインフレーム・コンピューター」を意味していました。
当然、「パーソナル・コンピューター」、つまりPCも存在していたのですが、こちらは希少品種というか、マニア、今で言う「オタク」の人しか持っていませんでした。
今では、結構、高性能なPCでも5万円程度で購入する事ができますが、、当時のPCは、性能は、現在よりかなり低かったのですが、それでも1台100万円近くの値段がしましたので、本当に「オタク」の人しか購入できませんでした。
その後、1980年代になると、NECが「PC-9800」、俗に言う「PC98」の発売を開始し、日本の社会に、ようやくPCが流通し始める事になりますが・・・
この「PC98」は、日本で大ヒットしたPCと言われていますが、それでも、フル装備にすると40万円近くの費用が掛かる贅沢品でした。
当時の40万円ですから、現在以上の価値があったと思います。やはり、余程の「オタク」じゃないと購入出来ない代物です。
そして、1995年になると、今では、もう伝説レベルの話になってしまいますが、Microsoft社が「Windows 95」を発売した事で、一気に、PCは一般家庭にも広がり始めます。
私も、この頃、初めて、今では「HP(ヒューレットパッカード)」に買収されてしまい会社は存在しませんが、「COMPAQ(コンパック)」社製のPCを購入したのを覚えています。
当時も、モニタと装置は分離しているのが普通だったのですが、COMPAQは、モニタ一体型PCを発売し、「PC98」の牙城を崩し始めていました。
私は、NEC製のメインフレームが大嫌いでしたので、COMPAQ製のモニタ一体型PCを購入しました。
PCの価格も、だいぶ低価格にはなってきていましたが、10万円以上したような記憶があります。
その頃は、ようやくインターネットも電話回線で使えるようになってきましたので、このインターネットの普及もPCの流通拡大に、一役買っていたのだと思います。
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さて、そんな時代でしたが、私が覚えた「コンピューターの仕組み」は、次のような感じでした。
(1)コンピューターには、「OS(Operating System)」と呼ばれるソフトウェアが組み込まれている。
(2)この「OS」がインストールされていないと、PCは「単なる邪魔で重たい箱」でしかない。
(3)PCの電源を入れると、最初に「OS」が稼働し、さらに「OS」内の「基本ソフトウェア」が処理を開始する。
(4)また、「基本ソフトウェア」の中でも、「カーネル(スーパーバイザー)」と言うソフトウェアが起動し、PC内の複数の処理(タスク)が処理を開始する事で、PCを使う事が出来るようになる。
(5)PCにインストールしている、「Word」や「Excel」等の「応用ソフトウェア」、俗に言う「アプリケーション(Application)」を起動すると、基本ソフトウェアの「タスク管理」が、「CPU(中央演算処理装置:Central Processing Unit)」に制御を渡し、プログラムを実行させる。
(6)CPUは、ファイルに格納されているプログラム情報を読み取り、PC内の「実メモリー(実記憶域)」にローディングする。
(7)ちなみに、メインフレームでは、JCL(Job Control Language)をJES(Job Entry Subsystem)が読み取って必要リソースの獲得/割振りを行った後、実記憶域にプログラムをローディングする事になる。
(8)ローディングされたプログラムは、実記憶域でプログラムに書かれた命令を逐次実行して行くことになるが、実記憶域の大きさには制限があるので、一度に沢山の命令を実行する事は不可能となっている。
(9)このため、OSでは、「仮想記憶域(Virtual Memory)」を多数作成し、ローディングしたアプリケーションの大部分を、この仮想記憶域で管理する事になる。
(10)CPUは、仮想記憶域にあるプログラムを、必要に応じて、ページ単位に実記憶域に配置(スワップ・イン)して、命令を実行して行く。(ページング処理)
(11)処理が終了した命令は、再び仮想記憶域に戻される事になる。(スワップ・アウト)
(12)プログラムが終了するまで、CPUは、スワップ・インとスワップ・アウトを繰り返しながら命令を実行して行く。
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と、まあ、大体、コンピューターの処理の仕方を、大雑把に説明すると、こんな感じになりますが、しかし、実際の処理の仕方は、こんなに単純ではなく、メチャクチャ複雑です。
元々、私が、その昔に使用していた「メインフレーム」と言う汎用大型コンピューターは、現在の、ような「マイクロプロセッサ」が誕生する前に生まれた言葉です。
当時のコンピューターには、複数の「プロセッサ」が搭載され、かつ、これら「プロセッサ」が使用する多くの周辺機器がフレーム構造の枠の中に格納されていました。
そして、それら多くのフレームの内、CPUを格納する枠(フレーム)を、他の枠と区別して呼ぶために、「メインフレーム」と呼ぶようになったとされています。
それでは、次にコンピューターの心臓部とも言える「CPU」について、こちらも簡単に紹介します。
■CPUとは
前章ではメインフレームにおけるOSの処理の仕方を説明したのですが、PCの世界でも、大体の流れは同じだと思っています。
そして、数あるOSの処理の中でも、重要な役目を果たすのが、「CPU」と言うハードウェアです。まあ、その他も全て重要ではありますが・・・
「CPU」とは何 ? と思う人も多いと思いますが、別名「チップ」、あるいは「MPU(Micro Processing Unit)」とも呼ばれるハードウェアです。
この「チップ」の中には、各種演算処理や転送処理等を行うための大量の電子部品が組み込まれています。
そして、これら電子部品を繋ぐ回路(回線)も大量に組み込まれており、これら大量の回路を積み重ねて格納する事から「集積回路(IC:Integrated Circuit)」とも呼ばれています。
そして、さらに、これら大量の集積回路を集めたものを大規模集積回路(LSI:Large Scale Intelligence )と呼び、回路の線幅を細くする事で電子部品の集積率を向上させる事で処理能力を向上させて来ました。
他方、現在のCPUの主流は、記憶域にプログラムをローディングしてから命令を実行する「プログラム内蔵方式」と言う仕組みを採用しています。
この方式は、別名「ストアド・プログラム(Stored Program)方式」)とも呼ばれますが、この方式を最初に考案したのが、オーストリア出身の「ジョン・フォン・ノイマン(John von Neumann)」と言う人物です。
このため、この方式のコンピューターを「ノイマン型コンピューター」と呼び、さらに、彼を「コンピューターの父」と呼んで称えていますが・・・
彼は、俗に言う「マッド・サイエンティスト」系の学者とも言われております。
彼は、上記の様に、コンピューターの原理を考案した優秀な科学者でもあり、さらに、アメリカの核開発計画「マンハッタン計画」にも関わり、広島に投下された原爆「ファットマン」の開発でも重要な役割を果たしています。
そして、原爆の投下地点を決める際、「京都は、日本国民にとって深い文化的意義をもっている場所だから、京都に原爆を投下して殲滅すべきである。」と進言したとして、「マッド・サイエンティスト」の称号を得たとされています。
この件は、次の過去ブログでも紹介しています。
・岩手の先達 ~ 地味な岩手にも有名人 Vol.1(blog/20151219.html)
・AI(Artificial Intelligence) - その恐怖と現実 その2(20190209.html)
この事実は、コンピューターに関わる日本人としては、ちょっと残念に感じる部分でもありますが、「ジョン・フォン・ノイマン」が優秀だった事実は変わりありません。
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これまでは、Microsoft社のWindows PCには、米Intel社のCPUが、ほぼ全てのPCに採用されてきました。
このため、Microsoft社とIntel社との関係は、「Win-tel」と呼ばれる程、密接な関係を築いて来ました。
皆さんも、TVで「インテル入ってる」と言うコマーシャルを見たり、聞いたりしたことがあると思います。
Intel社製の最新のCPUは、第9世代Coreプロセッサのフラッグシップモデル「Core i9」だと思います。
しかし、「Win-tel」と呼ばれ、「Microsoft社のWindows PCには、必ずIntel製CPUが搭載される。」という蜜月関係も、近頃では終わりを迎えつつある、と言うのがもっぱらの噂です。
近頃では、AMD社(Advanced Micro Devices)の「Ryzen」もシェアを伸ばしています。
特に、2019年7月に発売を開始した「Ryzen 9 3900X」の性能は、上記Intel社製「core i9」の性能を、大幅に凌駕しているとされています。
この新型プロセッサは、Zen 2アーキテクチャを採用した7nm世代の新型CPUで、AMD社の第3世代CPUと言われています。
元々、CPU業界では、Intel社が圧倒的な支配力を示し、前述の通り、Microsoft社と密接な関係を築くことでシェアを大幅に伸ばしてきました。
ところが、半導体チップの線幅を「10ナノメートル」する計画が大幅に遅れてしまった事で、ライバルであるAMD社や台湾TSMC社に出遅れてしまったそうです。
加えて、最近では、易摩擦の影響をモロに受けてしまい、中国のデータセンター向けのチップの生産が激減し、新規設備投資もままならない状況に陥ってしまっています。
現在の半導体チップの線幅は「7nm(ナノメートル)」が主流になりつつあり、前述の「Ryzen」等も「7nm」で設計された最新チップですが、この「7nm」チップのリリースにも遅れ、現在では、AMD社の後塵を拝す状況になってしまったそうです。
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さて、肝心の「CPU」ですが、前述の様に、命令が書かれたプログラムをメモリーにローディングし、この命令を、1個ずつ順番に実行することで、様々な処理をこなして行きます。
今回、単純な例として、次のような処理を行う「プログラムA」を作成して、コンピューターで処理を行わせます。
『 今年の売上げと去年の売上げを比較し、前年比を算出し、売り上げが低下したら赤字にする。 』
この場合、プログラムは、次の様な命令を順番に実行して行きます。
(1)処理を開始する。
(2)去年の売上げを獲得する。
(3)今年の売上げを獲得する。
(4)今年の売上げを去年の売上げで割って前年比を算出する。
(5)前年比はプラスか ?
・前年比プラスなら黒字にする。
・前年比プラスじゃないなら赤字にする。
(6)処理を終了する。
まあ、本当は、数値を獲得するために、ファイルを読み込んだり、数値が格納されている場所を参照したりする命令が必要なのですが、今回は、それらの命令は割愛します。
「CPU」における処理は、通常、このように上から順番に、プログラムに書かれた命令を実行して行く事になります。
しかし、実際の業務処理は、こんなに単純な処理ではありません。もっと複雑な処理を大量に実行する必要があります。
私が、作成していたプログラムは、企業の業務処理を自動的に実行させるシステムだったのですが、1個のプログラムで、5,000個程度の命令が記述されたプログラムが数百個もありました。
左の画像は、私が使っていたIBM互換のアセンブラ言語です。1行が1個の命令になります。
例えば、上から10行目くらいに「MVC」と言う英語がありますが、次の意味を持っています。
【 命令「MVC」 : Move Character(文字列を移動せよ) 】
MVC USRGPR+00(12),20(1)
→ 意味:レジスター1が指している場所(アドレス)から20バイト目の場所にある12バイトの内容を、USRGPRと言う名前の場所(アドレス)に移動しろ。
「CPU」は、このような複雑で、大量の命令が書かれているプログラムを瞬時に実行しなくてはいけません。(※レジスター:数値やアドレスを格納する器。非常に高速で処理する事が可能)
私が作ったシステムを使っていた「某電話会社」様では、夜間バッチと言う業務で、一晩(8時間程度)の間に、10,000個以上もの業務を実行していました。
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その昔の「CPU」には、プログラムに書かれた命令を、自動で、かつ正しく実行する事だけが求められていました。
もちろん、処理速度も、人間より早く行う事も求められていましたが、あくまでも「人間が行うより速く」が基準でした。
ところが、現在の「CPU」は、自動で、かつ正しく処理を実行するだけでなく、「速く」処理を行う事も求められており、そのために「スーパー・コンピューター」が作られるようになってきています。
「スーパー・コンピューター」は、「CPU」、つまりPCを大量に並列稼働させる事で、処理速度を大幅に向上させてきましたが、それにも限界があります。
CPUの性能を向上させ、かつCPUを大量に並列稼働させる事で、スーパー・コンピューター「京(けい)」を作ったのですが、この「京」とは、1秒間に「1京回」の計算(浮動小数点演算)が出来る性能を持つことから命名されたコンピューターです。(1京回:10,000,000,000,000,000回)
しかし、上の画像が「京」の設置状況ですが、見て分かる通り、膨大な場所が必要になります。
また、コンピューターや周辺機器は、大量の熱を放出しますので、大規模な空調設備を設置しなければなりません。
このため、「京」のように、大量のPCを並列稼働させるためには、大規模な空間と空調設備も必要になります。
確かに、PCを無制限に並列稼働させれば、それだけ処理速度も上げる事は可能ですが、上記のような制限があるので、どこまでも無制限にPCを並列稼働させる訳にも行きません。
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そこで、現在は、従来からの考え方に加え、量子力学の考え方を加えた、新しい設計思想で構築するコンピューターである「量子コンピューター」が実現されつつあります。
従来のコンピューターは、2進数でしか物事を考えられなかったのですが、この「量子コンピューター」においては、その2進数の考え方を垂直方向に重ね合わせた考え方が出来るのが特徴です。
従来のコンピューターでは、処理を、「1」、あるいは「0」と言う、半導体の1ビットで管理できる2進数でしか管理する事が出来ませんでした。
しかし、これが「量子コンピューター」になると、「量子ビット」と言う半導体1ビットの情報を、垂直方向に重ね合わせた様な「量子ビット」で管理するので、「2進数n倍」で管理する事が可能になります。
つまり、 量子コンピューターは、『 1回の処理で、2n乗回の処理を行う事が可能になる。 』コンピューターなのです。
例えば、「50量子ビット」の性能を持つ量子コンピューターがあった場合、「250乗 = 1125兆8999億684万2624」回分の処理を1度に行う事が可能になる、と言う仕組みです。
この簡単な例を見ただけで、量子コンピューターの処理速度が、どんなに凄まじいか解かると思います。
ところで、現在、実際に稼働している量子コンピューターが存在するのか ? と言う事ですが、現在、商用運用している量子コンピューターは、下記2機種だけだと思われます。
項番 |
企業 |
製品名 |
量子数 |
発売日 |
方式 |
1 |
D-Wave Systems |
D-Wave Two |
28 |
2019年1月 |
量子焼きなまし方式 |
2 |
Qシステムワン |
20 |
2007年7月 |
ゲート方式 |
さらにIBM社では、2020~2022年頃を目途に、現在のスーパー・コンピューターの処理能力を超える、「50量子ビット」性能を持つ「量子コンピューター」の実用化を目指していると伝えられています。
もう、こうなると、私の様に、「レガシー」とか「恐竜」とか言われているメインフレームの知識しかない人間には、ついていけない世界になってしまいます。
今後の量子コンピューターへの取り組みは、楽しみでもあり、悲しくもあります。
■最後に
今回は、「IT業界を震撼させたメルトダウンとスペクター ~ OSは信頼出来るのか ?(その1)」と題して、2018年1月に世間を騒がせたCPUの脆弱性「Meltdown」と「Spector」に関して、次のような情報を提供しましたが、如何でしたか ?
- コンピューターの仕組み
- CPUとは
今回は、脆弱性の紹介と言うよりは、その前段階、コンピューターの歴史と仕組みを紹介する内容になってしまいました。
結構、専門的な内容だったので、コンピューターに詳しくない人には、分かり難い内容だったかもしれません。
現在、「GAFA」と呼ばれる巨大IT企業が、世界のITデータを独占している事ばかり取り沙汰されていますが、コンピューターに搭載されるプロセッサも、次の3社に独占されている点も問題にされるべき事柄だと思います。
・AMD
・ARM
※GAFA:Google、Apple、Facebook、Amazon
IntelとAMDで、PCに搭載されているCPUのほぼ90%以上、ARMは、スマートフォンに搭載されているCPUに関しては、やはり90%以上のシェアを占めています。
そして、これらのCPUのほほ全てで、今回紹介する予定の脆弱性を抱えています。
つまり、CPUメーカーの寡占状態が続くことで、CPUの価格も高止まりし、かつ全てのCPUにおいて同じ脆弱性の危機を抱えている状況になっています。
なおかつ、データセンター自体もGAFAによって寡占化が進んでいる状況ですので、IT業界は、今後、何らかの対策を取る必要があると考えられています。
とは言え、ここまでCPUとデータセンターの寡占化が進むと、今さら過去に状況に戻る事も不可能です。
今から、新しい設計思想を持つCPUを作るとなると、時間も金も掛かる大変な作業になります。
「CPUとは」の章で、これまでとは全く異なる思想で設計された「量子コンピューター」を紹介しました。
実際、既に実用化されてはいますが、これを市販のPCに搭載するとなると話は全く異なります。
現状では、量子コンピューターに搭載するプロセッサの小型化は出来ているようですが、汎用化までは至っておりません。
特に、この新型プロセッサは、「絶対零度(-273℃)」にまで冷却して、内部に電気的が行らなくなる「超電導」状態にする必要があります。
ノートPC内部を「絶対零度」にする事など、今の技術では不可能だと思います。
但し、この点に関しては、日本の「革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)」が、2017年、室温でも稼働できる量子コンピューター「量子ニューラルネットワーク(QNN)」を開発して一般公開しています。
量子コンピューターには、現在、次の3種類の方式があり、それぞれ様々なメーカーや大学が、他分野での実用化に向けて取り組みを進めています。
|
ゲート型 |
アニール型 |
ネットワーク型 |
基本原理 |
線形干渉形 |
量子トンネリング |
非線形発振器 |
主要開発元 |
D-WAVE/MIT |
NTT/Stanford |
|
ビット数(現状) |
20ビット |
2,000ビット |
2,000ビット |
ビット数(将来) |
50~100ビット |
8,000ビット |
100,000ビット |
回答可能問題サイズ(2N) |
- |
N < 70程度 |
N < 2,000 |
動作温度(ケルビン:K) |
極低温(10mK) |
極低温(10mK) |
室温(300K) |
条件 |
超高真空 |
超高真空 |
常圧 |
物理系 |
超電導量子回路 |
超電導量子回路 |
光パラメトリック発振器 ネットワーク |
消費電力 |
- |
25kw |
1kw |
まあ、こんな比較表を作っても、私のような素人、特に文系の素人には、さっぱり理解できません。
他方、現在、通信ネットワークも加速度的に進化しており「5G」と呼ばれる次世代高速通信規格も実用化されつつあります。
この「5G」規格では、現在使われている「4G」規格と比べ、「高速」、「大容量」、「低遅延」、および「同時多接続」と言うメリットがある事が明らかかになっています。
そうなると、この「5G」と「量子コンピューター」を組み合わせると、PC本体に「CPU」を保持する必要はなくなります。
PCと量子コンピューターを5Gで接続し、PCから要求された処理を、サーバー側に設置した量子コンピューターで処理し、その処理結果を高速でPCに返す事が可能になります。
今後は、これら「量子コンピューター」の汎用化と「5G」通信網の広がりで、新しいIT化が進んで行く事になると推測されます。
それでは次回も宜しくお願いします。
以上
【 画像・情報提供先 】
・Wikipedia(http://ja.wikipedia.org/)
・「メインフレーム・コンピューター」で遊ぼう(http://www.arteceed.net/)
・富士通「コラム・セキュリティ記事」(https://www.fujitsu.com/jp/solutions/business-technology/security/secure/column/)
・トレンドマイクロ「脆弱性」(https://blog.trendmicro.co.jp/archives/16735)
岩手の食材 - そこそこ美味しい物ばかり 果物(その1)
先日、盛岡に出張した際、古くからの友人と連れ立って、「さくらんぼ狩り」に言って来ました。
これまで、「さくらんぼ狩り」には行った事がなかったので、どんな感じなのか楽しみでしたが・・・これが結構面白かったです。
「さくらんぼ」と言えば、「佐藤錦」と言う品種しか知らなかったのですが、それ以外にも、結構沢山の品種がありました。
そして、「さくらんぼの木」を見て、私が、まだ小学生低学年の頃、裏山に「さくらんぼの木」が沢山あった事を想い出しました。
その時は、近所の悪ガキ達と「さくらんぼの木」に登り、『 これは俺の木 !! 』とか、トンデモナイ事を言って、勝手に人のさくらんぼを食べていました。
今考えると、これって窃盗ですよね ? 農家の方、済みませんでした。
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今、当時、昭和40年代の事を思い出すと、家の周りには、沢山の果物が溢れていました。
りんご、梨、ぶどう、柿、もも、すいか、栗、くるみ、さくらんぼ・・・さすがに熱帯地方じゃないので、バナナはありませんでしたが、そこら中に果物畑がありました。
私の家にさえ、今では、もう何も残っていませんが、当時は、ぶどうや栗、そして柿がありました。私の友達など、庭で遊んでいると、勝手にぶどうを食べていました。
私の実家周辺は、そんな豊かな環境だったのですが・・・現在では、見事に、本当に見事にと言わざるを得ないのですが、沢山あった果物畑は、全く、何も残っていません。
昭和50年代頃は、人口も増え、また農家の高齢化の影響で、沢山あった果物畑は、全て宅地になってしまいました。
私が遊んだ裏山の「さくらんぼ畑」などは、あろう事か!! 岩手県知事の公舎になってしまいました。残念で仕方ありません。
ちなみに、現在の知事は、この知事公舎には住んでいないようです。全く・・・何ための公舎なのか ? 利用しないなら維持費が無駄なので解体した方が良いのではと思ってしまいます。
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と、話が脇道に逸れそうになったのですが、今回は、岩手県の食材、その中でも「果物」を紹介しようと思います。
岩手の果物と言えば、「りんご」を思い浮かべますが・・収穫量1位の青森県が約42万トンなのですが、岩手県は、第4位で約4万トン・・・全く、足元にも及びません。
何か、全てに渡って、果物は中途半端な感じがしますが、そんな果物に関して、2回に分けて次の果物を紹介します。
【 第1回 】
- さんくらんぼ
- りんご
- ブルーベリー
【 第2回 】
- すいか
- なし
- いちご
また、これらの情報と合わせて、果物狩りが出来る場所の情報も紹介したいと思います。
それでは今回も宜しくお願いします。
■さくらんぼ
「さくらんぼ」は、別名「桜桃(おうとう)」とも呼ばれており、木を「桜桃」、実を「さくらんぼ」と呼び分けるケースもあるそうですが、実は、「バラ科」の植物です。
「さくらんぼ」は、「桜の実」、つまり「実桜(みざくら)」の果実の事で、「桜の実」を意味する「桜の坊」の「の」の呼び方が変化して「さくらんぼ」になったとされているようです。
そして、皆さんが「花見」で楽しむ「桜(ソメイヨシノ等)」にも「実」が出来る事はご存知ですか ?
こちらの観賞用の桜の実は大きくならないので食用には不向きですが、桜桃の果実の方は、一般的には丸みを帯びた赤い実となりますが、その品種により白っぽい物や赤黒い物もあるそうです。
桜桃には、大きく、東洋系とヨーロッパ系の2つの系統があり、日本で生産される「さくらんぼ」の大半はヨーロッパ系となっているそうです。
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ここで、「さくらんぼ」の歴史を簡単に紹介します。
先に、「さくらんぼ」には、東洋系とヨーロッパ系があると紹介しましたが、東洋系に関しては、既にお解りの通り、中国が原産です。
これは、北京がある華北、上海がある華中を中心に自生していた「カラミザクラ(唐実桜)」という種になります。
別名、「シナミザクラ(支那実桜)」、あるいは食用にする事から「含桃」とも呼ばれています。
後漢の時代(25~220年)に編纂されたと言われている「礼記(らいき)」には、天子が祭祀の際に「含桃」を備えたと言う記述が見られるそうです。
日本には、江戸時代に、当時の「清」から伝えられ、現在でも、西日本地域では、木材として利用するために栽培されているそうですが、金沢の「兼六園」でも、数多くの「カラミザクラ」が見られるそうです。
日本では、「さくらんぼ」の事を「桜桃(おうとう)」と呼びますが、この呼び方は、中国から伝わった際の呼び名に由来しています。
他方、ヨーロッパ系には、次の2つの品種があり、有史以前、つまり文字が成立する以前から「さくらんぼ」が食べられていたと考えられています。
・「セイヨウミザクラ(西洋実桜)」 :イラン北部、ヨーロッパ西部にかけて自生
・「スミミザクラ(酸実実桜)」 :トルコ周辺に自生
これら生息地に関する情報は、古代ローマ帝国時代(前27年~480年)の学者「プリニウス」の著書に根拠があるとされています。
それによると、古代ローマの執政官「ルクッルス」が、黒海沿岸の「ケラソス(Kerasos)」で「さくらんぼ」の木を見つけて、ローマに持ち帰ったと伝わっているそうです。
この2種類の「さくらんぼ」は、黒海沿岸からヨーロッパ諸国、特に、イギリス、フランス、およびドイツに普及したとされています。
「さくらんぼ」は、英語で「Cherry(チェリー)」ですが、当初は、ノルマン人により「Cherise(シェリーズ)」と呼ばれていたのが、イングランドに渡り、英語の「Chery(シェリー)」になり、そして、最終的に「Cherry(チェリー)」になったとされています。
「さくらんぼ」は、その後、16世紀頃から本格的な栽培が始まり、17世紀になってアメリカ大陸に伝えられたことになっています。
ちなみに、「さくらんぼ」が属する「サクラ属」の学名「Cerasus」は、「Kerasos(ケラソス)」のラテン語表記となっています。
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さて、このような興味深い歴史を持つ「さくらんぼ」ですが、品種としては、現在、1,000種類以上とも言われるほど、数多くの品種が存在するそうです。
岩手県で生産されている「さくらんぼ」は、主に、次の様な品種になっているそうです。
項番 |
品種 |
説明 |
1 |
||
2 |
紅てまり |
|
3 |
紅ゆたか |
「ビック」に「C-21-7(ビング×黄玉)」を交配。大玉で酸味が少なく甘い。 |
4 |
紅きらり |
「レーニア」と「コンパクトステラ」を交配。大きさ9gと大きく着色は鮮やか。 |
5 |
紅秀峰 |
「佐藤錦」と「天香錦」の交雑種。果実は大きく糖度高く豊産性で非常に優秀な品種。 |
6 |
国内で最も多く生産されている品種。ナポレオンと黄玉を交配。別名「赤いルビー」。 |
|
7 |
香夏錦 |
|
8 |
八興錦 |
「佐藤錦」に「ジャボレー」を交配。心臓形。果汁が多く甘みは中で酸味は少ない。 |
9 |
最上錦 |
「高社錦」の選抜系品種。 |
10 |
月山錦 |
月山錦は中国大連で育成され、日本に持ち込まれた黄色いさくらんぼの品種。 |
11 |
「ナポレオン」交雑種。ナポレオンよりも一回り大きく、ハート形を縦にした形。 |
|
12 |
アメリカ原産。収穫時期は6月中旬。元名はロックポートピカロー。別名「伊達錦」 |
|
13 |
ナポレオン |
ヨーロッパ各国で栽培されている品種。ベルギー王が命名。収穫時期は6月下旬。 |
当然、これ以外の品種もあるようですが、多くの農園で、これらの品種を取り扱っているようです。
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それでは、最後に、「さくらんぼ狩り」の出来る果樹園を紹介します。
●田屋果樹園
この果樹園は、私が「さくらんぼ狩り」に行った果樹園です。。
場所は、盛岡市手代森と言う場所で、盛岡市中心部から遠野市に向かう、国道396号線、旧釜石街道から、少し山側に逸れた山中にあります。
国道沿いには、直売店があるのですが、「さくらんぼ狩り」をする場所は、そこから1Km程離れた場所にあるので、ちょっと分かり難いかもしれません。
果樹園内には、りんごの木、桃の木、梨の木等が栽培されていますが、「さくらんぼ狩り」を行う場所は、上図の画像の様に、ハウス状になっているので、雨の日でも「さくらんぼ狩り」が楽しめる様になっています。
この果樹園、通常は日曜日が休みなのですが、「さくらんぼ狩り」の期間中は無休で、朝9時から開園しています。
駐車場もあるのですが、20台弱位しか停められないので、早めに行った方が良いかもしれません。私は9時30分頃に果樹園に着いたのですが、既に10台以上は停まっており、ギリギリセーフ状態でした。
料金は、大人が、平日40分で1,800円、休日2,000円となっております。
『 40分間で1,800円は、ちょっと高いかな~ 』とも思ったのですが、かなりの量の「さくらんぼ」を食べる事が出来たので、私としては、まあ妥当な金額だと思っています。
スーパー等では、「佐藤錦」が、1パック200gで約430円ですから、これを5パック食べると元を取れる感じですが、実際は、もっと食べれますので、やはり価格的には妥当だと思います。
但し、後で紹介する「いちご狩り」と比べると、練乳やチョコを付けれない分、味が単調になってしまうので、飽きが来るのが早い感じがします。
それでも、この果樹園には、次の様な品種の「さくらんぼ」がありますので、「さくらんぼ」の食べ比べを行う楽しみもあります。→ 佐藤錦、紅さやか、紅秀峰、南陽、高砂、ナポレオン、月山錦、紅てまり
品種としては、前に紹介した通り「紅いルビー」と呼ばれる「佐藤錦」が有名ですが、私としては、「佐藤錦」よりも「高砂」の方が、甘くて柔らかく美味しかったように感じました。
最後に、この果樹園の情報を掲載しておきます。
【 田屋果樹園 】
・電話 :019-696-2742
・営業時間 :9:00~17:00
・定休日 :日曜日(除く:さくらんぼ狩り期間)
・駐車場 :20台
・URL :https://www.ta8kajuen.com/
■りんご
「さくらんぼ」の次は、岩手県で一番メジャーな果物「りんご」を紹介します。
「りんご」も、「さくらんぼ」と同じく「バラ科」の植物です。知ってましたか ?
「さくらんぼ」は、『 バラ科サクラ属 』、「りんご」は、『 バラ科リンゴ属 』で、植物学上は、「セイヨウリンゴ」と呼ぶようです。
そして、「セイヨウリンゴ」がある事から解る通り、「ワリンゴ」も存在します。
日本においては、当然、「ワリンゴ」の方が古いのですが、最初に、日本における「リンゴ」の歴史を紹介します。
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日本において、歴史上、最初に「リンゴ」が登場したのは、平安中期となる「承平年間(931~938年)」に編纂された辞書「和名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)」に、「りんご」の事が、『 利宇古宇(りうこう/りうごう)』として紹介されているのが始めとされています。
その後、この「りうこう」、または「りうごう」が、訛って「りんご」になったと考えられています。
この「和名類聚抄」は、「和名抄」、「倭名抄」、あるいは「倭名鈔」等と言う略称で呼ばれ、現在の各種辞典のベース様式になった辞典と言われているそうです。
そして、日本にあった「ワリンゴ」ですが、現在では、本当にわずかになってしまい、各地の農家や試験場、あるいは皇居などで、細々と栽培されており、食用と言うよりは、仏前への「お供え物」として栽培されているようです。
この「ワリンゴ」、実際には一種類ではなく、栽培場所の名称が付けられたり、あるいは複数の変種名が付けられたりと、様々な名前があることが解りました。
・リンキ/リンキン :青森県津軽地方で栽培される系統。中部地方のワリンゴよりもやや果実が小さい。
・加賀藩在来種 :石川県加賀地方で「加賀リンゴ」の名前で食用栽培されていたもの。
・高坂りんご :長野県北部の飯綱町高坂地区周辺に古くから伝わるワリンゴ。
戦国時代には、浅井長政や最上義光が、「りんご」が送られた事に対する礼 状を
書いている事が判明しており、その書状自体も現存しているそうです。
江戸時代には、葛飾北斎が「りんご」の花を描いたり、天皇が、民衆に「りんご」を下賜したりした事などが記録されています。
当時は、観賞用としても重用されていたようですが、やはり食用として各地に流通していたようです。
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そもそも「りんご」は、元々は、中国から、平安時代に日本に持ち込まれたと考えられており、中国では、新疆ウイグル自治区がある、中国北西部が、最古のりんご生産地とされているようです。
中国明朝時代(1518~1593年)に編纂された薬学書「本草綱目(ほんぞうこうもく)」には、「りんご」に関して、次のように紹介されているようです。
『 林檎一名來禽、言味甘熟則来禽也。 』
これは、日本語にすると、次の通りです。
『 林檎(りんきん)の果は味が甘く能く多くの禽(鳥の意)をその林に来らしむ。故、来禽(らいきん)の別名がある) 』
先に、「ワリンゴ」の種類として「リンキ/リンキン」と言う種類がある事を紹介しましたが、この名称には、このような意味があったようです。
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しかし、江戸時代末になると、日本にも「セイヨウリンゴ」が流入するようになったようです。
国内で、初めて「セイヨウリンゴ」が栽培されたのは、安政元年(1854年)、アメリカからもたらされた「アッフル」が、板橋にあった加賀藩下屋敷で栽培され、翌年に実を付けたので食べられた事が、当時の加賀藩士の記録「御参勤御供中日記」に残っているそうです。
この時には、藩主「前田斉泰(なりやす)」から、餅に塗って食べる様に指示されたと記録されているので、ジャムのようにして食べたと思われています。リンゴジャム ?
また、文久2年(1862年)、越前福井藩主「松平春嶽」が、アメリカ産のリンゴの苗木を入手し、江戸の巣鴨にあった福井藩下屋敷で栽培を始めた記録が、「越前松平試農場史」に残っているそうです。
このような形で、「セイヨウリンゴ」が日本に持ち込まれたと考えられていますが、本格的に「りんご」が栽培され始めたのは明治時代以降です。
明治4年(1871年)、政府の命を受けた北海道開拓使次官「黒田清隆」等が、アメリカから「国光(こっこう)」等の75品種の苗木を持ち帰り、北海道七飯町(旧:七重村)にあった「七重官園」で栽培を開始したのが始まりとされています。
その後、明治7年(1874年)、内務省が、日本全国に苗木を配布した頃から、本格的に「りんご」の栽培拡がったそうです。
このため、日本国内の主な「りんご」の産地は、この「七重村」が、その起源となっているそうです。
また、日本で最初に栽培が始まった「セイヨウリンゴ」の一種「国光」ですが、紆余曲折があったようです。
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「国光」は、前述の通り、アメリカから日本に持ち込んだ品種です。
このため、その名称も、当然英語で、本当の品種名、原名は「Ralls Genet(ラルス・ジュネ)」と言います。
何か、英語らしくない名称ですが・・・その通り、原産地はフランスです。
「Ralls Genet」は、フランス語の呼び方なので、アメリカでは英語風の「Ralls Janet」とか「Rawls Jannet」と呼ばれるようになったそうです。
そもそも「Ralls Genet」は、後に大統領となる「トーマス・ジェファソン(Thomas Jefferson)が、親しかったフランス大使「エドモン=シャルル・ジュネ(Edmund Charles Genet)」から苗木をもらった事からアメリカで栽培が始まった品種です。
「トーマス・ジェファソン」は、もらった苗木をバージニア州アマースト郡のカレブ・ロールズ果樹園に託して、栽培と普及を図ったそうです。
そして、日本に渡った「Ralls Genet」ですが、原名は全く普及せず、栽培地域により、次のように呼ばれていたそうです。
・北海道 :49号
・青森県 :雪の下
・岩手県 :晩成子
・山形県 :キ印
このため、明治27年(1894年)、仙台において「第1回りんご名称選定協議会」が開催されたそうですが、何故か、その結果に不満をもった津軽代表が会から脱退し、さらに独自の会を立ち上げ、名称の統一を妨害したそうです。
きっと、津軽の方々は、意味不明な津軽弁を使っているので、日本語が解らなかったのかもしれません。
その後、明治33年(1900年)、その前年に行われた、後の大正天皇となる皇太子「嘉仁親王」と九条節子とのご成婚の慶事にあやかり「国光」と言う名称に統一されたそうです。
明治時代に日本に持ち込まれた75品種には、「国光」以外、次の様な品種があり、それぞれ日本において有力品種となった物も数多くあったそうです。
→ ジョナサン(紅玉)、スミスズ・サイダー(柳玉)、ベン・ディヴィス(倭錦)
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「国光」は、既に主力商品の座からは降りていますが、日本で広く愛されている「ふじ」の交配親に当たる品種です。
ちなみに、現在、市場に流通している「りんご」の多くは、「サンふじ」と呼ばれていますが、「ふじ」との違いは知っていますか ?
実は、「ふじ」も「サンふじ」も、同じ「ふじ」です。
それでは何が異なるのかと言うと、その栽培方法が異なるだけです。
「サンふじ」の「サン」は、お解りの通り、「太陽(Sun)」を意味しています。
つまり、「サンふじ」は、太陽の光を一杯に浴びる「無袋りんご」と言う栽培方法で育てられ、「ふじ」は、途中から袋を被せた「有袋リンゴ」と言う栽培方法で育てられた「りんご」となります。
それでは、有袋と無袋とでは何が異なるのか、と言う話になりますが、詳細は割愛しますが、無袋の方が、見た目や触感が悪い反面、甘みが増すとの事らしいです。
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現在、「りんご」の品種は、全世界的にみると数千~10,000種類以上の品種があるとされておりますが、農林水産省に登録されている日本の品種は177種類で、その内、品種が維持されている物が85種類とされています。
多くの登録品種は、品種誕生年が古く、現在では、品種が維持出来ないのだそうです。
そこで、岩手県で栽培されている品種ですが、主に、次の様な品種が栽培されているそうです。
項番 |
品種 |
説明 |
1 |
大夢 |
|
2 |
はるか |
ゴールデンデリシャスとスターキングデリシャス交配。平均糖度15度以上と甘みが強くシャキシャキした黄色いリンゴ。糖度や蜜入り指数が高い物は「いわて純情プレミアム冬恋」として販売。 |
3 |
紅いわて |
早生種収穫以降で9月下旬に成熟する品種として開発。平成21年に品種登録。 |
4 |
さんさ |
|
5 |
きおう |
|
6 |
気温差の大きい岩手の気候条件にマッチした品種。デザートや料理用にも最適なリンゴ。 |
|
7 |
ふじ |
岩手の「ふじ」は酸味が少なく甘みが強いのが特徴。「江刺リンゴ」は全国有数のブランド。 |
先に、岩手県では、果物の中では「りんご」の生産が最も盛んと紹介しましたが、全国的に見ると、残念ながら、それほどでもなく、青森県、長野県、山形県に次ぐ4位で、実際の生産量としては、1位の青森県が約46万トンですが、その生産量と比較すると1/10以下となる約4万トンと、かなり少ない生産量となっています。
しかし、そんな中でも、こと「りんご」に関しては、盛岡市が購入金額、および購入数量とも全国一となっているそうです。盛岡市民が、どれだけ「りんご」好きか解ると思います。
さらに、全国的に人気のある「ふじ」ですが、その『原木』は盛岡市で保存されており、日本全国、および全世界に流通している「ふじ」に関しては、この盛岡で保存している『原木』の枝を接ぎ木して増やした木となっています。
また、岩手県では、昭和15年(1940年)からは、戦争の影響で一時中止した時期もあったようですが(1949年から再開)、毎年、皇室に「りんご」を献上しているそうです。
それでは最後に、りんご狩りができる場所を紹介しますが、岩手県では、多くの農家が「りんご」を栽培している関係で、「りんご狩り」が出来る農園も沢山あります。
前章「さくらんぼ」で紹介した「田屋果樹園」でも「リンゴ狩り」を実施していますので、再度、この果樹園を紹介します。。
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●田屋果樹園
この果樹園は、「さくらんぼ」で紹介した」果樹園と同じです。
このため、場所等の情報は、「さくらんぼ」の章をご覧になって下さい。本章では、「りんご狩り」の仕組みだけを紹介します。
田屋果樹園では、毎年9月中下旬~12月下旬まで、「りんご狩り」が行えるようです。
「りんご狩り」を行いたい場合、事前予約制になっていますので、メール(メール・フォーム)、または電話等で問合せて下さい。
そして、「りんご狩り」ですが、40分で800円(3歳以上子供500円)となっているそうです。
こちらの果樹園では、次の「りんご」を栽培しているそうですが、「りんご狩り」では、どの種類の「りんご」が食べれるのかは解りませんでした。 → とき、ふじ、ぐんま名月、シナノゴールド
私は、これまで何度か「果物狩り」に行った事はあるのですが・・・「りんご」の様な大物の果物狩りを行った事がありません。
「サンふじ」は、東京のスーパー等では、シーズン中は1個100円、シーズンオフでも1個200円くらいで販売されています。
800円分食べるととなると、4個~8個程度、その場で食べる事になりますが・・・大人でも、「りんご」を8個も食べるのは至難の技だと思います。
と、こんな事ばかり考えているからダメなのだと思います。私は、常に、「元を取ろう!」と考えてしまうのが悪いクセです。
皆さんは、どうですか ?
■ブルーベリー
「ブルーベリー」も、岩手県では比較的多く栽培されている果物です。
特に、岩手県は寒冷地なので、冷涼な気候に適したハイブッシュ系と呼ばれる品種が、数多く栽培されているとの事です。
「ブルーベリー」は、さすがに「バラ科」ではありません。「ブルーベリー」は、「ツツジ科」に属しています。
元々、「ブルーベリー」は、南米原産とされており、その植物が、カリブ海の島々を経由して北アメリカに渡って進化し、現在の「ブルーベリー」になったと考えられています。
「ブルーベリー」には、6系統の種類があるそうですが、その内、食用となっているのは、下記3系統となっています。但し、細かな種類としては、数百種類にも及ぶそうです。
(1)ハイブッシュ系統
1)この系統のブルーベリーは、前述の通り、寒冷地向けの系統で、日本では、関東から北の地方で栽培されており、さらに次の3つのグループに分類されているそうです。何が違うのかに関しては、面倒なので今回は省略です。
・ノーザンハイブッシュ系
・サザンハイブッシュ系
・ハーフハイハイブッシュ系
2)元々自生していたものを、1906年に試験場に持ち込み、品種改良を加えたブルーベリーです。
3)ハイブッシュ系統のブルーベリーは「自家受粉」するので、単独でも栽培が可能です。
4)ハイブッシュ系統のブルーベリーは、栽培種として改良された品種です。
(2)ラビットアイ系統
1)この系統のブルーベリーは、温暖地向けの系統とされており、関東から南の地方で栽培されています。
2)1925年頃から品種改良が行われた種類です。
3)この系統のブルーベリーは、ハイブッシュ系とは異なり、「他家受粉」なので、収穫量を上げるには、二品種以上を栽培する必要があります。
4)ラビットアイ系のブルーベリーも栽培種です。
(3)ローブッシュブルーベリー
1)この系統のブルーベリーは野生種として、野に自生している品種です。日本では、ほとんど栽培されていません。
2)アメリカ北部、およびカナダに自生しています。
3)生食よりは、主にジャムやサプリメントの原料となっているそうです。
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先に、岩手県では、「ブルーベリー」が数多く栽培されていると紹介しましたが、実際には、生産量7位、約99トンで、シェアとしては約4%程度しか栽培されていません。
そして、生産量1位ですが、皆さん、何処だと思いますか ? イメージとしては、やはり北海道ですよね。ところが、何と ! 日本国内における「ブルーベリー」の生産量1位は「東京都」なのです。
「はあ!! 東京だ~!?」となるかと思います。
しかし、農林水産省による2015年の統計データによると、収穫量1位は東京で約313トン、2位は茨城で304トン、3位は長野で286トンとなっています。
そして、農作物なら常に収穫量1位の北海道ですが、これも何と!! 岩手県よりも少ない13位で60トンとなっています・・・以外ですよね。
それじゃ、「日本国内に流通しているブルーベリーは、ほとんどが東京産なのか ?」と言うと、それはまた別の話で、国内の収穫量が約2,547トン、輸入が1,832トンとなっていますので、約40%は、輸入に頼っている構図になっています。
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先に、東京の生産量が国内第1位であることは紹介しましたが、これは、昭和43年(1968年)、東京都小平市で本格的な栽培が始まった事に由来しているようです。
また、先にブルーベリーの系統の話において、日本では、ハイブッシュ系とラビットアイ系の2系統が栽培されている事を紹介しました。
そして、この2系統の「ブルーベリー」を、どちらも栽培出来るのが関東地方なのです。
このため、東京と始めとした関東地方において、「ブルーベリー」が盛んに栽培されています。ちなみに、関東1都6県における「ブルーベリー」の収穫量は次の通りです。
・東京都 :1位、313トン
・茨城 県 :2位、304トン
・群馬県 :4位、276トン
・千葉県 :5位、134トン
・埼玉県 :6位、114トン
・栃木県 :11位、63トン
・神奈川県 :14位、57トン
神奈川県と栃木県は、何故か、余り「ブルーベリー」の栽培には力を入れていないようですが、それ以外は、3位に長野県が食い込んでいますが、全て上位にランクされているようです。
そして、神奈川県は、「湘南ゴールド」と言う果物が生産量全国1位になっていますが・・・そんな果物知っていますか ?
「湘南」と言う言葉が付く様に、この果物は、神奈川県が、「今村温州」と言う「みかん」と、「黄金柑(おうごんみかん)」を交配して作った新品種らしいです。
そして、何故、神奈川県が生産量日本1位なのかと言うと、それは、「湘南ゴールド」は、神奈川県でしか生産されていないからです !!
ちょっと下らないオチになってしまいましたが、これが関東地方で「ブルーベリー」の栽培が多い理由のようです。
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私は、「ブルーベリー」に関しては、ジャム以外では余り食べた事が無いのですが、TV、特にBS放送で目一杯流れているCMでよく聞くのは、「ブルーベリーは眼精疲労改善に効果がある!!」と言うフレーズだと思います。
「ブルーベリー」の一部の品種には、「アントシアニン」と言う色素が多く含まれており、この「アントシアニン」が、眼精疲労に効果があると言われているようです。
この「ブルーベリーが眼精疲労に効果がある。」と言う説は、次の様な根拠の上に成り立っているそうです。
・アントシアニンは、網膜上に存在する「ロドプシン」という光感知タンパク質の再合成に関与する。
・この「ロドプシン」が、分解/再合成を繰返すことで、ヒトは「物が見える」という状態を維持する。
・このため「アントシアニン」を意識的に摂取することで、眼の健康状態を維持できる。
この三段論法だけを聞けば、確かに「ブルーベリー」は、眼精疲労に効果がありそうな気がしてきます。
しかし、現在、サプリメントとして利用されているのは、「ブルーベリー」の一種とされる「ビルベリー」と呼ばれるものですが・・・
国立健康・栄養研究所の調査によると、「ビルベリー」が、「高血圧網膜症」に有効性があるとの研究成果が紹介されていますが、「眼精疲労」に効果があるという研究結果は見つかっていないとされています。
また、「高血圧網膜症」に有効性があると言う研究結果に関しても、他の食品との比較研究という観点では懐疑的な立場を取っているそうです。
つまり、「眼精疲労に効果がある。」と言うのは、サプリメント使用者による、個人的な感想が多くを占め、科学的根拠は皆無との事です。
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さらに、このような「眼精疲労への効果」説が取り沙汰される前にも、次の様な話が拡がっていたとも伝わっています。
『 第二次世界大戦中のイギリス空軍の夜間迎撃戦闘において、ジョン・カニンガムと言うパイロットは、夕暮れでも物がはっきりと見えたのでドイツ空軍機を何機も撃墜出来た。そして彼の好物がブルーベリーの一種であるビルベリージャムだった。』
このような逸話、現在で言うところの「都市伝説」が伝わっていたそうです。
しかし・・・実際の所、ジョン・カニングスの好物は、「ビルベリー」ではなく「にんじん」であると、イギリスの新聞「テレグラム」に記載されているそうです。
何時、誰が「にんじん(Carrot)」を「ビルベリー」に摩り替えたのかは分かりませんが、この様な都市伝説が、まことしやかに語り継がれ来たようです。
そして、さらに、現在においては、この「ジョン・カニンガム = ヒーロー」説自体も、イギリス空軍が作った「フェイク・ニュース」だった事も明らかになっているようです。
当時、イギリス空軍では、デ・ハビランド社製「モスキート」と言う、木製の戦闘爆撃機の運用が始まったのですが、実は、このモスキートには、最新型の高性能レーダーが搭載されていたそうです。
そして、この高性能レーダーのお陰で、夜間迎撃戦闘では、ドイツ軍に対して連戦連勝となっていたそうです。
このため、イギリス空軍では、この最新レーダーの件は、最重要秘密となっており、この秘密を隠蔽するために、架空のヒーロー「猫目のカニンガム(Cat's Eyes Cunningham)」を作り出した事が明らかになっています。
但し、「ジョン・カニンガム」氏自体は実在の人物で、イギリス空軍のエース・パイロットで、最後は大佐として退役し、その後はデ・ハビランド社の取締役になった人物です。
そして、余談ついでに紹介しますと、彼は、大の猫嫌いで、「猫目のカニンガム」と言うアダ名も、大嫌いだったようです。
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それでは、「ブルーベリー」の最後に、盛岡市で、「ブルーベリー狩り」が出来る果樹園を紹介します。
●松本りんご園
本章で紹介する果樹園は、盛岡市黒川、国道396号線、旧釜石街道から、少し山側に逸れた山中にあります。
前章で紹介した田屋果樹園の少しだけ遠野側、奥の方に位置しています。
この果樹園では、果樹園内に小ぢんまりとしたレストランと言うかカフェ「mi cafe」を併設しています。
私も、去年、初めてこのカフェを訪れてランチを食べました。ちょっと味は濃い目だったような感じがしましたが、美味しかった覚えがあります。
そして、この果樹園では、名前の通り「りんご」の栽培と販売を行っているのですが、初夏には「ブルーベリー狩り」を行う事が出来ます。
こちらの「松本りんご園」では、約10種類の「ブルーベリー」を栽培しているそうです。
開始時期は、盛岡近郊では一番早く、今年は6/29から「ブルーベリー狩り」を開始したようです。
下記に、情報を掲載しますが、詳しいことは、松本りんご園に直接問い合わせて下さい。
【 松本りんご園のブルーベリー狩り 】
・電話 :019-696-2531
・期間 :6/29~7月末
・営業時間 :9:00~12:00
・定休日 :毎週水曜日、第2土曜・日曜
・予約 :必要
・料金 :入園料大人800円(子供500円)
・サービス :ブルーベリージュース(ミニカップ)
・駐車場 :駐車場2箇所、約20台
・注意事項 :畑は傾斜面にあり、ヒールやサンダルはNG、日よけ/虫除け対策を。
・URL :https://micafe.jp/%e6%9d%be%e6%9c%ac%e3%82%8a%e3%82%93%e3%81%94%e5%9c%92/
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今回は、「岩手の食材」の第1弾として、次の果物の情報を紹介しましたが如何でしたか ?
- さくらんぼ
- りんご
- ブルーベリー
岩手県は、その面積では、北海道に次ぐ大きさで、よく「岩手県1県と四国4県と同じ面積」と言われるほど広大な面積があります。(※実際は四国の方が3万㎡程大きいのですが・・・)
このように広大な面積を持つ岩手なので、農産業は盛んだと思われていますが、実は、そんな事はありません。
県を南北に貫くように奥羽山脈と北上山地と言う2つの大きな山が存在する影響で、そのほとんどが「山」となっていますので、耕作地を確保するのも、人間が住むのも難しい地形となっています。
実際、人間が住める「可住地面積割合」が24%しか無く全国40位となっており、その逆に「森林面積」が75%と、全国8位となっています。
また、この2つの山脈/山地がある影響で、南北の移動は新幹線や高速道が発達したので比較的容易ですが、東西の移動が不便極まりないのです。
東に行くにも西に行くにも、山を越える必要があるので、道は狭く、また曲がりくねっており、さらに高低差があるので、本当に大変です。
このため、今回紹介した果物に関しても、「りんご」と「ラズベリー」の収穫量が、やっと全国4位に入る程度となっています。
また、地形以外、気温が低い事も農作物に悪影響を与えています。弊社ブログで何度も紹介していますが、本州で一二を争う寒冷地が、数箇所もあります。
全国版のニュースでも、北海道を除く本州で最低気温を記録したと言う話題では、必ずと言って良い程、、次の地名が出てきます。
盛岡市「藪川(やぶかわ)」、宮古市「区境(くざかい)」。ここは、本当に寒く、南極じゃないかと思うくらいです。
また、寒さついで言うと、雪の量も半端じゃありません。
まあ、現在は、盛岡市内中心部は、それ程じゃありませんが、岩手山周辺と秋田県に隣接した西和賀地方は、とんでもありません。
よくこんな所に人間が住めるものだと感心してしまいます。まあ、そのお陰でスキー場は繁盛しているのですが・・・
とまあ、そんな岩手県ですが、農作業に従事している方は、一生懸命、果物を生産しています。そんな方達を応援したいと言う気持ちもあり、今回、岩手の果物を紹介した次第です。
と、言いつつ、子供の頃は、そんな方々の苦労など全く歯牙にも掛けず、「さくらんぼ」やら「梨」やら、その辺にある果物を勝手に食べたりしていましたが・・・本当に申し訳なく思っています。
出来れば、昔の罪滅ぼしではありませんが、季節毎に、旬の果物が実っている果樹園を訪れて「果物狩り」をしたいと思っています。
次回は、次の果物を紹介します。
- すいか
- なし
- いちご
それでは次回も宜しくお願いします。
以上
【 画像・情報提供先 】
・Wikipedia(http://ja.wikipedia.org/)
・いわて食材倶楽部(https://www.iwate-syokuzaiclub.com/)
・果物ナビ(https://www.kudamononavi.com/)
出来る社員のPC整理術_まずは見た目の整理から - その2
今回の「お役立ち情報」は、前回に引き続き「出来る社員のPC整理術_まずは見た目の整理から」の「その2」を紹介します。
前回は、「その1」と言う事で、「整理/整頓とは何 ?」と言う、基本的な情報の紹介から始めて、次のような、実際のPC整理方法を何点か紹介しました。
★過去ブログ:出来る社員のPC整理術_まずは見た目の整理から - その1(20190706.html)
- 整理/整頓とは ?
- 「5S」とは
- デスクトップの整理方法
- 「ドキュメント」フォルダーの整理方法
- 不要ファイルの削除
実際のPCの整理術も大事なのですが、私的には、前回も言いましたが、「整理」と「整頓」の違いを、正しく理解していなかった事に衝撃を受けてしまいました。
この歳になって、「整理」と「整頓」の違いを理解していなかった事が、非常に情けなく、かつショックでした。
誰が言ったのかは分かりませんが、「人生一生勉強」とは、将に、この事だと思いました。まだまだ、勉強が足りません。
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と言う事で、第2回目の今回は、次のような情報を紹介します。
今回は、主に、PC内のデータの「整理/整頓」方法を紹介しますが、私的には、「SSDの寿命」に関する話が、非常に興味深かったです。
それでは今回も宜しくお願いします。
■PCの最適化
今回の最初の情報としては、まずPCの「最適化」についての情報を紹介します。
コンピューターにおいて、データの追加、削除、変更、あるいはコピーを繰り返していると、データの断片化、「フラグメンテーション(fragmentation)」が起こります。
データのフラグメンテーションとは、本来、1箇所にまとめて保存(記憶)されるべきデータが、複数の場所に分散して記憶される事です。
下記に、データのフラグメンテーションが発生するメカニズムを紹介する図を掲載します。
このように、コンピューター内でフラグメンテーションが多発すると、1個のデータが複数の場所に分散して記憶されてしまうので、該当データにアクセスする時に、分散された複数の場所からデータを集めるという無駄な処理が必要になってしまいます。
この無駄な処理が増えると、当然、コンピューターのパフォーマンスが低下する事になります。
何でデータが分散するかと言うと、次のような複数の原因があります。
・データを保存する記憶域の容量が限られている
・データの大きさが、データ毎に異なる
・データを削除すると必ず不連続の領域が発生する
過去に、アメリカのリサーチ会社「American Business Research」社が、アメリカの大企業100社に関して、Windows PCの使用状況を調査したところ、多くのPCでデータの断片化が発生しており、平均で1050~8162個まで断片化されており、中には、1個のデータが10,000個に断片化されていたケースもあったとされています。
そして、このように断片化が進行すると、PCの性能は極端に低下します。
但し、現在のPCは、チップの性能が、一昔前よりは、かなり向上していますので、そんなに直ぐにパフォーマンスが低下する訳ではありません。
しかし、断片化が進行すれば、データを読み取る「読み取り(磁気)ヘッド」は、選択されたファイルを組み立てるために、トラックからトラックへとジャンプしなくてはならないので、大量のI/O処理を必要とします。
このため、ファイルのロードが遅くなる事で、プログラムの起動に長い時間が掛かるようになります。
さらには、ディスクヘッドを余計に多く動かす事になりますので、ハードディスクの劣化が早まり、想定よりも早くHDDが故障する可能性もあります。
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それでは、データのフラグメンテーションを解消するためには、どのような対策が必要なのでしょうか ?
それは「デフラグ」と呼ばれる作業を行う必要があります。これは、「デフラグメンテーション(Defragmentation)」の略で、日本語では「最適化」と呼ばれています。
「デフラグ」を行うと、断片化されたデータを、一旦、別の領域に移し、その後、1個の連続したデータに並び直す処理を行います。
このため、「デフラグ」を行う事で、前述の「断片化(フラグメンテーション)」が解消されるので、PCの処理パフォーマンスを元に戻す事も出来ますし、さらに、HDDにアクセスする際のオーバーヘッドも解消する事が出来ます。
PCを快適に使用し続けるためには、この「デフラグ」と言う処理は、必要不可欠な作業なのですが・・・皆さん、知っていましたか ?
Windows PCには、当初から「デフラグ・ツール」が組み込まれていますので、このツールを起動するだけで「デフラグ」を行う事が可能となります。
「Windows 7」までは、この「デフラグ・ツール」を手動で起動する必要があったのですが、「Windows 10」からは、スケジュールを立てる事で自動的に実行されるようになりました。(初期値:毎週)
このため、現在、「Windows 10」を使っている方は、「デフラグ」の意味も必要性も把握しなくても、快適にPCを使い続ける事が出来ていると思います。
「デフラグ」が実行されているか否かに関しては、上の画像にある「最後の実行」の箇所を見れば、「デフラグ」が、何時実行されたのかを把握する事が出来ます。
(1)スタートボタンの右クリック
(2)「検索」をクリック
(3)検索欄に「デフラグ」と入力
(4)「ドライブのデフラグと最適化」を選択
(5)「ドライブの最適化」情報が表示
これで「デフラグ」の状況を確認して下さい。
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ちなみに、「Windows 10」以降、Cドライブが「SSD(Solid State Drive)」になっている場合、「デフラグ」を実行する必要はありません。
と言いますか、ドライブが「SSD」の場合は、「SSD」には書き込み回数に制限があるので、むしろ「デフラグ」を実行してはいけません。
「デフラグ」を実行してしまうと、書き込み回数が増えて、ドライブの寿命が短くなってしまうケースがあります。
「SSD」は、構造上、データの上書きは行えないので、古いデータを消去してから、新しいデータを書き込む、と言う処理が必要になります。
さらに、複数の「ページ」をまとめた「ブロック」と呼ぶ、大きな単位で消去、書き込みを行う必要があるので、データを書き換える際には、一度、ブロック単位でデータをコピーして、その領域を消去、書き換えを行ったブロックを書き戻す、という手順を踏みます。
実際には、同じ所への繰り返し書き込みを防ぐ「ウェアレベリング」等と言う操作も行われるため、さらに複雑な処理が行われます。
このため、「SSD」に対して最適化を行う場合、「デフラグ」ではなく、「Trim」と言うコマンドを発行する事になります。
「SSD」上でファイルやフォルダーを削除しても、該当データが、Windows上の「ごみ箱」に入る訳ではなく、「SSD」上で「削除マーク」が付けられるだけで、データそのものは残っています。
この状態で「Trim」コマンドが発行されると、「削除マーク」が付いた領域のデータが、本当に消去され、その後のデータ書き込み時に、新しいデータを直接書き込む事でアクセス速度の高速化を実現しています。
「Trim」コマンドは、OSレベルでは「Windows 7」からサポートを開始し、「Windows 10」に至るまで改良が加えられ、メンテナンス機能である「ドライブの最適化」においても、「SSD」に対しては、「Trim」コマンドを実行する仕組みになっています。
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本章で、ディスクの最適化の話を紹介しましたが、「SSD」に関する話題に触れたので、今回のブログの趣旨からは若干逸れてしまいますが、次章にて「SSDの寿命」についての情報を紹介します。
■SSDの寿命
前章で、「SSD」には寿命がある事を紹介しました。また、「SSD」には、これまでの説明において、次のようなメリットがある事も紹介しました。
・読み書きの速度が非常に早い
・消費電力や発熱が少ない
・作動音が無い
このように、メリットだけを紹介すると、「SSD」は万能のようなイメージを持つと思いますが・・・「SSD」にも、当然、弱点、つまりデメリットはあります。
そこで、下記に、「SSD」と「HDD」のメリット/デメリットを簡単に紹介しておきます。
媒体 |
メリット |
デメリット |
・高速アクセス |
・価格が高額 |
|
・振動/衝撃に強い |
・容量が小さい |
|
・静音 |
・書き換え回数に限界がある |
|
・低消費電力 |
・放置するとデータが消失する |
|
HDD |
・価格が安価 |
・アクセス速度が低速 |
・大容量 |
・振動/衝撃に弱い |
|
・長期間保存可能 |
・消費電力が高い |
|
|
・動作音がする |
|
|
・発熱する |
このように、高速アクセスが可能で消費電力も低い「SSD」ですが、それなりにデメリットがある事も解ると思います。
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さて、そこで気になる「SSDの寿命」ですが、大雑把に言うと、概(おおむ)ね5年が目安と言われているようです。
しかし、「概ね5年」とは言っても、使い方やメーカーの特性によっても寿命は異なるので、全てが5年と言う訳ではありません。
特に、「SSD」には、読み書きの回数で劣化すると言う特性を持っているので、当然、使用頻度が少なければ、その分だけ寿命は長くなります。
そして、この「5年」と言う期間ですが、この期間は、1日に20GB(ギガバイト)のデータを利用する事を前提に算出された寿命との事です。その計算式は、次の通りです。
20GB × 365日 = 7,300GB/年 × 5年 = 36,500GB = 36.5TB(テラバイト)
つまり、「SSD」に対して、36.5TB分のデータの書き込みを行うと、SSDへの書き込みが出来なくなるとしているらしいです。
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「SSD」とは、半導体メモリを、ディスクドライブの様に扱えるようにした補助記憶装置と紹介しましたが、もう少し具体的に説明すると、「SSD」の内部に使われている半導体メモリとは、「NAND型フラッシュメモリ」と呼ばれる「不揮発性メモリ」で、要は、電源を落としてもデータが記憶され続けるメモリとなります。
「NAND型フラッシュメモリ」は、「セル」と呼ばれる小さな区画に、ビット単位の情報を保存する仕組みになっています。
そして保存された情報は、電圧の変化(強さ)を使ってオン/オフの切り替えを行う事で、コピーしたり、あるいは削除したりする処理を行います。
「SSD」の容量は、このように「NANDフラッシュ」に刻み込まれている「セルの数」で決定します。つまり、「セルの数」が多ければ多いほど、より大容量の「SSD」を作れると言う理屈となります
しかし、「セルの数」を多くすれば、「SSD」自体も大型化しなければならず、そうなるとSSDを格納する器自体も大きくしなければならなくなってしまいます。
このため、「どうすれば小型のままセルに多くの情報を詰め込めるのか ?」とい言う点が課題となり、「SSD」にも様々な改良が加えられる様になりました。
・SLC(Single Level Cell) :1セルに1 Bit情報格納、高級品、低容量、長寿命、高堅牢、書換回数10万回
・MLC(Multi Level Cell) :1セルに 2Bit情報格納、一般向け低コスト、SLCより低堅牢/低耐久/短寿命、書換回数1万回
・TLC(Triple Level Cell) :1セルに 3Bit情報格納、一般向け最廉価版、大容量、MLCより低耐久/短寿命、書換回数5000回
・QLC(Quad Level Cell) :1セルに 4Bit情報格納、2018年より市販化、最安値、低品質、書換回数1000回
・3D NAND :平面構成セルを立体構造(3D)化、大容量化可能、高性能/高信頼性、書換回数SLCの1,000倍
SLCタイプのSSDは完全に企業向けのパーツで、一般人に手が届く価格ではないようです。一般人がPCパーツとして選択肢に入るのは「MLC」か「TLC」の2択になります。
MLCタイプの場合、TLCと比べて同じ容量でも3~4割ほど価格が高いものの、依然として耐久性に信頼を置けるという理由でシステムドライブにMLCを選ぶ人が多くなっているようです。
しかし、3D NAND型フラッシュが登場した事で、現状では、3D NAND型フラッシュが標準になり、積上げる階層の数により、「○○層3D NAND型フラッシュ」と呼ばれるようになっているそうです。
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寿命がある「SSD」ですが、その寿命を延ばすには、基本的に、「SSD」への読み書きを減らす事が必要になります。
『 SSDへの書き込みを減らすなんて !! 一体、どうすれば良いの ? 』となるかと思います。
「SSD」への書き込み回数を意識しながらPCを使うなんて事は無理だと思います。それでは、どのようにして「SSD」への書き込みを減らせば良いのでしょうか ?
一番簡単な対策は、「SSD」で構成されているドライブに、普段、仕事等で使うフォルダー/ファイルを配置しないようにする事です。
通常は、Cドライブを「SSD」にして、PCの起動を早くしたり、処理パフォーマンスの向上を目指したりしていると思いますので、下記以外のデータ、つまり仕事や私用で使う情報は、Cドライブに保存しないようにする事で、「SSD」への書き込み回数を減らす事は可能になります。
・Windows本体のデータ
・Office本体のデータ
・各種アプリケーションの本体のデータ
また、前の章で紹介した「ドキュメント」フォルダー等の個人用フォルダーに関しても、Cドライブ以外に移動した方が良いと思います。
個人用フォルダーをCドライブ以外に移動する方法は、前回ブログの「ドキュメント フォルダーも整理整頓」に記載していますので、そちらを参考にして下さい。
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という事で、本章の最後に、「SSD」の寿命を調査できるツールを紹介します。「SSD」の寿命を調べるツールとしては、次のようなツールがあります。
【 CrystalDiskInfo 】
「CrystalDiskInfo」と言うツールは、SSDの状態を確認するツールの定番ソフトとなっているようです。
SSDだけでなくHDDの状態を確認する事ができます。
正確な寿命までの時間は表示されませんが、大まかな「健康状態」は表示してくれます。
健康状態が「正常」と記載されていれば問題ありませんがSSDの劣化が進むと「注意」と表示され、さらに計算上の寿命を越えてしまうと「異常」と表示されます。
【 SSDLife Free 】
「SSDLife」は、有償版と無償版があり、今回紹介するのは、当然、無償版です。
こちらの「SSDLife Free」は、診断結果を単純に表示するだけのシンプルなソフトです。
有償版の「Pro」になると、前述の「CrystalDiskInfo」の様に、詳細情報を表示してくれるようです。
「SSD」の種類によっては、予想寿命まで表示してくれるみたいですが、私のPCのSSDには、書き込み情報(スループット)が存在しないみたいなので、寿命は表示してくれませんでした。
■フォルダーの階層管理
次は、過去ブログでも取り上げた「フォルダーの階層管理」についての情報を紹介します。
過去ブログ「身の回り整理術~見た目スッキリで業務効率化 - その2(20160305.html)」では、「フォルダー管理」の手法として、次の内容を紹介しました。
(1)業務内容の整理
(2)階層を意識したカテゴリ分類
(3)フォルダー名は短く
(4)先頭には数字2桁を使用
(5)ショートカットの活用
この中の「(2)階層を意識したカテゴリ分類」、および「(5)ショートカットの活用」と言う項目においては、自身の業務内容を整理してカテゴリに分類する事で、データを整頓する方法を紹介しました。
そして、このカテゴリとして分類した業務を、さらに階層化することで、資料の整理を行う事が出来るとしていますが、この整理例では、階層を4~5階層にする案を紹介しています。
確かに、業務をカテゴリに分類し、さらに、そのカテゴリ内を細分化することで、「データを整理する」と言う点では、全く問題も無い正しい考え方だと思います。
しかし、「整頓」と言う観点で、この方法を見ると・・・ちょっとな~、と言う感じになってしまいます。
「整頓」とは、前回ブログでも説明していますが、『 必要な物を何時でも、誰でも、直ぐに入手出来る状態にする行動 』と定義付けています。
と言う事で、カテゴリ内を多階層化し過ぎてしまうと、必要なデータを取り出すために、何度もクリックを繰り返す事になるので、『 必要な物と直ぐに入手 』と言う点に抵触してしまいます。
資料の保存場所を、解りやすく整理するためには、カテゴリを多階層化しなければならないが、資料を直ぐに取り出すための整頓としては、カテゴリの多階層化を避ける必要があります。
この「整理と整頓」と言う「二律背反」を解決するために、過去ブログでは、「ショートカットの活用」を勧めていますが・・・
確かに、多階層化したフォルダーに、直ちにアクセスする方法として、ショートカットを活用するのは理にかなった対策だとは思います。
しかし、そうなると、フォルダー内が乱雑になり過ぎて、何が何だか解らなくなってしまう恐れがあります。
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「ファイルの整理術」等を語っているWebサイトを見ると、その多くは、『 階層は3階層まで ! 』と記載しています。
しかし、実際の業務運用において、資料を3階層で管理するのは無理だと思います。
例えば、営業職の社員が、プロスペクト・ユーザー「A社」の情報を管理するケースを考えて見ると、下記の様な階層が必要になります。
⇒ Dドライブ → 営業関連 → 2019年度 → プロスペクト・ユーザー → A社
もう、これだけで5階層となっています。
ドライブを、カテゴリ毎のパーティションに分割して管理すれば、1階層分減らす事も可能にはありますが・・・何も、そこまでやらなくても・・・と言う感じがします。
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私などは、慣れてしまったので、別に、階層が5階層でも6階層でも、特に問題なく業務を行っています。
フォルダーの整理/整頓に関しては、「整頓」よりも、「どの資料が、どこに保存されているのか ? 」を正しく管理できる「整理」に重点を置いた方が良い感じがします。
必要な資料を取り出すために、多少、クリックが多くなってしまいますが、「素早さ」よりも「正確さ」に重点を置くべきだと、私は考えます。
皆さんは、「正確さ」と「素早さ」、どちらに重点を置きますか ?
■ディスクの空き容量管理
次は、同じくフォルダー関係の「整理/整頓」に効果的な、フォルダーの使用状況を調査する方法を紹介します。
PCを使い続けていると、それなりにデータが蓄積されて行きます。いくら、ここまで紹介してきた方法で、フォルダーやファイルを「整理/整頓」しても、溜まるものは溜まるので、仕方が無いと思います。
とは言え、やはりディスクの使用状況を把握して、古いデータは、ファイルサーバーやUSB等のリムーバブル・ディスクに退避して、SSD/HDDの空き容量を確保する必要があります。
しかし、いざ「ディスクの整理をしよう ! 」と思ったとしても、どのディスクやフォルダーから調査を開始して良いのか迷うと思います。
そのような時に有効なのか「DiskInfo」と言うツールです。
この「DiskInfo」と言うツールは、ドライブを指定して「解析」ボタンをクリックするだけで、ドライブ内にあるフォルダーの容量を表示してくれるツールです。
容量は、数値だけでなくグラフでも表示され、どのフォルダーが、どれだけの容量を占めているかが、一目で把握出来ます。
また、表示されているフォルダーを選択すると、今度は、選択したフォルダーに関して、その内部の使用状況も表示してくれます。
この機能により、フォルダー内部をドリルダウンして調査する事が出来ますので、フォルダーの整理を行う時に、非常に役に立ちます。
さらに、この「DiskInfo」と言うツールでは、次のような機能も提供しています。
【 ツール提供機能 】
・フォルダー毎にサイズを一覧表示する「フォルダーサイズ」
・拡張仕事にサイズを表示する「拡張子別サイズ」
・ファイルのない空っぽのフォルダーを検出する「空フォルダー」
・同一ファイルを検出する「重複ファイル」
・過去の解析結果との「比較」
・解析結果をテキストや Excel に保存
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この「DiskInfo」の基本的な使い方は、次の通りです。
(1)「DiskInfo」を起動するとメイン画面が表示される。
(2)メニューバーから「ファイル」→「解析」とクリックする。
(3)「フォルダー選択」画面が表示されるので、解析したいドライブをクリックして選択するか、フォルダーを選択して「OK」ボタンをクリックすると解析を開始する。
(4)解析が終わると「解析時情報画面」が表示される。必要に応じて、印刷したりクリップボードにコピーしたりする。
(5)メイン画面には、解析したフォルダー、ファイル情報が一覧表示され、左にフォルダーツリー、右上にフォルダー一覧、右下にファイル一覧が表示される。
(6)後は、必要に応じて、「ツール」から、上記【ツール提供機能】を活用して、詳細な調査を行う。
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このようなツールを活用して、不要ファイルの削除や退避等を行って、ディスクの空き容量を確保して下さい。
「DiskInfo」の詳しい使い方に関しては、下記でも紹介しています。
→ フリーソフト100 : https://freesoft-100.com/review/diskinfo.php
※DiskInfoに関しては、提供元「らくちん」様が、2019年5月31日で、サイトを閉鎖していますので、今後のメンテンスは行えないと思います。
→ らくちんツール:https://v2.rakuchinn.jp/index.html
■Outlookのデータ整理
本ブログの最後に、見た目の「整理/整頓」とは、若干主旨が異なりますが、Microsoft社の「Outlook」の整理術を紹介します。
現在の社会において、メールを使わずに仕事を行っている人は、ほんの一握りだと思います。逆に、メールを使わずに出来る仕事自体が、珍しい仕事になりつつあります。
私が、社会人になった数十年前は、メールなんて代物は存在せず、お客様や取引先との情報のやりとは、電話とFAXだけでした。
それから、ほんの10年もすると、ほぼ全てのやり取りがメールになってしまい、現在、弊社でも、一応、FAX機能を備えたプリンターは設置していますが、FAXでのやり取りは皆無です。
このように、毎日の業務で何通ものメールのやり取りをしていますので、自然と大量のメールがPC内に溜まって行く事になります。
メールの量や、Outlookデータのファイル・サイズを気にしている人であれば、定期的に、次のフォルダー内のデータを削除していると思います。
・削除済みアイテム
これらのフォルダーに関しては、該当フォルダーを選択し、右クリックを実行することで、サイドメニューが表示されますので、その中から「フォルダーを空にする」、または「すべて削除」をクリックすることで、データを削除する事が出来ます。
ちなみに、「送信済みアイテム」のサイドメニューに、「フォルダーのクリーンアップ」と言う項目がありますが、これは単純な削除ではなく、重複するメッセージを削除する機能となっています。
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さて、それではメールの整理の仕方ですが、一番簡単なのは、不要メールを全て削除してしまう事です。
皆さんは、メールを、どのような方法で管理しているのか分かりませんが、特に意識をしていなければ、下記4個のフォルダーに、全てのメールが保存されているではないかと思われます。
・受信トレイ
・送信済みアイテム
・削除済みアイテム
・迷惑メール
このため、まずは、削除済みアイテムと迷惑メールに残っているメールは全て削除し、その後、受信トレイと送信済みアイテム内のメールを、必要に応じて削除すれば良いと思います。
私などは、上図の通り、受信メールを、プロジェクト毎に20個程度のフォルダーに分類していますので、中々簡単には削除出来ません。
まあ、フォルダー1個毎に、中身を確認して不要メールを削除すれば良いのですが・・・ちょっと、そこまでの手間は掛けたくありません。
それでは、このような場合、どうすれば良いのかと言うと、次のような手順で整理すれば良いと思います。
(1)古いメールだけを抽出して別フォルダーに分離する。
(2)分離した古いメールの中身を確認して不要メールを削除する。
(3)残った古いメール・データのファイルをUSB等の別媒体にコピーして保存する。
(4)コピー成功後、残った古いメール・データを削除し、必要に応じてUSBの中身を確認する。
まあ、(2)の作業が面倒であれば、この作業はスキップしても、最終的には、PCから削除してしまいますので、特に問題は無いと思います。問題があるとすれば、USB等の別媒体のファイル容量が問題になる可能性があります。
不要メールを削除しない場合、コピー/退避するメール・データの量が多くなりますので、そのままでは別媒体にコピー出来ない可能性がありますので、その辺りは、柔軟に対応して下さい。
それでは、実際の作業手順を紹介します。
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この作業では、「メールボックスの整理」と言う機能を利用します。
「メールボックスの整理」には、古いデータを整理する機能が含まれていますので、この「古いデータの整理」に対して、何ヶ月前のデータを整理するのかを指定し、その後、整理処理を実行する事になります。
何ヶ月前のデータを古いデータと認識するのかに関しては、Outlookの「ファイル」→「オプション」→「詳細設定」と遷移し、その中で「自動整理の設定」画面を表示させます。
そして、「自動整理の設定」画面において、次の設定を行います。
・何ヶ月前のデータを古いデータとするのか
・古いデータを削除するのか移動するのか
・古いデータを移動する場合、何処に移動するのか
これら「自動整理」する内容を登録後、今度は、「ファイル」→「メールボックスの設定」→「古いアイテムのクリーンアップ」と遷移します。
そして、表示された「古いアイテムの整理」画面において、「自動処理の設定に従ってすべてのフォルダーを保存する」をチェックした後、「OK」ボタンをクリックします。
そうすると、「自動整理の設定」画面に設定した内容で、古いメール・データが、指定した保存ファイル(archive.pst)に作成されます。
この保存ファイル、Microsoft社の説明では「保管用PSTファイル」と記載されていますが、その他では、保存ファイルとはアーカイブ・ファイルとか、様々な名称で呼ばれているようです。
[ 基本的には、前回ブログで紹介した個人用フォルダー内の「ドキュメント」フォルダー、その中の「Outlook ファイル」フォルダーに存在します。
この「保存ファイル(archive.pst)」に関しては、Outlookからも参照する事が出来ます。
もしも、Outlookに「archive」が表示されない場合、「ファイル」→「開く/エクスポート」→「Outlookデータ ファイルを開く」をクリックし、そこで表示されるファイル一覧から「archive.pst」を選択する事で参照が可能になります。
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今回は、「出来る社員のPC整理術_まずは見た目の整理から - その2」として、次のような情報を紹介しましたが、如何でしたか ?
これで、皆さんの仕事も効率化出来そうですか ?
まあ、それ程じゃないにしても、PC内を整理/整頓する事で、少しは、作業効率は上がると思いますので、今回紹介した全てでは無くても、何点かは実践してみて下さい。
また、下記の過去ブログも参考にすれば、さらなる効率化も可能かもしれません。
★過去ブログ:身の回り整理術~見た目スッキリで業務効率化 - その1
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しかし、余りに作業の効率化が進むと、逆に仕事が増える可能性があります。
会社の仕事、および日本の社会に限らず、社会一般として、「有能な人には仕事が集まる!」と言う言葉は、良く聞く言葉です。
簡単な例を挙げると、例えば、会社の会議に、誰を招集すれば良いかと言う点が問題になりますが、その時に、真っ先に招集されるのが「優秀な人材」です。
会議とは、大抵の場合、何かの問題点の解決を目的として開催されます。
この問題を解決するために、「役に立たない人材」を招集しようとは誰も思いません。問題解決のためには「優秀な人材」が必要です。
そして、会社では、何種類かの会議を開催しますが、その「優秀な人材」は、複数の会議に呼ばれる事になります。
そうなると、自身の仕事の他に、数多くの会議に呼ばれる事になりますから、「優秀な人材」は、本当に多忙になります。
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私も、その昔、サラリーマンだった頃は、パッケージ・ソフトウェアの障害対応部署のリーダーだったので、会社で開発/販売している数々のソフトウェアに関する全ての会議には、必ず招集されていました。
このため、その時期は、本当に多忙でした。
私自身、専門に担当していたソフトウェアがあったのですが、それ以外のソフトウェアに関しても、会議に呼ばれてホトホト嫌気が指してしまいました。
その当時は、「何で俺だけいつも呼ばれるんだ !」とか、「俺は関係無いだろう!!」とか、文句ばかり言って評価を落としていました。
今更ですが、もっと物事をポジティブにとらえて対応していれば、私自身の評価も人間関係も変わっていたと後悔しています。
今では、事業主となってしまいましたので、物事の捉え方は、当時とは全く異なりますが、その当時も、もっと広い視野で物事に対処すべきだったと思っています。
確かに、様々な、そして面倒な仕事が舞い込みますが、次のような事を目的にして、仕事を楽しむようにした方が良いと思います。
・様々な仕事をこなして、仲間に喜んでもらう
・様々な仕事をこなして、経験を積む
・様々な仕事をこなして、スキルを高める
・様々な仕事をこなして、コミュニケーション能力を高める
皆さんも、仕事を効率化することで、新しい世界が開ける可能性がありますので、仕事を楽しいで下さい。
それでは次回も宜しくお願いします。
以上
【 画像・情報提供先 】
・Wikipedia(http://ja.wikipedia.org/)
・Microsoftサポート(https://support.microsoft.com/ja-jp)
・フリーソフト100(https://freesoft-100.com/)
座敷童子 - 神か霊か、はたまた妖怪か ? (その2)
今回は、前回に引き続き、「座敷童子」の話題を紹介します。
★過去ブログ:座敷童子(わらし) - 神か霊か妖怪か ? (その1)
前回ブログでは、次のような内容を紹介しました。
「遠野物語」には5個、「遠野物語拾遺」には8個、合わせて13個もの「座敷童子」関連の話が掲載されていますので、その昔は、結構、多くの目撃談があったことが忍ばれます。
さらに、前回も紹介した通り、大正13年(1924年)に発行された別の雑誌「人類学雑誌」には、83個(東北:66個/東北以外:17個)もの目撃談が掲載されていますので、本当に、江戸時代末から大正期に掛けては、東北地方には、数多くの「座敷童子」が居たと推測されます。
しかし・・・その昔は沢山居た「座敷童子」、今では、何処に行ってしまったのか ? 日本狼のように既に絶滅してしまったのでしょうか ?
他方、これら「座敷童子」は、実際には存在せず、地域社会における貧富の格差を納得させる道具としてのみ存在した、と言う考え方もあるようです。
確かに、自分の家が貧乏な理由として、次のような事を言われれば、もう納得するしかありませんよね !!
「ウチは貧乏だけど、あの家には、座敷童子が住んでいるから裕福なのは仕方が無い。」
「あの家には、昔は座敷童子が住んでいたから裕福だったけど、今は居ないから没落しても仕方がない。」
「座敷童子」は、不可抗力や自然災害みたいな感じです。もう、人智の及ばない存在として、受け入れるしかありません。
これは、当時の地域社会においては、非常に便利な存在、方便だったと思います。
今、現在、「あの家には座敷童子が住んでいるから裕福なんだ !」と言われても、誰も納得しないと思います。
しかし、まあ、それにも関わらず、「座敷童子」の正体を突き止めたくなるのは人間の性だと思います。
河童、猿、何とか童子、大工の呪い・・・沢山の正体を考えていますが、やはり、一番納得し易いのは、「間引かれた子供」説だと思います。
今回は、前回の情報を引き継いて、「座敷童子の正体」から継続し、次のような情報を紹介します。
【 第2回目 】
それでは今回も宜しくお願いします。
以上
■座敷童子の正体説
今回の最初は、前回に引き続き、「座敷童子」の正体の残り、3説を紹介します。
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●「火男」説
それでは、最初に「火男」の伝説を紹介します。
【 火男 】
穴は災いをもたらすので塞いでしまおうと、大量の柴を押し込んでいると中から呼び声がして、立派な御殿のある世界に連れて行かれる。
呼んでいたのは美女で、更に白髪の翁から褒美としてヘソから金(きん)を生む、奇妙な顔の子供を譲り受ける。
爺さんは子供を気に入って育てたが、欲張りな婆さんはより大きな金を欲しがり、ヘソを火箸で無理やりつついたため、子供は死んでしまう。
悲しむ爺さんに、自分に似せた面を竈の前に架けておけば、家が富み栄えると夢枕に立った。
その子の名前が「ひょうとく」であった事から、「ひょっとこ」と呼ばれた。
この「火男(ひょっとこ)」については、登場する子供の名前が「うんとく」であったり、あるいは「したり」であったりするケースもありまし、子供ではなく「若者」となるケースもあるようですが、ストーリーは、ほぼ同じとなっているようです。
そして、「火男(ひょっとこ)」に関しても、「富の源泉」と言う事で、「座敷童子」の正体として取り上げられる事が多い存在です。
このため、「火男」に関しては、前回紹介した「竜宮童子」、および「護法童子」と同類としてとらえられています。
「火男」に関しては、弊社過去ブログにおいて、「カマドガミ(竈神)」との関係で紹介しています。
★過去ブログ:岩手の民間信仰 ~ 聞いた事も無い信仰ばかり Vol.2
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●「間引かれた子供」説
「座敷童子」の正体に関する最後は、「座敷童子 = 間引かれた子供」説を紹介します。
東北地方は、昔から数多くの飢饉に襲われ、安土桃山時代となる「慶長5年(1600年)」から「明治2年(1869年)」までの269年間に、17回もの飢饉に見舞われています。
その中でも、下記の飢饉は「四大飢饉」と呼ばれ、数多くの餓死者を出しています。
・元禄飢饉 :元禄年間(1688~1704年)に起こった飢饉。元禄8年と元禄15年の飢饉では数万人が餓死。
・宝暦飢饉 :宝暦5年(1755年)に起こった飢饉。餓死者5万人と伝わる。
・天明飢饉 :天明3年(1783)~7年(1787年)に起こった飢饉。1783年の浅間山と岩木山の噴火が原因。
・天保飢饉 :天保3年~9年(1832~1838年)に起こった飢饉。
そして、このような飢饉が起こるたびに、農村では、人々が生き残るために、「口減らし」を行って来ました。
「口減らし」とは、文字通り、「食物を食べる口を減らす」事で、子供を「間引く = 殺す」事を意味していますし、また歳を取った老人を山に置き去りにする「姥捨て」等が行われて来ました。
その内、「間引き」は、「臼殺(うすごろ)」とも呼び、「間引く(殺す)」子供を、石臼の下に置いて圧死させる方法が取られたと伝わっており、「圧殺」した子供は、決して家の外には出さず、家の土間の縁台の下とか、あるいは石臼場の下など、人が踏みつける場所に埋めたそうです。
そして、このようにして「間引かれた(殺された)」子供の霊魂に関して、「佐々木喜善」は、「奥州のザシキワラシの話」の中で、次のように紹介しています。
『 不時に死に、又は昔時無残な最期を遂げた童子の霊魂は、そのまま屋内に潜み留まり、主に梁の上などに棲んでいる。 』
また、この説を裏付けるような話も掲載しています。
『 土淵村字火石の庄之助という家で、一族二十人ばかり集まっている夜に、桁の上から女子の小櫛が落ちて来たので、皆上を見たが何も見えなかったという。しかし、ある者の目には、髪を乱した女子の顔が梁にくっついていて、じっと下を見つめていたのだと。それは恐らく、飢饉の年に餓死した召使の少女の魂魄が梁の上に留まっている為だとされた。 』
『 土淵村の山口では、天明の飢饉の時に盗み癖のあった子供を山に連れて行き、斧で斬殺した霊魂が家に帰り、梁にくっついで、悲しそうな声で最後の語を呟いている事があるという。その最後の語とは「父(トト)、何をする。」という言葉であったようだ。 』
何とも、悲しくも恐ろしい話ですが、この「間引かれた子供の霊」の事を、佐々木喜善や、柳田國男の弟子とされる「折口信夫」等は、「若葉の霊(魂)」と呼んでいたようです。
そして、この「若葉の霊」に関しては、「時々雨の降る日など、ぶるぶる慄(ふる)えながら縁側を歩くの見る。」と紹介しています。
更に、次の点が、「座敷童子」と類似していると報告しています。
・子供の姿である
・屋内を移動する
・悪戯をする
・祀られていない
このような類似点から、「座敷童子 = 間引かれた子供」と言う説が唱えられ、現在では、この説が多くの支持を集めているようです。
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●「職人の呪い」説
岩手県の龍泉洞がある場所として有名な岩泉町出身の作家「高橋 貞子」氏は、その著書「座敷わらしを見た人びと」の中で、「座敷童子」の正体は、家を建てる際に、工事に関わった職人達の呪いと言う説を唱えています。
この説では、その昔は、建築に携わった大工や各種職人達が、気持ち良く仕事が出来なかったり、あるいは施工主から無礼な扱いを受けたりした場合、その家に呪いをかける習慣があったとしています。
そして、この「呪い」とは、木片で作った人形を、柱と梁の間に挟み込んだり、あるいは家の要所に埋め込んだりしたと伝わっているそうです。
「高橋 貞子」氏は、こうした「呪い」の行為が、「座敷童子」と言う不思議な現象を生んだとしていますが、この説では、「座敷童子」と「福」や「富」の結び付きは生まれませんので、ちょっと無理がある説かもしれません。
■座敷童子が居るから裕福になるのか ?
次に、「座敷童子」が居る理由について、これまでと異なる説を紹介したいと思います。
これまでの諸説では、次のような話が定説として語り継がれて来ました。
・座敷童子が住み着いているから、その家が裕福になる。
・座敷童子が去ると、その家は没落する。
これらの定説は、ある家、遠野地域で言うと、「大同と呼ばれる旧家」が、何故裕福なのかを、「座敷童子」の存在を理由として語っているに過ぎないと考えられています。
つまり、次のようなストーリーが展開される訳です。
・「大同の家は、何故か裕福である。」
・「大同の家には、座敷童子が住み着いているから裕福になったに違いない。」
・「山口の旧家・山口孫左衛門という家が没落したのは、座敷童子が去ったからに違いない。」
この説は、現在では、遠野地域の普通の家、と言うか貧乏な家が、「何故、大同」の家だけが裕福なのか ?」を、そして、裕福だった家が、何故没落したのかを、自分たちなりに納得させるための方便だったと考えられていますが・・・この考え方は正しいのでしょうか ?
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東北地方を舞台にした数多くの小説を書いている「高橋克典」氏は、上記とは別の説を唱えています。
「 座敷童子が住み着いているのは大同の家が裕福だから。 」
と言う説です。
つまり、「座敷童子は、裕福な家にしか住み着かない。その家が没落するから他の裕福な家に避難する。」と言う考え方です。
まるで、「性善説」と「性悪説」、あるいは「鶏が先か/卵が先か」と言うような関係になってしまいましたが、実際、先に紹介した「遠野物語拾遺」の中でも、この話は取り上げられています。
その話は、「拾遺91話」の中にある、「六部」の存在です。
『 附馬牛村のある部落の某という家では、先代に1人の六部(巡礼僧)が来て泊って、そのまま出て行く姿を見た者がなかったなどという話がある。 』
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この「六部」とは、その章でも説明しています通り、正しくは「日本回国大乗妙典六十六部経聖」と言う「六十六冊の法華経」を意味する言葉が、その後、そのお経を納めて全国を巡礼する僧侶を表すようになったものです。
そして、この「六部」に関しては、日本全国に「六部殺し」と言う民話と言うか「怪談」が伝わっており、それは次のような内容になっています。
『 ある村の貧しい百姓家に六部がやって来て一夜の宿を請う。その家の夫婦は親切に六部を迎え入れ、もてなした。
その夜、六部の荷物の中に大金の路銀が入っているのを目撃した百姓は、どうしてもその金が欲しくてたまらなくなる。そして、とうとう六部を謀殺して亡骸を処分し、金を奪った。
その後、百姓は奪った金を元手に商売を始める。田畑を担保に取って高利貸しをする等、何らかの方法で急速に裕福になる。
夫婦の間に子供も生まれた。ところが、生まれた子供はいくつになっても口が利けなかった。
そんなある日、夜中に子供が目を覚まし、むずがっていた。小便がしたいのかと思った父親は便所へ連れて行く。
きれいな月夜(もしくは月の出ない、あるいは雨降り)の晩、ちょうどかつて六部を殺した時と同じような天候だった。
すると突然、子供が初めて口を開き、「お前に殺されたのもこんな晩だったな」と言ってあの六部の顔つきに変わっていた。 』
話の細部は、その土地々々で微妙に異なりますが、大体の荒筋は上記の通りです。
「六部」とは、前述の通り、全国を行脚しますので、当然、「路銀(旅に必要な金銭)」を持っています。そして、この「路銀」目当てに「六部」を殺して、「路銀」を奪って裕福になる、と言うのが当初のストーリーです。
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「遠野物語拾遺 91話」では、この「六部殺し」と「座敷童子」が結合した話として伝えられています。
つまり、この話では、次のようなストーリー展開になっています。
1.附馬牛村のある部落の某という家に「六部」が宿泊する。
2.その「六部」を殺害して金品を奪う。
3.奪った金を元手に商売を始めて裕福になる。
4.その後、この某家から10歳位の紅い振り袖を来て紅い扇子を持った女の子が踊りながら出ていった。
5.この女の子は、下窪の家に入った。下窪の家では神棚の下に座敷童子が居る。
6.その結果、附馬牛村の某家は没落し、下窪の家は裕福になると言う逆転現象(ケエッチヤ)が起きた。
この話は何を意味しているのかと言うと、先の「六部殺し」と「座敷童子」が融合しているのですが、それ以外にも、「附馬牛村の某家」に座敷童子が住み着いたのは、「附馬牛村の某家」が裕福になったから、と言う事を意味しています。
さらに、この話を読み解くと、次の点も重要になって来ます。
・地方の村にも、その昔から貧富の格差があり、裕福な家は、それ以外の家から妬まれていた。
・その家が裕福になったのは「座敷童子の存在」や「六部殺し」を行ったのが理由としている。
・その半面、成り上がり者の家には座敷童子はおらず、もっぱら旧家にのみ存在している。
・このため、これらの事は、裕福な家や旧家への陰口として使われるケースが多いと思われる。
・座敷童子や持ち物が紅くなると、その家は没落すると言われるが、これも妬みの一種と思われる。
・つまり、元々「座敷童子」や「六部殺し」とは、地域社会における貧富の差や暗部の象徴だった。
このように、現在では、何か、一種のファンタシーや幸せの象徴のように語られている「座敷童子」ですが、その本質は、地方における暗部、ダークサイドの象徴だったと思われます。
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「座敷童子」や「六部」、およびそれらに伴う「富」は、地域社会の外部から来る物としてとらえられ、これら外部から来た物が、社会に格差を生み出す物と考えられていたのかもしれません。
そして、「富」とは移動する物と考えられ、一種の期待値として、「富」が自身の所に来ることを期待していたからこそ、「座敷童子が移動する。」と言う伝説が生まれたのかもしれません。
こうなると、やはり、「座敷童子が居るから裕福になる。」のではなく、「裕福だから座敷童子が居ると考えられた。」とするのが正論のような感じがしてきます。
このように、「遠野物語」や「遠野物語拾遺」における「座敷童子」とは、江戸時代に入り、「貨幣経済」が地域社会にも浸透した事で地域社会にも「貧富の差」が生まれ、その「富の源泉」となる「貨幣」や「財産」は移動すると言う現象を、「座敷童子」や「六部殺し」に例えて伝えた内容だと考えられます。
そうなると、「座敷童子」の正体としては、「座敷童子 = 貨幣/財産」とも考えられるような感じもします。
他方、「座敷童子」や「六部」は、元々、地域社会には存在しない「異人」として扱われるケースもありますが、この場合でも「貨幣経済」が重要な地位を占めています。
■「異人」や「憑き物」の考え方
前章で紹介したように「座敷童子」を、地域社会の外部から来た「異人」としてとらえる考え方も存在します。
地域社会における「異人」に関しては、関西学院大学の研究によると、次の4つのカテゴリーがあるとされています。
第1カテゴリー :外部から一時的に地域に侵入し、用事が済めば立ち去る異人
第2カテゴリー :外部から地域に侵入し、そのまま定着する異人
第3カテゴリー :地域社会内部において作り出された異人
第4カテゴリー :噂は聞いて知っているが、実際には全く会った事も無い異人
前述の「異人殺し」の場合、まずは、第1カテゴリーの「異人」が登場するが、次には「異人」を殺害した家が、第3カテゴリーの「異人」となってしまうそうです。
「六部」を殺害して裕福になる事で、地域社会から妬みを買い、地域社会に内部で孤立し、地域社会内の「異人」になってしまうのです。
これは、何とも皮肉な展開です。
そして、「座敷童子」が住み着いた家も、また地域社会内における「異人」となってしまう点も興味深い点です。
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他方、地域社会における第3カテゴリーの「異人」を創り出す仕組みとして「村八分」と言う仕組みもあります。
「村八分」になるには、様々な理由が考えられますが、大きくは、次の2つの理由があります。
・地域社会のルールや暗黙の了解を守らない事
・「憑きもの筋」に家になってしまった事
「村八分」とは、地域社会における「100%の付き合い」の内、「80%の付き合いを遮断する」と言う事を意味しています。
地域社会における付き合いには、次の10種類の付き合いがあるとされています。
→ 葬式、火事の消火、成人式、結婚式、出産時の世話、病気の世話、新築/改築の世話、水害時の世話、年忌法要、旅行
そして、これら10種類の共同作業の内、葬式と消火活動は、そのまま放置すると、地域社会全体に悪影響を及ぼすので対応するが、それ以外の8個の共同作業に関しては、一切の交流を絶つ事が、「村八分」とされています。
「村八分」にされる理由の内、第1の理由は、よく分かると思いますが、第2の理由「憑きもの筋」について、少し紹介します。
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「憑きもの筋」とは、俗にいう「狐憑き」等と呼ばれ、これら「憑き物」は、家系や血筋によって起こると信じられており、地域社会においては、この「憑きもの筋」の家系との婚姻は、厳しく忌避されていました。
また、「憑きもの筋」の血筋の者は、憑きものを使役して、他人から財物を盗んでこさせるので、総じて富裕な家が多く、また、憑きものを他人に憑けたりすることもあると考えられ、忌み嫌われていました。
まるで「陰陽師」と、「陰陽師」が使役する「式神(しきがみ)」、あるいは、前に紹介した密教の高層や修験者が使役する「護法童子」との関係のようです。
さて、このような「憑きもの筋」の家ですが、何かと似ているとは思いませんか ?
そうです、「座敷童子」です。
この「座敷童子」も、ある説では「憑依する神」と考えられていますので、一種の「憑き物」と同じ扱いになるケースもあります。
「憑きもの」が憑依するのに明確な理由はありません。
「あの血筋だから」、「あの家だから」、「大同だから」・・・とにかく、何らかの理由を付けて、裕福な家を「異人」として、地域社会から除け者にしようとしているだけだと思われます。
つまり、前述の第3カテゴリーの「異人」が発生する原因の一つして、地域社会への「貨幣経済」の流入、および「貨幣経済」の流入による「貧富の格差」の発生が挙げられると思います。
「座敷童子」の発生が、「貨幣経済」と関係するとは思っても見ませんでした。
■座敷童子を見ると幸せになれるのか ?
さて、最後に、前述の「立ち位置」の章でも紹介しましたが、「座敷童子を見ると幸せになる。」と言う点について、再度、検討してみたいと思います。
前述のように、「座敷童子に会える」等と言う宣伝文句で客を集め、挙句の果てに、ボイラーの点検不備から火災を起こして全焼させてしまったある旅館もありますが、私個人としは、このような宣伝行為は、立派な「詐欺」ではないかと思っています。
・座敷童子に会える
・座敷童子に会うと幸せになれる
・実際に座敷童子会った人は必ず幸運になる
・座敷童子は祖先の「亀麿」
もう、これだけで立派な詐欺行為のような気がします。
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日本の法律に、「不当景品類及び不当表示防止法」、通称「景表法」と言う法律があります。
この法律は、詳しい説明は割愛しますが、商品に対して、実際より良く見せかける表示が行われたり、過大な景品付き販売が行われたりする事で、過大広告につられて、消費者が実際には質の良くない商品やサービスを購入する事で不利益を被る事を防止する法律です。
この旅館は、存在さえ確かではない「座敷童子」に関して、「座敷童子に会える。」、さらに「座敷童子会うと必ず幸せになる。」等の宣伝を行っていますので、立派な過大広告だと思います。
「座敷童子に会うと幸福になる。」とか「座敷童子が居る家は裕福になる。」と言うのは、これまで説明して来た通り、結果論だと思われます。つまり「後付け」の理論です。
「後付け」理論では、良しにつけ悪しきにつけ、何か事(イベント)が起こった後、その理由を後付けで当てはまる理論です。
幸運の兆しを「吉兆」、不幸の兆しを「凶兆」と呼んでいますが、「座敷童子」の場合、「吉兆」となるのでしょう。
【 吉兆 】
・流星を見て願い事をすれば願いが叶う。
・四葉のクローバーを見つけると幸福になる。
・白蛇を見ると大金持ちになる。
・彩雲が出ると良いことがある。
【 凶兆 】
・黒猫が前を横切る。
・彗星は災いをもたらす。
・竹の花が咲くと悪い事が起こる。
・雷が落ちると悪いことが起こる。
今回、「座敷童子」は「吉兆」とされていますので、「吉兆」について考えてみますと・・・例えば、「四葉のクローバー」を見つけた人は、必ず幸せになれるのでしょうか ?
そんな事はありませんよね。 何か良い事が起こった後で、「そう言えば四葉のクローバーを見つけたからだ !」となるのが普通です。
つまり、これは、何か良い事があった後で、そう言えば・・・となる「後付け」理論となります。
「座敷童子」の場合、たまたま、その旅館に宿泊した人達の内、事業や政治、あるいは研究等で、何らかの成果を挙げた人が、ほんの数名存在したと言うだけの話です。
その旅館の場合、創業が1955年(昭和30年)とされており、火事で全焼してから5年後に再建していますので、これまで約59年間営業をしている事になります。
毎日、1泊2日で2名の人が宿泊したと考えると、年間730人が宿泊し、これが59年間だと約43,000人が、その部屋に宿泊したことになりますが・・・
果たして、その内、何名が「座敷童子」と遭遇し、さらに、その中から何名が幸せ、と言うか、有名人になったのでしょうか ? 恐らくは、ゼロだと思います。
「幸せ」の定義は、個人によって異なりますので、宿の判断からは除外して良いと思いますが、やはり、「座敷童子を見ると幸せになる。」と言う宣伝文句は、嘘っぱちだと断定出来ると思います。
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そもそも、この旅館が営業を始めたのは、昭和、それも戦後になってからです。
本章以前で紹介した「座敷童子」に関しては、江戸時代末から明治、大正期にかけての話で、さらに、その中には、「座敷童子を見た。」と言う話は沢山ありますが、「座敷童子を見たから、その人が裕福になった。」等と言う話は一切ありません。
この点が、「遠野物語」や「遠野物語拾遺」とは、全く異なる話です。
さらに、「佐々木 喜善」が、大正13年(1924年)、雑誌「人類学雑誌」に寄稿した「ザシキワラシの話」には、「座敷童子」に関して、83個もの伝承が記載されていますが、その中の、どこにも「座敷童子に会った人が裕福になった」等と言う話は掲載されていません。
そもそも、先の「ザシキワラシの話」には、奥州に関しては66箇所、奥州以外では17箇所に現れた「座敷童子」の話を掲載していますが、面白い事に、全焼した旅館がある「二戸市金田一」に関しては、1件も「座敷童子」が現れた事例は紹介されていません。
これらの事からも、「二戸市金田一」の「座敷童子」に関しては、【 眉につば 】を付けた方が良い話の可能性が非常に高いと思われます。
そもそも、冷静になって考えれば、これまで紹介した定説によれば、「座敷童子」が住み着く家が火事になり、全焼するなど有りえません。
少なくても、「火事が起きても虫の知らせで直ぐに消火した」とか、「座敷童子が火事を知らせてくれた。」等と宣伝して欲しいところです。
旅館関係者は、火事で全焼したけど怪我人も出なかった、隣接する神社が燃えなかった等、苦し紛れの言い訳を並べ立てていますが、全く話にならないと思います。
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もう1件、盛岡市天神町にも、「座敷童子」に会えると言う宣伝をしている旅館があります。
こちらの旅館、現在の大女将の実家に居た「座敷童子」が、嫁入り後も、現在、営業している場所(盛岡)まで付いて来たと言う事をウリ文句にしているようですが・・・大女将の実家が何処か解りませんし、何時から盛岡で営業を開始したのかも解りません。
また、「座敷童子」の信憑性を高めるための手段だと思われますが、実家があった村で火災が発生した際、村の大半が焼失したのに、この実家は火災を免れたとも伝えています。
この点、二戸市の旅館は、全焼してしまいましたので、盛岡市の「座敷童子」の方が、力が強いのもかもしれません(笑)が、何時、何処で、どのような火災が発生したのか等、裏付けとなる説明が全然ありません。
全て、当人達の言っている事だけが頼りですので、こちらも「胡散臭さ」は、二戸市の旅館と同等だと思います。
但し、この旅館の「先先先代」となる「小笠原謙吉」氏と言う人物は、「佐々木喜善」や「柳田國男」とも親好があり、自ら「岩手県紫波郡昔話集」と言う書籍を出版したり、または「小笠原謙吉」氏から聞いた話を、またもや「柳田國男」が編纂した「日本昔話記録」と言う書籍を出版したりしています。
この話を聞くと、この旅館の「座敷童子」は、少しは信憑性が高いような雰囲気を醸し出していますが・・・
しかし、こちらの「岩手県紫波郡昔話集」には、「座敷童子」の話は、1件も収録されていませんので、この旅館が宣伝している話とは、全く関係の無い「こじつけ」だと思われます。
ちなみに、前述の「ザシキワラシの話」には、次のような目撃例が掲載されています。
『 盛岡市加賀野新小路、住吉紳社前に古き家がある。昔から此家には不思議な物が居るこて借手が何れも永住しなかつた。君し人が入るさ、夜縁側をトタトタご歩く足音がし、また隣室なごで布團を敷くやうな音をさせ、さうしてもう寝たかなざ、聲をかける。此物に就いて近所ではザシキワラシだこ言ふて居る(大正十年九月四日盛岡で聴く) 』
この旅館がある「天神町」と、雑誌に登場する「加賀野新小路、住吉神社前」というのは、非常に近く、隣接した町となっていますので、ひょっとしたら・・・
と言う事は絶対に無いと思います。そもそも時代が違うと思います。
また、この旅館、失礼な言い方かもしれませんが、「座敷童子」が住み着いている割には、貧相な旅館です。
素泊まりしか出来ない旅館です。客室も全部で6部屋しかありません。
これまでの定説通りならば、この旅館に「座敷童子」が住み着いているならば、もっと裕福になっていると思います。
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何れにしろ、「座敷童子」を見ただけでは何も起きないと思います。
二戸市や盛岡の旅館が、「座敷童子に会える/見える」等を宣伝文句にして客を集めていますが、全くのデタラメだと思います。
「座敷童子」は、家に憑依しないと効果がありませんし、また、裕福な家にしか「座敷童子」は憑依しませんので、私のような貧乏人が「座敷童子」を見たところで、話のネタにしかならないと思います。
皆さんも「座敷童子」に踊らされないよう注意して下さい。
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今回は、「座敷童子(わらし) - 神か霊か、はたまた妖怪か ? 」の「その2」として、次の内容を紹介しましたが如何でしたか ?
私個人としては、座敷童子の正体は、やはり「間引かれた子供」の霊だと思いますが・・・普通、殺された人間であれば、その家に祟りをもたらす存在になると思います。逆に、「富」をもたらす存在になるのは、ちょっと納得出来ない点でもあります。
しかし、日本では、その昔から、「祟り神」を祀って「神」にすることで、「幸福」や「富」、あるいは「権力」をもたらす存在に祀り上げる行為が数多く行われて来ました。
時代は前後しますが、菅原道真、崇徳天皇、平将門・・・これら三名は、日本における「三大祟り神」とされています。
このため、当時の貴族連中は、これら「祟り神」を鎮めるために、必死に、彼らを拝んだのだと思います。
過去に弊社ブログで取り上げた「安倍一族」の伝説で紹介した「安部貞任」も、死後に「祟り神」と言うかゾンビ化し、七つに切り刻んで埋めて、その場所に神社を立てたと言う伝説が残っています。
★過去ブログ:奥州安倍氏の伝説 - 実は生き延びていた編
このように、中世の日本においては、人々を脅かすような天災や疫病の発生を、怨みを持って死んだり、あるいは非業の死を遂げたりした人間の「怨霊」のしわざと見なして畏怖し、これを鎮めて「御霊(ごりょう)」とすることにより祟りを免れ、平穏と繁栄を実現しようとしてきました。
そして、このような信仰を「御霊信仰」と呼んでいます。
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しかし、他方「座敷童子」に関しては、これまで紹介してきた通り、神棚等で祀られる存在にはなっていません。
この点に関しては、今回は、紹介しませんでしたが、ある説では、次のように紹介しています。
『 座敷童子とオクナイ様/オシラ様は、表裏一体の神様である。 』
『 本来、座敷童子は、竈(かまど)神と同類であるが、社会の暗部に埋没してしまった神である。』
つまりは、「座敷童子」は、地域社会においては、暗黙の了解のもとで存在する神であり、このため、敢えて祀り上げる必要もない存在だった、と言う説です。
「若葉の霊」を、暗黙の了解のもと、無意識の内に神として祀り上げる「御霊信仰」を行い、その結果として「座敷童子 = 富」の象徴になってしまったのではないかとしています。
まあ、確かに面白い説ではありますが、何か「こじつけ」のような感じもします。
「座敷童子」に関しては、東北地方に伝わる他の信仰や伝説と結び付いて、様々な説が唱えられていますので、今では、もう何がなんだか解らなくなってしまったように思えます。
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他方、それを良い事に、自分達の都合の良い存在として、「座敷童子」を宣伝に用いる「小賢しい」連中も存在します。
これら旅館から、「お前に何か迷惑を掛けたのか ? 何か、被害に遭ったのか ?」と言われると、全く何もありませんが・・・しかし、存在が明らかになっていない者を利用して客を集める行為に対しては、何だかな~と言う感じがします。
ところが、そう考えると、「じゃ、神様の存在は確実なのか ?」と言う話にもなって来ちゃいそうです。
存在が明らかではない「天照大神」を始めとする「八百万の神々」を祀る神社は、どなるのでしょうか ?
私は、「無神論者」では無いので、「神」かどうかは解りませんが、それに近い存在は居るのではないかと思っています。
言っている事の筋が通らないかもしれませんが、やはり「八百万の神々」を祀る神社と、「座敷童子」を宣伝に用いる旅館とでは、その存在意義は、全く違うと思います。
最後は、哲学論に近い状況になってしまいましたが、今後も、「座敷童子」に関して、何か新しい情報が入手出来たら(恐らくは無理だと思いますが)、追加情報を紹介したいと思います。
それでは次回も宜しくお願いします。
以上
【 画像・情報提供先 】
・Wikipedia(http://ja.wikipedia.org/)
・日本古典文学摘集(https://www.koten.net/tono/)
・探検コム(https://tanken.com/index.html)
・妖怪大好きブログ(http://blog.livedoor.jp/choupirako/)
・J-STAGE(https://www.jstage.jst.go.jp/browse/-char/ja)
・関西学院大学・人権研究(https://www.kwansei.ac.jp/r_human/index.html)
・「座敷わらし」の絵は「つのだじろう」氏が描き、旅館「緑風荘」に送った作品です。
・会津美里町教育委員会(http://www.town.aizumisato.fukushima.jp/030/050/index.html)
・獺祭書屋(http://dassaishooku.p2.weblife.me/)