モダナイゼーション 〜 なぜ今、必要なのか ? - 前編

ここ2〜3年で、「モダナイゼーション(Modernization)」と言う言葉を良く聞くようになってきましたが、皆さん、「モダナイゼーション」と言う言葉を聞いた事がありますか ?

また、IT業界お得意の横文字か ?! と感じてると思いますが、少しご辛抱を・・・

「モダナイゼーション」とは、

『 企業の情報システムで稼働しているソフトウェアやハードウェアなどを、稼働中の資産を活かしながら、最新の製品や設計で置き換える。 』

と意味なのですが、何故か、近頃、この言葉が持てはやされています。


似たような言葉で、その昔、「レガシー・マイグレーション」と言う言葉が、盛んに持てはやされて時期がありました。


今から20年位前の頃だったと思います。当時は、まだ企業におけるコンピューターは、「ホスト・コンピューター」が主流の時代でした。

IBM社製「z/OS」、富士通社製「MSP/EX」、そして日立社製「VOS3/FS」等、当時は、これら3社の「メインフレーム・コンピューター」が大人気で、企業の情報システム部に行くと、必ずと言っていい程、これら大型コンピューターの何れか、あるいは全てが導入されていました。

NTT系の企業に行くと、まれに、NTTの下請け企業であるNEC社製「ACOS」が導入されていたりもしましたが、たいていはテスト機で、本番業務で「ACOS」を使っている企業には、余りお目に掛かりませんでした。

弊社過去ブログでも紹介した事がありますが、当時は、空調が効いて寒く、そして、だだっ広い「マシンルーム」に、これらのマシンや磁気テープ装置、そしてハードディスク装置が整然と配置されていたものです。


ちょっと話が脇に逸れますが、その当時、私の印象に残ったのは、関西の電力会社と東京のガス会社のマシンルームです。

関西の企業では、請求書の印刷業務で、超巨大な印刷用紙を使っており、プリンターに紙を供給するのにフォークリフトを使っていました。

また、東京の企業では、ホスト・コンピューターで使うハードウェアが多すぎて、1箇所のマシンルームでは収まりきらず、3つの階に分けて配置していたのには、本当に驚きました。

この階はホスト・コンピューター、その上はプリンターだけ、さらに、その上はハードディスク装置とテープ装置、と言う構成になっており、まさに「どんだけ〜!!」と言う感じでした。

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さて、この「モダナイゼーション」ですが、「レガシー・マイグレーション(legacy migration)」とは、本来は意味が異なります。

「レガシー・マイグレーション」は、簡単に言うと、「メインフレーム」で構築された時代遅れのシステムを、最新システムに切り替える事を意味しています。

当時は、Windows系マシンやUnix/Linux系マシンを「オープン・システム」と定義付けして、システムの「オープン化」とも呼んだり、あるいはマシンの規模や大きさが小さくなるので「ダウン・サイジング」等と呼んだりしていました。

●レガシー・マイグレーション :新システム基盤への移行。業務仕様そのままで新基盤に移行。
●モダナイゼーション :システム近代化によるビジネス競争力強化。業務を見直してシステム刷新。


そして、今、話題になっているのが「モダナイゼーション」ですが、何故、近頃、このモダナイゼーション」と言う言葉がもてはやされる事になったのでしょうか ?

それには、上記でも少し触れましたが、「IT業界」と言うよりは、企業の情報システム部における、システム構築の歴史や、業務のグローバル化等が影響している事が解りました。

そこで、今回と次回の2回に分けて、今話題の「モダナイゼーション」に関して、次のような情報を紹介します。

【 前編 】
●モダナイゼーションとは ?
●レガシー・マイグレーションとの違いは?
●何故、今、モダナイゼーションが必要なのか ?

【 後編 】
●モダナイゼーションの手法
●メリット・デメリット
●モダナイゼーションの罠

それでは今回も宜しくお願いします。

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■モダナイゼーションとは ?


「モダナイゼーション」に関しては、前述の通り、企業の情報システムで稼働しているソフトウェアやハードウェアなどを、稼働中の資産を活かしながら、最新の製品や設計で置き換える、と言う意味で使われています。

そうなると、「それって、これまで行って来たマシンやソフトの入替えと何が違うの ? 」と言う事になるかと思います。

また、前に簡単に説明した「レガシー・マイグレーション」と言う言葉ありますが、これもマシンやソフトの入れ替えです。

どれも、「置き換え」とか「入れ替え」とか言っていますが、要は、「モダナイゼーション」も「レガシー・マイグレーション」も、「新しいハードやソフトにする事なんでしょう!!」となってしまいます。


「レガシー・マイグレーション」との違いに関しては、後述しますが、この「モダナイゼーション」に関しては、これまで行ってきた「置き換え/入れ替え」とは、作業工程が異なります。

通常、ハードウェアやソフトウェアを入れ替える場合、それなりに、ちゃんとした理由が必要です。

企業なのですから、「欲しい! 欲しい!」とダダをこねれば良いと言う訳ではありません。必ず稟議書が必要になります。

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ハードウェアを入れ替える場合、一般的には、ソフトウェアと一緒に入れ替えるケースが多いのですが、ハードウェア単体での入れ替えとなると、「故障」、あるいは「リース切れ」のケースが多く、後は、「費用対効果の見直し」等の理由があると思います。

それ以外では、やはり、ソフトウェアを入れ替えるので、そのついでにハードウェアも最新の物を購入すると言ったケースが多いように見受けられます。そして、ソフトウェアの入れ替えの理由としては、次のようなケースが多く見受けらます。

・ライセンス更新
・サポート切れ
・機能不足
・新型デバイス対応

企業も担当者も、何も問題が無ければ、基本的に、ハードもソフトも入れ替えたくないのが本音です。

ハードやソフトを入れ替えるには、かなりの体力や費用が必要になりますから、誰も、好きこのんで入れ替え作業などやりたくありません。

しかし、某「M社」のように、否応なしに、10年単位でサポートを強制的に停止するメーカーもいますので、ソフト/ハードの入れ替えは仕方がありません。


加えて、ハード/ソフトの入れ替えの際には、当然、現状の仕様や運用を見直し、より使い易く、そして運用し易くなるように検討を行います。このため、企業の情報システム部等では、次のような手順で作業を進めます。

(1)日々寄せられるクレーム情報や改善要求を蓄積する
(2)ハード/ソフトの入れ替えが決まると、改めて社内アンケートを実施する
(3)部門内での仕様/運用変更要求を収集して整理する
(4)上記(1)〜(3)に関して、優先度を付けて対応する項目を決定する
(5)対応項目実現のため予算を獲得する
(6)予算獲得後、要求事項を整理し、要件設計書/スケジュール等を作成する
(7)その後は、スケジュールに従い、それぞれの開発作業を進める。

通常は、(2)〜(6)まで来るのに、半年から1年位、あるいは、ケースによっては、1年以上の作業工数が掛かります。ハード/ソフトの入れ替えは、本当に大変な作業です。


と言う事で注目されているのが「モダナイゼーション」と言うシステムの入れ替え手法です。

「モダナイゼーション」と呼ばれる入れ替え作業の場合、基本的に、仕様の見直しや修正は行いません。つまり、現状の仕様そのままで、新しいハード/ソフトに移行します。

「それって何が違うの ?」

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システム運用やシステム開発に従事した事が無い方にはピンとこないかもしれません。

前述の(2)〜(6)は、ソフトウェアを開発するための作業フェーズとしては、要件設計フェーズと言われる部分の作業になります。

通常、ソフトウェア開発は、作業フェーズを大雑把に分類すると、次の様な7個程度の作業フェーズを経て「本番運用」にこぎ着けます。


1.要件設計フェーズ :システムに求める全てに関する要求事項を決定する
2.基本設計フェーズ :システムに実装する基本的な機能/処理を決定する
3.詳細設計フェーズ :システム実装機能に関してプログラミング・ベースで処理を決定する
4.製造/単体試験フェーズ :詳細設計ベースでプログラミングを行い、簡易試験で動作を確認する
5.結合試験フェーズ :機能/処理単位でプログラミングを結合して試験を何度も実施する
6.総合試験フェーズ :全てのプログラムを結合し、本番運用と同様の試験を実施する
7.切替/移行フェーズ :現行運用から新規システムへの切替や移行のための試験を実施する


と、言うような作業フェーズを経て、新規システムを本番業務に移行して行きます。

システムに関する基本的な事柄は、全て「要件設計」において決定されますので、この「要件設計フェーズ」は、非常に重要な作業となります。

このため、「要件設計」を失敗すれば、システム開発は、必ず失敗します。

よく、「動かないシステム」とか「氷漬けシステム」とか言われているシステム開発の失敗は、この「要件設計」の失敗が原因です。

このように、システム開発に関わる重要な作業ですので、社内の根幹に関わるシステムを開発する場合、この「要件設計」の作業フェーズに、かなりの作業時間が掛けなければならない理由は分かってもらえたかと思います。

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そして、他方、「モダナイゼーション」開発ですが、この「要件設計」を行わず、現状の機能要件のまま、ソフト/ハードを入れ替えますので、開発作業に掛かる負担は、かなり減ることになります。

とは言え、既存システムを他の環境に入れ替える訳ですから、それなりの調査や対策は必要になります。

近頃、よく行われている「モダナイゼーション」の事例としては、「オンプレミス」環境に作成している社内システムを、「クラウド」環境に移行するケースが数多く見受けられます。

「オンプレミス ?」、「クラウド ?」・・・また、これか !? と、眉をひそめないで欲しいのですが、全て日本語で説明すると、次の様な意味になります。


『 社内に構築/保守しているシステム環境を、他企業が提供/管理しているホスティング環境に移行する。』


「オンプレミス 」や「クラウド 」に関しては、過去ブログでも説明していますので、そちらをご覧下さい。

★過去ブログ:Society 5.0って何 ?



現在、社内で管理運用しているシステムを、他社、例えばAmazonの「AWS」やMicrosoftの「Azure」に移行する事で、次の様な点で費用対効果を高めようとする動きが活発です。

・ハード入替え :企業が、最新ハードを用意してくれるので、入れ替えの心配や対応をする必要が無い
・ソフト入替え :これも企業側が用意してくれるので、常に、最新ソフトの利用が可能となる
・センター :データセンター、昔風の呼び方だと「マシンルーム」が不要になる
・各種保守作業 :ハード/ソフト共、サービス提供企業が管理しているので、社員の対応は不要になる


上記のように、既存の社内システムを、現状と同じハードウェア構成で、他企業が提供するサービス環境に、そのまま移行するようなケースでは、ほとんどと言って良い程、現状のままサービス提供企業の環境に移行することが可能です。

但し、ネットワーク環境は、当然、社内ネットワークから、外部ネットワーク環境に切り替わりますので、その点に関しては、接続方法やセキュリティ対応が大幅に変更になる可能性はあると思います。

『 そんなに、良いことだらけなら、ウチの会社も、モダナイゼーションとか言う代物で、オンプレミスなんちゃら環境とかから、クラウドなんちゃらに移行したいので、その方法を教えてくれ !! 』

となるかもしれません。その点は、後でご紹介します。

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■レガシー・マイグレーションとの違いは ?


次に、前述の通り、今から20年くらい前に流行った「レガシー・マイグレーション」と、前章で紹介した「モダナイゼーション」の違いを説明したいと思います。

当時と言うか、現在でも、企業における業務運用の最重要項目は「業務を停止させない。」と言うことに尽きます。

そして、「業務を停止させない」ための前提条件は、「コンピューターを停止させない」事になります。

このため、当時のコンピューターで、信頼性が高いコンピューターとなると、「メインフレーム・コンピューター」だけでした。

2000年前後の時代、Microsoft社から、「Windows NTサーバー」、あるいは「Windows 2000サーバー」がリリースされ出されましたが、こと「システムの信頼性」となると、まだまだメインフレームの足元にも及ばない状況でした。


ハードウェアの信頼性において、PCとサーバーを同列に語るのは変だと言う事は分かっています。

しかし、解りやすい例として、PCで稼働させている各種ソフトウェア、例えば、Excel/Wordを初めとするMicrosoft社の「Office」、あるいは一般的な会計/経理用のソフトウェアがありますが、これらPCで使っているソフトウェアは、簡単にダウンとかフリーズしますよね ?

しかし、企業の基幹業務や勘定系業務に関しては、絶対に、システムがダウンしたり、処理が停止したりする事は許されません。

特に、銀行が提供するATMサービスを初めとする、その他各種オンライン系の業務は、大げさですが、天地がひっくり返っても停止する事など許されません。

ATMが停止すると、ニュースでも速報で流されるほどの重大事故です。また、銀行に限らず、企業の基幹業務が止まると大騒ぎです。

もう、数十年前から、物資の調達から配送、製造/加工まで、全てコンピューター上で管理されていますから、コンピューター、および業務用ソフトウェアが停止すると、会社中で上を下への大騒ぎです。


現在は、どうなっているのかは定かではありませんが、その昔、私が開発したソフトウェアも、バグだらけで、頻繁にダウンしていました。

そして、ソフトウェアが停止する度に、お客様から呼び出されて、次の様な無理難題や暴言を吐かれていました。

「1時間で直せ !!」、「早く直さないと、魚が腐っちゃうんだよ !!」、「遊びじゃねいねんで!!」

これは、その昔の話ではありますが、基幹業務や勘定系業務を停止出来ないと言うのは、今でも変わらない現実だと思います。

そして、現在でも「メインフレーム」と「Windowsサーバー」では、メインフレームの方が、圧倒的に信頼性は高いと思われます。これは、Windows系サーバーに限らず、Unix系サーバーも同様です。

それでは、何故、業務運用で「Windowsサーバー」や「Unixサーバー」が使えるのかと言うと、ホット/スタンバイのシステムの切り替えが出来るソフトウェアや仕組みが出現したからです。


ホット(現用系)/スタンバイ(待機系)のシステム運用というのは、全く同じシステムを、2つ以上の環境に構築し、現在稼働中のシステムがダウンした場合、即座に待機系のシステムに運用を切り替える事で、業務を停止せずに運用出来るようにする仕組みです。

このような仕組みが構築出来れば、ある程度、信頼性が低いシステムでも、運用を停止する事無く、継続的に運用する事が可能になります。

このように、ホット/スタンバイによる待機系のシステムの切り替えが可能になってきた事で、費用が安いWindows/Unix系のシステムに切り替える「レガシー・マイグレーション」が流行り出しました。

とは言え、銀行や保険会社等、商品として「お金」を取り扱っている企業においては、未だに基幹系業務、そして勘定系業務では「メインフレーム・コンピューター」を使い続けています。

これらの企業において、唯一、情報系業務と呼ばれる事務所系や意思決定系の業務に関しては、Windows系やUnix/Linux系システムを使用しています。

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さて、今から20年ほど前に流行った「レガシー・マイグレーション」とは、前述の通り、「メインフレーム・コンピューター」を、Windows系/Unix系のコンピューターに切り替える一連の動きを意味しています。

この「レガシー・マイグレーション」では、単に、マシンを「Windows系/Unix系」に切り替えるだけでは済みません。「レガシー・マイグレーション」を実現するためには、次のような作業が必要になります。

・業務システムの刷新(業務ソフトウェアの変更)
・データベース等、各種使用ツールの変更
・ファイルの変更
・JCLの廃止/バッチコマンド作成

要は、現行、メインフレーム環境で稼働させている全ての業務をWindows、あるいはUnix/Linuxに移行するので、次の様な移行作業が必要になります。

・調査/分析 :メインフレームで稼働している業務の洗い出し、業務プログラムの分析
・設計 :洗い出した業務/プログラムを移行するための設計
・環境構築 :ハードウェア、DB等ツール、およびネットワーク等、新規環境の構築
・移行 :実際の業務プログラムの移行、新規バッチの作成
・試験 :新規構築環境での新規業務プログラムの稼働試験、切り替え試験も実施
・切り替え :実際に全業務を、新規環境にて稼働させる



「レガシー・マイグレーション」には、このような膨大な作業が必要ですので、少なくても2〜3年の作業期間が必要になります。

特に、メインフレーム環境で実行している「COBOL」や「アセンブラ」の業務プログラムに関しては、何十年も前に作成されたプログラムで、仕様書等のドキュメントは、ほとんど存在していないので、どのような処理を行っているのかを、最初から調査/分析しなければならないので、本当に、しんどい作業になります。

一部、「COBOL」や「PL/1」で作成されたプログラムに関しては、各種移行ツールが用意されていますので、何も考えずに、単純に、ツールを使ってWindows/Unix環境でも稼働できるJava等に変換する事も可能ではありますが・・・

この移行ツール、万能ではないので、内部的に無駄な処理が多くなり、パフォーマンスが低下する等の障害が起きている様です。

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「モダナイゼーション」とは、最初に説明した通り、「企業の情報システムで稼働しているソフトウェアやハードウェアなどを、稼働中の資産を活かしながら、最新の製品や設計で置き換える。」事ですので、この「レガシー・マイグレーション」も、「モダナイゼーション」の一つの形態と、言えない事も無いと思います。

しかし、「レガシー・マイグレーション」の場合、どちらかと言うと、「モダナイゼーション」の手前の段階で、まずは、システム稼働環境を、Windows系、あるいはUnix/Linux系の「オープン環境」に移行する、という点に重点を置いています。

ところが、「モダナイゼーション」の場合は、既に「オープン化」が済んでいるシステムを、さらに最新のハードウェアやソフトウェアに移行させる点に重点を置いていますので、その点が「レガシー・マイグレーション」とは異なるのではないかと思われます。


但し、現在もメインフレーム環境で稼働している業務システムを、一気に最新の製品に移行させるのであれば、つまり、レガシー・マイグレーションとモダナイゼーションを同時に行う事になるかと思われます。

「レガシー・マイグレーション」と「モダナイゼーション」は、微妙な関係です。

結局の所、一部Sierやメーカーが、また営業案件を獲得するために、「レガシー・マイグレーション」の事を、言葉を変えて、さも新しい動きであるかのように「モダナイゼーション」と騒いでいるだけの事なのかもしれません。

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■何故、今「モダナイゼーション」が必要なのか ?


さて、今、話題の「モダナイゼーション」ですが、何故、ここに来て、急に人気が出て来たのかというと、それなりの理由があります。

まあ、例の如く、IT系メーカーの思惑も働いてはいますが・・・

前述の様に、日本中、金融系や損保系を除く、ほとんどの企業に於いては、俗に言う「オープン化」対応は終了しています。

しかし、ほとんどの業務が、Windows系/Linux系システムに切り替わったとは言え、該当システムに関しては、相変わらず「オンプレミス環境」、つまり社内で稼働しているので、次のような保守関連費用が掛かります。

・マシンルーム/データセンターの維持費
・ハードウェアの保守サポート費用
・保守担当要員の給与


「既存システムの維持費」には、上記のような項目が含まれます。

そして、企業が、IT関連に投資している年間費用の50%〜60%程度は、これら維持費になっているという統計資料もあります。


加えて、日本の多くの企業は、「バブル崩壊」後の後始末の時に、自社の「情報システム部」を情報小会社として本体から切り離し、最後には、大手Sierや大手IT企業に売り払ってしまっています。

また、自社内に「情報システム部」を維持している企業でも、働いている社員の多くは契約社員で、正規雇用の社員は、主任/係長レベル、俗に言う「役付き社員」以上と言うケースも珍しくありません。


このような状況で、現状のまま既存システムの保守を継続しようとしても、現在は、「人手不足」の状況が深刻化していますので、誰も「3K(きつい、苦しい、帰れない)」と言われる情報システム部門の職場では、働きたがらないと思います。

現在の人手不足に関しては、過去ブログでも紹介していますので、そちらもご覧下さい。

★過去ブログ:バブルの二の舞いか ?

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さて、このような状況を改善するため、貴方が、企業の「最高情報責任者/CIO(Chief of Information Officer)」だった場合、どのような対応を取りますか ?

問題点は、大きくは、次の3点です。

(1)IT投資を抑制したい
(2)とは言え、システムの刷新は行わなければならない
(3)情報システム部の人材不足を解消したい

特に、(1)と(2)は、「トレードオフ」の関係にありますから、普通の状況では、その実現は難しいと言うか、無理だと思われがちです。

しかし、ここに「クラウドによるホスティング」を当てはめると、どうなるでしょうか ?


●IT投資の抑止 → ホスティングを行えばIT投資を減らす事が可能となる
●システムの刷新 → これもホスティングで解消できる
●人手不足 → ホスティング先がハードの保守を行うので社員は不要

「何だ ! ネコの手を借りなくても全て対応出来るじゃないか !? 」

となります。これくらいの考えなら、「CIO」じゃなくても、少しIT系の知識さえあれば、誰でも考え付く内容だと思います。ネコでは無理ですが・・・

そして、さらに「システムの刷新」と言う課題に関しては、本ブログで紹介してきた「モダナイゼーション」を当てはめれば、さらに効果を上げる事が可能です。

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つまり、前章で説明した「モダナイゼーション」までの流れの内、「オンプレミスによるオープン化」から「ホスティングによるクラウド化」の流れが、本章の説明になります。

さらに、情報システムにおける最近の課題としては、複数デバイスへの対応と言う問題も起きています。

従来、社内情報システムは、あくまでも「社内利用」を想定した設計になっており、社外からシステムにアクセスする事など想定していません。

ところが、2018年1月開催されている「第196回 通常国会」で問題となった「働き方改革」ではありませんが、近頃では、営業社員が、外部から社内システムにアクセスするケースが増加しています。

これまでの営業社員の働き方は、概ね、次の様な形でした。


【 午前 】
・出社して、翌日以降のアポイントを取る
・外出してアポイント先を訪問する
【 午後 】
・引き続きアポイント先を訪問し、夕方に帰社する
・帰社後に営業報告を作成する
・その後、余裕があれば、翌日以降のアポイントを取得する
・さらに、その後、「営業会議」と称した「パワハラ会議」が開かれる


営業職は、こんな無駄な働き方ばかり行っているので、一向に生産性が上がらなかったのですが、近頃では、経営者も「ブラック企業」と呼ばれたくない事から、会議等が無ければ、特に会社に出社する必要もなく、報告書等も、外出先から入力して、社内システムに送信するケースが増えて来ています。

加えて、「東日本大震災」を契機とした「事業継承」や「在宅勤務」が注目されるようになり、営業職以外の社員に関しても、在宅勤務を実施する企業も増加傾向にあります。

こうなると、単に社内システムをクラウド化するだけでは済まず、スマートフォンを初めとするモバイル端末から、社内システムにアクセス出来る仕組みを構築する必要があります。


そこで、各社とも、システムの基本仕様はそのままで、モバイル端末から社内システムにアクセス出来る仕組みを検討する事になり、この点が「モダナイゼーション」が注目される事になった次第です。

つまり、「今、何故、モダナイゼーションなのか ?」と言うと、大きくは、次の3つの理由が挙げられると思います。

●自社システムのホスティング化によるIT投資抑止
●同じく、ホスティングによるシステム保守要員の削減
●働き方の変化に伴うマルチ・デバイス対応の必要性

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今回、「モダナイゼーション」をテーマに、その前編として、次の様な情報を紹介しましたが如何でしたでしょうか ?

●モダナイゼーションとは ?
●レガシー・マイグレーションとの違いは?
●何故、今、モダナイゼーションが必要なのか ?

キーワード「モダナイゼーション」でWebを検索すると、未だに「レガシー・マイグレーション」に関する情報が大量に表示されますが・・・まだ、金融/損保系以外の企業で、メインフレームを使っている企業って、そんなに沢山あるのでしょうか ?


まあ、私が、まだ前職に在籍していた頃、今から15年位前においても、IBM社製「z/OS」では、1個の筐体の中に、メインフレームUnix/Linuxを共存させ、ソフトウェアも内部でシームレスに連携させる仕組みも提供していましたので、業務運用の仕方を、きちんと考えれば、闇雲にオープン化対応する必要も無いとは思います。

但し、そうなると、今回のブログでも紹介した「新型デバイス」での対応は難しいと思いますので、やはり、既存資産を活用しながら、何らかのモダナイゼーション対応を行う必要はあるのかもしれません。


今回は、「要件設計フェーズ」を省略して、最新ハードウェア/ソフトウェアに対応する方法として、この「モダナイゼーション」を紹介しましたが・・・私は、今更なのですが、この紹介の仕方には、疑いを抱いています。

私自身は、ソフトウェア、つまりプログラムを作成する作業において、「要件設計が不要」等という事は、絶対に有り得ないと思っています。

例えば、既存システムの要件を踏襲した形で、前述の「新型デバイス対応」を行うとした場合でも、次の様な要件を明確にしなければ、システムの開発など行うことは不可能です。

・どの新型デバイスに対応するのか ?
・そのためには、どの部分を改修する必要があるのか ?
・新型デバイスに対応した場合、パフォーマンスは、どこまで保証するのか ?
・開発スケジュールは ?
・予算は ?
・セキュリティは ? ・・・・

今、簡単に考えただけでも、上記以外、軽く10項目以上の項目に関して、何らかの要件を決めなければならない項目を思い浮かべる事が出来ます。

これら要件を無視して、「既存システムの要件と一緒だから・・・」の一言で開発に着手した、トンデモナイ事態になります。


Webで検索したメーカーや業者のウリ文句を鵜呑みにせず、本当に必要な事を、きちんと洗い出した上で、開発に着手した方が、絶対に良いと思います。

その上でも、次回、モダナイゼーションの後編として、次の様な項目を紹介します。

●モダナイゼーションの手法
●メリット・デメリット
●モダナイゼーションの罠

是非、次回もご覧になって頂ければと思っていますので、宜しくお願いします。

以上

【画像・情報提供先】
Wikipedia(http://ja.wikipedia.org/)
・日経クロステック(http://tech.nikkeibp.co.jp/)
独立行政法人 情報処理推進機構(https://www.ipa.go.jp/)

【株式会社 エム・システム】
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