バブルの二の舞いか? - 人手不足への対応


「人手不足だ !!」と伝えられ始めて、もう3年位になりますが、特定業界では、相変わらず人手は足りていない様です。


有効求人倍率も、2014年6月に、1992年のバブル末期以来となる「1.10倍」を超える数値となっています。それ以降は、ほぼ継続的に「1.0倍」を超え続けています。


その昔、「Once Upon A Time」・・・私は、1985年に社会人になったのですが、その翌年の1986年から始まった「バブル」。それから約5年間、日本は、「土地神話」に乗せられて、何の根拠もない好景気に踊る事になります。


その当時も、徐々に人手不足が深刻になり、バブル全盛期となる1990年代に突入した頃には、日本中、何処もかしこも「ネコの手」が必要な状況でした。


私も、当時の会社の社内勉強会で、「人手不足への対応」を検討した事を、今でも覚えています。


あの頃の「人手不足」は、多くの企業が、経営多角化に乗り出し、コア・ビジネス以外、余計な事業に手を出す事が大流行していましたので、本当の意味での「人手不足」だったと思います。


その後の「バブル崩壊」で、余計な事業に手を出した会社は、その殆どが倒産してしまったのですが・・・


まあ、それは脇に置くとして、今回の「人手不足」は、あの頃の「人手不足」とは、全く種類が異なるのではないかと私は考えています。


そこで、「何故、今、人手不足なのか ?」と言う事から始めて、その「人手不足」に、どうやって対応していくのかに関して、次のような点を考えて見たいと思っています。


●人手不足の現状
●人手不足の原因
●人手不足の実態
●人手不足への対応


まあ、「システム屋」が書いているブログですので、最後は、「業務のシステム化で全てOK !!」となるのは目に見えていますが、それでも、ちゃんとした根拠がありますので、出来れば、最後までご覧下さい。


それでは今回も宜しくお願いします。


■人手不足の現状


まず、現在、本当に「人手不足」になっているのか ? 日本全体が「人手不足」なのか ? について調べて見ました。


その結果、2017年3月時点における「日本商工会議所」の調査では、調査対象企業2,776社(回答率68%)の内、約60%の企業が「人手不足」と回答している様です。


そして、その中でも、特に、建築、飲食、小売、運輸、等、俗に言う「労働集約型業界」で深刻な「人手不足」が発生している事が解ったそうです。


確かに、「人手不足」に関するニュースでは、次のようなニュースばかり報道されているような感じがします。


ヤマト運輸、配送料金を値上げして、ドライバーを確保/12〜14時の時間指定配達を廃止
・コンビニ各社、24時間営業を見直し
・「すき家」を運営するゼンショウホールディングス、営業店舗を縮小、各地で大量閉店
・新国立競技場、工期の遅れ/周辺道路の工事に遅れも


全て「労働集約型産業」ばかりです。




ちなみに、「労働集約型産業」とは、事業活動の、ほとんど全てが、「労働力」、つまり「人手」に頼る産業です。事業の継続、および拡大のために「人手」が必要な事業になります。


その意味で、「介護事業」等も、少し前までは深刻な「人手不足」だったのですが、現在では、何故か、それほど騒がれなくなっています。一部、事業者により差異はあると思いますが、業界全体では、落ち着いて居るようです。


恐らく、「介護」を必要とする人は沢山いるのですが、運営施設が足りていない状況なのだと思います。つまり、運営施設には「人手」が足りているが、施設自体が不足しているのだと思います。



他方、「労働集約型産業」の逆の産業としては、「資本集約型産業」があります。


「資本 = お金」と思われるかもしれませんが、経済用語としての「資本集約型産業」とは、「固定資本」、つまり「生産設備」になります。


具体的な例としては、自動車産業が有ります。


少し、と言うか、昭和の頃の「自動車産業」と言えば、前述の典型的な「労働集約型産業」でしたが、現在では、機械化/システム化が進み、工場は「産業機械」で溢れ、「人手」は疎らです。


このように、「産業設備」に多額の資本を投入し、「人手」、一昔前には「ブルーカラー」と呼ばれた労働者を大量に解雇して発展して来ました。


また、近年では、これらに加え「知識集約型産業」と呼ばれる産業もあるようですが、この業態は、「知識 = 人の頭脳」となるので、基本的には、「労働集約型産業」の一形態なのだと思います。


まあ、弊社が属している、俗に言う「IT業界」も、この手の「知識集約型産業」になるかと思います。


但し、従来の「労働集約型産業」とは異なり、専門職となりますので、専門知識がないと「労働力」足りえませんので、そこが従来の「労働集約型産業」とは異なるのだと思います。



この様に、現状では、「労働集約型産業」において、深刻な「人手不足」が発生している様ですが、どうして、このような「人手不足」が発生したのかを考えて見ます。



■人手不足の原因


前章で、「労働集約型産業」において、深刻な「人手不足」が起きている事を紹介しましたが、日本経済は、日銀が言う程、好景気でも何でもないと思います。


それにも関わらず、何故、こんなに「人手不足」になってしまったのでしょうか ? その原因は、恐らくは、10年位前にさかのぼると思います。


バブル崩壊後、日本は「デフレ不況」に襲われ、企業存続のために、一番費用が掛かる「人件費」を削るため、ほほとんどの企業が「リストラ」を行いました。


特に激しい「リストラ」を行ったのが、「労働集約型産業」です。その理由は、これまで説明してきた通り、デフレによる売り上げ減少をカバーするための人件費削減です。


このため、先に挙げた、建築、飲食、小売、運輸、等の「労働集約型業界」において「リストラ」が行われ、「リストラ」された労働力は、別の業界に、「非正規社員」として転職する事を余儀なくされました。


また、この間、バブル崩壊後の1993年〜2005年は、「就職氷河期」と呼ばれ、新卒も、「非正規社員」となる以外、働く機会が与えられませんでした。


さらに、2007年、アメリカの「サブプライムローン危機」に端を発した2008年の「リーマンショック」で、事態はさらに悪化の一途を辿る事になります。


ところが、(この言葉、私は大嫌いですが)2011年に発生した東日本大震災後の「復興需要」、そして2012年末に成立した「第2次安倍内閣」による「円安誘導」で、事態は変わり始めます。


さらに、2013年9月に、2020年のオリンピック開催地が東京に決定した事から、東京を中心に「五輪需要」が始まり、これにより、上記「復興需要」と合わせて建設業界において「人手不足」が拡がりだしました。


加えて、相変わらず「百貨店不況」は続いていますが、それとは逆に、Amazonを始めとする通信販売(通販)が好調なので、小売/卸や運輸業界で、深刻な「人手不足」が起きてしまったのだと思います。


つまり、現在の「人手不足」は、「デフレ不況」の反動によるものがある、といえると思います。


そして、追い打ちを掛け様に、次のような現象が、「人手不足」に拍車を掛けています。


●「団塊の世代」の退職
●「生産年齢人口」の減少
●高齢化による介護業界での労働需要増加


団塊の世代」の大量退職により「生産年齢人口」が減少した状態で、「団塊の世代」の人々の高齢化により介護業界で一気に人手不足が発生し、介護業界に労働力を奪われた他の「労働集約型産業」で、深刻な「人手不足」が発生した、とも考えられます。


団塊の世代」の大量退職により「生産年齢人口」が減少
→ 「団塊の世代」の高齢化により「介護業界」で一気に人手不足
→ 「介護業界」に労働力を奪われた他の「労働集約型産業」で深刻な「人手不足」発生


と言う流れがあると考えられます。


このように、今回の「人手不足」は、単に一時的、循環的な労働需給のタイト化というより、まさに長期的、そして構造的な「人手不足時代の到来」と捉えるべきものだと思っています。



■人手不足の実態


この様に、特に「労働集約型産業」においては、深刻な「人手不足」が発生しており、その「人手不足」は、これまでの経済環境や経営方針に原因があったのだと思います。


しかし・・・世の中は、単に「人手」が足りない事だけが問題なのでしょうか ?


確かに、「労働集約型産業」、特に知識/能力を余り必要としない現場では、単に「人手」が欲しい/必要なので、「人手不足」と言う言葉/表現を使っても問題は無いのかもしれません。


しかし、それ以外の現場を見てみると、「人手不足」なのではなく、「人材不足」が起きているような感じがします。


つまり、


『 人手は直ぐに集まるが、本当に、必要な人材が集まらないので、何時までたっても人手不足になってしまっている。 』


のではないでしょうか ?


求人倍率が高止まりしているのは、必要な「人材」が確保出来ない事が原因なのではないかと思います。




しかし、これが事実であれば、さらに深刻な問題が潜んでいる事になります。


それは、企業において、次のような問題が起きているからだと思われます。


●社内教育を行える社員がいない
●社内が非正規社員ばかりなので、教育すべき社員がいない


従来の日本社会では、新人を採用し、一から、OJTで教育して一人前にする仕組みがありました。ちょっと古い言葉で言うと「徒弟制度」のような仕組みです。



しかし、現在の日本社会では、前述の様に、ここ10年間で、新入社員を採用出来ていないので、社内の年齢構成がイビツな「歯抜け」状態になっています。


先輩/後輩の関係が無くなり、いきなり上司/部下の関係になってしまっています。このような状況では、OJTは行う事はできません。


このため、社員が育たず、何時まで経っても「使えない社員」ばかりが増えていく事になってしまいます。



さらに、社員教育を行いたくても、社内には、急ごしらえで集めたパートやアルバイト、あるいは派遣業者から派遣された非正規社員ばかりの状態です。


このような非正規社員社員教育を行っても、ある程度の期間が経過すれば、皆、会社を去ってしまいます。


派遣社員が来る → 教育を行う → 会社を辞める → 別の派遣社員が来る → 教育を行う → 辞める


このような「負の循環」が続く職場で、誰が真剣に社員教育を行おうと思うでしょうか ?



企業が、目先の利益ばかり優先し、人件費を削るために、非正規社員ばかりを雇用していたツケが、ここに来て表面化してきたのだと思います。


■人手不足への対応


さて、それでは、「人手不足/人材不足」に対しては、どのような対応を取れば良いのでしょうか ?


なり振り構わず、何とか社員を集め、数年掛けて社員教育を行い、知識/能力を身に着けさせてから現場に送り出す。


まあ、これが正しい解決策なのだと思いますが・・・しかし、この場合、必要な人材に育つまで、最低でも3年位は掛かってしまいます。それでは、恐らく会社/組織は持たないかもしれません。


「労働集約型産業」では、夜間対応や24時間対応に関しては、「他社が行うから」ではなく、本当に必要な業務なのか等の業務の見直しを行うと共に、主要業務への労力集中を図る必要があると思います。


「あれも、これも」では、絶対に「人手不足/人材不足」は解消できません。


また、業務の見直しに関しては、必要/不必要の見直しを行うもの当然ですが、必要となった業務に関しても、どうすれば作業の効率化を図れるのかも検討する必要があります。


「今まで、こうだから」ではなく、「今までは、こうやってきたが、ここを変更すれば、作業が早く、そして正確に終わる。」と言うように、個々の作業の見直しを行う事が必要です。


また、その際、「システム化」の有無も同時に検討すべきだと思います。




冒頭の説明の様に、「システム屋」が書くブログだから、最後は、「業務のシステム化で全て丸く治まります。」と言いたい所ではあります。


しかし、以前、過去ブログにも記載した通り、業務システムには、得手/不得手があります。全てが「IT化」で解決出来ない事もありますので、まずは、業務の「棚卸し」が必要です。


★過去ブログ:開発を依頼する前に − 外注会社に連絡する前に自社で行うべき事


また、「労働集約型産業」での「業務のシステム化」は難しいと言うか、正直、無理だと思います。


建築、飲食、小売、運輸、等の現場では、確かに、一部業務をシステム化していますが、これらの業務の場合、実際に人間が動く事で業務が成り立っています。


このため、将来的に、人間の代わりに、ロボット、AI、あるいは自動運転車、等が、サービスを提供出来るようになれば、「人手不足/人材不足」を解消できるようになるかもしれません。




ちなみに、「業務のIT化」を行わない企業は、どうしても、無駄とは言いませんが、単純作業に、膨大な時間を掛け過ぎる傾向があります。


例えば、ある種のデータから管理表等の一覧表を作成している単純業務のケースでは、業務をシステム化していない場合、作業担当者は、当然、個々のデータを開いて、数十分から数時間と言う膨大な時間を掛けて、必要事項のコピー/ペーストを行う事で一覧表を作成します。


ところが、この業務が「システム化」されていれば、担当者は、「実行ボタン」をクリックするだけで、数秒から数分の間で、一覧表を作成する事が可能になります。



私どもは、創業当初から「時間対効果」と言うキーワードを使い、業務の効率化支援を行って来ました。


従来、企業が設備投資を行う場合、「費用対効果」を重視して投資の可否を決定します。


しかし、現在のように、少ない社員で大量の業務をこなさなければならない時代にあっては、「費用対効果」よりも「時間対効果」を重視すべきだと思っています。


「時間対効果」とは、少ない人手や時間で、いかに多くの業務を、正確に実行出来るのかに重点を置く考え方です。


確かに、投資には、それに見合った効果が必要なのは理解出来ます。しかし、このご時世、費用と言う尺度の代わりに、時間と正確性を意識した方が良いと思います。





さらに私どもでは、「業務のシステム化」により、「業務の属人化」も排除出来ると思っています。


「属人化」とは、社内において、「この仕事は、あの人が居ないと出来ない。」と言う、特定人物に依存した業務を意味しています。


現在のように、社内に、パート、アルバイト、あるいは派遣社員等、非正規社員が多く在籍する状況においては、作業は、「誰でも正確に」行えるような仕組みが必要です。


このような時に、「あの人でないと・・・」等と、悠長な事を言っている場合ではありません。


「業務のシステム化」を図れば、余程の事さえ無ければ、マニュアルさえ作ってしまえば、後は、通常、誰でも作業を行う事が可能になります。


さらに、言い方を変えれば、「業務のシステム化」さえ行ってしまえば、非正規社員だけでも業務を遂行できますので、このような単純作業は非正規社員に任せ、プロパー社員には、もっと重要な「コア業務」を行わせた方が企業の発展に寄与出来ると思います。



これまでの内容を整理すると、次のようになります。

【 労働集約型産業での対応 】
・業務の見直し
・夜間対応や24時間対応の必要性の検討
・店舗等の採算性を検討し、人員の最適配置を検討する
・今後に備え、ロボット/AI/ドローン等、業務の省力化に向けた検討を始める


【 その他一般業界 】
・業務の棚卸しを行い、単純作業は、出来る限り「システム化」を図る
・「時間対効果」を意識し、少ない社員/時間で、いかに多くの業務を正確に処理するのかを検討する
・「業務の属人化」を排除し、誰でも、正確に、多くの作業を行える仕組みを検討する
・社員のダイバーシティ化も推進し、女性や高齢者でも業務が遂行できる仕組みを検討する
・プロパー社員には「コア業務」を、非正規社員には「単純作業」を行わせる事で事業の発展を図る


このような取り込みを行えば、「産業人口」が減少しつつある今の時代においても、必ず、対応策は見つかると思っています。



今回は、「バブルの二の舞いか? - 人手不足への対応」と題して、次のような内容を紹介しましたが、如何でしたか ?


●人手不足の現状
●人手不足の原因
●人手不足の実態
●人手不足への対応


大方の予想通り、最後は、「システム化対応」で、チャンチャンとなってしまいましたが、何も、これは、私だけの考えではありません。


経済評論家の皆さんも、賛同している考え方です。現時点で、「人手不足/人材不足」に、効果的に対応できるのは、「システム化」だけだと思います。



しかし、「人手不足」が深刻な、「労働集約型産業」には、残念ながら「システム化」は通用しません。


まあ、同じIT系となりますが、ちょっと毛色が違う「ロボット」や「自動運転」、あるいは「ドローン」等は、今後、この「労働集約型産業」での活躍が期待できると思っています。


いつも混んでいる「回転寿司」なども、「ロボット」系の技術を活用し、少人数で業務を遂行している良い事例だと思います。


あの混雑する店舗を、恐らくは、非正規社員となるパート/アルバイト等の十数人で切り盛りしている訳ですから、大した物だと思います。



コンビニ等の24時間対応も、「システム化」により、遠隔集中監視、無人レジ、出入り口の自動ロック、そして警備会社との連携を図れば、ある程度の無人化も対応可能ではないかと思ってしまいます。



弊社も、今後も引き続き、「時間対効果」を重要キーワードとして、社会に貢献して行きたいと思っています。


それでは、次回も宜しくお願いします。

以上

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