「IT音痴」が招く会社の危機 〜 あなたの会社は大丈夫 ?


皆さんの回り、特に、経営幹部の中に、「IT音痴」、または「IT嫌い」の方は、いらっしゃいますか ?


私の会社は、そもそも「IT関連」なので、「IT音痴」や「IT嫌い」の人間はいませんが、現在のビジネスにおいて、「IT」は、無くてはならない物となってしまいました。


今から20年位前なら、計算は電卓、資料は手書き、会議では大量のコピー・・・まあ、それでも良かったかもしれません。


しかし、現在において、そんな非効率的な作業を行っていては、無駄な残業が増えるだけですし、コピー用紙も無駄に、そして大量に浪費するので、社員も会社も不幸になるだけです。


社員の仕事は、会議資料を作る事が目的ではありませんし、経営者の仕事は、社員に、無駄な会議や残業を強いる事ではありません。



社員の仕事は、会社に利益をもたらす業務を遂行する事で、経営者の仕事は、会社を永続させるために、どのような業務に注力するのかを決定する事です。


それにもかかわらず・・・社員は会議資料を作るために残業し、経営者は、無駄な会議を開いて社員の貴重な時間を奪い、さらに、肝心な問題点は話し合わずに、資料の読み合わせだけで会議が終わってしまう・・・


そんな事ばかり行っていては、社員も会社も永続できません。



確かに、何らかの会議、例えば営業会議や進捗会議等は必要だと思います。


問題は独りで悩んでいても解決できませんし、進捗状況は必要に応じてチェックする必要があります。


かと言って、皆さん、会議をするためだけに会社に通っている訳ではではありませんよね ?


会議資料なんかは、ツールを使えば簡単に作成出来ます。会議資料を事前に作成出来れば、会議を開催する1週間前に資料をメール等で配信し、資料を読んだ上で会議に参加する事で、数字の読み合わせ等、会議の無駄な時間を省略する事ができます。



「IT」を効果的に使う事で、本来の業務、本業に集中出来るようになります。


「IT」とは、解っていると思いますが、「Information Technology」の略です。つまり、情報を効果的に用いる技術の事です。


「IT嫌い/IT音痴」の方は、PCやExcel/Word等のツールを導入する事を「IT化」と思っているかもしれませんが、本当の「業務のIT化」とは、各種ITツールを用いて、業務を効率化する事なのです。



そこで、今回のブログでは、「業務のIT化」にとって、非常に危険な、次のようなタイプの経営者を紹介したいと思います。

●タイプ1 :IT化を誤解している経営者
●タイプ2 :操り人形タイプの経営者
●タイプ3 :知ったかぶりタイプの経営者

そして、これら「危ない経営者」をタイプ別に紹介した後、何で、日本では、このような経営者が増えてしまったのか、と言う点と、その対応策と思われる点を紹介します。

●何故、こんなに日本になったのか ?
●その対応策は ?


それでは今回も宜しくお願いします。

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■IT化を誤解している経営者


「IT嫌い/IT音痴」の経営者の中には、PCやツールを導入しさえすれば、利益が増えると思っている方が存在します。


「また、また・・・嘘だろう ?!」と思うかもしれませんが、本当の話です。


まあ、これは「IT化」の話を、経営層に説明した方の責任なのかもしれません。


つまり、前述の通り、「業務のIT化を進めることで、無駄な作業が減り、本業に専念できるので、会社の業績が向上する。」と言う道筋を、ちゃんと経営層に説明しないまま「業務のIT化」を推進した事が問題だと思います。




確かに、「IT嫌い/IT音痴」の経営者に、「IT化」の話をするのさえ大変な作業だと思いますし、ましてや「業務のIT化」のメリットを、「IT嫌い/IT音痴」の経営者に理解させる事は、本当に大変だと思います。


「IT嫌い/IT音痴」の経営者は、「SFA」とか、「CRM」とか、「ERP」とか・・・とにかく、英語3文字に対するアレルギーがありますので、まずは、この拒絶反応から治して行かなくてはなりません。


「業務のIT化」は、あくまでも「手段」であって「目的」ではありません。前述の会議と同様、会議をすれば会社が儲かる訳ではありません。


会議で問題点を解決し、かつ方向性を決めて、何時までに、誰が、どうやって対応するのか等、「5W2H」を決めて、チェックするから会社の利益が向上して行くのです。


「業務のIT化」も同様です。


「業務をIT化」することで、これまで作業時間が掛かって大変だった下記のような作業が簡単に終わるので、作業担当者は本業に専念できるようになります。

・営業会議資料の作成
・見積書の作成
・経営会議の資料作成
・各種分析資料の作成・・・等


例えば、営業は、資料作成時間が減るので、その分だけ訪問企業を増やすことが出来るので、会社の利益向上に貢献できます。



総務・経理は、資料作りのための残業時間を減らす事ができるので、こちらも、会社の利益向上に貢献できます。


また、経営会議の開催直前まで掛かっていた会議資料が、ITツールを駆使する事で、簡単に、そして正確に作れるようになるので、資料の事前配布が可能になります。


経営幹部は、事前に資料を精査できるので、会議では、重要な点だけ話し合う事が出来るようになります。


このように、「業務のIT化」を進める事で、社員も経営者も、本業に専念出来るようになります。


但し、「業務のIT化」を進めるためには、様々な、そして面倒な作業もあります。


例えば、

・現在の会社の業務で、何が問題なのか ?
・どうすれば、その問題を解決出来るのか ?
・問題を解決するために、どのようなツールが必要なのか ?
・このツールの購入や導入には、どの位の費用が掛かるのか ?
・ツール導入のための費用は、妥当な金額なのか ?
・ツールを導入するために、現在の業務を、どのような変更する必要があるのか ?
・この調査や検討を、何時までに整理しなければならないのか ?


こちらも、「業務のIT化」のために必要となる「5W2H」を、きちんと決めて、全社を挙げて、取り組む必要があります。


「取り敢えず、こんなツールを導入すれば作業が楽になりそうだ。」では、全く話になりません。


故に、業務のIT化を推進する担当者は、独りで作業を行わず、経営層を巻き込んで、全社的な作業として「IT化」を進める必要があります。


「業務のIT化」は、一人二人で行えるほど、簡単な作業ではありません。


まずは、「IT嫌い/IT音痴」の経営者に、「ITの本質」を理解してもらう必要があります。


これが、業務改革の第一段階となりますが、この点に関しては、過去ブログで説明していますので、そちらを参考にしてもらえればと思います。


★過去ブログ:開発を依頼する前に − 外注会社に連絡する前に自社で行うべき事


そして、この「IT化」の本質を理解せずに誤解している経営者は、売り上げが落ちると、すぐに「業務のIT化」に責任を押し付けます。


つまり、「業務をIT化すれば利益が上がると聞いたからITに投資したが、何故、利益が落ちるんだ !! 話が違うぞ !! もうITには投資しない!!」となってしまいます。


もう、本末転倒です。


こんな考え方をするならば、ついでに、


「何故、営業会議を開いているのに売り上げが上がらないんだ !! それなら、営業会議は廃止する !!」


とでも言って欲しいものです。

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■操り人形タイプの経営者


そして次に、注意しなければならないのが「操り人形型の経営者」です。このタイプの経営者にも、注意が必要です。


このタイプの経営者は、「業務のIT化」の重要性は理解しているのですが、「業務のIT化」の本質を理解していないので、誰かの言葉に、直ぐに乗せられてしまうタイプの経営者となります。


例えば、今、世間では、IT関係用語で、「IoT」とか、「ビッグデータ」とか、「フィンテック(FinTech)」と言う言葉を聞く機会が増えています。


そうなると、この操り人形タイプの経営者は、これら「IT用語」が気になりますので、社内、あるいは社外において、ITに詳しい人間から、これら「IT用語」の意味を聞き出します。


「近頃、IoTとか、ビッグデータとか言う言葉を聞くけど、いったい何なの ?」




しかし、自分で調べずに、他人に聞くので、たまたま質問した人の回答が、「貴方の会社でも、IoTに取り組んだ方が良いですよ。」だった日には、もう大変・・・


翌日から、「我が社もIoTに取り組む事にした。ついては、次回の経営会議までに、IoTに取り組む方法を検討して報告せよ !」などと言い出す事になります。



「業務のIT化」が重要だと思っているので、今流行りのITが、何か会社の役に立つのか知りたいのは解ります。しかし、流行りのITが、自社で取り組むべき事業か否かは別問題です。


また、そんな事を言われた社員は、とんでもありません。経営者からの「お告げ」なので、無視する訳にも行きません。


適当な報告書を作って、その場をやり過ごせるなら「ニャンとかなる」かもしれませんが、それにしても、無駄な労力を費やす事になってしまいます。


私が以前勤務していた会社でも、似たような事がたびたびあり、その都度、対応に苦労しました。




前職は、当然、IT系の企業だったのですが、そこに、国内大手自動車会社の情報システム部の課長が転職して来たのですが・・・この元課長が「クセ者」でした。


結局、元の職場で、役に立たなくて転職してきたのですが、さすがに頭だけは良く、また言葉も巧みなので、ウチの会社の社長のお気に入りになってしまいました。


そのため、社長のアドバイザーみたいな立場になり、なんでも、かんでも「前の会社では、こうでした。」的な事を言い出しては、社内規約を変更し出したから、もうたまったものではありませんでした。


私の経験した悲劇は、特に、「業務のIT化」の話ではありませんが、社長の「操り人形化」ですから、パターンとしては同じです。


この「役立たずの元課長」は、大企業の業務形態を、社員数100名程度の中小企業に押し付けることで、社内の権力を握ろうとしていました。


また、言うことは「まとも」なのですが、行動が全く伴わず、プロジェクトが失敗すると部下に責任を押し付け、成功すると自分の成果にすると言う、「人間のクズ」でした。


転職して来た当時は、ほとんどの人が、「あの人は、さすがに大企業から来た人だ !」と褒めちぎっていましたが、私は、最初から、何か胡散臭い人間だと思って、余り近づかないように気を付けていました。


その結果、彼を信奉していた社員達は、開発プロジェクトの失敗を、全て押し付けられて、何名も会社を辞めていく羽目になってしまいました。


最後には、誰も、この「元課長」の事は信頼しなくなったのですが、私が、会社を退職するまで、社長は、「元課長」を信じていたようでした。


現在では、社長は変わっていますが、このように経営者が「操り人形化」してしまうと、その会社の社員は大変です。


今回は、「IT嫌い/IT音痴」の経営者が陥る危機について紹介してますが・・・


私の所属した会社は「IT系の企業」ばかりなので、「IT嫌い/IT音痴」の経営者は居ませんでしたが、それでも経営者が「操り人形化」してしまうと、とんでもありません。


私が経験した「操り人形社長」の悲劇ですが、これは、すべての企業に当てはまる脅威です。


また、私が所属した企業は、分類すれば「IT系企業」となりますが、「IT系」にも、様々な業態があります。


簡単に分類しても、業務運用系、事務処理系、金融系、製造系、ホームページ系、アプリ系・・・このため、ITに携わると言っても、業態が異なれば、別業種と考えた方が良いと思います。


私が属したのは「業務運用系」パッケージ・ソフトウェアを開発/販売するIT会社でしたが、例えば、その会社で「事務処理系」のソフトウェアを導入するとなると、その費用対効果等に関しては、ITの素人同様、最初から「5W2H」を検討する必要があります。



上記の「元課長」は、大企業出身なので、その企業が使っていた「ERP」等、大規模システムを導入する、等と言い出していたら、それこそ、大問題になっていたかもしれません。


「業務のIT化」は、身の丈に合ったシステムを選択する必要があります。


ERP(Enterprise Resource Planning)」システムは、製品の受発注管理工程と製造管理工程、そして社員の給与までを一括して管理する大規模システムなので、社員規模が数千人程度の企業でなければ、導入しても費用対効果を出すことが出来ません。


導入費用は、安く見積もっても「数億円」規模になります。


こんな大規模システムを、社員数100名程度の会社に導入しても、費用対効果など出せず、赤字になるのは、最初から明らかです。


また、「業務効率化のためのIT投資」は、ITのプロが担当しても大変です。


過去にも、国内金融機関が、何社も、何行も、社内システム統合や、社内基幹システム再構築で失敗しており、裁判沙汰にもなっています。


現在でも、会社の方針を「占い師」に頼っている経営者が居る、という話はよく聞きます。


また、何か行動を起こす時に、縁起を担いで「大安」に行ったり、風水に頼ったりしている経営者がいることは有名です。


特に有名なのは、シャープを買収した「鴻海」の社長が、常に「風水」を意識しているのは周知の事実となっています。


経営者は、最後は、自分で物事を決断しなければならないので、何かに頼りたい気持ちは良く解ります。


しかし・・・自分で決断できなくなったら、その時は、引退すべき時期ではないでしょうか ?


「業務のIT化」に限らず、アドバイザーに何か意見を聞くことは良いことですが、あくまでも参考意見として聞くだけで、「操り人形」にはならないように注意が必要です。

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■知ったかぶり経営者


そして最後に、会社にとって一番恐ろしいのタイプの経営者を紹介します。


それは、「知ったかぶりタイプの経営者」です。


少しでもITをかじった経験があり、自分を「ITのプロ」だと錯覚しているタイプの経営者です。


このタイプの経営者は、自分が「ITのプロ」だと思っているので、誰の意見も聞かず、自分の思ったままに行動するので、一番厄介です。


さらに、この手のタイプの経営者には、「新し物好き」タイプが多いも特徴です。


このため、前述のように、「旬なキーワード」に敏感で、今ならば、先にも登場した「IoT」、「FinTech」、「BigData」「Industry 4.0」等が挙げられますし、10年位前なら、(これも登場した)「ERP」、「SFA」、「CRM」、「SCM」、「BI」、「DWH」等も、よく使われましたが・・・皆さん、意味解りますか ?


もう3文字英語のオンパレードです。

・IoT : Internet of Things / ハード(物)を回線で繋げて管理する仕組み
・FinTech : Financial Technology / 金融と技術を組み合わせた造語、金融テクノロジー
ERP : Enterprise Resource Planning / 統合業務パッケージと呼ばれる
SFA : Sales Force Automation / 営業支援システム
CRM : Customer Relationship Management / 顧客管理システム
・SCM : Supply Chain Management / 統合物流管理システム
・BI : Business Intelligence / 意思決定支援システム
・DHW : Data WareHouse / BIのための統合データベース




「IT嫌い/IT音痴」の方が聞いたら、頭に血が昇るような英字の組み合わせですよね。


全て、アメリカ、おそらくシリコンバレー付近から発生した言葉で、それぞれがITシステムやITツール、または新しいITテクノロジーとなります。まあ、「Industry 4.0」等は、ドイツが発信源ですが・・・


そして、これらの言葉を流行らせるのは、IT系ジャーナリストと、その宣伝文に便乗したハード/ソフトウェア・メーカーと「Sier」です。


Sier(エス・アイアー)」とは、「System Integrator」の略で、言葉通り、システムの統合等を行う、大手ソフトウェア開発会社になります。


ソフトウェアの開発会社の種類等に関しては、下記ページに、「システム開発会社とは」と言う項目があり、そのページで詳しく説明していますので、本ブログでの説明は割愛させて頂きます。


初めて外注化される企業様へ



つまり、IT系ジャーナリストが、アメリカで誕生した最新テクノロジーを雑誌の記事で紹介すると、新規案件の獲得を目論む「Sier」が、その記事をネタにして、顧客企業に、新システムの構築のための営業攻勢を仕掛けます。


その結果、「Sier」の営業戦略に引っ掛かった企業が、新規システム等導入する必要もないのに、無駄な費用を掛けて、新システム構築に突っ走る事になるのですが・・・



この「知ったかぶりタイプの経営者」は、新し物好きなので、常に、IT系の雑誌を読んで最新テクノロジーに関するネタを仕入れます。


そして、根拠など何もないのに、何となく自社でも使えそうだな〜と思うと、さっそく自社担当の「Sier」の営業を呼び付け、導入に向けた検討を行います。


そうなると、現場は混乱の極みです。情報システム部などは、自分達の頭を飛び越え、いきなりトップダウンで、聞いた事も無い新システムの導入の話が舞い降りてくるので、たまったものではありません。


それと、この話のキモは、「何の根拠も無く」と言う所です。


「知ったかぶりタイプの経営者」には、ITスキルに対するバックボーンがありません。


ITスキルがあると言っても、恐らくは、ITツールを販売していた営業とか、Excelの簡単なマクロを作っていた程度のスキルしか持っていないと思います。


実際に、システム構築に向けた要件設計や運用設計、あるいは問題解決に向けたアプローチ方法などのスキルや経験は無いと思います。


まあ、こんなスキルがあったら、単なる思い付きで、新規システムの導入など指示するはずはありませんからね・・・


経営者なので、経営に関するスキル等は十分持っていると思いますが、ITスキルは貧弱なので、雑誌の事例記事や、他社の動向に、すぐに振り回されます。


あの企業では、このシステムを入れて効果を出している、この企業でも、こんなシステムを導入している・・・


雑誌の記事には、成功事例しか載せませんし、実際にシステムを導入しても、その真価が問われるのは、導入してから最低でも1年以上経過した後です。システム導入後、直ぐに成果など出るはずもありません。


システム導入後は、業務運用が変わるので、絶対に何らかのトラブルは発生します。雑誌の記事で、導入後、直ぐに効果が出た等と書かれている記事は、恐らくは、嘘っぱちだと思われます。


にもかかわらず、「知ったかぶりタイプ」で「新し物好き」の経営者は、薄っぺらなITスキルを武器に、猛然と、最新システムの導入に突き進むので、会社にとっては非常に厄介な人物です。


経営者、あるいは次期経営者が、「この手」の人物だった場合、暴走を思い止まらせる事ができる人物を傍に付けるか、「CIO(Chief Information Officer/最高情報責任者)」職を設けた方が良いと思います。


変に、アドバイザーを付けると、前述の「操り人形」に変身してしまう可能性があるので、会社として、正規の役職を設けた方が賢明かもしれません。


「暴走社長」と「操り人形社長」、さて、どちらが良いですか ? 何か、「究極の選択」みたいになってしまいました。

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■何故こんな日本になったのか ?


アメリカ等、先進国と言われている国々では、現在、「ITスキル」が欠けている人物は、経営者にはなれません。


それでは、何故、日本において、このように、「ITスキルに乏しい経営者」が増殖し続けるのでしょうか ?


私は、次の2つの点が、企業における「業務のIT化」を妨げているのではないかと推測しています。


まず、第1点目が、経営者の高齢化です。



「ITスキル」と「高齢化」、直接は結び付きませんし、年を取っていても、バンバン、ITツールを使いこなしている方もいらっしゃいます。


しかし、一般的に、これは、あくまでも一般的な話ですが、ご高齢の方は、ITを毛嫌いする傾向が強いと思います。


交流会などで、私よりも高齢の方と名刺交換をすると、名刺に、メール・アドレスが無い方をよく見かけました。


そんな人を見ると、いつも、「この人は、何が目的で、交流会に参加してるんだろう ?」と疑問に思ってしまいますし、そんな人とは、(失礼かもしれませんが)長話をしても仕方が無いので、早々に話を切り上げていました。



それでは、実際に、日本における社長の平均年齢は、どの位なのかと言うと・・・「東京商工リサーチ」の2015年の調査によると、社長の平均年齢は、何と「60.8歳」なのだそうです。


そして、社長の高齢化は、右のグラフを見れば明らかなように、2010年は「59.8歳」だったものが、どんどん高齢化しているのが解ります。


現在、国内では、「BCP問題」、これも3桁英字ですが、「Business Continuity Planning(事業継承計画)」がクローズアップされていますが、まさに、この点も「業務のIT化」を妨げている点と同じだと思います。


つまり、事業を後継者に譲ることが出来ないので、社長が、そのまま、ずっ〜と事業を経営している状態が続いているのです。



但し、全産業で、このような社長の高齢化が進んでいるのかと言うと、さすがに、そこまで最悪の状態ではなく、不動産業、卸売業、製造業で高齢化が進んでいる半面、ネット業界、ソフトウェア業界では、低年齢化が進んでいるようです。


ちなみに、ソフトウェア産業内では、私は、既に高齢者になってしまっているようです。ガックリ・・・


それと、世界的に有名なコンサルティング会社「ブーズ・アンド・カンパニー(現:Strategy&/ストラテジーアンド)」による「2009年 世界の上場企業2500社に対するCEO交代調査」によれば、退任するCEOの就任時平均年齢は、世界平均で「53.4歳」との事です。


このように、日本において、社長の高齢化が進めば、いつまで経っても、「業務のIT化」は進まないのではないかと思ってしまいます。


そして、次の問題は、企業における「情報管理部門」の位置付けにあると思います。


「情報システム部」、「IT推進室」、「システム管理部」、「システム統括部」・・・企業における情報管理部門は、このような部署名で呼ばれていると思いますが、その元を辿ると、そのほとんど全てが、「電算室」と呼ばれていました。



そして、この「電算室」は、1960年代、経理部からの依頼で、社内の経理業務を、コンピューターを使って自動化する事から始まりました。

このため、最初の肩書は、恐らく「経理部/電算室」とか、「総務部/電算課」とかだったのではないかと思います。


私が、この業界に入った時には、まだ、一部、製造業系の会社などでは「電算室」と言う肩書も残っていましたが、ほとんどの企業では、上記「情報システム部」等のような肩書でした。


しかし、担当する業務といえば、そのほとんどの業務が、社内の経理業務をシステム化した業務ばかりでした。


その昔、昭和の「電算室」は、上の画像のような雰囲気でした。



磁気テープ装置、どデカいハード・ディスク装置、それに、フロッピー・リーダー、それに、やたらと音が大きくて会話も聞こえないインパクト・プリンター装置、さらに、コンピューター端末も、昔のブラウン管TVのように、奥行きが長く、やたらと重い端末でした。

う〜ん、何か、郷愁を感じますね、ではなくて・・・


つまり、「電算室」とは、社内の経理部や購買部の「下請け部門」でしかなかったのです。


このため、社内での「電算室」の位置付けは、「お荷物部署」、「下請け部署」、「浪費部署」、「コスト部門」等と、とんでもない部署名で呼ばれたり、「電算室」に転属になると「左遷」とか言われたりしていました。


それが、1980年代には、業務の多角化により、経理部門以外の業務も扱う事になったので、「室」から「部」には昇格はしたのですが・・・社内での位置付けは、従来通りでした。


そして、1990年代になると、さらに状況は悪化し、バブル崩壊と共に、「情報システム部」の独立、子会社化が進みます。


当時の「情報システム部」の業務は、「部」には昇格したとは言え、結局の所、他部署が作成したデータを入力し、それを自動計算/加工して、何らかの帳票を作成することでした。


現在のように、データ分析からセキュリティに至るまで、ITに関わる幅広い業務を担当していた訳ではありませんでした。


つまりは、会社に取って「情報システム部」は、コア業務でも何でも無く、分社化/外注化しても、なんら問題のない部署だったのです。


さらに、バブル崩壊の余波で、コストカットの嵐が吹き荒れていましたので、「コスト部門」である「情報システム部」を本体から切り離し、なおかつ、当時、既に存在していた「Sier」と合併させて、情報子会社化する動きが加速しました。


当時は、この情報子会社化を「戦略的アウトソーシング」とか何とか、カッコ良い名前で呼んでいましたが、結局のところは、「トカゲの尻尾切り」と同じ行為です。コスト部門を切り離して、見た目の利益を嵩上げしていただけの話です。




さて、そんな暗い過去のある「情報システム部」ですが、近頃では、風向きが変わりつつあるようです。


前述の通り、社内のセキュリティの重要性が問われる時代になりましたし、数々のITツールが販売されるようになり、その影響で、「情報システム部」の地位も上がり始め、さらに子会社化した「情報部門」を、再び本社機構に取り込む動きも活性化しているようです。


日の当たらない日陰の部署から、苦節、半世紀、50年と言う長い年月を掛けて、ようやく日の当たる部署になりつつある「情報システム部」ですが・・・・ここに来て、新たな問題が明らかになってきました。


つまり、これまで「下請け部署」としてしか活動した経験がないので、いきなり「IT戦略を立案せよ !」と言われても、何をして良いのか、さっぱり解らないのです。


「情報子会社」として、本社機構とは、組織上は離れましたが、実際には、本社から仕事をアウトソーシング業務として発注してもらっているだけなので、その実態は、昔と何ら変わっていません。


そんな状況で、いきなり本社機構に戻され、「自分で仕事を考えろ !」と言われても、右往左往するだけで、何も出来ないようです。


そりゃそうですよね ! 50年もの間、仕事を与えられるだけで、自ら考える事を行って来なかった訳ですから、「単細胞に脳細胞を付けても」、自ら考える人間にはなれません。


その結果どうなるのか、と言えば、結局は、「Sier」に頼むか、別途、ITコンサルを頼むかと言う話になってしまい、「情報システム部」は、結局の所は、単なる伝言係になってしまっています。


「情報システム部」は、「Sier」が勧めたITツールを導入し、それを社内で稼働させるためだけに苦労しているようです。


「情報システム部」は、今が好機ですので、必死になって、社内の「ITコンサルテーション部門」になるよう努力する必要があると思います。


何れにしろ、社内に「IT戦略」を考えるだけの人材が存在しないので、企業のITへの投資が伸びないのが実情です。



このように、経営者の高齢化と、社内にIT戦略を立案できる人材がいないことが原因で、社内での「ITによる業務効率化」が進まないのだと思います。


また、経営者の無知をカバーしたり、暴走を阻止したりするために、経営層に、ITに詳しい「CIO」を設けようにも、社内に人材がいないので、それさえ出来ません。


つまり、現在の日本における「IT問題」に関しては、これまでの「ツケ」が、回ってきたような感じがします。

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■その対応策は ?


それでは、このまま「指を咥えて」、会社が衰退して行くのを傍観するしかないのかと言うと、そうでもありません。


誰か、勇気のある方が、皆のために犠牲になって、経営者の首に、鈴を付けに行けば良いかもしれませんが・・・


今回の問題は、そう簡単ではありません。「鈴を付けて」、社長が来たら逃げ回っていれば良い、と言う問題ではありません。


今回の問題の根幹は、社内に、ITによる業務改革やIT戦略の立案を行うために必要なスキルを持った人間が居ない、と言うことです。


本来であれば、情報管理部門の社員が、日々の業務を通してITスキルを取得し、経験を積む事で、社内業務のIT化を推進するのが筋だと思います。


しかし、前述の通り、現在の情報管理部門は、「既存業務のお守り」で精一杯です。


また、近年では、ITの裾野が広がり、情報管理部門の担当範囲は、単に「業務のIT化」だけでは済まなくなってしまいました。

・基幹業務システムの安定運用/問題点の改善
・ハードウェア/ソフトウェアのライフサイクル管理
・社内セキュリティの確保
・情報資産管理


さらに、これら業務に加え、前述の通り、今後のIT戦略として、次のような点も検討しなければなりません。


・現状のハードウェア構成で、何時まで運用できるのか ?
・今後のソフトウェアのライセンス更新や追加のスケジュール立案
・現状のセキュリティ管理で問題ないのか ?
・各種メンテナンス費用を削減できないのか ?
・IT関連業務のコア化/非コア化の検討/アウトソーシング
・今後、どのような業務でIT化を推進しなければならないのか ?
・新規市場を攻めるためには、何をIT化しなければならないのか ? ・・・・等


現在の情報管理部門は、基幹業務の安定化だけ見守っていれば良い部署ではなくなっています。


「で・・・どうするの ? 」と、言う事ですが、次のような手段が考えられます。


●経営者にITの重要性を理解してもらう
●経営者がITの重要性を理解したなら、「CIO職」を設立してもらう
●社内に人材がいないのであれば、外部から「CIO」を招聘する
●経営者の「IT嫌い/IT音痴」が治らないなら、経営職から退いて頂く
●情報管理部門を育てる
●情報管理部門を専門分野別に分割する



基本的には、社内の人材を育て、その方を「CIO職」に就けるのが自然の流れかとは思いますが・・・如何せん時間が掛かります。


また、社内に「CIO職」を設けるにしても、経営者が納得しなければ、役職だけ設けても、それは「絵に描いた餅」状態で、意味がありません。


そんな「CIO職」は、役職を設けても、誰も就任したがりませんし、就任した人も、直ぐに辞めてしまうだけだと思います。


まずは、経営者のITに対する姿勢を改めさせ、従来型の「業務安定思考」から、将来型の「ビジネス戦略思考」に、考え方を変えさせる必要があります。


このように、考え方の変更ができない経営者は、残念ながら、世代交代をしてもらい、後進に道を譲るしかないと思います。



経営者、あるいは経営者の考え方を変えた上で、社員に対して、「CIO職」の重要性を説明し、社内に「CIO職」の浸透を図ります。


特に、外部から「CIO職」を招聘した場合、社員が拒絶反応を起こし、折角、招聘した「CIO」が、社内で孤立してしまう可能性が、非常に高くなると思われます。


また、「操り人形」の箇所で私が経験したような事を起こさない為にも、招聘する人に関しては、(これは非常に難しい作業ですが、)人選を誤らないようにする必要があります。


故に、「CIO職」は、社員/役員として雇用するのではなく、その道のプロを、コンサルタントとして雇った方が良いかもしれません。


コンサルタントなら、成果が出なければ、簡単にすげ替えが出来ますし、社内の「政争」を招く恐れもありません。


但し、外部の人間ですので、外部の「Sier」等と結託し、外部利益重視に走る可能性がありますので、その点は、注意する必要はあるかもしれません。


さらに、「国内に人材が居なければ海外から」と言う話もありますが・・・これは、社内が、あらかじめ国際化していないと無理があると思います。


日本人は、ただでさえ外部から招聘した人間には排他的ですので、これが海外からとなると、さらに障壁が高くなります。


また、「言葉の壁」もあるので、余程、下準備が整っていなければ、実行しても失敗すると思います。



また、「CIO」を設置したからと言って、直ぐに「IT戦略」の立案/実施が出来る訳はありません。


情報管理部門は、既存業務で手一杯です。既存業務への「アドオン」で、「IT戦略の立案/実施」など、出来る訳もありません。



特に、最近では、Windows関連のOSやServer、あるいはOfficeのバージョン・アップが目白押しなので、情報管理部門は、社内インフラ環境の整理で大忙しです。


この状況は、Microsoft社のOS「Windows 7」のサポートが切れる、2020年まで続くと思います。まあ、2020年1月には、サポートが停止するので、その前、2019年上半期頃までは、PCの入れ替え作業で、大わらわだと思います。


このような状況ですので、「IT戦略の立案/実施」を行うためには、情報管理部門の社員を増やすか、あるいは作業自体を減らす必要があります。


社員数を増やすには、原資が必要ですし、このご時世、ITスキルを持った人間を雇用するのは、至難の業です。


となると、現在の作業を減らす方策を検討する事になりますが・・・一番、手っ取り早いのは、業務やインフラのアウトソーシング化です。


現時点では、Microsoft社の「Azure」、あるいはAmazon社の「AWS」が、最有力候補となります。


どちらも、「クラウド・コンピューティング・サービス」と呼ばれるサービスの一環で、IT環境を、クラウドベースで提供するサービスになります・・・と言っても、IT嫌い/音痴の方には、チンプンカンプンだと思います。


本件に関しては、後日、個別ブログで紹介したいと思いますが、もっと簡単に言うと、IT業務を稼働させる環境をレンタルで貸してくれるサービスになります。


つまり、自社で、IT関連業務を稼働させる環境を保持する必要がなくなる事を意味します。


その結果、情報管理部門では、業務そのものに対する責任は負いますが、ITインフラの保守業務からは解放される事になります。


「何だ、それだけか !」と思うかもしれませんが、情報管理部門における、ITインフラの管理は、とても大変で、かつ重要な作業です。


業務に支障が生じない様に、ITインフラ環境を整備し、停止しないように運営し続ける事は、至難の業です。



また、前の話に戻ってしまいますが、「情報管理部門」は、その生い立ち時点から、「減点主義」が用いられる最悪の部署です。


経営者や社員は、「ITインフラは、普通に動いて当たり前。止まれば、お前達、情報管理部門が悪い!」となりますが、「ITインフラを、普通の状態に保っている事こそ重要なのです。」


経営者や社員は、まずは、この思い違いから、考え方を治す必要があります。


ITインフラは、「インフラ」と名前が付いている事から、普通の人ならば、容易に想像が付くと思いますが、電気、水道、ガスと同様、企業にとっての【ライフライン】です。


ITが止まれば、業務が立ち行かなくなります。それにも関わらず、「動いて当たり前」と言う考え方しか持っていないのが過ちなのです。


と言う事で、情報管理部門が行っている業務のコア/非コアを見極め、アウトソーシング出来る業務は、出来る限り外部に任せることで、情報管理部門が、新しい業務に着手出来るよう、手助けしてある必要があります。


私個人の考えですが、今、企業が取るべき道は、社内への「CIO」職の設置と、IT専門職の育成、それと、ITを活用した業務効率化とIT戦略の立案/実施では無いかと思います。


また、上記の通り、IT業務のアウトソーシング化を進め、非コア業務は、外部に委託する事で、情報管理部門の業務負担軽減を図る事も重要だと思います。

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今回、「IT音痴が招く会社の危機 〜 あなたの会社は大丈夫 ? 」と題して、次のような内容を紹介して来ましたが、いかがでしたか ?

●IT化を誤解している経営者
●操り人形タイプの経営者
●知ったかぶりタイプの経営者
●何故、こんな日本になったのか ?
●その対応策


別に、経営者のタイプを紹介し、「あ〜居るよね、こんなタイプ・・・」で終わるだけではなく、今後の情報管理部門の在り方まで、紹介してきました。


私は、情報管理部門の出身ではありませんが、昔から、該当部署の方々がお客様でしたから、その辛い立場は、よく理解していました。


まあ、私の場合、もっぱら、情報管理部門を訪れては、ソフトウェアのバグを説明しては、彼らに誤ってばかりいたのですが・・・


それでも、私が開発したソフトウェアが原因で業務が停止すると、彼らが、「減点主義」で罰せられる事を知ってからは、お客様に迷惑を掛けないよう、 (実際には無理ですが) バグの無いシステムを作ろうと考えた原点でもあります。


そして、「 バグを減らすためには、的確なテストを、数多くこなすしかない!」と思い至った原点でもあります。一方、社内では「テスト魔」とも呼ばれてしましたが・・・



故に、当時は、正直なところ、担当者に怒られて、「この野郎 !」等とも思いましたが、今では、感謝の気持ちで一杯です。


だからこそ、情報管理部門には、今が、稀にみるチャンスの時期だと思います。


この好機を逃さず、社内の「お荷物部署」ではなく、「最重要部署」として、活躍して欲しいと思っています。



それでは次回も宜しくお願いします。

以上

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