断るテクニック 〜 断る事で相手に信頼される方法


本ブログでは、これまでにも、下記のような、様々なテクニックについて紹介してきました。

コピー・ライティング
「プロジェクトを成功に導く方法」について
「パスワードの管理方法」について
「外注先企業の選定方法」について

そこで、今回は、「断るテクニック」と題して、苦手な女性から誘われた場合の上手な断り方を・・・ではなくて、仕事上、どうしても受け入れることができないオファーや無理難題の断り方を紹介したいと思います。


特に、私どもはIT系企業ですので、次のようなケースを前提とした「断り方」を紹介したいと思います。


■ケース・スタディ
●無茶な機能追加や仕様変更要求への対応方法
●直ぐに「切れそうな」相手への対応方法
●立場を利用してくる相手への対応方法
●絶対に折れない/譲らない相手への対応方法


また、その他にも、【Yes,but法】等の「断りのテクニック」もありますので、このようなテクニックについても合わせて紹介したいと思います。


■テクニック
●Yes,but法
●前向きに断る方法
●クッション法
●サンドイッチ法


特に、仕様変更や機能追加と言った、無理難題を押し付けて来る非常識な顧客に対して、相手が気付かない内に、顧客の要求を、追加開発案件にすり替えてしまう魔法も紹介したいと思います。


それでは今回も宜しくお願いします。

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■ケース・スタディ

仕事上で何かを「断る」と言うと、色々なケースが、次々と思い浮かびます。

・何かを売り込んでくる営業電話
・交流会やセミナー/パーティーの誘い
・協業/パートナーの申し込み/誘い


このような申し込みに関しては、特に、現時点では利害関係は無いと思いますので、何も行動は起こさずに無視していれば良いと思います。


問題となるのは、既に契約書を取り交わしているお客様、あるいは商談中のプロスペクトユーザー(見込み顧客)との間で起こる次のような問題です。また、上司からの無理な要求もあります。


・既に仕様が決定した仕組みへの更なる機能追加
・決定済仕様への仕様変更要求
・下請けイジメ(値下げ要求/納期短縮、等)
・上司からのパワー・ハラスメント


このような理不尽な要求を言い出す人達が存在する事自体、社会が「歪んでいる」としか思えませんが、だからと言って、先方の要求を無視する事はできませんので、何とか理不尽な要求を「断る」必要があります。


また、このような不当な要求を言い出す人達は、通常、世間一般の「常識」が欠如していますので、一般常識を元にした対応は無意味です。


弊社の場合、不当要求が起こりそうな状況を、あらかじめ排除する方法を取っていますので、契約済のお客様とは、余り上記のような問題は発生しません。


とは言っても、やはり一部のお客様、特に上場している企業様に多いような気がしますが、いくら契約書に、次のような文言を入れても、平気で理不尽な要求をしてくる方も見受けられます。


●契約書に添付した別紙「詳細作業項目」に記載した作業以外の対応をご希望された場合、別途費用のお見積りを行い、請求書を発行させて頂きます。
●また、別紙「詳細作業項目」に記載した作業以外の対応を行う場合には、追加作業に必要な作業工数分だけ納期を延長させて頂きます。
●お支払いが遅れた場合、年利18%(複利)の延滞金をお支払頂きます。
●納品物にはシステム保護機能を導入させて頂きますので、ご入金予定日を過ぎますとシステムにパスワードを入力する必要があります。パスワードを入力しない場合、システムは自動停止します。


と言う事で、次のような場合の対応方法をご紹介します。

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●無茶な機能追加や仕様変更要求への対応方法

「確認したら、この機能が漏れていた」
「担当に確認したら、この処理の仕方が違っていた」


製造工程に入ってから、平気で機能追加や仕様変更を言い出す「非常識」なお客様。このような「非常識」な顧客は、IT業界に限らず、どこにでも存在すると思います。


また、特に酷いのは、納品後に「機能不足」や「仕様変更」を言い出すお客様です。


限られた予算の中で、全ての要求事項に対応したいのは解ります。しかし、このような要求は、明らかに「後出しジャンケン」です。


「お客様は神様」ではありません。不当な要求は、明確な態度で、直ちに断る事が重要です。


曖昧な態度で、回答を引き伸ばしても何も良いことはありません。逆に、回答を引き伸ばすと、相手の期待が高まりますので、断った後のリアクションが激しくなることが予想されます。



そこで問題になるのは「断り方」です。杓子定規な次の様な対応では、今後、そのお客様からは仕事は貰えません。


・「無理です」
・「出来ません」


お客様は神様ではありませんが、それなりのリスペクトは必要です。


いきなり「無理です」/「出来ません」では、顧客としては、要求事項を断られるだけでなく、自身の存在そのものまでも否定されてしまったように感じる人もいます。


また、お客様との交渉では、出来る限り「無理です」/「出来ません」は使わない方が良いと思います。私は、余程の事が無い限り、お客様との交渉で「無理です」/「出来ません」は使いません。


それでは、どのように対応するのかと言うと、お客様の要求を断るのではなく、お客様の要求を実現するため必要条件を提示すれば良いのです。



例えば、機能追加を言い出された場合、次のように回答します。


「解りました。それでは、この機能を追加するための工数を追加費用として見積り、その上で、追加開発のスケジュールを作成して提出します。」


あるいは、「了解しました。この機能を追加するためには、追加開発工数がn日必要になりますから、n日分の費用のお見積書と追加開発のスケジュール表を提出します。」


もちろん、お客様としては、追加費用とか追加工数など意識せず、今のままの費用とスケジュールで、追加機能を実現したいと思っているはずです。


しかし、こちらとしては、そんな事は「百も承知の上」で、追加工数と追加費用を認めるならば、機能追加が可能である、と言うことを伝えるだけです。これが、無理難題を言い出した顧客への交渉術となります。



また、前述の通り、断る事も「交渉」の一種です。しかし、「交渉」と考えてしまうと、どうしても「勝ち負け」を意識してしまいます。


そこで、「断る」件に関しては、「交渉」ではなく「相談」と思った方が良いと思います。


さらに、「相談」すると言う姿勢そのものが、相手への敬意の現れになりますから、まさに「一石二鳥」です。


つまり、今回の要求事項を実現させるための「相談」と言う姿勢で、追加費用と追加工数の件を持ち出せば良いのです。



顧客が、追加工数と追加費用を認めれば、追加案件の獲得と言うことで、貴方の営業成績/評価は上がります。


また、顧客が機能追加を諦めた場合でも、元々は「断る」つもりの案件ですから、こちらとしては「痛くも痒くも」ありません。これで機能追加案件が受注できれば「一石三鳥」です。


但し、上記のように「トントン拍子」にストーリーを進ませるためには、大前提として、前述のように、契約書に次の文言が必要になります。


・契約書に添付した別紙「詳細作業項目」に記載した作業以外の対応をご希望された場合、別途費用のお見積りを行い、請求書を発行させて頂きます。
・また、別紙「詳細作業項目」に記載した作業以外の対応を行う場合には、追加作業に必要な作業工数分だけ納期を延長させて頂きます。


この2項が契約書に存在しないと、お客様は、当然の事ながら、既存の契約期間内で、かつ既存の契約金額で機能追加を実現させようとします。


この点は、このテクニックの「キモ」ですから注意して下さい。


このテクニックは、こちらが顧客の申し出を断るのではなく、顧客が、こちらの申し出を断るように話を持って行くことが重要な点です。



後述する「Yes,but法」と似ていますが、「Yes,but法」は、申し出を断ることに主眼を置いていますが、こちらのテクニックは、あわよくば、追加開発案件の受注を目指していますので、「Yes,but法」よりも高度なテクニックとなります。


元々は、お客様が言い出した要求事項ですが、交渉過程で要求事項そのものを「すり替えて」しまうので、お客様は、最後まで、自分が言い出した要求事項の話をしている思い込む点が凄い所です。

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●「直ぐにキレそうな」相手への対応方法

このように「直ぐにキレそうな」相手の場合、相手がキレる前に、一旦退却することが重要になります。


怒りを抑えることが出来ない人は、一旦怒り出すと、自分でも感情をコントロールすることができないので、思いつくまま、後先を考えずに、とんでも無い事まで言い出します。


もう、子供の喧嘩と同じレベルなので、「お前の母さんデベソ」みたいに訳の解らない事まで言い出します。


このような状態の人には、何を、どう理論的に説明しても埒が明きません。


もしも、相手がキレる前に退却できなかった場合、その場合は、もう覚悟を決めて、相手の言うことを、最後まで聞いてあげるしかありません。


きっと「腸が煮えくり返る」ような思いをするはずですが、そこはグッと我慢して下さい。


決して、この時に代替案を提示したり、反論したりしないで下さい。余計に話がこじれるだけです。



このような状態に陥った人には、とにかく冷静になってもらう必要があります。


検討する旨を先方に伝えて、暫く時間を置くようにして下さい。


その後、先方の要求事項のメリット/デメリットを整理し、きちんと説明すれば相手も納得すると思います。


それでは、どのようなタイプの人が、「キレるタイプ」なのか ? と言うことですが・・・これは、恐らく外見だけでは判断できないと思います。


私も、これまでの社会人経験で、何名かの「キレる」人を見たことがありますが、それぞれタイプが異なるので、上手く説明できませんが、強いて特徴を挙げるとすると、次のような人が危ないような感じがします。


・自信過剰の人
・プレッシャーに弱い人
・責任回避の傾向がある人


これらの要素が微妙に混じり合っている人に対して、何か「琴線」に触れるような態度を取ってしまうと、急に「キレて」しまうことが多いような気がします。



そして何が「琴線」に触れるのかと言うと・・・


例1:自信過剰な人に対して、その自信を打ち砕くような言動を取った場合
例2:プレッシャーに弱い人に対して、許容範囲を超えたプレッシャーを与えた場合
例3:責任回避の傾向がある人に対して、回避できない責任を負わせようとした場合


その他にも、色々な条件が組み合わさった場合に、相手は「キレる」訳ですが、貴方が相手にしている人が、過去に「キレた」事があるか否かは、通常、誰も教えてくれません。


「相手の顔色をうかがう」と言う言葉は余り好きではありませんが、何かを「断る」場合、それなりに「顔色」を見た方が良いかもしれません。

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●立場を利用してくる相手への対応方法


「直ぐにキレる」人への対応も難しいですが、それ以上に難しいのは、「立場」を悪用してくる人間への対応です。


「立場」とは、社内であれば上司/先輩になりますし、社外であれば発注元など、有利な立場を利用して、無理難題を押し付けてくる最低の人間のことです。


今で言う「パワー・ハラスメント」や「下請けイジメ」になります。



基本的に、「立場」を悪用する人間には、より強い「立場」を利用するしか対処方法がありません。つまり、


社内の場合:上司の「上司」、先輩の「先輩」、先輩の「上司」、社内「相談窓口」、等
社外の場合:発注元会社の部門長、貴方の会社が二次請けなら一次請けの責任者、公正取引委員会、等


「立場」を悪用する人間に、論理的な方法は通用しません。また、前述の様に、冷却期間を置いても、全く意味はありません。


このような人間は、常日頃から「立場」を悪用することに慣れています。「立場の悪用」が当たり前だと思っています。罪の意識など毛頭ありませんから、やはり、この場合は、「後ろ盾」となる「バック様」にお出まし願うしか対処方法はありません。



しかし・・・「立場の悪用」がまかり通っている企業の場合、「腐ったリンゴ」は、1個だけでは無いと思います。


「パワー・ハラスメント」や「下請けイジメ」が、厳しくバッシングされるようになった現在でも「立場の悪用」を行う社員が存在する企業は、恐らく、社内全部が「腐っている」可能性が高いと思います。


組織全てが「腐っている」ケースとしては、「JR北海道」や「自衛隊」等が典型的な例です。


JR北海道」は、歴代社長が何名自殺しても、結局、社内だけでは組織風土を改革できず、「JR東日本」に援助を求めました。


自衛隊」に至っては、ドメスティックな環境を改善する方法さえないので、恐らくは、永遠に「組織内イジメ」が横行すると思います。


このように、「立場を悪用する」人間が存在する組織は、組織自体が腐っている可能性が非常に高いので、この場合は、「JR北海道」のように、外部を活用するのが効果的だと思います。



社外を活用するケースで、一番効果的なのは、前にも記載した「公正取引委員会」です。


弊社のような小さな会社にさえ、毎年「公正取引委員会」から、取引状況を確認する書類が送付されてきます。


しかし、弊社の場合、幸いにも、「立場を悪用する」顧客は、2〜3社しかいないので、「公正取引委員会」への通知は、現在では見送っている状態です。


また、「下請けイジメ」を告発できるのは、相手の資本金が「1,000万円超」になりますので、少し難しい面もあります。


さらに、取引先に、「バック様」を活用したことがバレるリスクもあります。


「頭越しに交渉した事がバレると、相手の面目を潰してしまう」事になるので、バック様の活用は、最後の最後まで、取っていた方が良いと思います。


しかし、「公正取引委員会」も、その辺は慣れたもので、相手に告発先企業がバレないように、注意してくれます。


去年、「消費税転嫁対策」に伴い、ある企業の事を「公正取引委員会」に告発したのですが、その場合も、ちゃんと相手の取引先情報を調べ上げ、弊社だけでなく、他の取引先に関しても、消費税を正しく支払っているか否か、外堀から埋める作業を行っていました。


公正取引委員会」も、「腐ったリンゴ」は、1個だけとは思っていないようです。

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●絶対に折れない/譲らない相手への対応方法


そして、最後の交渉相手ですが、これまで紹介してきたケースの、どれにも当てはまらないケース、「とにかく、何が何でも、絶対に折れない/譲らない」相手について記載します。


この場合の「折れない/譲らない」理由としては、次の3つの理由が考えられます。


(1)訳が解らずに反対している
(2)立場上、譲れない/折れない状況にある
(3)自分は正しいと思っている


そして、その中でも、最も可能性が高いのは、「(1) 訳が解らずに反対している」ケースだと思います。


(1)以外、(2)や(3)の場合は、何となく理由が解りますので、それぞれ、次のような対応を取る事で、相手から譲歩を引き出すことが可能になります。


(2)の場合:相手の立場を尊重した上で妥協点を探る、あるいは交渉相手の上司に相談する
(3)の場合:交渉相手の上司に相談する


「絶対に自分が正しいんだ !!」と思っており、他の人の言うことを聞かない人の場合、前述の「キレる人」に豹変する可能性もありますので、注意が必要です。


また、「交渉相手の上司に相談」した結果、その人を、担当プロジェクトから外したり、あるいは強制的に、上からの指示で「意に反する」事をさせたりした場合、相手から反感を買う可能性があります。


出来れば、上司を同席させた上で、一緒に話し合った方が良いと思います。


政治力を利用して、裏で工作する必要もあるかもしれませんが、その場合には、裏工作が相手にバレないようにする必要があります。



そして、もっとも厄介なのが「訳が解らずに反対している」人です。


このような人の場合、実際には多くの理由があるとは思いますが、次の理由で反対しているケースが数多く見受けられます。


(1)「良かれ」と思って積極的になっているが的がズレている
(2)新しい部署に配属されたばかりで張り切っているが的がズレている
(3)役職が上がり張り切っているが的がズレている


要は、「的がズレている」事が原因で、無理難題を言い出している可能性が高いので、相手に恥をかかせる事無く、説得できれば、こちらの言い分を理解してくれる可能性は高いと思います。


公衆の面前で、相手に「恥をかかせる」と、その人は、一生、貴方の敵対勢力になりますから注意して下さい。例えば、次のような言葉は禁句です。


・まだ、ご経験が浅いようですから、状況を理解できていないと思いますが・・・
・こちらの部署に配属されて、まだ日が浅いようですからご理解頂けないようですが・・・
・張り切っているのは解りますが・・・



また、上記とは別に、「他の人から言わされている」可能性や、「間違った情報を吹きこまれている」可能性もあります。


このような場合には、「何故、そう思うのか ?」と言うことを、根気よく質問しながら探って行く必要があります。


質問に答えられない場合には、自分の考え以外で、意固地になっている可能性が高いと思います。


そして、「黒幕」の存在が明らかになった場合には、面倒かもしれませんが、「一緒に説得に行きましょう」と、相手を仲間に引き入れる事も可能になります。

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■断りのテクニック

次に「断り」のテクニックに関しては、幾つかの方法を紹介したいと思います。


●Yes,but法


「Yes,but法」とは、言葉の通り、先に「yes」と答えて相手の要請を受け入れておいて、次に「but」として、自分の意見を述べるテクニックです。


相手からの無理難題に対して、一旦は受け入れる姿勢を見せつつも、最終的には、反論して断る方法です。


相手としては、自分の言い出した提案を尊重して受け入れてくれたと感じますので、その後の断りに対しても受け入れやすくなります。


ケース別に具体例を示しますと・・・


・機能追加要求

「確かに、この機能があると便利ですよね。でも、この機能を付け加えると、工数も増えますので予算オーバーになりますし、カットオーバーにも間に合わなくなります。この機能に関しては、二次開発で、新規予算獲得後、カットオーバー後に追加した方が良いと思います。」

・値下げ要求

「はい、確かに他社よりは若干高めかもしれません。しかし、弊社の場合、納期は絶対に守りますし、カットオーバーするまでは全力でサポート致しますので、安心してお任せ下さい。」

・仕様変更要求

この部分の仕様を変更すると言う事ですね、了解しました。しかし、既に、この部分は製造工程に入ってから、かなりの日数が経過していますので、納期を2〜3週間延期できれば対応可能です。」


と言うような受け答えになりますが、このテクニックは、基本中の基本なので、相手にバレている可能性があります。



現場同士の会話ならば、使えるテクニックかもしれませんが、相手が、長年、購買部等に在籍している交渉のプロのような場合、このテクニックだけでは交渉するのは難しいと思います。


また、「Yes,but法」の場合、相手の要求に対して、直ちにレスポンスを返す必要があります。


これを「3秒ルール」と呼んでいますが、「う〜ん」と暫く考えてから「いいですね!」では、相手の心に「いいですね」が響きません。


このテクニックを使う場合には、使う相手とタイミングを注意する必要があります。

また、前述のように、基本中の基本のテクニックなので、相手も「Yes,but法」を使ってくる可能性も非常に高くなります。



サービス売り込み中に、双方で「Yes,but法」を使うと、どうなると思いますか ?


自分 : 「そうですね。でも・・・」
相手 : 「そうなんだ、でも・・・」
自分 : 「そうですよね、でも・・・」


結局、双方とも自分の意見を言い合うだけでループ状態に陥ってしまいます。


また、相手も「Yes,but法」を知っている訳ですから、最初の「Yes」部分は聞き流して、「but」部分だけを意識して、逆に「自分の意見が否定された」と思ってしまうかもしれません。


このような「Yes,but法」の応酬の最後には「もう、貴方は来なくても良いです!!」と、出入り禁止になってしまう可能性もあります。


そこで、サービス売り込み中に、相手が「Yes,but法」を使って応酬してくる場合、相手が「but」で言ってくる疑問点を解消してあげる必要があります。


例として、前述の値下げ交渉のケースを見てみますと・・・


相手:「見積り金額が相見積を取った他社より高いんだけど、もう少し割引できない ?」
自分:「はい、確かに他社よりは若干高めかもしれません。しかし、弊社の場合、納期は絶対に守りますし、カットオーバーするまでは全力でサポート致しますので、安心してお任せ下さい。」
相手:「カットオーバーまで面倒見てくれるんだ。でも、他社も当然、それ位はサポートするよね ?」
自分:「確かに、他社でもサポートはするとは思いますが、弊社の場合、本番稼働出来なければ、費用は頂かない仕組みになっていますので、サポートの質が他社とは明らかに違います。」
相手:「えっ!! 本番稼働できないと費用は掛からないの ?」
自分:「はい、弊社の場合、企業理念にリピートオーダーが頂ける会社と目指す、と言う項目がありますので、請け負って納品したシステムに関しては、絶対に本番稼働させます。」



上記の例の場合、相手の2番目の受け答えが「Yes,but法」になっていますが、この「but」部分で、「他社と何が違うのか ?」と言う疑問を投げ掛けています。


そこで、こちらの回答として、他社との違いを説明してあげる必要があります。相手が「Yes,but法」を駆使して応酬してくる場合には、次の点が重要になります。


・何が、気に喰わないのか ?
・何を、不安に思っているのだろうか ?
・本当は、何が必要なのか ?


相手が、「Yes,but法」で「No」を突き付けて来た場合、相手の「No」を1個ずつ解決してあげることで、相手が買わない理由を消し去り、最終的に、自社のサービスを購入してもらう方向に持って行くことが可能になります。


この例の場合は、こちらが「断る」ケースではなく、相手の「断り」攻撃に対する逆襲方法になってしまいますが、「Yes,but法」を逆手に取ると、上記のような応用も可能となります。


営業の方は、是非活用して下さい。

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●前向きに断る方法


「前向きに断る」と書かれても、何の事か解らないと思いますが、これは「断る」時のストーリー展開のことです。


決して「それは出来ません、イエイ!!」と、明るい態度で断ることではありませんので、注意して下さい。


こんな対応をしてしまったら、「お前、バカにしているのか!!」と、相手は切れてしまうと思います。と言いますか、私ならば絶対にキレます。


「断る」時のストーリー展開としては、「謝罪or感謝+理由+断り+代替案」が良いとされています。


・謝罪or感謝 :相手に感謝の意を伝えたり、あるいは意に沿わない回答に対する謝罪の意を伝えたります
・理由 :要求を断る理由を伝えます
・断り :要求を断ります
・代替案 :最後に代替案を伝えて相手に検討を依頼します


これが、「何々だから、出来ません。」では、最後が「出来ません」と後ろ向きの回答になってしまうので、それは避けた方が良いと言うことです。


例えば、具体的な例として、上司から、新しい仕事を割り振られた時の「断りのストーリー」は、次のようになります。


『 申し訳ありません。頼んで頂いてありがたいのですが、現在、案件AとBを抱えて時間的余裕がありません。ですから今は引き受けられません。しかし、この仕事は、明日の午前中には終わると思いますので、明日の午後は時間があります。明日の午後から仕事に着手しても良いでしょうか ? 』


・謝罪 :申し訳ありません
・感謝 :頼んで頂いてありがたいのですが
・理由 :現在、案件AとBを抱えて時間の余裕がありません
・断り :ですから今は引き受けられません
・代替案 :明日の午後は時間があります。明日の午後から仕事に着手しても良いでしょうか ?


回答の最後が、「〜なら出来ますので、検討して下さい。」と言う「代替案」となっています。「〜なら出来る」と言う、前向きな回答になっていますので、相手は不快な思いをしません。


また、こちらとしても、「代替案」を提案することで相手と「交渉」出来ますし、「代替案」自体を、こちら側から提案できるので、優位な立場に立つことが可能となります。


相手が上司ではない場合、お客様に対しても、このテクニックは使えますので、何かの時は活用して下さい。

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●クッション法


巷では、「人をダメにするクッション」とか「猫をダメにするクッション」とかが流行っていますが、ここでは「クッション」を使って、断る相手を「ダメ」にする方法を・・・ではなく、「クッション言葉」を駆使することで、表現を和らげる方法を紹介します。


「クッション言葉」とは、文字通り、「断る」言葉の前に、「クッション」を挿入するテクニックです。


「クッション言葉」の例としては、次のような言葉があります。


・誠に申し訳ございませんが・・・
・勝手を申し上げて済みませんが・・・
・折角のお申し出なのですが・・・


重要なのは、相手の気持ちを推し量る心遣いです。


それと、気を付けて欲しいのは、「クッション言葉」と「煙に巻く」を同列で使うことです。



「煙に巻く」の場合、訳の解らない話を持ち出して、話の結論を、全く別の方向に持って行ってしまうことです。


確かに、「その場しのぎ」として、相手を「煙に巻いて」時間稼ぎをするのは、その場面に限っては有効かもしれません。


しかし、それでは物事の解決には繋がりません。結果から逃げているだけですので、相手の信頼を失ってしまいます。


時間稼ぎをしたいのであれば、次のように回答した方が、相手から信頼されます。



『 誠に申し訳ございませんが、本件は、私一人の判断では回答出来かねますので、一度会社に持ち帰らせて頂き、上司と相談の上、一週間以内に回答させて頂きます。 』



そして、相手の信頼を得るためには、上記の回答のように、必ず「何時までに回答するのか」と言う回答期限を相手に伝える事が重要となります。


もちろん、当然、回答期限までには、必ず回答する必要はありますが・・・


同じ「断る」方法でも、相手に信頼を抱かせる方法は、幾つもありますので、活用して下さい。

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●サンドイッチ法


「サンドイッチ法」とは、前述の「クッション法」を、より進化させたテクニックになります。


つまり、「断る」内容を、クッション言葉やプラスの言葉で包み込むテクニックになります。


・「褒め言葉」+「断りの言葉」+「褒め言葉」
・「クッション言葉」+「断りの言葉」+「クッション言葉」


そして、最後に付け加える「褒め言葉」/「クッション言葉」には、今後に繋がる言葉を付け加えればベストになります。


具体的な例として、例えば見積もりに対して、追加値引きを要求されたような場合、次のような断り方が有効です。



『 誠に申し訳ございませんが、既にお値引きを致しておりますので、今回は値引きには応じられません。追加のご発注があれば、そちらで割引率を調整させて頂きます。 』

・クッション言葉 :誠に申し訳ございませんが、
・理由 :既にお値引きを致しておりますので、
・断り言葉 :今回は値引きには応じられません。
・クッション言葉 :追加のご発注があれば、そちらで割引率を調整させて頂きます。


先に紹介した「前向きに断る」方法と同じ断り方になってしまいますが、あの断り方も「サンドイッチ法」です。


ビジネス会話では、「結論+理由」が基本ですが、相手にとって悪い話、今回の場合には、相手からの要請を断る場合には、この「サンドイッチ法」の会話を利用することで、会話を聞くことで、相手に「心の準備」をさせる事が可能となります。


同じことを伝えるにしても、「サンドイッチ法」を駆使することで、相手の感じ方を和らげることが可能になりますので、こちらも活用して下さい。


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ここまで、上手に「断る」テクニックを紹介して来ましたが、如何でしたか ?


会社組織内では、優秀な人間に「頼み事」が集中します。また、社外においても、面倒な相手への対応には、優秀な人間がアサインされがちです。


「何で、いつも俺だけ・・・!?」と腐らずに、「俺だから」と前向きにとらえて対処することが必要です。


また、出世すればするほど、重要な案件を任されますので、都度、機敏な対応が必要になります。


中には、対外的には、何でも相手の要求を受けて来てしまい、会社に戻ると、部下に全部丸投げすることで出世してきた人もいます。私が以前勤めていた会社にも、このような「最低の人間」は沢山いました。


特に、営業系の人間で、技術力が無い人間に、「全部丸呑み/全部丸投げ」の人間が多かったような気がします。


技術力のある営業は、事の重大さを理解したり、あるいは推測したりすることができるので、おいそれとは相手の要求を呑まないのですが、バカな営業に限って、後先考えずに、何でも要求を呑んでしまう傾向が強いと思います。


「できない事はできない」と断りつつ、相手の要求にも敬意を払うことで、信頼される関係を構築することが可能になります。


何でもかんでも相手の要求を呑んでしまい、その結果、プロジェクトが失敗したケースは枚挙にいとまがありません。


「できない事はできない」と断り、プロジェクトを成功に導いて下さい。


それでは次回も宜しくお願いします。


以上

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