「The Microsoft Conference 2013」について


先月になりますが、11月の21日(木)と22日(金)で、毎年恒例の「The Microsoft Conference」が開催されました。

私も、去年に引き続き、Conferenceの方に参加してきました。今回は、その内容と、以前から疑問を感じておった「Office 2013 RT」について紹介しようと思います。

ちなみに、去年の内容に関しては、過去ブログを参考にして下さい。
★「The Microsoft Conference2012」について:http://msystm.co.jp/blog/20121026.html

去年は、「Windows8」、「Office2013」、「Windows Server2012」等Windows新製品の発表がメインでしたが、今年は、当然、新製品の説明がありましたが、主題は「マルチデバイス」と「クラウド」だったと思います。

「マルチデバイス」に関しては、去年発売された「Windows8」の改良版(?)である「Windows 8.1」と、タブレット端末「Surface」の第二世代バージョンが、どちらも10月にリリースされた関係で、その説明に力を入れてました。

Windows 8.1」に関しては、本ブログで、その変更点の概要を説明しております。概要に関しては、過去ブログをご覧になって下さい。
★何が変わったの「Windows 8.1」:http://msystm.co.jp/blog/20131113.html

クラウド」に関しては、やはりMicrosoftの新製品「Windows Server2012 R2」と新サービス「Windows Azure」を組み合わせ、さらに、そこでも「Windows 8.1」搭載のタブレットや、ゲーム機である「Xbox」で提供する「Kinect」機能を活用する事で、医療サービス、決済サービス、あるいは営業サービスを、クラウド上で動かす新たなサービスの紹介があったようです。


私は、仕事の都合で、2Dayしか参加できず、クラウドに関するKeynoteセッションは聞けませんでしたが、上図の様に、手話の動作を、「Kinect」機能を使う事で認識し、健常者とのコミュニケーション補助を行うデモがあったようです。

今回のブログにおいては、私が参加した下記セッションに関連した内容を紹介します。
Windows 8.1 概要 - さらに進化したWindows -
●他では聞けない! Windows 8.1がここまでPCを変えた!
マイクロソフトの最新デバイスSurfaceのすべて

また、今回、「Surface」の話題を取り上げました。このため、「Surface 2」に搭載されており、以前から疑問に思っておった「Office 2013 RT」と「Office 2013」との違いを紹介したいと思います。

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Windows 8.1 概要 ― さらに進化したWindows


Windows 8.1」の機能概要については、発売開始から日も浅く(約1か月前)、既に様々なメディアでも機能紹介が行われており、今回は、特に目新しい情報の発表はありませんでした。


しかし、言い訳というか、「我田引水」と言うか、「Windows 8.1は凄いんだ!」とばかり言う姿勢が目立ちました。

まずは「Windows 8.1」は、モバイルとPCとを融合させた結果、再創造された製品なので、生産性は高まると声高らかに唱えてました。

また、一般顧客に不評の「スタートボタンの消去」についても、Microsoftが収集したテレメトリデータ(遠隔測定データ)を分析した結果、スタートボタンが余り使われないと言う結果が出たため削除したという発表でした。

何か全然納得できない、と言うか、「上から目線」の説明でしたから、途中で退席しようかと思った程でした。

・モバイルとPCの融合と言っても、ビジネスマン全てが、外で仕事をして、タブレット端末を使うのか?
・外でタブレットは使うけど、社内でタブレットは使わないだろう!
・社内でタブレットを使ったら生産性は低下するだろう!
・「スタートボタンは余り使わない」と言うのは分析しなくても解るだろう!
・誰も、年がら年中スタートボタン押す訳はない。だけど、無くなると困るから文句を言うのが解らないのか !?

と、突っ込みどころ満載のプレゼンテーションでした。

後は、強化した機能の説明でしたが、これも何と言うか・・・確かに強化するのは良いけれど、普通に使う分には、どうでも良いかな〜みたいな感じの項目ばかりでした。

・セキュリティの強化 : マルウェア対策、デバイス暗号化、リモートワイプ(遠隔地からのデータ消去)
・BYOD(Bring You Own Device)強化:ワークプレイス参加、ワークフォルダー新設、MDM機能
・周辺機器とのネットワーク強化:Win8ホットスポット利用、NFC(近距離無線)搭載
・企業向けWindowsアプリの拡大

まあ、機能が搭載されれば、いつかは使うかもしれませんが、この機能があるから「Windows 8.1」を使いたい、と言うような機能は皆無でした。

もともと、このセッションに関しては、「Windows 8.1」にバージョンアップした理由を、どんな言葉で説明するのかを聞きたかったために参加しましたが、前述のように「上から目線」の説明ばかりだったために、途中からは、真剣に聞く気にさえなりませんでした。

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■他では聞けない! Windows 8.1がここまでPCを変えた!

このセッションは、Microsoftのセッションと言うよりも、Microsoft製品を搭載する、メーカーのためのセッションでした。

始めこそ、Microsoftのプレゼンターが「Windows 8.1」に搭載されたデバイスの説明をしてましたが、途中からは日本マイクロソフト社からのライブ中継となり、最後はメーカー商品の説明ばかりでした。

確かに、セッション名の通り「他の会議や展示会では聞けない」プレゼンテーションでした。【看板に偽り無し】のプレゼンでしたが、他の展示会においては、二度と聞きたくない内容でした。

最初のプレゼンターの発表内容で、「Windows 8.1」に関しては、次の様な観点で開発を進めたと言ってました。

・生産性と利便性の双方を備えたデバイスとして、「オールインワン」と「タッチパソコン」、「2in1」、「タブレット」という4つのカテゴリにPCを分類
・モバイル端末の普及により、ユーザーが求める環境にも変化が現われた
・PCの持つ高い生産性とモバイル端末の利便性を併せ持つデバイスが、今後は求められるようになる

上記の説明を要約すると、【Windows 8.1は、もはやPCではない】、と言うことだと思います。

それならば、Microsoftが、Windowsからスタートボタンを消去し、タッチパネル対応にした理由も解ります。

過去ブログで、「Windows 8」が発売された時の、ユーザーの感想を記載しました。その時の感想に『 Windows8Windowsの進化ではなく別物 』と言う感想がありました。

今回のプレゼンを聞き、「まさに、その通り」だと思いました。

また、私は、長年システム開発を行っており、その時に学んだ事の一つに、『 何でもできるシステムは、結局は使えない/役に立たないシステムになる 』と言うことがあります。

これは、1つのシステムに、欲しい機能を何でもかんでも組み込んでしまうと、最終的にはシステムの方向性がバラバラになるし、使用リソースも大量になってしまい、最終的には、システムのパフォーマンスが低下して、誰にも使われなくなる、と言う事です。

今回のプレゼン内容を聞くと、この2つのことを思い出してしまいました。

「オールインワン」、確かに聞こえは良いですが、何でもかんでも、今回の場合にはデスクトップにも、携帯タブレットにも「Windows 8」を組み込むことだと思います。

・PCの売り上げが落ちてきたから、今度はタブレットに資源を集中する
・PC版とタブレット版と、2つのOSを作成するのは資源の無駄
・PCにもタブレットにも、同じOSを組み込むことで費用対効果を向上させる

これが、今後のMicrosoftの戦略だと思います。

企業の戦略ですから、文句は言いたくありませんが、それでもPCの操作性が落ちるのは止めてもらいたい所です。

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マイクロソフトの最新デバイスSurfaceのすべて


Microsoftタブレット端末「Surface」ですが、現時点で4種類発売中です。セッションの説明の前に、「Surface」のラインナップを整理したいと思います。

Surface OS WindowsRT CPU NVIDIA Tegra 3
メモリ 2GB RAM HDD 32GB(16GB) / 64GB(45GB) ※()は利用可能域
ソフト Office2013RT 10.6インチ/1366×768フルHD/重量680g/厚さ9.4mm /価格34,000円〜
Surface2 OS WindowsRT8.1 CPU NVIDIA Tegra 4(クアッドコア)
メモリ 2GB RAM HDD 32GB(16GB) / 64GB(45GB) ※()は利用可能域
ソフト Office2013RT 10.6インチ液晶/1092×1080 /重量676g/厚さ9.0mm/価格44,800円〜
SurfacePro OS Windows 8 Pro CPU 第3世代Intel Corei5(Dual) 1.7GHz
メモリ 4GB RAM HDD 64GB / 128GB
ソフト Office Home and Business2013 10.6インチ/1920×1080/重量907g/厚さ13.5mm/価格98,000円〜
SurfacePro2 OS Windows 8.1 Pro CPU 第4世代(Haswell)Intel Corei5(4200U) 1.6GHz
メモリ 4GB/8GB HDD 128GB / 256GB / 512GB
ソフト Office Home and Business2013 10.6インチ液晶/1920×1080フルHD /重量907g/厚さ13.5mm/価格99,000円〜

今回発売されたのは、Surface 2/Surface Pro 2となり、これが第2世代の「Surface」と言う事になります。
SurfaceSurface 2
Surface Pro → Surface Pro 2

上表のスペックは、Microsoftのホームページでも画面により表示内容が異なります。このため、実際の数値とは若干異なるかもしれません。何で発売元のMicrosoftで、説明内容が画面により異なるのか、全く訳が解りません。

さてセッションの内容ですが、冒頭から次のような説明がありました。

Surface 2はPCみたいなタブレットSurface Pro 2はタブレットみたいなPC 』

これは、まさにピッタリの表現だと思います。

本セッションにおいては、まず「Surface Pro 2」の紹介がありましたが、旧モデルとの比較が中心でした。

・CPUパフォーマンスが20%アップ
GPUのグラフィック性能が50%アップ
・ディスプレイの色彩表示の正確性が46%アップ
・バッテリー駆動時間を75%アップ
・タイプカバーの厚さが1mm薄くなった(6mm → 5mm)
・タイプカバーにバックライト搭載
フルHD対応になった

何か良いことずくめの様に見えますが、価格が1,000円程度値上がりしました。しかし、上記の様に性能が、かなりアップしていますから、1,000円程度なら許容範囲だと思います。

その他にも、アクセサリー類も充実してきたようです。目玉としては、次の2つのアクセサリーです。



●ドッキング・ステーション(近日発売予定:推定19,980円)
Surfaceの拡張ユニットで、充電ポートの他、次の様なポートを追加で使用することが可能となります。
・USB 2.0 ×3
・USB 3.0 ×1
・イーサーネットポート×1
・Mini Displayポート×1
・オーディオポート


●パワー・カバー(2014年前半発売予定)
タイプ入力可能なバッテリー内臓のカバー。本カバーを装着すると、バッテリー性能が、さらに50%程度向上するらしいです。(Microsoft談)
現在、実物の画像がないため解りませんが、Microsoftのホームページを見ると、既存のタイプカバーと同じに見えます。


魅力的なアクセサリーだとは思いますが・・・いかんせん、価格が高すぎるような気がします。

次に「Surface 2」の紹介がありましたが、私自身は、「Surface 2」はビジネス向けのデバイスじゃなくて、個人向けのデバイスだと思っております。このため説明の大半は流して聞いてました。

まあ、CPUもグレードアップし、バッテリー駆動時間も10時間以上になったとか・・・確かに価格も「Surface Pro 2」と比較すれば半分以下です。これは、かなりで魅力的です。

それに、BYOD機能を搭載したり、VPNクライアントを搭載したりと、やたらとビジネス向け機能を強化したな〜と言う感じでした。

しかし、相変わらずMicrosoftが用意したデスクトップ・アプリケーションしか使えませんし、搭載されたOfficeも、通常版とは異なる「RT版」です。このため、マクロやアドインは使えません。

私の様に、システム開発、特にExcel系の開発が多い企業の方や、市販、あるいはフリーライセンスのソフトを多数使う方は、「Surface 2」で仕事はできないと思います。

やはりタブレット端末は、どんなにPCに性能を近づけても、タブレット端末であることには変わりありません。

Surface 2」の購入を検討中の方は、次の点を考慮した方が良いと思います。

・基本的にWindows XP/Vista/7/8のプログラムは使えない
・ビジネス・ソフトウェアは、Officeだけで良いのか?
・Officeにマクロやプログラム(VBA)を組み込んでいるのか?
・デスクトップアプリは使えなくても良いのか?
・ブラウザはIEで良いのか?
・メールで送られて来る資料は使えるのか?

単純にWordで文章を作ったり、Excel表計算だけを行ったりする分には、「Surface 2」でも問題ないと思います。

「Surface2」と「Office 2013 RT」の問題点については、この次のフェーズで説明したいと思います。

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■【Surface 2】と【Office 2013 RT】の問題点

Surface」が、まだ「Surface RT」と呼ばれておった時期にも、【Office 2013 RT】は存在しましたが、当時は、Outlookが使えませんでした。

このため、「Surface」を使う場合には、OSを「Windows RT」から「Windows RT 8.1」にバージョンアップしなければなりませんでした。

現在は、「Surface 2」を購入すると、当然OSも「Windows RT 8.1」ですから、次の様なOfficeアプリが使用できます。
・Word
Excel
PowerPoint
OneNote
Outlook

そして、これらを称して【 Office 2013 RT 】と呼んでいます。


ところで、「Surface」、および「Surface 2」ですが、CPUに、NVIDIA(エヌ ビディア)社製のARM系のTegra(テグラ)を採用しています。

このため、通常のデスクトップ・アプリケーションを動作させることができません。

CPUは、大きくは、PCで使われる「X86系」と、スマートフォンで使われる「ARM系」の2種類のCPUが存在します。

X86系」と「ARM系」は、構造が全く異なります。「X86系」で動作するソフトウェアは、「ARM系」のデバイスにおいては動作しません。

このため、「Surface 2」に搭載されたOfficeに関しても、通常のOfficeじゃなくて【 Office 2013 RT 】と言う別物のOfficeです。

また、これは当然デスクトップアプリだけの話じゃなくて、ブラウザもRT用の「IE(Internet Explorer)しか使えません。ChromeFirefoxも使えません。

そこで、「Surface 2」で使うソフトを探す場合には、MicrosoftWindowsストアからアプリをダウンロードするしか方法はありませんが、このWindowsストアが貧弱過ぎます。

Windowsストア内のアプリ数をカウントする「MetroStore Scanner」によると、2013年3月末時点で、51,401本のアプリがあると公表しておりますが、実際に「Windows RT」に対応するアプリは、22,000本程度のようです。

さらに、日本語非対応アプリや、品質が低いアプリばかりで、実際に使えるアプリは、ほとんど無い状況のようです。

前述のフェーズで、「Surface 2」は個人向けのタブレット端末と言いましたが、このように、他のソフトが使えない状況も、ビジネス用として使えないことの一因だと思います。

次に【 Office 2013 RT 】についての話です。

【 Office 2013 RT 】には、前述のOffice製品が含まれますが、それぞれ通常のOfficeとは、次の様な非互換があります。

●共通
1.マクロ、アドイン、フォームが使えない
2.サードパーティが開発したプログラムは使えない
3.SkyDriveとの同期統合ができない
4.数式エディタ―が使えない
5.Lyncファイルのダウンロードができない
6.グループポリシー管理ができない

●Word
1.特定言語の文章校正ができない(日本語は大丈夫です)

Excel
1.データモデルが使用できない

PowerPoint
1.スライド・ライブラリ関連操作の SharePoint スライド・ライブラリ・ツールバーがサポートされない
2.古いメディア形式が使えない
3.Adobe Flash Player用ビデオで作成されたオンラインサイトからビデオを挿入/再生できない
4.ナレーションの録音機能を使えない

OneNote
1.オーディオ録音/ビデオ録画を実行できない
2.スキャナーを使ったインポートができない
3.オーディオとビデオの検索ができない

Outlook
1.サイト メールボックスを使う Exchange と SharePoint の統合はできない
2.アーカイブ法令遵守、データ損失防止 (DLP)機能が使えない
3.Windows Media Player の統合はできない

私の場合、それほどOfficeツールを使い込んでいません。このため、問題となるのは「共通-1/2」位ですが、まあ、開発したプログラムの試験は、会社に戻って通常のPCで行えば問題ありませんから、Officeの非互換は、それ程影響はないのかな〜と思っております。

詳しくは、下記Microsoftのページをご覧下さい。
http://office.microsoft.com/ja-jp/home-and-student/FX103210361.aspx

大問題は、通常のデスクトップアプリが使えないことです。

しかし・・・要は「割り切り」だと思います。

外で仕事を行う時と、社内で仕事を行う時とで、デバイスを使い分ければ、何とかなると思います。

Microsoftが提唱するように、1台のデバイスで、全ての仕事を行うなど、最初から無理だと解っていますから、外出用デバイスは、本当に軽めの業務、社内においては通常業務と使い分けさえすれば、【 Surface 2/ Office 2013 RT 】の組み合わせでも、充分作業はできると思います。

もしも、1台のデバイスで、社外も社内も・・・と考えるならば、「Surface 2」は止めた方が良いと思いますよ。

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毎回、 Conferenceに参加して感じることですが、どうしてMicrosoftは、いつも「上から目線」なのでしょうか?

去年は、会場を案内する担当者でさえ「上から目線」の対応で、ともて不快な思いをしました。

確かに、WindowsやOfficeがないと仕事が出来ないのは事実です。

しかし、だからと言って、ここまで「上から目線」なのは・・・

GoogleAppleにも、もう少しビジネスソフトに焦点を当ててもらいたいとは思いますが、まだまだ先の事の様な感じがします。

競争原理が働かないと、Microsoftの姿勢も変わらないと思います。

ご精読、ありがとうございました。次回も宜しくお願いします。

以上

【画像・情報提供先】
・Microsof(http://www.microsoft.com/surface/ja-jp/products/overview)
NVIDIA(http://www.nvidia.co.jp/object/io_1262943776412.html)

【株式会社 エム・システム】
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