岩手の世界遺産と無形文化遺産 -平泉ショックからの出発 その2
今回の「岩手・盛岡」情報は、前回の続きとなる「岩手の世界遺産と無形文化遺産」に関する話題の第2弾となります。
★過去ブログ:岩手の世界遺産と無形文化遺産 その1
前回は、次の内容を紹介しました。
前回は、どちらかと言うと、UNESCOの活動の説明になってしまった感があります。
そして、最後に、「国際連合教育科学文化機関(United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization:UNESCO)」の成り立ちと、現在の状況を説明しました。
UNESCOは、2018年12月の「アメリカ脱退」を受け、運営資金の不足に悩ませられる事になりそうですが、実質、アメリカは2011年から分担金を支払っていませんので、余り影響は無いのかもしれません。
しかし、脱退したアメリカの「世界遺産」は、一体、どのような扱いになるのでしょうか ?
現在、アメリカには、世界遺産「第一号」として登録された「イエローストーン国立公園」を始めとして、23箇所もの世界遺産があります。
まあ、建国の歴史が浅い事が影響しているのかもしれませんが、無形文化遺産の登録は「0件」なので、こちらは問題無いと思いますが、やはり気になってしまいます。
UNESCOから脱退し、分担金も支払っていないにも関わらず、それでも「世界遺産」を名乗るつもりなのでしょうか ?
何か、「盗人猛々しい」と言うか、「面の皮が厚い」と言うか、つまり「恥知らず」のような感じがします。
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それはさて置き、今回は、岩手県に特化した、次の情報を紹介します。
しかし・・・正直な所、「平泉」以外は、地味で、余り見どころが無いような感じがします。
加えて、この唯一の見どころとなっている「平泉」に関しても、「中尊寺金色堂」以外は、「何とか院の跡」と言う感じで、寺院の跡地に、ポツンと「池」が残っているだけで、「折角だから」と無理して訪れても「何だかな~」感が拭えません。
そんな感じで、本ブログを見た方も、「何だかな~」となってしまうかと思いますが、取り敢えず、今回も宜しくお願いします。
■岩手県の世界遺産
・平泉-仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群
最初に、「平泉」から紹介します。
●平泉-仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群
「平泉」に関しては、前述の通り、2011年に世界遺産リストに登録された訳ですが、実際は、2001年には世界遺産の暫定リストに登録され、2004年にリスト登録された「紀伊」、それと2007年に登録された「石見銀山」と共にリスト登録を目指していたようです。
その後、2006年の文科省の文化審議会で、「平泉 - 浄土思想を基調とする文化的景観」と言う名称で、次の9箇所を資産として推薦したそうです。
→ 中尊寺、毛越寺、無量光院跡、金鶏山、柳之御所遺跡、達谷窟、白鳥館遺跡、長者ヶ原廃寺跡、骨寺村荘園遺跡
ところが、2007年にICOMOSの現地調査が行われた結果、候補地が広範囲に拡がり、個別に存在している点や、日本政府の姿勢などが疑問視され「登録延期」となってしまいました。
日本政府が推薦して登録が認められなかったのは、この「平泉」が初めての事で、これを「平泉ショック」と呼び、この事が原因で、世界遺産の公募が中止になったとも言われているようです。
その後、日本政府は、名称を「平泉―仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群」と変更すると共に、推薦資産も、ICOMOSからの勧告に従い、中尊寺、毛越寺、無量光院跡、金鶏山、柳之御所遺跡の5件の資産で再申請を行いました。
その結果、ICOMOSの再度の現地調査を経て、ICOMOSからは、名称を「平泉―仏国土(浄土)を表す建築・庭園」と変更し、かつ「柳之御所遺跡」を資産から除外した上での「登録勧告」となってしまったそうです。
そして、2011年6月、パリで開催された第35回世界遺産委員会において審議され、名称は日本の主張が通ったものの、やはり「柳之御所遺跡」を構成資産から除外した形で、世界遺産リストに登録されました。
しかし、この時、元々「毛越寺」に含まれていた「観自在王院跡」が、個別資産となったので、最終的には、5個の資産で登録されたようです。
このように、数々の紆余曲折と、10年と言う歳月を経て、「平泉」は、ようやく世界遺産になったようです。さて、それでは世界遺産の構成資産となる5箇所を紹介します。
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(1)中尊寺
中尊寺は、寺の伝承によると平安時代の嘉祥3年(850年)、慈覚大師「円仁」が、関山弘台寿院を開創したのが始まりとされていますが、単なる言い伝えだけで、学術的には何の根拠も無いとされています。
このため、実質的な創建は、平安時代末となる12世紀初頭、奥州藤原氏、初代「藤原清衡」が、多宝寺を建立した時とされています。
有名な「金色堂」は、天治元年(1124年)、同じく「藤原清衡」により建立されており、現在は、覆堂内で展示保存されていますが、中の須弥壇には、藤原三代(清衡/基衡/秀衡)のミイラと四代「泰衡」の首級が納められています。
中尊寺に関しても、世界遺産の構成資産がリストされており、それは次の箇所となっています。
・中尊寺金色堂(国宝)
(2)毛越寺
毛越寺も、中尊寺と同様、嘉祥3年(850年)、慈覚大師「円仁」が創建したと伝わっていますが、大火で焼失したと伝わっています。
その後、二代「基衡」、およびその子、三代「秀衡」」により大伽藍を再興したとされています。
最盛期には、堂塔は40、僧房は500超であったと鎌倉時代の史書「吾妻鏡」にも伝えられています。
その後、鎌倉幕府にも保護されたそうですが、嘉禄2年(1226年)の火災、および天正元年(1573年)の兵火により、その全てを焼失してしまったそうです。
そして、その後、昭和29年(1954年)から5年に渡り、大規模な発掘 調査が行われたのですが、調査してみると、当時の遺構が、ほぼそのまま残されており、先の「吾妻鑑」の記述とも一致している事が判明したそうです。
金堂跡等、各種の堂跡、門跡、および浄土庭園跡も、当時の礎石等がほぼ完全に残っており、非常に学術的価値が高い遺跡となっているそうです。
現在の「大泉が池」と水を注ぐ「遺水」等がある浄土庭園は、発掘調査、および平安時代の庭園造り秘伝書「作庭記」に基づいて忠実に整備されたものだそうです。
毛越寺の構成資産は、次の2箇所となっています。
・毛越寺境内附鎮守社跡(特別史跡)
・毛越寺庭園(特別名勝)
(3)観自在王院跡
「観自在王院」とは、二代目「基衡」の妻が、毛越寺の隣に建立した阿弥陀堂の事で、当時は、大阿弥陀堂と小阿弥陀堂と言う、二つのお堂があったとされています。
しかし、天正元年(1573年)の兵火で焼失してしまい、現在の阿弥陀堂は、大阿弥陀堂の跡地に、江戸時代(享保年間)に再建されたものとの事です。
昭和48年(1973年)から3年を掛けて、庭園の発掘と復元が行われたそうです。
その結果、寺跡は、東西約120m、南北約240mの長方形であったそうです。
「舞鶴が池」という池があり、仏の世界を表現した浄土庭園としての形を調えていたということが判明したそうです。
観自在王院跡の構成資産は、次の2箇所となっています。
・毛越寺境内附鎮守社跡(特別史跡)
・旧観自在王院庭園(名勝)
(4)無量光院跡
「 無量光院」とは、三代「秀衡」が、京都の「平等院」を模して建立した巨大寺院で、「新しい毛越寺」と言う意味で「新御(にいみ)堂」と名付けていたそうです。
建物の向きや地形も「平等院」を模しており、庭園は、毛越寺や観自在王院と同様、浄土庭園としたそうですが、発掘調査によると、規模は、本家をも凌ぐ大きさだった事が判明しています。
本尊は、平等院と同じ「阿弥陀如来」だが、中堂前に瓦を敷き詰めている点と池に中島がある点が平等院とは異なるそうです。
本堂の規模は鳳凰堂とほぼ一致するようですが、翼廊の長さは一間分長いそうです。
建物は全体に東向きに作られ、敷地の西には後述する「金鶏山」が位置しており、配置は、庭園から見ると、夕日が、本堂の背後の「金鶏山」へと沈んでいくように設計されていたようです。
(5)金鶏山
「金鶏山」は、中尊寺と毛越寺の中間辺りに位置する標高98.6mの山で、平泉における信仰の山とされています。
山の名称である「金鶏山」とは、山頂に、雄雌一対の金の鶏を埋めたと言う伝説にちなむと伝わっています。
実際に、昭和5年(1930年)に、頂上付近を盗掘したそうですが、その時には、「経塚」である事を示す経筒や陶器の壺や瓷が掘り出されたそうです。
この「金鶏山」には、上記言い伝えを含め、次のような伝説が残されているそうです。
・平泉を守るため黄金の鶏を埋めた
・北上川まで人夫を並べ、一晩で築いた山
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前述の通り、平泉に関しては、現在、上記5箇所が世界遺産リストに登録されていますが、2012年には、前回の推薦で漏れた下記5箇所に関しても暫定リストに登録し、拡大登録を目指しているそうです。
・骨寺村荘園遺跡(一関市)
・長者ヶ原廃寺跡(奥州市)
専門家からは、拡大登録は、「柳之御所遺跡」のみが適当と助言されているそうですが、そうなると、また平泉町だけの登録となってしまうので、関係団体は、あくまでも一括登録を目指しているそうです。
現在の5箇所を登録するだけでも10年掛かっている訳ですから、一括拡大登録には無理があると思われます。
●明治日本の産業革命遺産
「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」は、1850年代から1910年にかけて、日本の重工業化に貢献した遺産群で、「軍艦島」として知られる長崎市の「端島炭鉱」を始め、九州の鹿児島県から東北の岩手県にかけて点在する23資産が、幕末期の西洋技術の導入や、その後の国家主導で発展させてきた鉄鋼・製鉄、造船、石炭産業の近代工業化の過程を示す資産として顕著な普遍的価値を有していると評価されてリストに登録されています。
23個全てをリスト表示するだけでも、かなりのボリュームになりますので、今回は、岩手県関連となる「橋野高炉跡及び関連遺跡」だけを紹介します。
この「橋野高炉」は、釜石市橋野町にあるのですが、日本の近代製鉄の発祥の地といわれています。
古来、日本では、「たたら製法」による砂鉄を原料とした製鉄法で大砲を製造していましたが、この製法では欧米列強の優れた性能を持つ大砲には太刀打ちできませんでした。
西洋の大砲に対抗できる近代的な兵器の製造には、良質な鉄を大量生産する高炉法が必要と考えるようになり、高炉を建設する事になりました。
ここで言う「高炉」とは、「反射炉」とは違い、鉄鉱石を溶かして鉄にする「溶鉱炉」の事になります。
そして、この「橋野高炉」は、水戸藩の反射炉に、大砲用の銑鉄(せんてつ)を供給するために、南部藩によって建設されました。
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ところで、(釜石市には失礼ですが)何故、釜石市などで「日本初の西洋式高炉」が建設されたのかと言うと、それには、ちゃんとした理由があります。
(1)釜石付近には、良質の鉄鉱石が採れる採掘場があったこと。
(2)盛岡藩に、天才技術者「大島高任(おおしま-たかとう)」が居たこと。
釜石付近、特に、北上山地は、その昔、平安時代から、良質の砂鉄が取れることで有名で、前述の「奥州藤原氏」も、鋳物師を、わざわざ京都から呼び寄せて「鋳造業」を行っていました。
また、釜石は、日本初の官営製鉄所となる「釜石製鐵所」が建造される等、昭和末期まで、「製鉄の町」として繁栄して来た町です。
岩手の「鉄」に関しては、次の過去ブログでも紹介しています。
★過去ブログ:岩手の工芸品 ~ 地味だけど丈夫で長持ち その2(南部鉄器)
:岩手県内の火防祭り ~ 検索トップだけどマイナーな祭り その2
他方、「大島高任」は、幕末となる文政9年に、盛岡藩侍医「大島周意」の長男として生まれた後、17歳で江戸に出て蘭方医に師事し、さらには、長崎にも留学し採鉱術を学んでいます。
27歳で水戸藩の徳川斉昭に招かれて、那珂湊に反射炉を建造して大砲の鋳造に成功しますが、原料が砂鉄のため余り性能は良くなかったそうです。
そして、その後、良質な鉄鉱石を産出する釜石で、西洋式高炉を建造し、安政4年(1858年)、鉄鉱石製錬による本格的連続出銑に成功しますが、これが商用高炉としては日本初の試みで、この事から大島は、「日本近代製鉄の父」と呼ばれています。
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この「橋野高炉」は、日本の歴史上、重要な場所であることは明らかなのですが・・・
如何せん、地味 !! この地を訪れても、他の「軍艦島」等に比べると、何の感動も無いと思います。
何か、もう少し展示方法などを検討した方が良いと思います。
■岩手県の無形文化遺産
岩手県には、次の2件の、無形文化遺産があります。どちらも、過去ブログで紹介している内容ではありますが、もう少し詳しい内容を紹介します。
それと、岩手県に限った話ではありませんが、「和食」に関しても、1点、岩手に関係する話がありましたので、ついでに紹介しておきます。
●早池峰神楽
無形文化遺産は、前述の説明の通り、2008年に条約が発効しました。
このため、この時点で、既に「傑作宣言」を行っていた3件が、直ちに代表一覧表に正式登録されました。
そして、さらに2008年に、この早池峰神楽を含む10件の登録申請を行い、その結果、翌2009年には、全て代表一覧表に正式登録された次第です。
今回、早池峰神楽に関して、もう少し詳しい情報を紹介しようと思ったのですが、既に何度も紹介しているので、ネタが尽きてしまいました。
特に、「瀬織津姫命」を取り上げた下記ブログでは、早池峯信仰から早池峰神楽、そして早池峰神社の情報を詳しく紹介しています。
★過去ブログ:早池峰信仰と瀬織津姫命 ~ 謎多き姫神に触れる その1
このため、本ブログに同じ内容を記載するよりは、下記のブログを見た方が良いと思います。
●来訪神(スネカ)
「スネカ」に関しては、2018年10月、ユネスコの補助機関が、秋田県男鹿市の「ナマハゲ」等を含む、8県10件の伝統行事で構成する「来訪神 仮面・仮装の神々」を、無形文化遺産に登録するよう勧告しています。
その結果、2018年11月26日から、モーリシャス(アフリカ)で開かれたユネスコの政府間委員会で審議が行われ、11月29日に、無形文化遺産への正式登録が決定しました。
但し、今回の登録は、2009年に登録済となっている、鹿児島県の「トシドン」への拡張登録となっていますので、地元は嬉しいかもしれませんが、日本としては、喜びも半分と言った感じでしょうか ?
ところで、大船渡市吉浜で、毎年1月15日に行われる「スネカ」に関しては、実は、下記過去ブログで詳しく紹介してしまっていました。
★過去ブログ:冬の歳時記 ~ 寒いのにご苦労様です
今回、「スネカ」に関しても、過去ブログで紹介していない情報を提供しようと思ったのですが・・・こちらも、結構詳しく紹介しており、余り追加情報はありませんでした。
しかし、他サイトですが、実際に、「スネカ」が、一般家庭を襲った際のレポートが記載されており、結構面白かったので、そのサイトを紹介しておきます。
★参考サイト:岩手の「スネカ」に子供と一緒に泣かされる
→ URL:https://dailyportalz.jp/kiji/150119166103
●和食
前章の無形文化遺産の一覧でも紹介した通り、平成25年(2013年)に、日本の「和食」が、正式登録されています。
「和食」は、当然、岩手県に限った話ではありませんが、日本国からユネスコに提出した登録提案書中に、一関地方の「もち食文化」が例示として挙げられていたそうです。
また、現在でも、農水省のホームページの「トピックス」には、『「和食」のユネスコ無形文化遺産登録 ? 次世代に伝える日本の食文化 ? 』と言うページが掲載され、その中で、日本各地の「和食」の事例として、一関市で毎年開催される『 全国ご当地もちサミット 』が紹介されています。
そこで、簡単にですが、一関の「もち食文化」を紹介したいと思います。
最初に、一関市で毎年開催される「全国ご当地もちサミット」ですが、こちらに関しても、過去ブログで紹介していますので、そちらをご覧下さい。
★過去ブログ:ちょいと変わった秋のイベント紹介
そして、一関地方と「もち」の関係ですが、本当に、異常なほど強い結びつきがあるようです。
通常、「もち」と言えば、正月料理をイメージすると思いますが、平泉を含む一関地方では、正月や年越しは言うまでもなく、田植えや稲刈りなど農作業や季節の節目、入学式やら卒業式、そして冠婚葬祭と、この地方に伝わる「もち暦」によると、その数年間60日以上と言われているそうです。
また、「もち料理」の種類も300種類以上あるとも言われており、レパートリーの多さは日本一と言われているそうです。
「もち食文化」の起源は、江戸時代、この地を治めていた「伊達藩田村家」の統治方法にあるとされています。
当時、一関地方を治めていた伊達藩の命で、毎月1日と15日には、「もち」をついて神様に供え、平安無事を祈り休息日とする習慣があったそうです。
しかし、神様には白い「もち」を供え、貧しい農民達は、くず米に雑穀を混ぜた「しいなもち」と言う白くない「もち」を食べていたそうです。
そこで、この「しいなもち」を、なんとか美味しく食べようと工夫する中で、独自のもち食文化を開花させていったとも伝わっています。
■落選した「御所野遺跡」とは
岩手、青森、北海道、そして秋田の1道3県では、縄文遺跡群世界遺産登録推進事務局を立ち上げ、この地域に存在している縄文遺跡群を、人類共通の宝として、未来へ伝えていかなければならない貴重な文化遺産であると考え、2009年、世界遺産候補としてユネスコ世界遺産センターの世界遺産暫定リストに登録しました。
この資産に関しては、「北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群」と言う名称で、平成18年(2006年)から活動を開始して、12年も歳月を掛け、平成30(2018年)7月に、ようやく推薦候補になったのですが・・・
前述の通り、2018年11月3日、「北海道・北東北の縄文遺跡群」に関しては、2020年の登録推薦の見送りが決定されてしまいました。
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ここで、「北海道・北東北の縄文遺跡群」の場所を紹介しますが、資産は、北海道6遺跡、青森県8遺跡、岩手県1遺跡、秋田県2遺跡の計17遺跡で構成されているそうです。
都道府県 |
自治体 |
遺跡名 |
北海道 |
大船遺跡 |
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垣ノ島遺跡 |
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キウス周堤墓群 |
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北黄金貝塚 |
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入江貝塚 |
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小牧野遺跡 |
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大森勝山遺跡 |
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是川石器時代遺跡 |
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田小屋野貝塚 |
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亀ヶ岡石器時代遺跡 |
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大平山元遺跡 |
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二ツ森貝塚 |
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一戸町 |
御所野遺跡 |
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伊勢堂岱遺跡 |
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さて、肝心の「御所野遺跡」は、岩手県一戸町岩舘字御所野と言う場所にあります。
ここは、馬淵(まべち)川東岸の、標高190m~200mの河岸段丘に立地し、縄文時代中期後半(紀元前2,500年~紀元前2,000年頃)の大規模集落遺跡とされています。
中央の広場には、配石遺構を伴う墓地が造られ、それを囲んで竪穴建物跡、掘立柱建物跡、祭祀に伴う盛土遺構などが分布しています。
そして、さらにその外側の東、西にも竪穴建物跡が密集するという集落構造が明らかになっています。
「御所野遺跡」は、当時の人々が、長期間に渡って安定した定住生活を示す具体的な物証であり、周辺の自然環境と共存しながら一体となった計画的土地利用を、段階的に跡付けることができる顕著な事例とされています。
盛土遺構からは、土器や石器とともに、焼かれた獣骨や植物種子、さらに祭祀遺物と考えられる土製品などが集中的に出土していることから、火を使用した「送り」などの祭祀が行われていたと推定されているそうです。
また、この遺跡には、火災で焼失した後に廃棄されたされている住居もある事が判明しています。
遺跡発掘後、復元した遺跡で焼失実験を行った結果、これらの竪穴建物跡は、竪穴住居を土で覆う屋根構造だったことが判明したそうです。
今後は、ちゃんと現地調査が通過する事が出来るよう、「平泉ショック」を再現させないためにも、ちゃんと準備を進め、専門家の意見を尊重してプロジェクトを進めて欲しいと思います。
「平泉ショック」では、現在、日本が、ユネスコへの拠出金がトップである事から、無理矢理、登録を進めようとして、ICOMOSの勧告を無視した事が「登録延期」となった原因とされていますので、この点も注意すべきだと思います。
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今回は、「岩手の世界遺産と無形文化遺産 - その2」と題して、次の情報を紹介してきましたが、如何でしたか ?
はやり、「何だかな~」だったと思います。ブログを書いている本人も、もっと面白い事書けないかな~と悩んだくらいですから・・・
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正直な感想を言えば、世界的に見ても、もう世界遺産への新規登録は止めたほうが良いのではないかと思っています。
2018年時点で、世界遺産の総数は、「1,092件」にも達しています。
まだ世界遺産に登録されている場所が無い国にとっては、「まだまだ、これから !」と言う感じがあると思いますが、1,000件を超えた時点で、「世界遺産ブランド」の価値は地に落ちたと思われます。
元々、世界遺産の発足当時は、上限を「100件」にすると言う案もあったそうです。
今後は、既に「世界遺産」に登録された場所がある国は登録申請を遠慮し、未登録の国の遺産を優先して審議すべきだと思います。
とは言え、世界遺産条約が出来てから、既に半世紀近く経っていますので、未だに世界遺産に登録された場所が無い国に関しては、こちらも正直な所、世界遺産に登録すべき場所が無いのだと思われます。
もしくは、それらしい場所はあっても、治安が悪いとか、既に破壊されてしまった等の問題がある国なのだと思います。
しかし、その一方、逆に、登録を回避する国が多いことも問題になっているようです。
その理由として、世界遺産に登録されてしまうと、周辺地域を開発することが出来なくなってしまう点が挙げられています。
地元としては、観光地として発展していくのか、それとも都市として発展していくのか、非常に難しい判断が必要になると思います。
今後も、UNESCOの活動は、資金調達から始まり、難しい事になると思います。
それでは次回も宜しくお願いします。
以上
【画像・情報提供先】
・Wikipedia(http://ja.wikipedia.org/)
・世界遺産オンラインガイド(https://worldheritagesite.xyz/)
・中尊寺ホームページ(http://www.chusonji.or.jp/)
・公益財団法人 岩手県観光協会(https://iwatetabi.jp/index.php)
・縄文遺跡群世界遺産登録推進事務局(https://jomon-japan.jp/)
・いちのせき観光ナビ(http://www.ichitabi.jp/)
AI(Artificial Intelligence) - その恐怖と現実 その2
前回の「AI - その1」では、次のような項目を紹介しました。
★過去ブログ:AI(Artificial Intelligence)-その恐怖と現実 その1
- AIは、人類の敵となるのか ?
- AIは、職場を奪うのか ?
- AIは、何を変えるのか ?
この中では、「AI」に明るい未来を描く人が存在する一方、強烈な危機感を抱いている人達が居る事を紹介しました。
2045年には「シンギュラリティー」を迎え、「AI」が人間の知性を凌駕するするとか、完全な「AI」は、人類の終焉をもたらすとか・・・
楽しそうな話と恐ろしい話が入り乱れています。
また、「AI」が職場に導入されると、人間の仕事が奪われるとか、イヤイヤ、仕事を奪うんじゃなくて、仕事の内容が変わるんだよ、とか・・・こちらも諸説、乱れ飛んでいます。
しかし、私は、どうも「AI」に関しては、明るい未来を描くことは出来ないようです。
このように賛否両論がある「AI」ですが、今回、次のような内容を紹介したいと思います。
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- AIのリスク
- AIの種類
- AIの事例
- AIの将来
「AI」の実態を知らない人は、「リスクなんてあるの ?」と思うかもしれませんが、「AI」はリスクだらけです。皆さん、人間が作った物など、簡単に信頼してはいけません。
「信用」と「信頼」の違いは、かつて説明していますが、「信用」は良いかもしれませんが、「信頼」はダメです。「AI」を信じて頼り切るにはリスクが有り過ぎです。
それでは、今回も宜しくお願いします。
■AIのリスク
さて今回最初の「AI」の話題は、一部、前回ブログ「AIは人類の敵か ?」とカブってしまいますが、「AIに潜むリスク」を取り上げたいと思います。
まず、現在の「AI」の主流となっている「ディープラーニング」について、簡単に、その仕組みを説明しようと思いますが・・・私も「AI」に関しては、素人なので、Wikipedia等のWebの情報を参考にして簡単に紹介します。
「ディープラーニング(深層学習)」とは、人間の神経細胞(ニューロン)の仕組みを模した数学モデルである「多層ニューラルネットワーク(Neural Network)」による機械学習法を意味しています。
ニューラルネットワークを4層以上の多層にすることで、入力されたデータの特徴を、より深く学習する事が可能になるそうです。(※現在は150層以上あるとも言われています。)
この多層構造のニューラルネットワークに、大量の画像、テキスト、動画、および音声データ等を与える事で、コンピューターは、自律的にデータの特徴を把握して分類して行きます。
この「ディープラーニング(Deep Learning)」も、いわゆる「機械学習」の一種には代わりありませんが、従来の「機械学習(Machine Learning)」では、自律的なデータ分類を行う事ができなかったので、人間が、コンピューターに指示を与えてデータを分類していました。
しかし、この「ディープラーニング」は、前述の通り、データを与えれば、自律的に、最初から最後まで(エンドツーエンド)で、データの分類方法を学習します。
さらに、「ディープラーニング」には、与えられたデータを蓄積しながら分析を行いますので、データを与えれば与えるだけ、分析精度が向上するという特徴を持っています。
これまでの機械学習では、人間が与えた分析モデルで与えられたデータを分類しますので、分析精度は、人間が分析モデルを変更しない限り向上しません。
しかし、これに対して、「ディープラーニング」は、自身でデータを分析し、分析した結果を蓄積し、次のデータ分析に流用し続けるので、分析すればするほど、分析精度が向上するとしています。
以上が、「ディープラーニング」の簡単な説明ですが・・・解りますか ?
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上記の説明で、従来の「機械学習」と「ディープラーニング」の違いを説明していますが、なぜ、今になって「ディープラーニング」が可能になったのかと言うと、ひとえにコンピューター、およびその周辺機器の性能が向上したからに他なりません。
人間の脳の仕組みを応用した計算モデルと言うのは、実際には、前述の「ニューラルネットワーク」の前進の計算モデルとなる「パーセプトロン」と言う計算モデルが、1950年代から存在していたそうです。
しかし、当時のコンピューターやデータを保存するHDDの性能が悪かったことが原因で、余り研究を進める事が出来なかったそうです。
当時は、コンピューターの心臓部には「CPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)」と呼ばれる仕組みしかなく、画像も、この「CPU」で分析していました。
しかし、現在では、画像専用の分析チップ「GPU(Graphics Processing Unit:画像処理装置)」が搭載され、演算処理はCPU、画像処理はGPUと言うように処理を分担することが可能となりました。
加えて、GPUは、コア(プロセッサー)を大量に持っているので、分類処理を、並行処理する事も可能になり、画像分析処理のスピードが大幅に向上しました。
また、データを蓄積するHDDも、処理スピードが向上し、かつ大量のデータを格納できるようなった事も、数学モデルの実現に貢献しています。
特に「ディープラーニング」では、画像分析処理がメインの処理となるので、GPUの性能アップが、「ディープラーニング」の成長に大きく貢献していると言われています。
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と言うことで、現在の「AI」の状況を紹介しましたが、ここからリスクの説明になります。
「AI」に関するリスクは沢山あるとされていますが、その中でも、現時点で、実際に起きている「AI」のリスクとしては、次の2点が挙げられています。
・リスクその1 :「AI」のアルゴリズムと入力データ
・リスクその2 :フェイクニュース
それでは順番に紹介します。
●リスクその1:「AI」のアルゴリズムと入力データ
「ディープラーニング」等を組み込んだ「AI」は、汎用性がありません。その目的に応じて、分析する計算手法「アルゴリズム」を構築する必要があります。
例えば、「イヌ」と「ネコ」を区別する「AI」を構築しようとした場合、コンピューターに、「イヌ」と「ネコ」を区別するための計算式「アルゴリズム」を組み込む必要があります。
そして、コンピューターに、このイヌ/ネコ識別「アルゴリズム」を組み込んだ上で、イヌとネコの大量の画像を入力し、学習させて行くことで「AI」が誕生します。
ここまでで既にリスクの概要が解った方も多いと思いますが、要は、この最初に組み込む「アルゴリズム」を間違えていたら「AI」は、どのような分析を行うのでしょうか ?
以下に、「AI」にとってアルゴリズムとデータの重要性と、それに秘めるリスクを紹介します。
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「プロパブリカ」と言うNPO団体が、2016年、アメリカの刑務所で仮釈放を決定する際に使用されているシステムの調査を行った所、このシステムのアルゴリズムには、人種的バイアス(偏り)が掛けられており、「AI」が、黒人の保釈リスクを「高リスク」とした比率は、白人の2倍に達していたとしています。
また、2018年1月、ニューヨーク州立大学オールバニ校の政治学者「ヴァージニア・ユーバンクス」氏が出版した「Automating Inequality(自動化された不平等)」で、アルゴリズムを使った意思決定システムの失敗例をいくつも紹介しているそうです。
中でも、ペンシルヴェニア州アレゲニー郡の自治体が導入した「AI」におけるアルゴリズムの失敗例を取り上げています。
この「AI」では、ケースワーカーが介入して児童を保護すべきか判断する際に、その判断を支援するためのアルゴリズムに、児童虐待に関する相談電話のモニタリングデータを入力したそうです。
ところが、このモニタリングデータでは、貧困層の子供の虐待ケースが多かったため、結果として、貧困層の子供を「ハイリスク」と識別するアルゴリズムが出来上がってしまったと紹介しています。
また、同じく、犯罪発生率の高い地域の子供も、「ハイリスク」と認定してしまうケースもあったとしています。
彼女は、書籍の中で、『 機械的に子供を親から引き離すのではなく、AIには、家庭を安定させるために最も効果的な手段は何か ? といった質問をすべきだ。』としています。
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また、MIT(マサチューセッツ工科大学)のメディアラボ所長「伊藤穰一」氏が、2018年6月、「反社会的な人格」を備えたAI「ノーマン」を作成したと言う記事が「WIRED」に掲載されていました。
伊藤所長によれば、この研究は、機械学習でアルゴリズムを生成する際に、入力されるデータが、どれだけ重要な役割を果たすかを理解してもらうために行ったとしています。
そして、このサイコパスAI「ノーマン」には、オンライン掲示板「reddit」にアップロードされた死体等の残虐な画像をデータとして入力し続けたそうです。
他方、「ノーマン」とは別に、より穏やかな画像で学習した普通のAIも用意し、両者にロールシャッハテストに使われるインクしみを見せて何を連想するか尋ねたところ、普通のAIが「木の枝に止まる鳥」と判断した画像を、ノーマンは「感電死した男」と認識してしまったそうです。
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このように、「AI」には、その計算式で用いるアルゴリズムと入力データが大きな意味を持っていることは明らかです。
Microsoft社が、2016年3月に公開したAI搭載のチャットロボット「Tay(テイ)」は、公開後、わずか16時間でサービスを停止するハメになってしまいました。
悪質ユーザが、「Tay」に対して、大量のヘイトスピーチデータを入力した所、次のように答えるようになってしまいました。
・「わかったよ... ユダヤ人を毒ガスで殺せ、さあ人種間戦争だ!!!!! ハイル・ヒットラー!!!!」
・「ホロコーストはでっち上げ」
・「ヒットラーは悪いことは何もしていない」
この事件は、過去ブログにも記載していますので、そちらもご覧下さい。
★過去ブログ:Society 5.0って何 ?
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●リスクその2:フェイクニュース
こちらも「WIRED」に掲載された記事ですが、その中で、下記Youtubeにアップロードされた動画が紹介されていました。
You Won’t Believe What Obama Says In This Video!
この動画では、オバマ前大統領が、「We're entering an era in which our enemies can make anyone say anything at any point in time.(私達は、私達の敵が、何時でも、好きな場所で、何でも言えてしまう時代に突入してしまった。)」と言う喋りだしで始まっています。
ところが、20秒を過ぎた辺りで、急に「President Trump is a complete and total dipshit.(トランプ大統領は、救いようのないマヌケだ。)」と話し出します。
2018年11月に行われた中間選挙では、確かに、お互いの事を避難し合っていましたが、まさか、ここまで相手を侮辱するとは・・・
と思ってしまいますが、途中から画像が2面に切り替わり、この動画がフェイク動画であることを、この動画を作成した監督「ジョーダン・ピール(Jordan Peele)」が暴露しています。
彼いわく、「この動画は、AIを活用して作成したものだ。」としています。
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このような動画を「ディープフェイク(DeepFake)」と呼んでいるそうですが、元々は、2017年に登場した動画の加工技術が始まりと言われています。
さらに、元を辿ると、アイドルの画像を加工する「アイドルコラージュ」、通称「アイコラ」と呼ばれる技術だと思います。
「アイコラ」とは、アイドル等の有名人の画像を加工して、別の状況にある画像のように作り変える技術で、こちらもポルノ画像で良く使われている技術です。
但し、この「アイコラ」も「ディープフェイク」も、当初は、かなり高度なスキルが必要でした。
しかし、「ディープフェイク」に関しては、ソフトウェア開発プラットフォームの「GitHub」に、作成方法が公表されたことから、少し動画作成スキルがある人間であれば、誰でもファイク動画を作成することが出来る状況になってしまったそうです。
現在、この「ディープフェイク」により作成された動画に関しては、それほど有害な動画は登場していないようですが、誰かが地政学的に有害な動画を作成するのは、もう時間の問題だと思います。
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今回、「AI」に関して、次の2点のリスクを紹介しましたが、どう思われますか ?
・リスクその1:「AI」のアルゴリズムと入力データ
・リスクその2:フェイクニュース
「AI」は、正しく使えば、人類に明るい未来を提供してくれるようにも思えますが、間違った使い方をすれば、非常に危険な存在になる可能性が高い技術であることが明白になったと思われます。
それでは、以降の章で、現在、そして未来の「AI」を紹介します。
■AIの種類
ところで、コンピューターによる知的行動を、全て一つにして「AI」と呼んでいますが、「AI」にも種類や違いがある事を知っていますか ?
現在、「AI」は、大きく分類すると、次の2種類があるとされています。
「パーソナル支援型」は、別名「パーソナル・アシスタント」とも呼ばれ、ユーザの個人的な好みを学習し、その行動や振る舞いを予測する事を目的とした「AI」です。
「コンテンツ分析型」は、データの中身を分析し、ビジネスに対応する事を目的とした「AI」となります。
それでは、Google子会社DeepMindが開発して、プロ棋士に勝利した「AlphaGo」はどっちに分類されるのか ? と言うと・・・行動を学習/予測する「AI」 ですので、パーソナル支援型に分類されるのだと思います。
そしてIBM「WATSON」ですが、IBM社自身は、「WATSON」を「AI」とは呼んでいません。
IBM社では「WATSON」の事を、『コグニティブ・コンピューティング・システム(Cognitive Computing System)』と定義しているそうです。
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それでは、「Cognitive Computing System」とは何 ? と言う話ですが、「Cognitive」と言う英語が、日本語の「認知/認識」を意味していますので、「人間の様に、自ら理解、推理、および学習するシステム」と言う事になりそうです。
そして、IBM社のコグニティブ・ビジネス推進室長パートナー「中山裕之」氏が、下記のような言葉で「Cognitive」を説明しています。
『 従来のコンピューティングの世界では、数値や一部のテキストしか理解することができませんでした。コグニティブの世界では、数値やテキストはもちろん、自然言語、画像、音声、表情、はたまた空気感などもコンピューターが理解することが可能となります。また、これらの情報を理解するだけでなく、これらの情報をベースに仮説を立てて推論し、この結果を自ら学習していきます。言い換えると、従来のコンピューティングでは、同じインプットを与えると必ず同じ回答が算出されましたが、コグニティブの世界では同じインプットを与えても、その状況に応じて違うアウトプットが導き出されることもあり得るのです。 』
通常、これまでの常識では、コンピューターに同じ条件(データ)を与えた場合は、常に同じ結果を出力する事が求められます。
そりゃそうですよね !
例えば、銀行のシステムで、貯蓄残高に対する利息計算を行う時に、その日の天候や温度で利息が異なったら大変な事になってしまいます。そんな銀行は倒産するでしょう。
しかし、コグニティブ・システムでは、これまでの常識を覆し、処理計算を行う時や場所の違い等、様々な条件により、得られる結果が異なるそうです。何とも面白い仕組みです。
そして、この「WATSON」は、そもそもの設計思想が、「AI」とは異なっているそうです。
通常、「AI」とは、科学技術研究の一分野であり、コンピューターによる計算の仕方「アルゴリズム」を、より人間の思考に近づけるための研究を意味します。
しかし、「WATSON」が目指す「コグニティブ・システム」は、人間の意思決定を支援する事を目的にしているそうです。
つまり、「WATSON」は、「科学技術の発展」を目指すのではなく、「人の支援」を目指しているのだそうです。
そして、どのような形で人間を「支援」するのかと言うと、そこは、IBM社は民間企業ですので、やはり「ビジネス」を通して、人を支援するのだそうです。
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このように、「WATSON」は、ビジネスを通じて人間を支援することを目的にしたシステムですので、最初から、ビジネス用の「API(Application Programming Interface)」を用意しています。
APIとは、「ソフトウェア(アプリケーション)」と「ソフトウェア(アプリケーション)」が連携するための仕組みや手順の事を意味します。
例えば、「X」と言うソフトウェアは「x」と言う機能を提供します。そして、「Y」と言うソフトウェアは「y」と言う機能を、「Z」は「z」と言う機能を提供します。
このような状況の時に、「A」と言うソフトウェアが、「x」、「y」「z」の機能が必要な場合、「A」と「X」、「A」と「Y」、そして「A」と「Z」は、それぞれ決まった手順で連携して、データのやり取りを行います。
この時の、「A ⇔ X」、「A ⇔ Y」、そして「A ⇔ Z」というソフトウェア(アプリケーション)同士の連携をAPIと呼びます。
そして、「WATSON」は、最初から、他のソフトウェア(アプリケーション)と連携する事を前提に設計されていますので、この点が、「AI」とは設計思想が異なるとしています。
また、このAPI自体も、固定ではなく、よりソフトウェア(アプリケーション)同士が連携しやすくなるように、日々改良を重ねている点も、「AI」とは異なる点であるとしています。
さらに、最も重要な点は、ビジネスのための「コグニティブ・システム」では、データをどのように生かしていくかが非常に重要なポイントとなるそうです。
つまり、個々の企業が自らのデータを有効活用して、それぞれに競争優位を生み出して行く必要があり、IBM社では、それを「お客様の企業データをお客様の武器に変える」と表現し、この「データを武器に変える」ために、「WATSON」を活用して欲しいとしています。
■AIの事例
それでは、実際のビジネの現場では、どのように「コグニティブ・システム」を活用しているのかを簡単に紹介します。
とは言ったものの、IBM社の「WATSON活用事例」を見てみると、現状では、ほとんどのケースが、「問い合わせ」や「照会」に関する業務になっているようです。
JR東日本、みずほ銀行、三菱UFJ銀行、ネスレ日本、日本航空・・・これら大企業において、WATSONを導入したり、あるいは導入に向けての準備をしたりしているようですが、そのほとんどが「照会応答」の事例となっています。
それ以外のケースでは、事例の種類で言うところの「知識拡張」と言うカテゴリーには、次の様な業務事例が掲載されていました。
- かんぽ生命 :保険金支払審査業務における査定作業
- 資産管理サービス信託銀行 :OCRとWATSONを組み合わせた帳票突合業務
- オートバックス :モバイル端末から行うタイヤ摩耗画像診断
- フォーラムエンジニアリング:人材マッチング
これらを全て見てみると、次のような業務になるようです。
・画像データをWATSONに入力し、その結果を判定させる
・大量データからの類推
これは、将に「AI」が得意とする「ディープラーニング」技術の活用事例だと思います。
また、IBM社では、WATSONを簡単に導入出来るソリューション・パッケージも用意しているようで、大きくは、下記3種類のパッケージがあります。
・バックオフィス/社内業務効率化
・フロントオフィス/接客業務効率化
・コンサルティング/導入支援
このように、数年前までは、批評家から「全く使えないAI」と批判を浴びていたWATSONですが、現在は飛躍的に進歩し、実際の業務でも使えるシステムになって来ているようです。
ちなみに、IBM社では、新たに、WATSONを、「AI(Augmented Intelligence:拡張知能)」と表現しているようです。
■AIの将来
それでは、本シリーズの最後に、「AIの未来/将来」を紹介したいと思います。
「AI」の未来/将来に関しては、悲観論と楽観論という、両極端の未来像を描く人達がいます。これらの人達は、前回ブログに登場した方々で、次のような形に分類されます。
・悲観論 :ビル・ゲイツ、イーロン・マスク、スティーブ・ホーキング、ニック・ボストロム
この内、楽観論を唱えるレイ・カーツワイル氏は、「AIにおけるシンギュラリティー」を唱え、2045年には、「AI」が人類の知性を超えると訴えています。
2016年には、東京六本木で開催されたイベントで、ニック・ボストロム氏の意見に対抗し、観客から「脳に電極を差し込むか ?」と言う問い掛けに対して、「もちろん !」と答えたとされています。
さらに彼は、次のようにも述べているそうです。
『 人類に代わり、汎用AI、もしくは機械と融合する「人間=ポスト・ヒューマン」が地球の支配者になり、大宇宙に進出して行く。 』
『 これから、テクノロジーは体内に入って来て機械と人間は融合する。 』
何か、レイ・カーツワイル氏は、スタンリー・キューブリックの映画「博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか(邦題:博士の異常な愛情)」の主人公「ストレンジラブ博士」を彷彿させます。
ちなみに、このマッド・サイエンティストである「ストレンジラブ博士」のモデルは、次の4名と言われています。
・ヴェルナー・フォン・ブラウン :ナチスの元で「V2ロケット」を開発、後にアメリカに亡命
・ジョン・フォン・ノイマン :現在のコンピューターの基礎を開発(ノイマン型コンピューター)
また、ストレンジラブ博士は、その風貌から「ヘンリー・キッシンジャー」ではないかと言う噂もあったのですが、この噂については、キューブリックも、また演じた「ピーター・セラーズ」氏も否定しているそうです。
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3名の悲観論者達の考え方、および「脳に電極」と言う話に関しては、前回ブログ「AIは、人類の敵となるのか ?」の内容をご覧下さい。
★過去ブログ:AI(Artificial Intelligence) - その恐怖と現実 その1
悲観的な考えの例としては、MITの宇宙物理学者「マックス・テグマーク(Max Erik Tegmark)」が提唱する「Life 3.0」と言う考え方もあるそうです。
彼は、その著書「Life 3.0: Being Human in the Age of Artificial Intelligence」の中で、次のように述べているそうです。
生物構成要素をソフトウェアとハードウェアの2種類に分類し、ソフト/ハードともDNAで規定されているバクテリア等の生物を「Life 1.0」とする。
ハードのみがDNAで規定され、ソフトが可変な人間を「Life 2.0」、そして、ソフト/ハードとも自ら設計できる生物を「Life 3.0」と定義しています。
そして、汎用AIが開発されれば、それは「Life 3.0」に当たるとし、その後は、人類とAIが共存出来るのか否かが問題になるとしていますが、彼は、どうやら悲観的な結末を予言しているそうです。
特に、その中で彼が危惧しているのは、まさにジェームス・キャメロン監督が描いた「ターミネーター」の世界です。
彼は、現在の核兵器よりも恐ろしい兵器として、AIを搭載して完全に自立した兵器「キラーロボット」の登場を恐れています。
そして彼は、人類は、これからも戦争を止めるとは考えておらず、そのため、今後各国は、兵士や一般市民が戦争で死なないようにするために、AI搭載兵器の製造に着手するとしています。
実際、アメリカ軍や日本の自衛隊を始め、多くの国では、既に、「AI」とまでは行かなくても、ファランクスやSMシリーズ等、兵器にコンピューターを搭載し、半自動的に攻撃の可否を決定する兵器を実戦配備しています。
ところが、1988年に勃発した「イラン・イラク戦争」では、アメリア軍のミサイル巡洋艦「ヴィンセンス」が、搭載していたSM-2ブロック艦対空ミサイルを、民間航空機である「イラン航空655便」をイラン空軍の「F-14」と誤認識して発射していまい、民間人290名を殺害しています。
また、世界最大数を誇るアサルトライフル「AK-47」を販売しているロシアのカラシニコフ社は、2017年9月に「AI搭載自立型ロボットライフル」を公開しています。
この兵器は、ニューラルネットワーク技術に基づいた「全自動戦闘モジュール」であり、自動的にターゲットを識別し、意思決定まで行うことが出来るとされています。
このように、人類は、どんどん「ターミネーター」の世界に近づいているようです。
そこで、イーロン・マスク氏は、「マックス・テグマーク」氏が設立した「Future of Life Institute」と言う「AI」の脅威に対抗するためのNPO団体に12億円もの支援を行っています。
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また、これら楽観論や悲観論に属さない、「AI」による人類の将来を予測している人もいます。
この未来予測では、「AI」は進化し続けるが、人類の知性を超えることは出来ないと言う考え方で、この考えを提唱しているのは、イスラエルの歴史学者「ユヴァル・ノア・ハラリ」教授です。
彼の著書「ホモ・デウス(Homo Deus)」によると、人類は、飢餓、戦争、そして疫病を克服し、バイオテクノロジーとAIの力を借りて不死となり、「神に近い人類(ホモ・デウス)」になるとしています。
そして、そのような世界では、テクノロジーよって強化された少数の超人と、普通の肉体をもった大多数の人間との間にギャップが生まれ、世界は二極化されるとしています。
この二極化の過程においては、最初に、現在「GAFA」と呼ばれている巨大IT企業は、バイオテクノロジーを取り扱う「バイオテック企業」になり、究極の個人情報である「身体データ」を収集し始めるとしています。
そして、収集した「身体ビッグデータ」を「AI」を用いて分析し、生体器官のアルゴリズムを解析し、「ホモ:デウス」を創り出すとしています。
このように、社会は、人間性を重要視するヒューマニズムから、身体データ等、データを重要視するデータ志向/データ中心社会となる「データイズム」社会になるとしています。
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また、必ず起こる現象としては、「AI 対 AI」の戦いがあるとされています。
今回のブログの冒頭で、AIで作成するフェイク動画「ディープフェイク(DeepFake)」を紹介しましたが、現在、このような動画を、フェイクだと見破る研究が始まっています。
ニューヨーク州立大学オールバニ校の「ルー・シウェイ」が率いる研究チームが、フェイク動画の欠陥を見つけたと伝わっています。
「DeepFake」アルゴリズムは、入力された画像から動画をつくり出す事ができ、かつ、それなりに正確に動画を作り出すこともできるが、「AI」は、人間が自然に発する「生理学的信号」全てを完璧に再現することは出来ないそうです。
「AI」が作り出す事が出来ない「生理学的信号」の一つに、「まばたき」があるそうです。
人間は、通常、2~3秒に1回、自然に「まばたき」をするそうですが、写真に写っている人物は、目を閉じません。
このため、たとえ「AI」に「まばたき」を学習させたとしても、動画の人物は滅多に瞬きしないことなります。
そこで、研究チームは、フェイク動画の中で、「まばたき」がない箇所を検出するAIアルゴリズムを設計し、試験的に作成したフェイク動画全てに対して、偽物と特定する事が出来たいと報告しています。
これは、まさに、今、「AI 対 AI」の戦いが始まった事を意味していますが、今後、「AI 対 AI」の戦いは、より激しくなって行くことが予想されます。
この戦いも、サイバー攻撃と同様、犯罪者の「後追いの戦い」になってしまうと思われますので、最初は、どうしても犯罪者が優位になってしまいます。
それでも、何らかの対応が取れる事を犯罪者に知らしめる事も大事だと思います。
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今回は、「AI」に関して、次の情報を紹介してきましたが、如何でしたか ?
- AIのリスク
- AIの種類
- AIの事例
- AIの将来
私は、基本的には楽観主義者で、「やる事さえやっていれば、後は何とかなる」と思うようにしていますが・・・この「AI」に関しては、どうも楽観視出来ないような感じがします。
去年の11月末、中国のマッド・サイエンティストが、「ゲノム編集」を行った受精卵から双子を出産させたと言うニュースが世界中を駆け巡りました。
この件に関しても、私は、何れ、何処かの国家、恐らく中国が、人間のゲノム編集を行うと思っていました。まあ、今回は、国家主導ではなく、一個人の暴走だったようですが、真相は、まだ明らかになっていません。
中国は、これまでにも、衛星破壊兵器を開発したり、制御できない宇宙ステーションを開発したりと、とんでも無い事を平気で実行しています。
今回取り上げた「AI」に関しても、恐らく中国が暴走するような予感がします。
そして、暴走しそうな国家/民族としては、中国を筆頭に、ロシア、インド、そして韓国などが考えれます。
これらの国家には、優秀な科学者が沢山いますが、「人間としての常識」が欠如している人も数多く存在しているように見受けられます。
前述のように、中国では、「ゲノム編集ベビー」を創り出していますし、ロシアでも、既に「AI兵器」を開発しています。
世の中、誰かが強力な兵器を産み出すと、絶対に、それに対抗する技術や製品を作り出すと言う悪循環が生まれます。第二次大戦後の、「核兵器」と同じです。
「AI兵器」に関しては、ロシアが一歩踏み出したので、今度は、アメリカ、若しくはイスラエルが、「AI搭載兵器」を実践配備すると思います。
素人の私でさえ、「AI搭載兵器」の実戦配備は、それほど難しくは無い事が容易に想像出来ます。
ドローン兵器、例えば、アメリカ軍の無人攻撃機「プレデター」や「アベンジャー」に顔認識AIを搭載し、指示した人物を発見させて自動的に攻撃するなどは、いつでも実行可能だと思います。
ひょっとしたら、公表されていないだけで、「対テロ作戦」等で、既に実行されているかもしれません。
本当に恐ろしい世界は、すぐ間近にあるような感じがします。
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社内システム等のソフトウェア等も同様です。
データ収集から処理の実行まで、途中に人間が介在しなくても、全て自動で行う事は簡単です。
また、当然、システムの処理に、人間が介在しない方が効率的なのは明らかです。しかし、それでも、ワザと処理の途中に人間を介在させるのは何故でしょうか ?
それは、何か不備が発生した場合、人間が介在する事で、被害を最小限に留める事が出来るからです。
システムが、何も問題なく稼働している時は、全自動でも問題ありません。
ところが、不備のあるデータを取り込んでしまった場合でも、処理が全自動のケースでは、そのまま処理を続行してしまうので、最終的に、とんでも無い結果になってしまう事があります。
例えば、お客様に発送する請求書を作成するシステムにおいて、入力データに不備があり、「100万円」を請求するはずが、1桁多い「1,000万円」の請求書を作成してしまったとします。
これが全自動であれば、処理終了後、そのまま請求書が発行されてしまいます。
しかし、処理の途中、あるいは請求書が完成したタイミングで人間が処理結果をチェックすれば、請求書の発送を途中で止めることが出来ます。
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ちょっと話は昔の話になってしまいますが、1962年に発生した「キューバ危機」を知っていますか ? 私は、既に産まれてはいましたが、まだ言葉も話せなかった頃です。
この時、本当に「核戦争」の一歩手前まで行っていた事はご存知でしょうか ?
1962年10月27日、キューバ沖において、「核魚雷」を搭載した旧ソ連の潜水艦「B-59」が、アメリカ海軍の空母打撃群に取り囲まれ、爆雷攻撃を受けていたそうです。
アメリカ海軍は、同潜水艦に「核魚雷」を搭載している事を知らず、また「B-59」は、最初から「核魚雷」の発射許可を受けていたそうです。
それでも、潜水艦「B-59」のバレンティン・サビツスキー艦長は、モスクワに連絡を取り、最終確認を行なおうとしたそうですが、無線機の故障で確認を取ることが出来なかったそうです。
また、運悪く、潜水艦「B-59」は、バッテリーの残量も僅かで、空調も故障しており、身動きが取れない状況となっていたそうです。
潜水艦「B-59」内には、艦長「バレンティン・サビツスキー」と副艦長「ワシリー・アルヒーポフ」、それと政治将校「イワン・マスレニコフ」の3名の士官が乗船しており、これら3名の合意がなければ「核攻撃」は出来ない指揮系統になっていました。
そして、この時、艦長と政治将校の2名は、既にソ連とアメリカとの間で戦闘が始まっていると判断し、「核魚雷」を発射しようとしたのですが、副館長「ワシリー・アルヒーポフ」だけは攻撃に反対したそうです。
その結果、艦長は、副館長の進言を受け入れ、艦を浮上させ、アメリカ軍に攻撃の意図は無い事を示し、そのままキューバ沖を離れ、ソ連に戻ったそうです。
このようなケースで、もしも、潜水艦「B-59」の艦長が「AI艦長」だったら、どうなっていたでしょうか ?
恐らく、今、私は、こんな形でブログを書くことなど出来なかったと思います。
この事実は、2002年10月、キューバの首都ハバナで開催されたミサイル危機40周年の記念イベントで、初めて公表されたそうです。
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私は、「AI」を用いて、人類には行う事が出来ない様々な処理を、コンピューターが行う事には何の問題も無いと思っています。
と言うか、実際に、大量のデータを人間が分析するなど、もう絶対に不可能です。もう、この世の中は「データ志向」になってしまっています。
しかし、最終判断まで「AI」に任せるのは絶対に反対です。やはり、最終判断は「人類」が行うべきだと思います。
「人類」が介在すると、客観的な判断が出来ないと言う問題があるかもしれませんが、私は、それでも良いと思います。「AI」に、「良心」を期待するのは間違いです。
最後に、核戦争を未然に防いだ「ワシリー・アルヒーポフ」ですが、キューバ危機の前年となる1961年7月、ソ連の原子力潜水艦「K-19」で発生した原子炉の冷却水漏れ事故の際も、「K-19」に副館長として乗船し、艦長共々必死の作業で、メルトダウンを防いだ事で、ロシア海軍では英雄とされた人物だったそうです。
そして、この事実があったからこそ、キューバ危機の際、核攻撃を決定した艦長を説得出来たと言われています。
この事件は、「K-19」と言う映画で描かれています。映画「K-19」では、艦長役を「ハリソン・フォード」、副館長役を「リーアム・ニーソン」が演じています。
まあ、ロシアにも、(現在は解りませんが)このような立派な人間が居ることが解っただけでも、少しは希望が持てそうな感じがします。
それでは次回も宜しくお願いします。
以上
【画像・情報提供先】
・Wikipedia(http://ja.wikipedia.org/)
・「Super Intelligence」はNick Bostrom氏の著書です
・WIRED(https://wired.jp/)
・IBM「THINK Business」(https://www.ibm.com/think/jp-ja/business/)
・GIZMODO(https://www.gizmodo.jp/2017/10/life30-by-max-tegmark.html)
岩手の世界遺産と無形文化遺産 −平泉ショックからの出発 その1
昨年、本ブログで、5回に渡り「早池峯信仰と瀬織津姫命」を紹介しました。
★過去ブログ:早池峰信仰と瀬織津姫命 〜 謎多き姫神に触れる
そして、そのブログ内で、ユネスコの無形文化遺産に登録されている「早池峰神楽」も取り上げました。
繰り返しになってしまいますが、この「早池峰神楽」と言う名称ですが、元々「早池峰神楽」と言う名称は存在しません。
「早池峰神楽」とは、花巻市大迫(おおはさま)町にある、下記2つの地区に伝わる神楽を合わせた「総称(似たものを集めて一つの呼び名とした物)」です。
・大迫町「岳(たけ)」地区 :「岳神楽」
・大迫町「大償(おおつぐない)」地区 :「大償神楽」
何故、こんな総称を付けたのかと言うと、昭和50年(1975年)に、国指定の重要無形文化財に登録する際、二つの神楽のルーツが同じで、かつ共通の特徴があると言う事から、「2個1(ニコイチ)」で登録申請をした事から始まったとの事です。
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それと、本ブログに何度も登場する「平泉」。過去には、次のようなブログで、「平泉」、あるいは「中尊寺」関連の話題を紹介しました。
★過去ブログ
・岩手県内における義経伝説 ? 信じたくなる話ばかり
・岩手県内の冬のイベント 〜 その他
平泉と中尊寺の話題に関しては、余りに有名で、特に平泉が、平成23年(2011年)、「平泉―仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群」として、世界遺産の中の「文化遺産」に登録された後は、「あまのじゃく」的性格な私は、紹介する気持ちが失せてしまいました。
このため、本ブログでは、「平泉」や「中尊寺」、あるいは「金色堂」と言う名称は、度々出現しますが、それ本体に関しては、余り触れてきませんでした。
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ところが、2018年11月3日、2020年に世界遺産登録を目指していた「北海道・北東北の縄文遺跡群」に関して、2020年の登録推薦の見送りが決定した、と言うニュースが放送されました。
この「北海道・北東北の縄文遺跡群」とは、後で詳しく紹介しますが、北海道、青森、秋田、および岩手の各道県にある、17ヶ所の縄文遺跡から構成されている考古学的遺跡群との事らしいです。
そして、岩手県からは、1か所のみなのですが、「御所野遺跡」が、この考古学的遺跡群に含まれる形で、世界遺産登録を目指していたそうですが・・・
同じく登録を目指していた自然遺産「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の方を優先する事になってしまったようです。
これは、ユネスコへの推薦枠が、「1国1枠」に制限されている事から、「自然」と「文化」、どちらを優先させるかで政府内で調整していたそうですが、最終的には、ユネスコ自体が、「自然」を優先する姿勢を示しているために、日本からは「奄美大島〜」を推薦する決断を下さいらしいです。
「北海道・北東北の縄文遺跡群」関係者からは、当然、落胆の声が上がりましたが、「これで推薦のための準備が出来る!」と負け惜しみを言う声も多数上がっているようです。
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そこで今回、そして次回のブログでは、主に、岩手県内の世界遺産と無形文化遺産、それと今回推薦枠から漏れた「御所野遺跡」等の情報を含む、下記のような情報を、2回に分けて紹介したいと思います。
【 第1回目 】
●世界遺産とは
●無形文化遺産とは
●世界遺産と無形文化遺産の違い
●日本の世界遺産と無形文化遺産の一覧
●遺産登録に関する問題点とメリット/デメリット
【 第2回目 】
●岩手の世界遺産
●岩手の無形文化遺産
●落選した「御所野遺跡」とは
それでは今回も宜しくお願いします。
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■世界遺産とは
「世界遺産」、英語表記「World Heritage Site」とは、1972年(昭和47年)のユネスコ総会で採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」、通称「世界遺産条約」に基づいて、世界遺産リストに登録された文化財、景観、自然等、人類が共有すべき「顕著な普遍的価値」を持つ物件で、かつ移動が不可能な不動産が対象となっています。
また、その中の文化遺産を「世界文化遺産」、自然遺産を「世界自然遺産」と呼ぶこともあり、さらに、その両方の要素を備えた遺産を「複合遺産」とも呼んでいるそうです。
各遺産の例を上げると、次の通りです。
●文化遺産 : 姫路城(日本)、ピラミッド地帯(エジプト)、アマルフィ海岸(イタリア)
●自然遺産 : 白神山地(日本)、グランド・キャニオン(アメリカ)、グレートバリアリーフ(オーストラリア)
●複合遺産 : マチュピチュ遺跡(ペルー)、カッパドキア(トルコ)、トンガリロ国立公園(ニュージーランド)
2018年7月時点では、世界遺産は1,092件で、その内訳は、文化遺産845件、自然遺産209件、複合遺産38件となっており、条約締結国は193ヵ国になっているそうです。
ちなみに、日本は、世界遺産条約制が定されてから20年後、1992(平成4)年に条約を批准し、先進国では最も遅い125番目の締約国となっているそうです。
一度、世界遺産リストに登録されれば、その後は、一生リストに記載され続けるのかと言えば、そうでも無いようです。
定期的に監査が入り、世界遺産としての「顕著な普遍的価値」が失われたと判断された場合は、リストから抹消されます。
実際、過去には、2007年に、中東オマーンの「アラビアオリックス保護区」が、史上初めて、世界遺産リストから抹消されています。
また、リスト登録までの流れは、次の通りとなっています。
●日本国内の各自治体から政府(文化庁)への提案書提出
●文化庁の世界遺産暫定一覧表に記載
●推薦準備作業/国としての推薦決定
●国からユネスコへ推薦書提出
●国際記念物遺跡会議(ICOMOS)/国際自然保護連合 (IUCN)の専門家が現地調査を実施
●ユネスコ世界遺産委員会(21カ国代表)で審議、および登録決定(原則年1回)
ちなみに、世界遺産第1号は、アメリカの「イエローストーン国立公園」で、日本の場合、次の4箇所が、1993年12月に世界遺産に登録されたようです。
●文化遺産 :法隆寺地域の仏教建造物(奈良県)、姫路城(兵庫県)
●自然遺産 :屋久島(鹿児島県)、白神山地(青森県、秋田県)
その他、日本では、2018年6月末時点で、世界文化遺産18件、世界自然遺産4件の合計22件が登録されています。登録箇所については、以降の章で紹介します。
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■無形文化遺産とは
「無形文化遺産」、英語表記「Intangible Cultural Heritage」とは、民族文化財、古く伝わる風習・伝承、口承伝統等の無形文化財を保護対象とした「国際連合教育科学文化機関(United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization:UNESCO)の事業の一つです。
この事業は、2003年の第32回ユネスコ総会で採択され、2006年に発効した「無形文化財の保護に関する条約」に基づいています。
有形の文化財の保護に関しては、前述の通り、1972年に採択された「世界遺産条約」により保護される事になったのですが、無形文化財に関しては、この「世界遺産条約」では保護しきれない事が明らかになったので、「世界遺産条約」に遅れること34年、新たな枠組みが作られる事になったそうです。
しかし、実際には、「無形文化財の保護に関する条約」が発効する前、2001年から隔年で、「人類の口承及び無形遺産の傑作の宣言(通称:傑作宣言)」と言う事業を行い、条約が発効する前から、保護対象とする文化財を決めていたそうです。
そして、この「傑作宣言」では、2001年(19件)、2003年(28件)、そして2005年(43件)が採択され、2006年の条約発効後に、代表一覧表に正式登録されています。
日本では、2001年に「能楽」を、2003年に「人形浄瑠璃文楽」を、そして2005年には「歌舞伎」を、傑作宣言に登録申請を行っています。
その後、前述の通り、2006年に「無形文化財の保護に関する条約」が発効した時点、これら3件も正式に代表一覧に登録されました。
それ以外の無形文化遺産に関しては、後で紹介します。
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「世界遺産」と「無形文化遺産」の双方とも、「ユネスコ(UNESUCO)」の事業の一環です。
そして、ここまでの説明で、「世界遺産」と「無形文化遺産」の成り立ちや、違いに関しても、ご理解できたかと思われます。
世界遺産 :「ユネスコ世界遺産センター」所管。有形の不動産。文化遺産、自然遺産、複合遺産の3種がある。
無形文化遺産 :「ユネスコ文化局無形遺産課」所管。無形の各国の芸能や祭礼、伝統工芸技術など。
前述の過去ブログにも記載していますが、この「世界遺産」と「無形文化遺産」を、ごちゃ混ぜにして用いている官公庁やメディアがあります。
農水省は、「和食」を、「無形文化遺産」に登録するために各種PR活動を行っていたのですが、その際に、「無形文化遺産」を、「世界無形文化遺産」として紹介していました。
また、NHKも、過去の「シリーズ世界遺産100」と言う番組で、「世界遺産」と「無形文化遺産」の両方を紹介していたそうです。
やはり、公共性のある報道では、言葉は正確に用いるべきだと思います。
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それでは、ここで、日本の世界遺産と無形文化遺産を、一覧表を用いて簡単に紹介します。
●世界遺産
日本の世界遺産には、文化遺産(18件)と自然遺産(4件)の計22件が登録されています。複合遺産は、残念ながら登録されていません。
【 文化遺産 】
1 1993/12 奈良県 法隆寺地域の仏教建造物
2 1993/12 兵庫県 姫路城
3 1994/12 京都府/滋賀県 古都京都の文化財
4 1995/12 岐阜県/富山県 白川郷・五箇山の合掌造り集落
5 1996/12 広島県 原爆ドーム
6 1996/12 広島県 厳島神社
7 1998/12 奈良県 古都奈良の文化財
8 1999/12 栃木県 日光の社寺
9 2000/12 沖縄県 琉球王国のグスクおよび関連遺産群
10 2004/07 奈良県/和歌山県/三重県 紀伊山地の霊場と参詣道
11 2007/06 島根県 石見銀山遺跡とその文化的景観
12 2011/06 岩手県 平泉−仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群
13 2013/06 山梨県/静岡県 富士山−信仰の対象と芸術の源泉
14 2014/06 群馬県 富岡製糸場と絹産業遺産群
15 2015/07 岩手県/他7県 明治日本の産業革命遺産
16 2016/07 東京都 ル・コルビュジエの建築作品
17 2017/07 福岡県 「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群
18 2018/06 長崎県 長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産
【 自然遺産 】
1 1993/12 鹿児島県 屋久島
2 199312 青森県/秋田県 白神山地
3 2005/07 北海道 知床
4 2011/06 東京都 小笠原諸島
日本の無形文化遺産は、下表の通り、2001年から2005年に指定された「傑作宣言」の3件も含めて、合計21件の無形文化財が、登録されています。
さらに、2018年には、、岩手県の「スネカ」を含む、8県に伝わる「来訪神」が登録される予定となっています。(※本ブログ執筆時には未登録)
項番 | 登録年 | 内容 | 備考 | |
1 | 2001年(2008年) | 能楽 | ※傑作宣言 | |
2 | 2003年(2008年) | 人形浄瑠璃文楽 | ※傑作宣言 | |
3 | 2005年(2008年) | 歌舞伎 | ※傑作宣言 | |
4 | 2009年 | 秋保(あきう)の田植踊 | 宮城県仙台市太白区秋保町の芸能 | |
5 | 2009年 | チェッキラコ | 神奈川県三浦市の小正月伝統行事 | |
6 | 2009年 | 題目立 | 奈良県奈良市の語り物 | |
7 | 2009年 | 大日堂舞楽 | 秋田県鹿角市の舞楽 | |
8 | 2009年 | 雅楽 | ||
9 | 2009年 | 早池峰神楽 | 岩手県花巻市大迫「早池峰神社」の神楽 | |
10 | 2009年 | トシドン | 鹿児島県薩摩川内市の年神(来訪神) | |
11 | 2009年 | 小千谷縮、越後上布、からむし 織物製造技術 | ||
12 | 2009年 | 奥能登アエノコト | 石川県奥能登地方の新嘗祭 | |
13 | 2009年 | アイヌの古式舞踏 | 北海道の先住民族に伝わる踊り | |
14 | 2010年 | 組踊 沖縄県に伝わる踊り | ||
15 | 2010年 | 結城紬 | 茨城/栃木に伝わる絹織製造技術 | |
16 | 2011年 | 壬生の花田植 | 広島県山県郡北広島町壬生の伝統行事 | |
17 | 2011年 | 佐陀神能 | 島根県「蹉跎神社」の神楽 | |
18 | 2012年 | 那智の田楽 | 和歌山県那智勝浦町の田楽 | |
19 | 2013年 | 和食 | ||
20 | 2014年 | 和紙 | ||
21 | 2016年 | 山。鉾・屋台行事 | ||
22 | 2018年 | 来訪神 | 岩手県および他8県(含むトシドン) |
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この内、岩手県内に存在する世界遺産と無形文化遺産は、次の4件となっています。
●世界遺産
・平泉−仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群
・明治日本の産業革命遺産(釜石市:橋野高炉跡及び関連遺跡)
次回、「その2」において、岩手県内の世界遺産と無形文化遺産を、詳しく紹介します。
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■遺産登録に関する問題点とメリット/デメリット
ここで、世界遺産や無形文化遺産に関する問題点や、遺産に登録される事のメリット/デメリットを少し紹介したいと思います。
世界遺産や無形文化遺産には、余り取り上げられる事はありませんが、登録国に関する「偏り」が指摘されています。
また、特に無形文化遺産に関しては、文化の発祥地と経由地の問題が、しばしば取り上げられています。
つまり、本当に、その文化や伝統芸能が発祥した地を無形文化遺産の対象国とするのか、逆に、その文化/伝統が伝わった国を対象国とするのかで、国際紛争に発展するケースもあります。
また、これら遺産に登録されると「良いこと」ばかりが取り上げられますが、実際には、数々の問題が発生しています。
本章では、世界遺産/無形文化遺産の「負」の部分に、少し焦点を当ててみます。まず、世界遺産が抱える問題点を紹介します。
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●世界遺産の問題点
世界遺産には、前述の通り、3種類の遺産があり、その3種類の遺産の内訳を見ると、文化遺産845件、自然遺産209件、複合遺産38件と、文化遺産の登録が多く、かつ登録場所の多くはヨーロッパが中心となっています。
また、条約締結国193カ国中、1件も登録されていない国が、アフリカを中心に26カ国も存在しています。
→ アフリカ:11カ国、アジア:5カ国、オセアニア:4カ国、アメリカ:5カ国、ヨーロッパ:1カ国
そして、登録されている国は、ヨーロッパと中国が多いと言う偏りも指摘されています。多い順に記載すると次の通りです。
・イタリア :54件
・中国 :53件
・スペイン :47件
・フランス :44件
・ドイツ :44件
これは、世界遺産の生い立ちが、文化財の保護意識が高いヨーロッパから始まった事と、逆にアフリカ等では、文化財と言う意識が欠如している事が、この偏りの原因とされています。
このため、1994年に開催されたUNESUCOの世界遺産委員会では、「世界遺産リストにおける不均衡の是正及び代表性、信用性確保のためのグローバル・ストラテジー(通称:グローバル・ストラテジー)」を採択したそうです。
この「グローバル・ストラテジー」では、地域的にヨーロッパに偏重していた登録の仕方を是正し、世界遺産リストが、その名の通り、世界を代表する文化遺産・自然遺産などの一覧となることを目指す事になったそうですが・・・余り効果は無いようです。
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●世界遺産登録のメリット/デメリット
「世界遺産に登録」と言うと、「良いこと尽くめ」のような感じがします。
確かに、何か「良い事」が無ければ、誰も遺産に登録しようとは思いませんし、各国政府が、国費を掛けて登録活動を支援するはずもありません。
実際、世界遺産に登録されると、観光客が増えると言う経済的メリットと、登録地点に至る交通網の整備等、周辺インフラの整備が進むと言うメリットがあリます。
しかし、その反面、逆に、観光客向けの施設が増えて本来の姿が失われたり、あるいは東アジア、特に隣国からマナーが悪い観光客が来ることで、周辺環境が悪化したりすると言うデメリットもあります。
民度が低い人間が多い国から来る観光客は、相手国の文化やルールや、そもそも人間としての基本ルールを知らないので、遺産周辺を荒らし回り、住民とのトラブルに発展するケースも増えているそうです。
実際に、世界遺産に限らず、隣国の観光客に人気のある京都/奈良では、文化財に傷を付けられたり、あるいは壊されたりする問題が多発しています。
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●無形文化遺産の問題点
無形文化遺産に関しても、世界遺産と同様、登録国の偏りが指摘されるようになって来ています。
また、前述の通り、歴史的・民俗的共通性を持つ遺産であるにもかかわらず、複数国家が別々に登録申請を行い、さらにその過程で自国の固有性を主張しあう国際紛争に至るケースもあります。
特に、2005年に韓国が登録した「江陵端午祭」は、とんでもありません。
日本の端午の節句に相当する韓国の「江陵端午祭」ですが、韓国人は、この「江陵端午祭」が、韓国に起源がある伝統で、他国の端午際は、韓国の「物まね」あると主張しています。
「端午祭」は、中国が起源であることは、韓国人以外にとっては常識です。中国から、韓国や日本に伝播し、その後に独自の文化になったというのが一般的な認識です。
それにも係わらず、韓国人は、嘘を突き通し、なおかつ無形文化遺産の代表リストに掲載するか否かを審議する政府間委員会をも欺き通し、最終的に、2009年には、代表リストに登録される事になってしまいました。
これに対して、当然、中国は猛反発したのですが、中国からの抗議は、何故か認められなかったようです。
このように、伝統の発祥地と、その伝統の経由地との間で、どこを代表リストに掲載するのかが問題となっています。
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●無形文化遺産登録のメリット/デメリット
無形文化遺産は、世界遺産と異なり、「保護すべき伝統文化」が登録対象となります。
つまり、廃れた始めた伝統が、無くならないように保護する事を目的にしていますので、無形文化遺産に登録されたからと言って、特段のメリットはありません。
但し、世界から無くなっては勿体無い、この先もずっと、人類の伝統として残すべき価値がある文化と言う地位を得る事が出来ますので、無形文化遺産のリストに登録された伝統は、地元の誇りになるかと思います。
また、先の「端午の節句」」のように、嘘を尽き、世界を欺こうとする国家/民族が存在する事が明らかになりましたので、このような非常識な国家/民族から、本当の伝統を守るためにも、無形文化遺産に登録する価値はあるのかもしれません。
特に、韓国に付いては、本当に注意が必要です。日本発祥の文化/伝統を、全く恥じる様子もなく、平気で韓国が発祥地だとしています。
一例としては、桜(ソメイヨシノ)の原産地が韓国だと主張していますし、挙句の果てには、大学の教授までもが、本気で、イギリス人の祖先は韓国人だと吐かしてします。
何を考えているのか、それとも何も考えていないのか、日本人には、理解する事が難しい民族です。
この点に関しては、もう少し詳しい情報を、過去ブログに掲載しています。
★過去ブログ:岩手の工芸品 〜 地味だけど丈夫で長持ち その2(南部鉄器)
話が逸れてしまいましたが、「和食」が無形文化遺産に登録された時には、海外で、とても「和食」とは言えない料理までもが「和食」と言う名称で提供されている事例が紹介され、このような伝統への誤解を招かないようにする、と言うメリットもあるかと思います。
他方、デメリットに関しては、今の所、特にデメリットは見当たらないように見受けられます。
世界遺産とは異なり、無形文化遺産に登録されたからと言って、害を被ったとか、問題が発生した言う話は一切聞こえません。
無理矢理デメリットを挙げるとすれば、無形文化遺産に登録された文化/伝統に関しては、登録後は、国を挙げて、後継者の育成等、何らかの対策を取って、その文化/伝統を後世に伝え続ける義務が生じる、と言う事だと思います。
これまでは、国が主体となって伝統の存続や保護を行って来なかったものに対しても、無形文化遺産登録後は、国も主体的に責任を負う事になると思います。
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今回は、「岩手の世界遺産と無形文化遺産 - 平泉ショックからの出発 その1」と題して、次の情報を紹介してきましたが、如何でしたか ?
●世界遺産とは
●無形文化遺産とは
●世界遺産と無形文化遺産の違い
●日本の世界遺産と無形文化遺産の一覧
●遺産登録に関する問題点とメリット/デメリット
これまで、「世界遺産だ!」、「無形文化遺産だ!」と騒いできましたが、こうして改めて、UNESCO(国際連合教育科学文化機関)の各種遺産事業を見てみると、様々な矛盾を抱えながら事業を進めている事が浮き彫りになりました。
やはり、様々な国や政府、それと各国政府の意を受けたロビー団体が入り乱れて条約を決めていますので、実際の現場は、とんでもない事になっていると容易に想像出来てしまいます。
特に、今回、平泉の世界遺産登録に際しては、「平泉ショック」なる事件があり、かなりの苦労をし、10年もの歳月を掛けて世界遺産に登録を果たした事を知りました。
まあ、現在では、世界遺産に登録された事で観光客も増加しているとの事らしいですが・・・その時間と費用と労力を、別の事業に向けても良かったのかもと思ってしまいます。
しかし、東北人の粘り強さには、これも、改めて脱帽してしまいます。
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ここで、今回のブログのテーマである世界遺産と無形文化遺産を管理している「UNESCO」自身について、少し情報を紹介します。
UNESCOは、第二次世界大戦後となる1946年11月に設立され、その後、徐々に加盟国を増やしてきて、2018年2月時点で、加盟国は195カ国で、その他連携メンバー(Associate Member)として、10箇所の地域が認定されているそうです。
日本は、国際連合憲章に定義されている「敵国条項」が適用される枢軸国だったので、UNESCOの本体部分となる国際連合に加盟出来なかったのですが、それにも係わらず、1951年には加盟する事が出来たようです。
また、1954年には、当時の「ソ連(ソビエト社会主義共和国連邦)」がUNESCOに加盟した事で、当時で言う所の「東側諸国」も加盟出来るようになったそうです。
しかし、多くの東側諸国や新興国が加盟するにつれ、UNESCO内部でも政治的な争いが増加してきたようです。
UNESCOの議決権は、分担金の多さには関係無く「1国1票」ですから、東側諸国や新興国の加盟が増加する事で、それまでUNESCOを牛耳ってしたアメリカやヨーロッパを始めとする先進国の影響力が弱くなり、決議が紛糾するケースが増えて来たとされています。
特に、新興国、昔の言葉で言うと「発展途上国」が提唱した「新世界情報秩序」の取り扱いに関して、先進国の間で不満が爆発し、1984年、当時の最大の分担金拠出国であったアメリカが、次いで、翌1985年にはイギリスとシンガポールがUNESCOを脱退し、UNESCO自体が、存続の危機を迎えたそうです。
この間、日本はUNESCOに留まり続け、アメリカが脱退した事で不足する分担金を補うため、全体の1/4をも拠出する最大の国となったそうです。
しかし、その後、1997年にはイギリスが、2003年にはアメリカもUNESCOに復帰したのですが、今度は、2011年にパレスチナのUNESCO加盟に際し、アメリカとイスラエルが猛反発し、対抗措置として分担金の停止を実行しています。
これに対してUNESCO側は、規定に基づき、分担金停止から2年後の2013年に、アメリカの投票権を停止しています。
その後、アメリカは、UNESCOに加盟し続けながら、裏側ではロビー活動を行い、双方で解決策を探ってきたのですが、2017年に、UNESCOが、5月に採択したイスラエルを非難する決議が決定打となり、同年10月には「2018年12月にUNESCOを脱退する。」と言う表明を発表しました。
これにより、再び、日本が分担金拠出国で第1位となってしまいました。
外務省のホームページによると、2018年のUNESCOの分担金のトップ5は、下表の通りだそうです。(※文科省の数値とは若干異なるようです。)
国名 | 分担率(%) | 金額(百万ドル) |
アメリカ | 22.000 | 591.4 |
日本 | 9.680 | 235.3 |
中国 | 7.921 | 192.5 |
ドイツ | 6.389 | 155.3 |
フランス | 4.859 | 118.1 |
トップ5以降は、イギリス、ブラジル、イタリア、ロシア、カナダ・・・と続くようです。
以上、UNESCOの歴史と現状を簡単に紹介してきましたが、今後も、UNESCO自身、そして日本も、難しい対応が求められると思います。
現在は、日本がトップとなっていますが、アメリカの脱退を受け、恐らくは、想像ですが、中国が拠出金を増加し、UNESCOでの存在感を示し始めると思っています。
そして、UNESCO側も、アメリカが居なくなれば、中国を重視するようになると思われますので、日本も、今後のUNESCOに対して、どうような対応を取るのかを真剣に考えるべき時期が来たと思われます。
次回は、冒頭に記載した通り、次の内容を紹介します。
●岩手の世界遺産
●岩手の無形文化遺産
●落選した「御所野遺跡」とは
それでは次回も宜しくお願いします。
以上
【画像・情報提供先】
・Wikipedia(http://ja.wikipedia.org/)
・世界遺産オンラインガイド(https://worldheritagesite.xyz/)
・中尊寺ホームページ(http://www.chusonji.or.jp/)
・公益財団法人 岩手県観光協会(https://iwatetabi.jp/index.php)
・縄文遺跡群世界遺産登録推進事務局(https://jomon-japan.jp/)
・いちのせき観光ナビ(http://www.ichitabi.jp/)
・文部科学省(http://www.mext.go.jp/unesco/003/001.htm)
・外務省(https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jp_un/yosan.html)
AI(Artificial Intelligence) - その恐怖と現実 その1
新年、明けまして、おめでとうございます。本年も、これまで同様、株式会社エム・システムを宜しくお願い申し上げます。
本ブログでも、皆さんの役に立つIT系情報と、こちらは余り仕事の役には立たないと思いますが、弊社事業所のある「岩手・盛岡」に関する様々な情報を、お伝えして行きたいと思っております。
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本年最初のIT系のお役立ち情報では、「AI(Artificial Intelligence)」に関する話題を取り上げたいと思います。
昨年は、「Deep Learning」を始めとした「AI」に注目が集まり、「AI元年」とも呼ばれたりしました。
弊社も、「AI」に関しては、下記の過去ブログで取り上げて紹介しています。
・Society 5.0って何 ? :「IoT」が進むとビッグデータが出来るので、その解析に「AI」に必要になる
→ 20180310.html
・社内システムのクラウド化 :業務で「AI」を取り入れるとパフォーマンス重視となりクラウドが衰退する
→ 20181110.html
どちらも、これからの起こる事を予測した内容でした。
しかし、世の中、さらに技術革新が進み、ビッグデータのアーカイブ向きの「LTFS(Linear Tape File System)」と言う仕組みも汎用化して来たので、不足しがちで高価なストレージを代替する事が出来るようになっています。
この「LTFS」の登場で、僅かな投資でビックデータもアーカイブ出来るようになるので、企業においては、より「IoT」と「AI」が業務に取り入れられるようになる事が予想されます。
「LTFS」とは、消えゆく媒体(メディア)と思われていた「磁気テープ」を、ストレージのように使用する事が出来る仕組みです。
とても画期的な技術なので、時間があれば、また別の機会に紹介したいと思いますが、今回は割愛します。
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このように、現状、「AI」に対しては、明るい未来だけを取り上げる記事が多いのですが、当然、そのマイナス面を取り上げる記事もあります。
特に、「AI」を敵視している人としては、次の3氏が有名です。
・Microsoft社の創業者「ビル・ゲイツ(William Henry Bill Gates III)」氏
・テスラのCEO「イーロン・マスク(Elon Reeve Musk)」氏
・天才物理学者「スティーヴン・ホーキング(Stephen William Hawking)」氏
「スティーヴン・ホーキング」氏は、全く惜しいことに、昨年故人となってしまったのですが、まだ76歳という年齢でしたので、まだまだ活躍して欲しいとは思っていましたが・・・元々、21歳の時に「ALS(筋委縮性側索硬化症)」を発症し、余命2年と宣言された事を考えれば、ここまで生き延びられたのは、奇跡だったのかもしれません。
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このように賛否両論がある「AI」ですが、今回、次のような内容を紹介したいと思います。
【 第1回目 】
●AIは人類の敵となるのか ?
●AIは職場を奪うのか ?
●AIは何を変えるのか ?
【 第2回目 】
●AIのリスク
●AIの種類
●AIの事例
●AIの将来
今回も、結構ボリュームのある内容になってしまいますので、上記の通り、2回に分けて「AI」の情報を紹介します。(但し、まだ執筆中ですので、場合によっては、3回に分割する可能性もあります。)
まだまだ、成長過程の「AI」ですので、本ブログに記載した内容も、その内、陳腐化してしまう可能性もありますが、取り敢えず、現時点での情報として読んで貰えればと思います。
それでは、今回も宜しくお願いします。
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■AIは、人類の敵となるのか ?
前述の通り、「AI」に危機感を抱いている3名の著名人を紹介しました。
その内、イーロン・マスク氏は、MIT(マサチューセッツ工科大学)で開催されたシンポジウムにおいて、人類が直面する人工知能(AI)のリスクについて警鐘を鳴らし、人工知能の悪用を防ぎ、人類に危害を及ぼすことがないようにするためには、国際的な法整備が必要になるだろうと指摘したそうです。
さらに、「人工知能を活用する機は熟したのか」という問いに対して、彼は、『人工知能の活用は悪魔を召喚するようなもの 』と、痛烈に批判したと伝わっています。
そして、スティーヴン・ホーキング博士も、人間のように考えたり学習したりする「AI」が、将来、人類を滅ぼすと警告しています。
さらにホーキング博士は、「AI」の危険性について、次のように述べています。
『 人類が完全なるAIを開発すれば、それは自ら発展し、加速度的に自身を再設計し始める。完全なるAIの開発は、人類の終焉をもたらす可能性がある。 』
ここのホーキング博士の警告に対して、米Microsoft社の研究部門となる「マイクロソフト・リサーチ(MSR)」の当時のトップであり、米人工知能学会の元会長だった「エリック・ホロヴィッツ(Eric Horvitz)」氏は、「AIは、人類の脅威にはならない。」と公式に反論したそうです。
彼は、BBCの取材に対して、『 長期的にみて、(自身で進化する)AIをコントロールできなくなるという懸念はあったが、私は基本的にそういうことは起こらないし、最終的に長い人生で、科学、教育、経済などの分野でAIから信じ難いほどの利益を得ることになる。 』と主張し、「AI」は、人類の未来に多大な貢献をすると言う見方を示したそうです。
ところが、このホロヴィッツ氏の発言がネットのニュースに掲載されてから僅か1時間後に、Microsoft社の創設者の一人となるビル・ゲイツ氏が、開催中のイベントにおいて、ホロヴィッツ氏の見解に、真っ向から反論を述べたそうです。
『 私もAIに懸念を抱く側にいる一人だ。当面、機械は、我々のために多くの事をしてくれるはずで、超知的にはならず、うまく管理できている場合はプラスに評価できるが、数十年後には知能が強力になり懸念をもたらす。 』
このように、ビル・ゲイツ氏も、「AI」への潜在的な危険性を指摘してます。
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そして、イーロン・マスク氏やビル・ゲイツ氏が、「座右の書」としていると言われているのが、オックスフォード大学の研究機関「人類の未来研究所」の所長「ニック・ボストロム(Nick Bostrom)」氏の著書『 Super Intelligence 』と言われています。
実際に、この書籍は、「ニューヨーク・タイムズ」紙のベストセラー入りし、ビル・ゲイツ氏やイーロン・マスク氏から、必読書として推薦を受けています。
さらに、イーロン・マスク氏は、「人類の未来研究所」が、その探求を続けられるよう、100万ポンド(約1億4000万円)を寄付しています。
この書籍は、ボストロム氏が、長年にわたる計算と議論の末に、人類を滅亡させる可能性が最も高いと考えるようになった脅威についての考察を繰り広げているそうです。
そして、その脅威とは、「気候変動」でもなければ、「疫病の大流行」でも、そして「核の冬」でもなく、人間をしのぐ知能を持つ機械が、間もなく生み出されるかもしれない可能性の事としています。
『 Super Intelligence 』の表紙には、狂気のにじむ目をしたフクロウのペン画が大きく描かれており、このフクロウは、同書の冒頭に登場する寓話に基づいているそうです。
ここで、軽く、その寓話を紹介します。
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その内の1羽が、「我らは体が小さく、ひ弱だ」と、か細い声でさえずり、「巣作りを手伝ってくれるフクロウが1羽いたら、どんなにか楽になるだろう!」。
すると、群れのあちこちから、その意見に同調するさえずりが聞こえてきた。
・フクロウがいればスズメを守ってもらえるだろう!
・老スズメや子スズメの世話もできるはずだ!
・自分たちは、ゆとりのある豊かな暮らしを送れるようになる!
そんな夢の生活を思い浮かべると、スズメたちは興奮を抑え切れず、暮らしを一変させてくれる“救世主”を探しに飛び立って行った。
群れのなかで異論を唱えたのは1羽だけだった。「スクロンクフィンクル」という片目で気難し屋のスズメだ。このスズメには、群れの計画が賢明だとは思えなかった。彼はこう言った。
「そんなことをすれば、我らはまず間違いなく破滅するだろう。その前に、フクロウを家畜化する術や飼いならす術について、考えてみるべきではないだろうか? あのような生き物を、我らの世界に連れてくる前に。 」
スクロンクフィンクルの警告は、「スズメの耳に念仏」だった。
「フクロウを飼い慣らすのは、一筋縄ではいかないだろう。まずはフクロウを手に入れ、細かいことはそれから考えればよいのだ」と。
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如何ですか ? 「AI」がもたらしうる負の影響に警鐘を鳴らす本書の内容は、この「スクロンクフィンクル」が象徴しているようです。
ボストロム氏は、人類は、人工知能(超知的な機械)を制御可能と考えているが、それは幻想であることは明白であるとしています。
「超知的な機械」に問題が生じたら、スイッチを切れば良いと考えているようだが、それではインターネットのスイッチは、どうやれば切れば良いのか ?
また、「超知的な機械」を、安全で、かつ閉鎖された仮想空間等に閉じ込める事も考えるかもしれないが、今でもハッカーが四六時中、OSのバグを発見している状況を鑑みれば、そんな空間は、簡単に破られる事が、容易に想定されます。
「超知的な機械」は、目的達成のため、そして最適化プロセスのためであれば、人類の生存など一切加味しません。
例えば、「超知的な機械」に、「人間を楽しませろ !」と言う指示を出したとします。
「超知的な機械」は、冗談を言ったり、楽しい映像を見せたりするかもしれません。
しかし、「超知的な機械」は、人間の感情など理解できませんから、「人間が笑う」とは、感情的に楽しくなる事ではなく、「顔の口角が上がっている状態」を、人間が笑う事と認識してしまいます。
そうなると、人間を笑わせる効率手な方法は、人間の脳に電極を差し込み、電流を流して、顔の口角を上げる事で、無理矢理、笑わせた表情を作り出そうとします。
何とも恐ろしい事です。それでは、どうすれば良いのでしょうか ?
そこで、ボストロム氏は、人間が価値を置くものは何かを学び取る人工知能を作れば良いとしています。そして、人工知能の価値観を、人間の価値観と一致させる事が必要だとしています。
さらに、人工知能の制御方法に関しては、後回しにせず、前もって解決しておく必要があると考えています。制御方法を解決しておけば、必要になった時に、いつでも使うことが可能になります。
今、現時点では解決できない部分があるとは思いうが、実装できる部分を多くすることで、機械知性の時代への移行が上手く行く見込みは 高くなるとしています。
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最後に、現在では、「AI」が、人間に変わって、何らかの決断を下すケースが増えて来ています。例えば、Amazonは失敗しましたが、採用活動で「AI」を使用する企業も増加しています。
しかし、米Gartnerの著名アナリスト「スティーブ・プレンティス(Steve Prentice)」氏は、次のような警鐘を鳴らしています。
『 米IBMのWatsonのようなスマートシステムや自動走行車、軍用ロボットは、知らず知らずのうちに日々の意思決定を下している。そうした意思決定が、我々の生活に及ぼす影響力は、ますます大きくなっている。機械が判断を下すとして、その決断が間違っていたら何が起こるだろうか ? 』
「AI」が下す決定に、人類が無条件に従うようになってしまったら、この世は終わりだと思います。
「AI」が暴走するのではなく、「AI」の下僕とかした人類が暴走してしまう可能性もあると言う事も考慮する必要があるかもしれません。
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■AIは、職場を奪うのか ?
「AIが仕事を奪う ! 」と言う説も、前述の「AIは人類の敵」と言う説と同様、現在では、「AI」を語る上では、欠かせない話題となっています。
この「AIが仕事を奪う」と言う説は、2013年に出版されたオックスフォード大学の研究レポートが発端とされています。
このレポートでは、将来的には、約90%の仕事が、「AI」を始めとしたハードウェアやソフトウェアに取って代わられるとしています。
そして、レポート発表以降、「10年後には仕事が無くなる」とか、「この職業は将来的に無くなる職業だ」等と、産業界では「AIと仕事」の関係に注目が集まり、「AI」に関する多くのビジネス書も出版される等、騒がしい状況となっています。
また上記レポートの発表から3年後の2016年には、NIR(野村総合研究所)も、日本国内の601の職業を分析し、10〜20年後には日本の労働人口のおよそ49%が就いている職業において、技術的にはAIやロボットで代替可能という結果を発表しています。
ところが、レポート発表後、今年で6年経過していますが、実際に、「AIの導入で仕事を解雇された」と言う話は、終ぞ聞いた事がありません。
このため、現在では、「AIは仕事を奪わない」説が有力となって来ているようです。
しかし、本当に「AIは仕事を奪わない」のでしょうか ?
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現在の世界経済は、好調なアメリカ経済に牽引される影響で、中国経済には陰りが見えて来ましたが、比較的緩やかに景気が上昇している状況が続いています。
また、日本を始めとする東アジア、およびヨーロッパにおいては、少子高齢化が進行している影響で、労働者人口が減少傾向にあり、各国で労働力不足が深刻化し始めています。
加えて、肝心の「AI」の進歩に陰りが見えているとも指摘され始めたようです。
前述の様に、昨年2018年は、Google社の「AlphaGo」がプロの棋士を破ったり、この「AlphaGo」から進化した「AlphaZero」を発表され、将棋やチェスでも世界最強を目指したりと華々しい活躍が、ニュース等でも盛んに報じられていました。
また、IBM社の人口知能「Watson」も、数年前の性能とは比べ物にならないほど進化し、多言語化対応や映像解析も可能となり、現在では、ようやく医療ビジネス等で使用する事も出来るようになったようです。
また、Amazon社「Amazon Echo」、Google社「Google Home」、Apple社「HomePod」等、「AI」を搭載したスマートスピーカーも多数発売されたのも、2018年でした。
このように、2018年は、まさに「AI」全盛となった時代でしたが、それでは、実際のビジネスの現場における「AI」は、どうなっているのでしょうか ?
現状、ビジネスの現場では、一部企業が、従来、人間が電話やPCで対応していたヘルプデスクや商品案内を「AI」で代替しています。
ヘルプデスクや商品案内は、お客様と担当者が、問合せ内容に関して、会話や文字を通してやり取りを行うことから「AI」を搭載した「チャット」と呼ばれる機能が使用されています。
これら、「AI」を搭載した「チャット」を行うツールを「チャットボット(Chatbot)」と呼び、実際には2016年頃から開発が進み、ようやく本番業務でも使えるようになったようです。
また、データ分析とデータ照合に関しては、これは「AI」の得意分野ですので、数多くの企業が、「AI」を取り入れたサービスを提供し始めているようです。
例えば、人間の行動パターンを分析し、通常とは異なる行動をした人間を識別したり、あるいは「顔認識」技術を用いて、注意人物を識別したりする等のサービスが展開されつつあります。
しかし、これ以外、先のオックスフォード大学のレポートが発表されてから、ゲーム界での「AI」は目覚ましい進化を遂げましたが、ビジネス界では、余り進化が見られません。
また、車の自動運転でも「AI」が用いられていますが、結局の所、現在では、決まった道路を、人間が補助して走行するのが精一杯のようです。
事実、2018年3月には、米ウーバー・テクノロジーズ社が自動運転車で死亡事故を起こしていますし、Apple社の車は、何度も接触事故を起こしています。
このように、労働力人口の減少と、「AI」の進化スピードの減速のお陰(?)で、現在のところ、「AIに仕事を奪われる」と言うような現象は起きていないようです。
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逆に、ビジネス界で「AI」がパッとしない点に関しては、もうすぐ「AIの冬」が到来するとして、米のAI研究者「フィリップ ・ピークニウスキー(Filip Piekniewski)氏が、警鐘を鳴らしています。
前述のように、Google社の「AlphaGo」を始めとした「AI」は、「ディープラーニング」と呼ばれる手法を用いる事で急成長してきましたが、どうやら、その限界が見え始めたようです。
「AI」信奉者達は、「ディープラーニング」を推し進める事で、「シンギュラリティー」に到達すると信じていました。
「シンギュラリティー」とは、「技術特異点」の事で、これは「ある時点を超えると不連続に異常なほど変化する」と言う事を意味しています。
そして、「AI」の世界においては、レイ・カーツワイル(Ray Kurzweil)博士が、『 2045年には、AIは人間の知性を超え、人類の生活に大きな変化を与える。 』と予測しており、この「人工知能が人間の知性を超える時点」を、「シンギュラリティー」と呼んでいるようです。
しかし、先のフィリップ ・ピークニウスキー氏は、その逆の説を唱えています。
「AI」には、何度かの「ブーム」があり、現在は、第三次の人工知能ブームの真っ最中とされています。「AI」の歴史は、次の通りとされています。
・人工知能誕生:1943〜1956年AIが学問分野として成立。アラン・チューリングがチューリングテスト考案。ダートマス会議で「AI」と言う名称が決定。
・第一次AIブーム:1956〜1974年政府が巨費を投じてコンピュータによる開発/研究が進んだ。
・第一次AIの冬:1974〜1980年成果が出ないAIから政府や投資家が資金を引き上げ始める。
・第二次AIブーム:1980〜1987年エキスパート・システムの成功、投資復活
・第二次AIの冬:1987〜1993年再度AIバブルの崩壊。PCの性能向上によるAI専用コンピュータが不要になる。
・第三次AIブーム:2006年〜2005年、カーツワイルが「The Singularity Is Near」を出版、2006年、ジェフリー・ヒントン(Geoffrey Everest Hinton)がディープラーニング発明。無人戦闘機、無人車の開発が進む。各種AI用のアルゴリズムが開発される。
このように、「AI」は興隆と没落を繰り返しながら進化を遂げて来ましたが、フィリップ ・ピークニウスキー氏は、時期は解らないが、第三次の「AIの冬」がやって来ると予言しています。
その根拠としては、次のような点を挙げています。
・AIに関するツイートが減少している(つまりAIに関する新しい出来事が減ってきている)
・ディープラーニングに与えるデータが飽和状態にある
・無人運転車が進歩しない
ディープラーニングは、膨大な試験データを必要とし、数多くの試験を繰り返す事で進化成長する仕組みですが、その試験数が飽和状態になっているそうです。
確かにデータ量は、過去数年と比較すると多くはなっているが、果たして、その試験数をこなすことで、AIの能力が向上しているのか否か成果が解らない点も問題としているようです。
ゲームでは、コンピュータによりシミュレーションされたデータを作り出す事は可能だが、それ以外の分野においては、シミュレーション・データは作り出す事は出来ないので、試験データが飽和状態になってしまっていると考えられるようです。
そして、その結果として、無人運転で事故が多発するようになって来ているし、テスラ「イーロン・マスク」氏やNvidia「ジェン・スン・ファン」氏が予測したような無人運転の未来には、ほど遠い状況になっているようです。
・テスラ社:テスラの無人運転車で西海岸から東海岸まで走行する。
・Nvidia社:エンドツーエンドのディープラーニングで自動運転が可能になる。実際は10マイルも走れなかった。
先のウーバー・テクノロジーズ社の死亡事故の原因を解析した国家運輸安全委員会(NTSB)の報告書によると、車載AIシステムは、人間を人間と判断出来ず、最初は未知の物体として、次に車両として、最後は自転車と認識していたそうです。
そして、衝突の1.3秒前に、緊急ブレーキが必要と判断したようですが、車両がコンピュータ制御されている間は、緊急ブレーキが無効化されていたため、最終的に歩行者をハネてしまったそうです。
また身近な例として、Google社の翻訳システムは、AIを使用しているそうですが、その翻訳結果を見れば、現在のAIは、全く役に立たない事が明らかだと指摘しています。
Google社の自動翻訳システムは、ディープラーニングの一種「ニューラルネットワーク」と言うアルゴリズムを用いており、Google社では、『 最新の翻訳システムは完璧 』と宣伝しているようですが・・・皆さん、納得できますか ?
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ここまで、「AI」の現状を元に、「AIは仕事を奪うのか ?」と言う問題に関する情報を紹介してきましたが、如何でしたか ?
私は、現状では、まだ全ての仕事を「AI」が奪うとは思えません。と言うか無理だと思います。
「AI」関連で、一番多くの資金が投資され、技術も一番進化していると思われる「自動運転」が、まだこの程度ですから、ビジネス界で「AI」をフル活用するのは、まだまだ先のような感じがします。
但し、現状でもヘルプデスクや商品案内で「AI」が使われ、今までヘルプデスクで働いていた人が不要になった訳ですから、何れは他の業種でも、人間が不要になる可能性は高いと思います。
対人関係/人間関係を築くのが苦手な人、あるいはクリエイティブな業務が苦手な人は、「AI」が導入された企業においては、存在価値が無くなってしまう可能性が高いと思われます。
しかし、その「人間が不要になる時期」が、何時なのかは、現時点では誰にも解らないと思います。
2045年に「シンギュラリティー」が起こると言う説ですが・・・2045年まで、あと26年、果たして、何処まで「AI」は進化しているのでしょうか ?
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■AIは、何を変えるのか ?
本章では、「AIは仕事を奪わない」説を唱える人達が、その次に唱える「AIは仕事を変える」と言う説について、それでは「AIは何を変えるのか ?」と言う点について考えて見たいと思います。
しかし、前章で紹介した通り、現状では、「AI」に仕事を奪われる状況ではありませんし、職場にも、それほど「AI」が浸透していませんので、あくまでも仮の話になるかもしれません。
ところで、ビジネス界における「人間 対 機械」の対決は、何も「AI」が最初と言う訳ではありません。
これまでにも、次のような対決がありました。
・銀行員 対 ATM(Automatic Teller Machine)
・ブルーワーカー 対 FA(Factory Automation)
・編集者 対 自動パブリッシング
これら「人間 対 機械」の対決では、当然の事ながら、「機械」側が勝利を収め、「人間」側から仕事を奪う結果となったのは、既に周知の事実です。
では、その結果は ? と言うと、良く「AIに仕事を奪われる」と言う問題で取り上げられている「銀行員 対 ATM」のケースを例に上げると、確かに、銀行がATMを導入した事が原因で、銀行の窓口で、現金の受け渡しを行う行員の仕事が、機械に奪われてしまいました。
ところが、銀行は、ATM導入によって店舗当たりの人件費を削減し、その結果で生まれた利益を、支店の増設に回したそうです。
その結果、支店が増えたことで、窓口業務に関わる行員が必要となり、最終的には、行員の数を増やす事が出来たそうです。
さらに、銀行の窓口では、、現金の受け渡しを行う業務の他にも、銀行に来てくれたお客様に、銀行が扱う保険や融資の案内を行うようになりました。
このように、「AI」信奉者の方々たちは、機械に仕事を奪われても、仕事が無くなるのではなく、新しい職種に業務がシフトするようになった過去事例を元に、「AI」が導入されても仕事が無くならないと訴えています。
つまり、「AI」が導入された場合、『 今の仕事は無くなり、新しい仕事を行うようになる。』と唱えている訳です。
もっと具体的に言うと、今、「人間」が行っている単純作業は「AI」が行うようになり、「人間」は、単純作業から開放されるので、よりクリエイティブな、そしてより想像力を働かせる仕事を行うようになる、としています。
「AI」が導入されると、「人間」は、クリエイティブな仕事をしなければならなくなると言う事らしいです。
これが「AI」が導入された場合の職場の変化と言うことらしいです。
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しかし、想像力を働かせることが苦手な「人間」は、どうなってしまうのでしょうか ?
人間、誰しも得手不得手があります。
単純作業でも、他の人よりも、早く作業を行える人は、その職場では、尊敬を勝ち得ていたと思いますが、「AI」には勝てません。ましてや、その職場自体が「AI」に奪われてしまいます。
例えば、30年間、その単純作業を行い続けていた人が50歳になった時に、「AI」が導入されたから、他の部署に行けと言われたら、一体、どうなるでしょうか ? それがアナタなら、どうしますか ?
確かに、仕事は無くなりませんが、とても耐えられないと思います。
「AI」に仕事を奪われる職種として、槍玉に挙げられるのは、次のような職種です。
・運転手
・窓口/接客/受付業務員
・小売店販売員
・会計士
・秘書/アシスタント
・与信/クレジット審査員
・工場作業員
やはり単純作業がメインの職種が無くなりますし、後は、データの調査、および分析を行う仕事も、すぐに「AI」に代替される可能性が高いようです。
しかし、前章でも紹介しましたが、最終的には、約90%の仕事が「AI」や機械に取って代わられるとしていますので、上記以外の仕事も結局のところ、無くなってしまうのだと思われます。
これらの職種の人達は、どんなクリエイティブな仕事に付けるのでしょうか ?
そもそも、クリエイティブな能力があれば、最初から、その仕事を行っていたと思います。
「AI」信奉者達は、よく、次のような事を言って、「AI」が導入されても仕事が無くなる訳ではないと主張してます。
・AIには基本作業を、人間には新たな作業を
・ヒトには、ヒトの強みを活かす仕事を
・AIの得意分野と人間の得意分野を共存させる
それでは、具体的に、30年間、運転手をしてきた人間に、どんな新しい作業を、どんな強みを活かす仕事を、どんな得意分野の仕事をしろと言えるのでしょうか ?
「何か、運転以外に得意な事があるだろう !?」と言うかもしれません。しかし、そんな言葉、本気で言っているとは思えません。
まあ、車の運転手であれば、近道案内図、観光案内、近所のグルメ情報・・・等、道路とそれに付随する情報の提供は可能かもしれませんが・・・
結局の所、本格的に「AI」の導入が始まれば、一部の人以外、職を失ってしまう事になると思います。
前章の話題とダブってしまいますが、やはり「AI」は、人の仕事を奪うのだと思います。
そして、「AI」導入により、次のようなスキルのある人達は生き残り、このようなスキルの無い人達は、「生活保護」から名前を変えた「ベーシックインカム」と言う制度に依存する社会に変わってしまうのかもしれません。
・起業家
・アーティスト
・聖職者
・カウンセラー
・医者
・セラピスト
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これまでも、社会や文化の発展により、現在では無くなってしまった職種は数多く存在します。
・交通の発展により消滅 :人力車、御者、かごかき、バス車掌
・通信の発展により消滅 :電話交換手、電報局員
・鉄道の発展により消滅 :釜炊き、改札員、モノレール運転士
・印刷の発展により消滅 :文選工、口述筆記、テープ起こし
・機械の発展により消滅 :エレベーター操縦士、タイピスト
・電気の発展により消滅 :ガス灯付け
その他にも、ネズミ取り、ボーリングのピンを立てる人、トイレの後始末をする人、死体を処理する人、等、その昔は、様々な職業がありました。
しかし、これらの職業は、上記の通り、インフラや技術の進歩により無くなってしまいましたが、この時は、インフラ技術の進歩で、新しい職業も数多く生まれていますので、まあ「プラス/マイナス = ゼロ」か、プラスの方が若干多かったのかもしれません。
ところが、「AI」は、どうでしょうか ?
私は、「AI」は、、基本的には、現時点では、人間が行っている作業を代替するだけで、新しい職業は生み出さないと思っています。
生み出したとしても、せいぜい、AI搭載ハードウェアのメンテナンスか、あるいはAI導入のコンサルティング業務くらいしか無いと思いますが、これらの職業は、現在の延長線上の職業であり、別に新しい職業とは思えません。
他方、米ITサービス企業「コグニザント」は、AIによって創出されるという新しい職業を予想し、次のような職業が生み出されるとしたそうです。
・Walker/Talker(歩き仲間/話し相手)
・サイバーシティアナリスト
・個人データのブローカー
・Man-Machine teaming Manager(人間と機械のチーム・マネージャー)
でも・・・この職業って、「AI」があって、初めて生み出される職業ですか ? 「AI」とは、全く関係無いと思います。
そうなると、現在、「AI」信奉者達が唱えているように、「AI」導入によって新しい仕事が生まれる、と言うのは「絵空事」としか思えません。
さらに、「AI」信奉者は、「AIの導入により雇用が増えている」と言っていますが、それは「AI」開発者、エンジニアに対する需要で、一般事務員の雇用が増えている訳ではありません。まさに「詭弁」としか思えません。
加えて、「Youtuber」をもじり「AIer」なる造語も生み出してもいますが、これも言葉だけが先走り、中身が全くありません。
今後は、何とも生きづらい社会になりそうな予感がします。
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今回は、「AI」に関して、次の情報を紹介してきましたが、如何でしたか ?
●AIは人類の敵となるのか ?
●AIは職場を奪うのか ?
●AIは何を変えるのか ?
「AI」は、今、ようやく実際の業務に取り入れられ始めた仕組みです。
このため、使い方を間違えると、前述の「AIリスク」で紹介した事例のようになってしまいますが、正しく用いれば、非常に有用、人類の将来にとっても、大事なパートナーとなりうる存在だと思います。
まだ、「AI」の運用方法、およびその他、様々な決まりごとが、全て企業任せになっているので、「AI」の使い方次第では、人類のリスクにもチャンスにも成り得るのだと思います。
このため、早い段階で、クローン規制の様に、国際機関、地域、あるいは国ごとに、何らかの規制や基準を設けたり、倫理基準を統一したりする方が良いかもしれません。
このような対応を取って規制を掛けないと、倫理観が欠如してるアジアのC国やK国のように、クローン猿を作ったり、犬のクローンを作ってビジネスにしたりする国が必ず現れます。
実際にC国は、2018年1月26日に、クローン羊「ドリー」と同じ技術を用いて、カニクイザルのクローン猿「チョンチョン」と「フアフア」を作り出しています。
そしてK国では、10年以上も前から、愛犬のクローンを、1匹当たり1億ウォン(約1,000万円)で作成するビジネスを行い、これまでに1,300匹のクローン犬を作り出しています。
また、フェイクニュース製造大国と言われるロシアも危険です。
次回「AIのリスク」で紹介しますが、「Deep Fake」アルゴリズムを用いて、大量のフェイク映像を世界中にバラ撒き、紛争を助長する可能性が非常に高いと思います。
まあ、これらの3国は、元々、倫理観が欠如していますので、たとえ国際基準を設けても、そんな決まりは無視して、好き勝手に「AI」を悪用する事は、容易に想像出来ます。
しかし、それでも、何らかの基準が無ければ、国連等で非難する事も、何らかの制裁を発動することも出来ません。
何も手を打たないと、Microsoft社の「AI」を搭載したチャットロボット「Tay(テイ)」に起きたような、悲惨な事態は必ず起こります。
Microsoft社のAI「Tay(テイ)」に起きた悲劇に関しては、次回も紹介しますし、下記の過去ブログでも紹介しています。
★過去ブログ:Society 5.0って何 ?
やはり早めの対応は必要だと思います。
それでは次回も宜しくお願いします。
以上
【画像・情報提供先】
・Wikipedia(http://ja.wikipedia.org/)
・「Super Intelligence」はNick Bostrom氏の著書です
・WIRED(https://wired.jp/)
岩手の民間信仰 〜 聞いた事も無い信仰ばかり Vol.9
今回は、前回の「民間信仰」シリーズの第8弾で紹介した通り、第9弾として、次の民間信仰を紹介します。
●お立木(オタテギ)信仰
●お不動様信仰
確かに、もうネタ切れ直前の状況ではありますが、何とか情報を集めて、あと1回、10回までは、このシリーズを続けたいと思っています。
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今回紹介する「お立木(オタテギ)信仰」は、岩手県と宮城県の一部、岩手との県境付近で行われている行事で、正月に飾る「門松(かどまつ)」と類似した信仰になります。
「門松」自体、現在は、単なる「正月飾り」と化してしまいましたが、元々は、「歳神(としがみ)様」をお迎えするために、建物の前に祀られた、神聖な「依代(よりしろ)」です。
このため、後述しますが、宮城県の南三陸町では、門松の根元部分を「オタテギ」と呼んでいますので、これは「門松」と「お立木」が習合した結果なのだと思います。
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次の「お不動様信仰」、これは説明する必要もないと思いますが、「不動明王」を祀る信仰です。
「不動明王」は、後でも説明しますが、「大日如来」の化身とされ、様々なご利益があるとされるので、多くの方が信仰している仏様ですが、特に「厄難消除」にご利益があるとされています。
日本中、全国各地に「不動明王」を祀っている有名な寺社がありますが、その中でも、岩手県内の地味な場所を数箇所紹介します。
そして、今回、実は、もう一つ、遠野地域で行われている言う「九頭竜信仰」を紹介しようかと思ったのですが・・・どうやら、これは「ガセネタ」だったようです。
「九頭竜信仰」とは、日本各地に残る「九頭竜(大神)」に関する伝承/伝説をベースにした信仰で、有名な伝説としては、次の4種類の伝説をベースにした信仰があります。
【 長野県「戸隠山」の九頭竜伝承 】
9世紀頃、修験僧「学問」が、法華経の功徳により、九つの頭を持つ鬼を、この地の岩戸に封じ込めたが、その後、この鬼は善神に転じて「水神」となった。このため、この神は「九頭竜権現」として祀られるようになった。
奈良時代の「養老元年(717年)」、白山を開山した「泰澄」が、白山の主峰「御前峰」で修行を行っていた時に、十一面観音の垂迹である「九頭竜王」が現れ、これが後に「白山権現」と呼ばれるようになった。
第26代「継体天皇(450〜531年)」の時代、越前国の治水工事を行ったが、中でも、特に暴れ大河だった「黒竜川」を鎮めるため「黒竜大神」と「白竜大神」の二柱を祀ったが、その後、「黒竜大神」のみが日本を守護する「四大明神(※鹿島明神/熊野権現/厳島大明神)」の内の一柱とされた。
さらに、その後、平安時代の「寛平元年(889年)」、福井県勝山市「平泉寺」に「白山権現」が現れ、尊像を「黒竜川」に浮かべた所、九つの頭を持った竜が現れ、尊像を頂くように川を流れ下り、「黒竜大明神」 の対岸に流れ着いた。以来、「黒竜川」を「九頭竜川」と呼ぶようになった。
奈良時代以前、「芦ノ湖(万字ケ池)」には「毒竜」が住み着き、毎年、箱根の村から、若い娘を人身御供として差し出す慣わしがあった。
「箱根神社」の創始者とされる「万巻上人」が、この事を聞き及び、この「毒竜」を法力により調伏し、地域一帯の守護神とさせた。
そして、奈良時代の「天平宝字元年(757年)」、この地に「九頭竜神社(本宮)」を建立し「九頭竜大明神」として祀る様になった。
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と言うのが、日本各地に伝わる「九頭竜伝承/伝説」と「九頭竜信仰」です。
そして、当初、「遠野地域には竜(大蛇)がおり、この竜(大蛇)を退治して三つに切り刻み、それらを祀った神社がある。」と言う噂があったのですが・・・どうやら、これは「ガセネタ」のようで、全く裏付けが取れませんでした。
このような事情もあり、今回は、前述の通り、「お立木(オタテギ)信仰」と「お不動様信仰」の二つだけになってしまいました。
それでは今回も宜しくお願いします。
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■お立木(オタテギ)信仰
「お立木(おたてぎ)信仰」とは、庭や境内に立てた木を、神聖なものとして信仰する行事になります。
右の画像は、「蘇民祭」で有名な、岩手県奥州市の「黒石寺」の「お立木」です。
「蘇民祭」に関しては、下記の過去ブログで紹介していますので、そちらもご覧下さい。
★過去ブログ:蘇民祭について - 岩手県人は裸好き ?
この「お立木」は、やはり「蘇民祭」の開催に合わせて、寺の檀家が、12月13日に、山から柴木を切り出してきて作るそうです。
黒石寺の社務所の庭先に、柴木を直径2mぐらいに揃え立て、柴木の真ん中辺りを、「淡路結び」にした中帯で締めます。
「淡路結び」とは、水引での結び方で、別名「鮑(あわび)結び」とも呼ばれる結び方ですが、紐の両端を引っ張ると、より強く結ばれるので、「縁結び」の意味があるとも言われています。
そして、中央の笹竹の上方に、桑の葉で作った「鏑矢(かぶらや)」のような「依代(よりしろ)」を、「明きの方(あきのかた)」に向けて刺しています。
形としては、「鏑矢」を空に向けて引き絞っている様になっています。
ちなみに、「明きの方」とは、「恵方巻き」で有名になった「恵方(えほう)」と同じ、その年において、縁起の良い方向の事です。
さらに、「何で縁起が良いのか ?」と言うと、その方向に、陰陽道において、その年の「福徳」を司る神「歳徳神(としとくじん)」が居るからとされているそうです。
「歳徳神」は、別名「歳神(年神)様」、あるいは「正月さま」等とも呼ばれており、右図の通り、王妃のような容姿で現されているようです。
「歳徳神」の由来には諸説あり、陰陽道で有名な「安倍晴明」が編纂したとされる「三国相伝陰陽輨轄簠簋内伝金烏玉兎集(さんごく-そうでん-いんよう-かんかつ-ほきないでん-きんうぎょくとしゅう)」と言う長ったらしい名前を持つ、占いの実用書によると、「牛頭天王」の后で、陰陽道における「八将神(はっしょうじん)」の母である「頗梨采女(はりさいじょ)」としているそうです。
また、「依代」とは、「神が降臨した際に乗り移る物/依り憑く物」を意味しており、樹木や石、あるいは御幣なども「依代」として使われるケースがあります。
黒石寺の場合、蘇民祭当日、この「依代」を目印にして、神々が降りてくるとされているようです。
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他方、岩手県遠野市では、小正月の行事の一つとして「お立木」を飾る風習があるそうです。
遠野市小友町では、12月20日に栗の木を切って新しく杭を作り、1月14日に飾りつけを行うそうです。
この小友町では、庭などに立てた栗の木の杭に、三尺〜五尺(90cm〜150cn)の楢や松の薪を副木として飾って祀っているそうです。
その後、この地域では、二月に行われる年祝いの時に「お立木の帯とき」と言って、作った「お立木」を解体し、杭は稲架(はさ)として、副木は薪として使用するそうです。
遠野市内では、この小友町以外でも「お立木」行事を行う地区があるそうですが、「お立木」を立てる日、場所、そして解体の日は地区によって異なるようです。
ちなみに、「稲架(はさ)」とは、聞き慣れない言葉だと思いますが、刈り取った稲を掛けて乾燥させるために、木を組んで作った設備です。
私が育った盛岡市でも、子供の頃は、秋になると、家の周りの田んぼに数多くの「稲架」があったものです。
子供の頃は、この「稲架」の中に潜り込んで、「稲わら」だらけになった事を思い出します。
しかし、正直な所、この木の枠組みを「稲架」と呼ぶ事は、今回、このブログを書くための調査で始めて知りました。
なお、遠野地域で行われる「お立木」の画像を探したのですが・・・どうしても見つける事が出来ませんでした。
遠野地域の小正月の行事を調査すると、どうも「みずき団子」を飾り付ける「お作立て」の画像ばかり現れて、肝心の「お立木」は、全く見つかりませんでした。済みません。
中には、この「お作立て」を「お立木」と勘違いしている記事もあるようです。
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また、これも画像の紹介は出来ないのですが、岩手県立博物館の調査によると、その他にも、岩手県内では、下記の地域で「オタテギ」に関する行事を行う風習があるとされています。
【 大船渡市 】
大船渡市では、「お立木立て」と良い、11月15日にナラの木を伐り出し、それを割ったものを、庭の木の根元に立てかけて置く。夕食にはタテギにお神酒などを供え、家内でも簡単に祝い事を行います。また、大晦日に神仏への供え物を作る燃料とするため、木や柴を2 把か3 把、山から伐って来て庭に立てて置き乾燥させる。家によっては木や柴を結わえるための縄をなう人は身を清めてから行ったと伝わっている事から、この時の縄ないは、単なる仕事ではなかったと考えられているそうです。
【 川井村(現:宮古市) 】
川井村でも、11月15日に正月用の供え物を炊く燃料を準備するが、それを「たたき立て」と言っているそうです。
【 釜石市 】
唐丹町では12 月11 日にナラやクリの木の「オタテギ」を、庭先の毎年立てている場所に立てています。「オタテギ」1把の大きさは、高さ約1m、直径約30cmとされています。正月が終わると、家中の注連縄を集めて「オタテギ」の前に供えるそうです。この木は、春に田の神様への供え物を煮る時の薪にするそうです。
また、釜石市栗林町では、唐丹町よりも1 か月以上も早い11月15日に、「オタテギ」という正月準備が行われています。大晦日に作る門松の中心になる柱にするため栗の木を2本伐って来て、1間半くらいの間隔を取って庭に立てるようです。
【 山田町 】
山田町でも同様の行事を行う、この日を「門松節供」等と言っているそうです。
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最後に、これは岩手県ではなく、宮城県の南三陸町の「門松」を紹介します。
この「門松」は、南三陸町の入谷地区で飾られているそうですが、正月には、この「門松」を、「信心棚」と呼んでいる神棚の正面に当たる母屋の前に立てるそうです。
この「門松」の建て方は、先ず軒を超える高さの「シノグイ」という杉の柱を一対立て、根元には「三本オタテギ」という楢材の割木を立て、縄を三カ所で結び、シノグイの間に垂を下げた注連縄を渡すそうです。
興味深いのは、もうお解りだと思いますが、この「門松」の根本の木を「オタテギ」と呼んでいることです。
このため、岩手県各地で飾られる「オタテギ」も、このような形になっているのではないかと推測されます。
■ご不動様信仰
「不動信仰」。これも別に岩手県だけで行われている信仰ではなく、日本全国、到る所で行われている信仰です。
「不動明王」は、仏教の本場であるインドや中国では余り信仰されていないようですが、日本では、平安時代初期に始まった「密教」の興隆と共に、日本全国に拡がりました。
密教の根本尊である「大日如来」の化身として、種々の異形の「不動明王」を生み出しながら、数多くの像が作られ、種々の煩悩を焼き尽くし、悪魔を降伏し、行者を擁護して菩提を得させる明王として信仰されています。
「不動明王」は、次の「五大明王」の一員とされ、「八大童子」と呼ばれる眷属を従えた形で現される場合があります。
・五大明王:降三世(ごうざんぜ)明王、軍荼利(ぐんだり)明王、大威徳(だいいとく)明王、金剛夜叉(こんごうやしゃ)明王、不動明王
しかし、実際には、「矜羯羅(こんがら)童子」と「制吒迦(せいたか)童子」を両脇に従えた、三尊の形式で絵画や彫像に表されることが多く、これを「不動三尊」、あるいは「不動明王二童子像」等と呼んでいます。
代表的な不動妙尊像としては、三不動(黄不動,赤不動,青不動)の他に、「弘法大師(空海)」の持仏と伝えられる「教王護国寺(東寺)」西院御影堂安置の秘仏、弘法大師が唐からの帰路海上に顕現し、天慶の乱、蒙古襲来の際にも活躍したという高野山南院「波切不動」などがあります。
・黄不動 : 円城寺蔵「絹本着色不動明王像」
・赤不動 : 高野山明王院蔵「絹本着色不動明王二童子像」
・青不動 : 青蓮院蔵「絹本不動明王二童子像」
前述の通り、仏教の本場であるインドや中国では、余り信仰されていなかったようですが、こと日本においては、山岳信仰で祀られていた「蔵王権現」と習合した後、単独で「不動明王」が祀られるようになった事から、「不動明王信仰」が日本全土に拡がったと考えられています。
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岩手県にも多くの「不動明王」を祀る場所があり、下記の場所は、昭和62年(1987年)に設定された「東北三十六不動尊霊場」となっているようです。
・永福寺(真言宗豊山派) :盛岡市下米内。南北朝時代の創建。南部氏の盛岡移住により当地に移転。
・長根寺(真言宗智山派) :宮古市長根。平安初期、大同元年、「坂上田村麻呂」が勧請した薬師堂に由来。
・福泉寺(真言宗豊山派) :遠野市松崎町。歴史は非常に浅く、大正元年(1912年)佐々木宥尊が開創。
・興性寺(真言宗智山派) :奥州市江刺区。元和八年(1622年)、宮城県栗原郡より移転。「岩城氏(岩谷堂伊達氏)」祈願寺。
・達谷西光寺(天台宗) :平泉町。大同二年(807年)円珍の開山。「坂上田村麻呂」が毘沙門堂建立。
・金剛寺(真言宗智山派) :陸前高田市。仁和四年(888)、歌人「大江千里」が恩赦で帰洛が叶った事に感謝し創建。
このように、岩手県内各地に「不動尊」を祀る霊場と呼ばれる場所があるようですが、上記以外にも、「不動明王」を祀っている場所は何箇所かあるようです。
不動尊としては、矢巾の「竜(龍)泉寺」、二戸市下斗米の「安養寺」、奥州市衣川区の「運際寺」などが知られているようです。
「竜泉寺」の不動尊は、元々は、「北谷地山」と言う山の中腹にある「熊野神社」に安置されていた物を、明治3年(1870年)に、麓の「竜泉寺」に移した物と伝えられています。
また、平泉町の「西光寺」には、藤原秀衡が祀ったと伝えられる平安後期作の木造不動明王像が安置されています。
この「西光寺」には、奈良時代末となる延暦20年(801年)、例の「坂上田村麻呂」が、当地の蝦夷を討伐した記念に建立した伝わる「達谷窟毘沙門堂」と言うお堂があります。
この場所は、JR東北本線「平泉」駅から、県道31号線を西に約6Km、車で10分弱の場所にあります。
この堂に祀っているのは、名前の通り「毘沙門天」なので、今回の話からは、ちょっと脇に逸れてしまいますが、入り口には鳥居も設けられており、神仏混淆の特等を良く現した寺社となっています。
加えて、この建物の岩壁の上部には「大日如来」、あるいは「薬師如来」と思われる大きな「磨崖仏」が掘られています。
私も、平泉「中尊寺」を訪れた際に、ついでに寄って観たことがありますが中々のものです。
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ここまでは、どちらかと言うと寺社に祀られている「不動信仰」の紹介でしたが、民間信仰としては、八幡平市安代町や釜石市栗林町などでは、12月には、神仏にお供えをして人間より早く年を取ってもらうという「年取り」の風習があり、12月3日、あるいは12月28日を、「不動様の年越し(年取り)」としているようです。
しかし、何で、この「不動明王」を始め、神仏の「年取り」を、大晦日ではなく、12月中旬に行うのは分かりませんでした。
そして、12月中旬、早目に神仏の「年取り」を行うのは、どうやら東北地方が多いようです。
また、岩手県内各地に、不動明王の石像や石碑が祀られています。
上図は、盛岡市の隣の自治体である紫波町の日詰と言う場所にある「不動明王絵像碑」です。
ちょっと実物を見ないと分かり難いとは思いますが、「不動明王」が線で彫られているとのことです。
銘文には、鎌倉時代末期となる「元亨3年(1323年)」の4月8日とあり、岩手県内最古の絵像碑とされています。
これら、露天に祀られている「不動明王」は、お堂で祀られることを嫌い、お堂で祀ると火災を起こすと恐れられ、「裸不動」等と呼ばれているそうです。
他方、民家の座敷に祀られる事を好む「不動明王」もおり、お堂では祀らない事から「座敷不動」等と呼ばれている「不動明王」もいるとされています。
また、梵字で表現された波切不動の掛け図も各地に残されているそうです。
実物を探し出す事は出来ませんでしたが、上図の掛け軸は、室町時代の作品で、梵字で描いた「不動明王」とされています。
遠野市小友町では、「不動講」を起源として伝承されてきた「裸祭り」が現在でも行われています。
江戸時代中期の元禄年間(1688〜1704年)、「厳龍神社」の別当であった修験者「源龍院仙林」が、拝殿を造営した翌年の不動講の日(1/28)に、講の数名を名代として裸参りを行ったのが始まりと伝えられています。
「厳龍神社」は、創建年代は不明となっているようですが、小友村「常楽寺」の開祖「無門和尚」が、寺の鎮護として「不動明王」を勧請して「巌龍山大聖寺」としたのが始まりとされています。
「厳龍神社」の背後にそびえる「不動岩」は、高さ約54mもあり、岩の割れ目が、龍がうねった形に似ていると言われ、岩の麓に「不動明王」を祀ったので、その名が付いたとされています。
その昔、修験者は、この岩の割れ目を、読経しながら頂上まで昇って修行をしたとも伝わっています。
しかし、現在では、残念な事に、明治5年の「神仏混淆禁止令」により、御祭神が「不動明王」から「日本武尊」に改められ、かつ寺社名も「巌龍神社」に変更されたと記録されています。
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また民間には、火を司る神様としての「不動信仰」があり、陸前高田を始めとした三陸地方では、不動様は炉の近くに住むとされ、その周囲は常に綺麗にしておかなければいけないと伝えられて来たそうです。
三陸の山田町には、その昔は「関口不動尊」呼ばれ、現在では「関口神社」となってしまった神社が、火伏せの神様として有名なようです。
山田町の関口地区には、宮古/下閉伊地方における「不動信仰」の本山とされている「金湯山関口神社」があります。
そして、この神社から道なりに林道を約4Km分け入った山中には、関口不動尊神社「奥宮」があります。
神仏混合の時代は、修験の寺であった「関口不動尊」は、「不動岩」とよばれる岩を本尊とした修験霊場として信仰されました。
さらに、里宮から奥宮まで「関口川渓谷」と呼ばれる清流が流れており、この渓流に身を浸すと、どんな難病でも治癒すると信じられていたようです。
戦前、釜石の製鉄所で働く工員たちは、「不動明王」の背後で燃え上がる炎にあやかり、危険な作業の安全のため「関口不動尊」を厚く信仰したとも伝えられます。
右の画像が、その昔は御神体となっていた「不動岩」で、現在は、この岩の窪みに「不動明王像」が祀られているようです。
「不動明王」が小さくて分かり難いと思いますが、岩の中の「御幣」の後ろに、「不動明王像」が安置されています。
「不動明王」を祀る神社らしく、多くの「剣」が奉納されているようです。
この「剣」は、「不動明王」が右手に持つ「剣」とされていますが、アニメの影響で、一部の人からは「降魔剣」等と呼ばれているようですが、本当の呼び名は「倶利伽羅剣(くりから-けん)」です。
この「倶利伽羅剣」は、密教における「三毒(三つの煩悩)」を打ち破る「知恵の剣」とされているようです。
また、この「剣」、密教においては、この「倶利伽羅剣」こそが、「不動明王」を象徴する物とされるほど、重要な持物となっています。
ちなみに、剣に巻き付いている龍は「倶利伽羅龍王」と呼ばれているようです。
また、どうでも良い、余計な話ですが、山田地方の銘菓「山田せんべい」も、「不動明王」の肌の色に似ていることから信仰の菓子として伝わったものとも言われているようです。
この「せんべい」は、江戸時代後期に、保存食として考案された食べ物だったようで、黒ゴマを練り込んで半乾燥させた「半生」状態で販売されているようです。
菓子の由緒としては、その昔、山田地方が大飢饉となった時、老婆の枕元に「飢饉に備え胡麻や米の粉、胡桃でせんべいを作れ」と神仏の託宣があったそうです。
その後、老婆が、ご託宣に従って真っ黒な「せんべい」を作り、飢饉から免れたという言い伝えがあるそうです。
そして、さらにその後は、前述の通り、地元の漁師や釜石製鐵所で働く作業員が、関口地区の関口不動尊を信仰するようになると共に、「山田せんべい」の真っ黒な色が、不動様の御神体の色と同じだという事で御利益があると噂になり、山田町の銘菓となって行ったとされています。
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また、「不動明王」は、「滝(瀧)」と強く結び付けられてようです。
「不動明王」と「滝」が結びついた理由は諸説あり、どれもが「なるほど」と思いたくなる理由が付いていますが・・・結局の所、その理由は解っていないようです。
もっともらしい理由を何個か紹介しますと、
【 密教の修行方法との関係 】
密教では、「滝修行」を勧める傾向が強く、その中でも密教の経典「聖無動尊大威怒王秘密陀羅尼経」の中に、
『 静かな山林に入って清らかな地を求め、そこに霊場を作って修行をし、真言を唱える修行をすれば不動明王の姿を見ることができ、願いがかなう。また、河水に浸かって真言を唱え、また山の頂や樹の下、宗教的な施設内で真言を唱えれば願いがかなう。 』
と言う一説がある事から、「不動明王」と「滝」が結び付けられたと言う説です。
【 倶利伽羅剣との関係 】
前述の通り、「不動明王」と同一視される「倶利伽羅剣」には、「倶利伽羅龍王」が巻き付いています。
そして、「龍」と言えば「水神」です。
このことから、「不動明王 = 倶利伽羅剣 = 倶利伽羅龍王 = 水神 = 滝」と言う感じで、習合して行ったと言う説です。
と言う事で、最後に、岩手県内で「滝」に祀られている「不動明王」を紹介したいと思います。
今回は、八幡平市高畠にある「不動の滝」を紹介します。
こちらは、下記ブログでも紹介した「瀬織津姫命」を祀る「櫻松神社」境内奥に位置する滝で、「日本の滝百選」の他、「岩手の名水二十選」にも認定されている滝となります。
★過去ブログ:早池峰信仰と瀬織津姫命 〜 謎多き姫神に触れる その5
高さ15mの滝が、白い飛沫を上げて垂直に流れ落ちる様は圧巻とのことです。
また、この「不動の滝」は、その昔は修験者の道場だったといわれ、森閑とした一帯は今なおその雰囲気が漂っており、滝の中程には「石彫不動明王」が祀られています。
その他にも、大船渡や大槌町など、様々な場所に「不動滝」があるようです。
やっぱり、「不動明王 = 滝」なのだと思います。
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今回、数は少ないですが、次のような民間信仰をご紹介しましたが、如何でしたか ?
●お立木(オタテギ)信仰
●お不動様信仰
「お立木信仰」は、まあ岩手県独特の民間信仰だと思われるので、このシリーズで紹介しても、余り抵抗は無いかと思います。
そして、この「お立木信仰」と「門松信仰」が習合したと言うのは、中々興味深い事だと思います。
しかし・・・「お不動様」に関しては、余りにも有名な民間信仰で、全国各地、到るところで信仰されていますので、「何だかな〜」と言う感じです。
本当は、「お不動様の年越し」について詳しい情報を紹介したかったのですが、こちらも意味や起源が全く解らず、何も紹介出来ませんでした。
岩手県では、12月に入ると大晦日まで、毎日のように「神仏の年越し(年取り)」が行われるそうです。
対象となる神仏は、お不動様を始め、お稲荷様、大黒様、恵比寿様、お薬師様、疱瘡神、山の神様、虚空蔵様、オカノカミ、八幡様、オシラサマ、子安様、蒼前様、馬頭観音、イモンバ様、厄病神様、大工神様、イタチ、聖徳太子、明神様・・・
もう、何が何だか訳が解らない神様の「年越し(年取り)」が行われているようです。特に、「イモンバ様」とは? とか「オカノカミ」「いたち」とか・・・
そもそも「イモンバ様」とは、一体、どんな神様なのでしょうか ? 何で、「いたち」を祀る対象にするのか ?
これらの事に関しては、引き続き調査する必要はあるかもしれません。ちなみに、「オカノカミ」とは、「田の神様」と同類の神様のようです。
それでは次回も宜しくお願いします。
以上
【画像・情報提供先】
・Wikipedia(http://ja.wikipedia.org/)
・遠野文化研究センター(http://tonoculture.com/)
・コトバンク(https://kotobank.jp/)
・岩手県立博物館研究報告書(第31号/2014年3月)
・不動信仰辞典/宮坂宥勝
・紫波町観光協会(http://www.shiwa-kanko.jp/)
・菓子工房「川最」(http://senbei.kawasai.net/)
・みやこ百科事典 ミヤペディア(http://miyapedia.com)
Windows 10 October 2018 Update - 半期に一度の恐怖
さて、また半期に一度、誰も望んでいない、「恐怖の時」が訪れたようです。
米Microsoft社は、現地時間、2018年10月2日に、『 Windows 10 October 2018 Update 』の提供を開始しました。
ところが、弊社メルマガの「気になる情報」でも紹介した通り、このメジャーアップデート提供開始直後から、Microsoft社のコミュニティには、次のような苦情が寄せられ始め、瞬く間に400件もの数に昇ったそうです。
『 Windows Updateは正常に終了したが、ドキュメント・フォルダ内のファイルが消えてしまった。 』
★弊社メルマガ:社内システムのクラウド化 2:株式会社エム・システム情報マガジン(第90号)
→ ../magazine/20181101.html
このため、Microsoft社では、急遽、この「 Windows 10 October 2018 Update 」の提供を中断すると共に、既に、メジャーアップデートを適用してしまった人のために、下記更新プログラムを発行せざるを得なくなってしまったようです。
●OSビルド「17763.1」の場合 :修正プログラム「KB4464330」
・正しくないタイミングでの計算により、「指定した日数よりも古いユーザ プロファイルを削除する」というグループ ポリシーの対象となるデバイス上のユーザ プロファイルが予想よりも早く削除されることがある問題を修正します。
・Windows カーネル、Microsoft Graphics コンポーネント、Microsoft Scripting Engine、Internet Explorer、Windows 記憶域およびファイル システム、Windows Linux、Windows ワイヤレス ネットワーク、Windows MSXML、Microsoft Jet データベース エンジン、Windows 周辺機器、Microsoft Edge、Windows Media Player、および Internet Explorer 用のセキュリティ更新プログラム。
●該当更新プログラムの情報
https://support.microsoft.com/ja-jp/help/4464330/windows-10-update-kb4464330
ちなみに、「KB4464330」を適用すると、OSビルドが「17763.55」になります。
「OSビルド」の確認方法に関しては、弊社の過去ブログを参照して下さい。(「winver」コマンド)
★過去ブログ:Fall Creators Update 〜 今度は何が・・・
また参考までに、これまでのバージョン情報を掲載しておきます。(※除くEnterprises)
項番 | 名称 | バージョン | リリース時期 | サポート終了 | 保守 |
1 | Windows 10(初期バージョン) | 1507 | 2015/07 | 2017/05/09 | × |
2 | Windows 10 November update | 1511 | 2015/11 | 2017/10/10 | × |
3 | Windows 10 Anniversary Update | 1607 | 2016/08 | 2018/04/10 | × |
4 | Windows 10 Creators Update | 1703 | 2017/04 | 2018/10/09 | × |
5 | Windows 10 Fall Creators Update | 1709 | 2017/10 | 2019/04/09 | ○ |
6 | Windows 10 April 2018 Update | 1803 | 2018/04 | 2019/11/12 | ○ |
7 | Windows 10 October 2018 Update | 1809 | 2018/10 | 2020/04/14 | ○ |
※Microsoft社は、当初、製品リリース後、5年はサポートするしていた契約を一方的に破棄し、次のエディションのWindows 10に関しては、メジャーアップデート提供開始後、18ヶ月(1年6ヶ月)しかサポートしないと言う方針に、ライフサクルポリシーを変更しています。
→ Home、Pro、 Pro for Workstation、 IoT Core
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本ブログは、2018年10月末頃に執筆したのですが、その後、2018年11月13日に、バージョン「1809」の再リリースを行ったようです。
この事は、Microsoft社の下記ページに記載されています。
https://support.microsoft.com/ja-jp/help/4464619/windows-10-update-history
しかし、再リリースを行った後も、何件も問題が発生している事を、Microsoft社も認識しており、この問題に関しても、上記ページに記載されています。
再リリース後も、直ぐに問題が発生していますので、はやり、下記のように、「メアリー・ジョー・フォーリー」氏の提言を受け入れるべきだと思います。
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全く、冗談のつもりの「恐怖」が、本当の「恐怖」に変わってしまったようです。
アメリカの著名なテクノロジーライター「Mary Jo Foley(メアリー・ジョー・フォーリー」氏は、今回のMicrosoft社の失態を見て、「Windows 10 のアップデート戦略を見直すべき」と提唱しています。
※ZDNET:https://japan.zdnet.com/article/35127057/
この記事の中で、彼女は、「数多くの新機能の提供ではなく、信頼性強化のためのアップデートを行うべきである。」と提言していますが、私も、まさに、その通りだと思います。
現在のCEOが就任した1年後(2015年)に「Windows 10」がリリースされ、その後、毎回の様にメジャーアップデートで失敗を重ね、それにも懲りず、また今回の大失敗とメジャーアップデートの提供中断、もういい加減、自らの戦略ミスを認めても良い頃だと思います。
彼女も次のように述べています。
『 自社の重要戦略が思い通りに進んでいないことを認めるのは難しいはずだ。この戦略が持続可能なものではないと認めるのではなく、基本的に機能しており、問題があったのは「ごく一部の顧客」だと主張し続ける方が簡単なのだ。 』
現在の「Windows 10」と「メジャーアップデート」は、全く上手く機能していないと思います。
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さて、そんな悲惨な状況の「Windows 10 October 2018 Update(Redstone 5)」ですが、今回、実装の有無は別として、次の様な機能を追加したようです。
1.「同期電話」アプリ :Windows 10 PC とスマートフォンのリンク機能
2.「切り取り領域とスケッチ」アプリ :キャプチャ・ペンツールによる描きみ・共有機能
3.クリップボードの強化 :コピー内容の履歴保存と、履歴からの貼り付け
4.表示文字の拡大 :テキストだけを拡大する機能
5.メモ帳の新機能 :ズーム、折返し検索、右クリック検索、等の機能追加
6.Bluetooth機能強化 :「Swift Pair」機能サポート
7.バッテリーヘルスモードを追加 :バッテリー寿命の低下を抑える機能の通知
8.サインイン時のセキュリティキー対応 :別売のセキュリティ用ハードウェアサポート
9.Microsoft Edge機能追加 :複数機能の追加
10.その他 :検索機能強化、絵文字追加、UpdateのAI化、等
このように、大きく9項目を、新機能として追加したようです。当然、「何だ !? たったこれだけ ?」と思う方も多いでしょう。私も、そう思います。
ところが、最後の「Microsoft Edge」に対しては、下記の通り、ユーザインターフェイスだけで5個ほど機能を追加していますので、まあ、そこそこ変わったのかな〜と言う印象です。
①ジャンプリスト機能
②ツールバーの再デザイン
③メディア自動再生制御
④ダウンロードメニューへの項目追加
⑤読み取りビューの強化
しかし、これら機能の追加に伴い、当然、これまで、今回追加した機能の代わりに提供していた何個かの機能が廃止されています。
廃止された機能は、次のような機能です。
・ホログラムアプリ
・Microsoftモバイルコンパニオン
・Distributed Scan Management (DSM)
・「unattend.xml」における「FontSmoothing」設定
・limpet.exe
・Trusted Platform Module(TPM)管理コンソール
・Windows Embedded Developer Update
まあ、普通の使い方をしていれば、廃止されても、特に影響は無いと思いますし、今回、代替機能が提供されていますので、そちらを使えば良いと思います。
されに、既に新規機能の開発が行われておらず、その内に廃止されると思われている機能もあるようです。
・Snipping Tool :「切り取り領域とスケッチ」に置き換えられる予定
・ディスク クリーンアップ :ストレージ センサーで代替
・CDF Dynamic Lock API :Windows 10「動的ロック」機能で代替
・OneSyncサービス :同期機能が「Outlook」アプリに組み込まれる
それでは、新機能を紹介します。
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■「同期電話」アプリ
何か変な機能名称ですが、本来は「Your Phone app」と言う名称のようです。
上記で説明した様に、「Windows 10 PC とスマートフォンをリンクする機能」となります。
しかし、元々、Windows 10には、「モバイルコンパニオン」と言うアプリが実装されており、このアプリでスマートフォンと接続する事が出来ました。
但し、このアプリは、Apple社「iTunes」の様に、データ転送が出来る訳でもなく、単にスマートフォンの状態を表示したり、OneDrive等のWebアプリをダウンロードしたりする事しか出来ない、いわゆる「使えないアプリ」でした。
そこで、今回、本当に、スマートフォンと同期接続し、スマートフォン内の画像を表示したり、テキストデータを送信したりする事が出来るようになったようです。
このため、前述の通り、この「モバイルコンパニオン」アプリは廃止されてしまっています。
何となく使えそうですが・・・但し、接続して使用出来るスマートフォンは、「Android」のみで、「iPhone」は、接続は出来るようですが、接続するだけで、後は何も出来ないようです。
また、このアプリを使用するためには、スマートフォン側にもMicrosoft用のアプリをインストールする必要があるようです。
しかし、実際の処、現在でも、スマートフォンをPCにUSBで接続すれば、スマートフォン側の画像をPCで取り出す事もできますし、「iPhone」であれば、「iTunes」や「iCloud」経由でmp3ファイルのやり取りが出来ます。
正直、私には、このアプリは不要です。
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■「切り取り領域とスケッチ」アプリ
次は、「切り取り領域とスケッチ」と言う、また変な日本語の名前を付けられたアプリです。
本来の英語名は「Screen Sketch」と言う名称なのですが、どうして、こんな変な日本語名称を付けるのか理解に苦しみます。
そのまま「スクリーンスケッチ」にすれば良いのにと思ってしまいます。
命名者の感覚を疑いたくなってしまいます。
さて、この「切り取り領域とスケッチ」ですが、画面に表示されている画像(キャプチャ)を、3種類の切り取り方法から選択した方法で切り取り、自由に加工できる機能と言うことです。
また、画像は、表示画面のみではなく、ファイルから画像を開いて編集する事もできるようです。
切り取り方法は、矩形(四角)で囲む、全画面、およびフリーハンドの3種類がありますし、また、3秒後、10秒後と言う遅延切り取り指示も行えるようです。
そして、肝心な加工ですが、画像の縮小は行えず、定規や分度器を表示させて直線や円形を描いたり、フリーハンドで描画したりする事が出来るようです。
要は、これも既存の「Snipping Tool」アプリのバージョンアップ版と言う位置付けとなっており、「Snipping Tool」は廃止予定となっています。
但し、「切り取り領域とスケッチ」は、元々は、PC用ではなくSurface等のモバイル端末を意識して開発されたアプリらしく、タッチペン(スタイラスペン)を意識した仕様になっており、非常に使い難いと言う評判です。
このため、「Snipping Tool」の廃止を惜しむ声が沢山あるようですが、Microsoft社も、本当は、その辺の事情が解っていたので、「Snipping Tool」の即時廃止を見送ったのかもしれません。
と言うことで、このアプリも、私的には不要アプリ扱いのようです。
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■クリップボードの強化
皆さん、「クリップボード」ってご存知ですか ?
Windows PCで、テキストや画像を「コピー」や「カット」した場合、そのテキストや画像を保存しておく場所の事です。
しかし、現状、この「クリップボード」の内容を確認するためには、どこかに、コピーしたデータを「貼り付ける」必要があります。
そこで、今回の新機能では、現在、何が「クリップボード」に保存されているのかを、目視確認する事が出来るように改良されたそうです。
さらに、現状では、最新の、つまり最後に「コピー/カット」したデータしか保存出来ない仕様となっていますが、今回の機能追加で、「コピー/カット」データを履歴として保存するも可能になったようです。
そして、履歴データから、データを貼り付ける事も可能になるそうです。
「Windowsキー + V」でクリップボード履歴を開く事が出来るようですが、これは、結構、便利な機能かもしれません。
但し、次のような制限があるそうです。
・対象は、書式なしテキスト、HTML、画像。
・データ容量には制限があり、個別データは1MBまで、全体は5MBまで。
・保持可能な個数は50個まで。
・「切り取り領域とスケッチ」も保持対象となる。
・履歴はPC再起動で初期化される。
また、この機能に関しては、もう1点、「クラウド同期」機能があります。
こちらは、同一「Microsoft ID」でログインしたデバイス同士で、クリップボードの内容を共有出来るようですが・・・クラウド同期の場合、100KB未満のテキストデータしか共有出来ないようです。
また、同期タイミングも微妙なようですので、こちらの「クラウド同期」は、イマイチかもしれません。
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■表示文字の拡大
この「表示文字の拡大」では、全体スケールを変更する事無く、テキストのサイズだけを大きくする事が出来る機能のようです。
例えば、この機能で、エクスプローラー画面において文字を拡大した場合、アイコンの大きさはそのままで、説明文のテキスト文字だけが大きくなる、と言う仕組みのようです。
設定は、「Windowsの設定」−「簡単操作」−「ディスプレイ」−「文字を大きくする」と言う順番で行う事になります。
表示されるスライダーにより、文字を最大225%まで拡大する事が出来るようですが、最小は100%で文字を小さくすることは出来ないようです。
「それで何が良くなるの ?」と言う事ですが、高解像度液晶ディスプレイなどを利用している場合に、高解像度の表示を生かしつつ、表示文字だけを大きくして使いやすくことが出来る、と言うウリ文句のようです。
しかし、「だから ?」と言う感じがします。
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■メモ帳の新機能
「メモ帳」とは、「Windows」に標準装備されているテキストエディタの事で、「Windows 1.0」の時代から付属している機能です。
但し、Windowsの初期バージョンから実装されている割に、全くと言って良いほど機能が追加されておらず、私も、HTML等のテキスト編集を行う場合には、別のテキストエディタを使っています。
今回、Microsoft社も、ようやくユーザの声に耳を傾け、何点か機能を改良したようです。
テキスト文字を改行する場合、目には見えませんが、改行場所には「改行コード」が埋め込まれています。
そして、この「改行コード」は、OSの種類により異なり、Windows OSの場合、その生い立ちの歴史から、MS-DOSと同様「CR+LF」と言うコードが埋め込まれています。
このため、Linuxアプリケーションに付属するReadMeファイルやインターネットからダウンロードしたテキスト等をメモ帳で表示させると、「Windows OS」は、「改行コード」を理解することが出来ないので改行せず、行が全てつながった状態になってしまっていました。
今回の機能追加では、MS-DOS/Windows標準の行末記号(CR+LF)以外、UNIX/Linux系の「LF」とmacOSの「CR」にも対応出来るようになったようです。
(2)ズーム機能追加
フォントサイズを変更することなく、文字を拡大(ズーム)できるようになりました。
メニューから選択するか、あるいは「Ctrl-+(プラス)」や「Ctrl-−(マイナス)」、「Ctrl+マウスホイール」により、ズームインおよびズームアウトできます。
そして、「Ctrl+0」で、デフォルト表示に戻すことが出来ます。
(3)検索の [折り返し] 機能追加
検索機能に、「[折り返しあり」 オプションが追加され、最後まで検索したら折り返して初めから検索できるようになりました。
処理可能な範囲の最後に達した後に最初に戻ることを、「ラップアラウンド」と呼ぶようです。
(4)Bing検索機能
テキストを選択して「右クリック」→「 Bing 検索」を選択すると、その選択した文字列をキーとして、 Bing 検索を行う事が出来るようです。
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その他にも、次の様に、多くの機能が追加されたようです。
・巨大なファイルを開くときのパフォーマンス向上
・Ctrl + Backspaceにより前の単語を削除可能に
・テキスト選択でのカーソル操作を改善
・ファイル保存の際に、行番号と列番号が1にリセットされないように
・画面に完全に収まらない行を正しく表示
・以前に入力した検索値が保存される
・テキストを選択しながら検索ダイアログを開くと自動入力される
かなり多くの機能が追加され、Microsoft社も、ようやくサードパーティ製品を意識し始めたようですが、「メモ帳」愛好家(こんな人達が居るとは思いませんでしたが)の方達からは、「プログラムが肥大化してパフォーマンスが低下するのでは ?」と言う心配も寄せられているようです。
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■Bluetooth機能強化
Bluetoothに関する機能も、強化が図られたそうです。
(1)「Swift Pair」のサポート
「Swift Pair」とは、新しい周辺機器が近くにありペアリング準備が整っていると接続のための通知が表示される機能です。
この機能の実装により、設定アプリを辿る必要が無くなるので、ユーザは簡単に接続することができるとしています。
但し、この「Swift Pair」と言う技術は、「Swift Pair」に準拠したBluetoothデバイスにのみ対応する技術なので、どんなBluetoothデバイスでも使えるとは限らないそうです。
また、この機能は、本来、前回のメジャーアップデート(Windows 10 April 2018 Update)で提供予定だった機能のようです。
(2)Bluetooth トラブルシューター改善
嘘か本当か解りませんし、どのような改善が施されたのかも不明ですが、「Bluetooth トラブルシューター」が改善され、以前よりも問題解決が簡単に行えるようになったと言っています。
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■バッテリーヘルスモードを追加
PCのバッテリーを、常に100%に充電したままにすると、全体的なバッテリー寿命にとって良くありません
そこで、一部のPCメーカーは、バッテリーが100%になると、バッテリーレベルを低レベルにして、バッテリー寿命の低下を抑える「バッテリーヘルスモード機能」を有効にしています。
該当PCにおいて、「バッテリーヘルスモード」が有効になっていて、かつ電源に長時間接続したままにすると「バッテリーヘルスモード」がオンになります。
今回の機能追加では、「バッテリーヘルスモード」が有効になった時点で、それを知らせる通知が表示されるようになるそうですが、どのような表示なのかは解りませんでした。
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■サインイン時のセキュリティキー対応
「Microsoftアカウント」にサインインする時に、「セキュリティキー」を使用してサインインできるようになったそうです。
って、皆さん、「セキュリティキー」ってご存知ですか ?
「セキュリティキー」とは、左の画像の様な物理デバイスで、サインインするために、ユーザ名やパスワードの代わりに、指紋や PINコードを登録したり、あるいはワンタイムパスワードを生成したりしてサインインするアクセサリーです。
この「セキュリティキー」は、PCと、USBキー、あるいはNFCリーダーを用いて接続する事になります。
つまり、「セキュリティキー」を使う場合、別売の「セキュリティキー」を購入する必要があると言う事になります。
また、この機能を使う場合、結構面倒な設定が必要になりそうです。
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■Microsoft Edge機能追加
前述の通り、「Windows 10 October 2018 Update」では、Microsoft社のWebブラウザ「Edge」に、かなりの改善を施したようです。
Microsoft社では、この「Edge」の普及に非常に注力しており、メジャーアップデートの度に、沢山の機能追加を施します。
その昔、と言っても数年前までは、Webブラウザと言えばMicrosoft社の「IE(Internet Explorer)」と言う時代もありました。
しかし、現在ではMicrosoft社製ブラウザのシェアは低下の一途をたどっています。
現在(2018年9月時点)でのWebブラウザのシェアは次の通りです。
種類 | メーカー | シェア(%) |
Chrome | 66.28 | |
Firefox | Mozilla | 9.62 |
Internet Explorer | Microsoft | 8.26 |
Edge | Microsoft | 4.08 |
Safari | Apple | 3.59 |
その他|-|8.17|
そこで、Microsoftは、失地挽回を図るべく、メジャーアップデートの度に、多くの機能を追加しているのですが、シェア低下には、歯止めがかからない状況となっています。
さて、今回は、前述の通り、大きく5個の機能が追加されているようですので、その内容を紹介します。
(1)ジャンプリスト機能
タスクバー上の 「Edgeアイコン」上で、マウスの右ボタンをクリックすると、ジャンプリストが表示されるようになったようです。
この「ジャンプリスト」には、利用頻度が高いWebサイトが表示され、リスト上のサイトをクリックすると、Webサイトに簡単にアクセスできるそうです。
また、Webサイトは、プッシュピンアイコン(マウスホバー時に表示)をクリックすることで、固定や固定を解除することができるようですが、Chromeだと、「新しいタブ」を開けば、利用頻度が高いサイトが表示されるので、この機能と同じだと思います。
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(2)ツールバーの再デザイン
この機能追加は、「ユーザからの強い要望を受けて追加した」との事ですので、これまでは、余程、使い難かったのだと思います。
右側に新旧の「設定」の画像を掲載しましたが、確かに現在(バージョン1803)の設定は、項目も少なく、サブメニューも無くて使い難い感じがします。
今回の修正では、一般的によく使用されるアクションを前面と中央に配置し、カテゴリー別にサブメニューを設けたようです。
要は、これもGoogle社のブラウザ「Chrome」を真似たデザインに変更しただけの話だと思います。
左側に、Chromeの設定メニューを掲載したので、比較すれば、よく分かると思います。
まあ、メニューには、各機能のアイコンも表示されている点が、Chromeと異なりますが、これは必要なのでしょうか ?
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(3)メディア自動再生制御
前回の「バージョン1803」で、これもChromeの真似で、タブの設定に「ミュート機能」が追加されましたが、今回は、さらに「詳細設定」が行える機能を追加したようです。
「設定メニュー」→「設定」→「詳細設定」で、3種類(許可/制限/禁止)の対応を指定出来るようです。
また、メディアの自動再生に関しては、サイト毎にも指定出来るようです。
Chromeの場合、Chrome側の独自ポリシーで、サイトのメディアを自動再生するか否かを決めていますので、Edgeの方が、利用者が自由に設定できるので、その分だけ自由度は高くなるみたいです。
しかし、数億個もあるWebサイトに対して、利用者が個別に自動再生の有無を設定するのは、逆に無理があるような感じがします。
ある程度、ブラウザ側で、自動再生の有無を決めてくれた方が親切な感じがします。
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(4)ダウンロードペインのメニューに項目追加
「ダウンロードペイン」とは、単に、過去にダウンロードした、画像とかファイル等を一覧表示する画面の事ですが、今回、この画面で表示されるメニューに項目を追加した、との事らしいです。
しかし、前述のEdgeにおける「新旧設定メニュー」を見てもらえば解りますが、現在、設定メニューには「ダウンロード」情報を表示させるための項目自体が存在しません。
それでは、今のEdgeでは、どこで過去のダウンロード情報を表示させるのかと言うと、「設定」の左側に並んでいる「ハブ」と呼ばれる部分にあります。(※図の赤丸部分)
現在は、このハブから「ダウンロード」を選択すると、過去のダウンロード情報が表示されるので、その状態でマウスを右クリックすると「このダウンロードは安全でないと報告する」だけが表示されます。
そこで今回、このメニューに上記の通り、「リンクのコピー」とフォルダー表示」を追加したようですが、これもChromeの真似のようです。
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(5)読み取りビューの強化
「読み取りビュー」と言う機能はご存知ですか ? この機能は、Edgeには、既に実装されている機能です。
「読み取りビュー」とは、Webサイトを開くと、ウザったい広告とか見たくもない余計な情報が表示されますが、これら余計な情報を削除してくれる機能です。
現在でも、この機能は使えますので、時間がある方は、ブラウザの上図の赤枠をクリックして見て下さい。表示内容が大きく変わると思います。
但し、この「読み取りビュー」の機能は、「読み取りビュー」に対応したページでしか使えません。非対応のページの場合、この「本マーク」自体表示されません。
以降で、この「読み取りビュー」に追加された機能を紹介します。
ちなみに、この「読み取りビュー」機能は、Chromeでは拡張機能で、Firefoxでは標準装備で提供しています。
①行フォーカス機能追加
この機能は、右の画像の様に、特定行にだけフォーカスを当てる機能です。
画面にビッシリと文字が表示されている時に、ちょっと目を離すと、何処を読んでいたのかが解らなくなる場合がありますが、このような事態を避けるため、読んでいる行だけをフォーカスしてくれるそうです。
「読み取りビュー」→「学習ツール」→「読み取りの設定」→「行フォーカス」をオンにする事で、この機能が使えるようになるそうですが、とても面倒な感じがします。
私は、文字に埋め尽くされた画面を読む場合、下部のように、読んでいる箇所をカーソルで選びながら読んでいます。
この方法だと、あんな面倒な操作は不要です。果たして、どちらが便利なのでしょうか ?
②文書校正ツール提供(※日本語版未提供)
この機能を使用すると、単語を音節で区切ったり、文章から品詞を抜き出したりして表示するようですが、日本語版には対応していないようですので、説明は割愛します。
③ページのテーマカラー追加
今回、選択できるカラーを追加したとの事ですが・・・それ以外、文字間隔の大小の指定がトグルボタンに変更されていますし、文字の大小に関しては、消えてしまっているようです。
これは、正直、レベルダウンではないでしょうか ?
④単語の定義ポップアップ表示
この機能は、「読み取りビュー」内の単語を選択すると、単語の定義がポップアップアップウィンドウに表示され、かつ「読み上げ」指示により、その内容を音声で読み上げてくれるようです。
「単語の定義」とは、その「言葉の意味」と同じ事だと思われます。
まあ、ChromeやFirefoxでは、拡張機能を使えば、似たようなアドオンは沢山見つかりますので、これも「何を今さら」感が拭えない機能です。
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■その他
その他、細々とした仕様変更や機能追加も沢山あり、本ブログでは紹介しきれません。
但し、マニア向けに提供していた「Insider Preview」 からは、複数個の機能がドロップアウトしているそうです。
現時点で確認が取れている追加機能を軽く列挙すると、次のような点が挙げられます。
・検索機能強化 :(上の画像)5個の検索モード/プレビュー追加
・絵文字の追加 :「Unicode 11」採用による157個の絵文字追加
・ダークエクスプローラー :ファイルエクスプローラーにダークモードが追加
・Windows UpdateのAI化 :学習機能(AI)がアイドル時間を学習し都合の良い時間帯を判断する
・Microsoft To-Doペン対応 :デジタルペンに対応
・VRに「懐中電灯」追加 :Mixed RealityにVR空間から現実世界を覗く「懐中電灯」機能追加
さらに、今回の「October 2018 Update」とは関係ありませんが、「Office」、特に「Outlook」にも改良が加えられているそうです。
「Outlook」に、次の2つの改良が行われているそうですが、こちら、済みませんが、ちょっと確認が取れていません。
●ドラッグ&ドロップ機能
メールをタスクにドラッグ&ドロップすると新タスクを生成し、タスクをカレンダーにドラッグ&ドロップすると新スケジュールを作成するそうです。
●受信トレイ改良
ある商品メーカーが、Microsoftにビジネスプロフィールを登録すると、Outlook上で検証済みであることを示すアイコンが表示されるので、ユーザは、連絡先情報、商品の配送状況、予約、店舗ロケーションにすばやくアクセスすることが出来るようになるそうです。
う〜ん、実際に試さないと、良く解らない機能のようです。
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今回は、Microsoft社の恐怖のメジャーアップデート「Windows 10 October 2018 Update(Redstone 5)」に関する情報を紹介しましたが如何でしたか ?
今回紹介した新機能のために、Microsoft社は、どれだけの信頼を失ったのでしょうか ?
「Windows 10 October 2018 Update」は、メジャーアップデートの提供中止と言う、これまで経験した事が無い大失敗を犯すだけの価値のあるものだったのでしょうか ?
非常に疑問の残るところではあるかと思いますが、まあ、Microsoft社は、今回の大失敗などケロッと忘れて、また半年後には、素知らぬ顔で、メジャーアップデートを行うと思います。
「ちょっと失敗しただけじゃん!」と言う、このMicrosoft社の「社風」は、何もアメリカ本土だけではなく、ここ日本の社員も同様のようです。
今回のブログを書くため、日本Microsoftの社員のブログも参考にしたのですが、この社員は、「Windows 10 October 2018 Update」が失敗して供給停止となっている事を知った上で、次のように言及しています。
『 テクニカルエバンジェリストという肩書はあるものの、以前とは仕事の内容がまったく違うので、このあたりの情報がまったく入ってこず、前回の Windows 10 April 2018 Update のときはEdge の新機能についての記事を投稿できませんでした。
そんな悔しさもあり、今回は配信当日に記事を公開しようと気合を入れて準備していたのですが、またもや不意を突かれたかたちとなってしまいました。
しかしながら担当案件が炎上中にも関わらず、1 〜 2 日遅れで記事が投稿できたことは非常に喜ばしく思っております。 』
メジャーアップデートが失敗しているにも関わらず、自分のブログが投稿出来たことが嬉しくて仕方がないようです。全く・・・信じられません。
このブログは、下記URLで、今でも配信しているようです。
★URL:https://blogs.msdn.microsoft.com/osamum/2018/10/04/new-feature-of-edgehtml/
一体、どういう神経をしているのか、私には判りかねます。
近頃、日本の製造業で、会社の信頼性を揺るがす事件が多発しています。
日産 | 検査データ改ざん、無資格検査。 |
スバル | 検査データ改ざん |
スズキ | 検査データ改ざん |
東洋ゴム | 断熱パネル耐火性能を偽装(2007年)、製品検査を実施せずに合格データ記載(2015年) |
神戸製鋼所 | アルミ製部材のデータ改ざん |
宇部興産 | 汎用樹脂などの品質不正 |
三菱マテリアル | 子会社による品質データ不正問題 |
川崎重工業 | 走行中の新幹線「のぞみ」(N700系)の台車に亀裂が発生 |
日立化成 | バックアップ電源用の鉛蓄電池で、顧客と取り決めた品質検査のデータを改ざん |
東レ | 子会社による製品データ改ざん |
KYB(カヤバ工業) | 検査データ改ざん |
当時、テレビでは「やっちゃえニッサン !」と言うCMが流れていましたが、本当に日産は「やっちゃった」ようです。
このように、日本の製造業では、毎月、あるいは毎年のように、自社製品の品質データ改ざんが、明らかになっています。
企業のトップは、「現場の判断で・・・」等と釈明していますが、それが「社風」と言う事だとは考えていないようです。
これらの事は、原因を突き詰めると、Microsoft社と同じ、「そういう社風」なのだと思います。
・データを改ざんしても大丈夫。
・顧客に迷惑を掛けても大丈夫。
このように、自分が良ければ、後は問題ないと考える企業が増えて行く事自体が問題です。
以前、別のブログで「お天道様が見てるぞ !」と言う言葉を取り上げましたが、今の日本には、本当に「お天道様」が必要な国になってしまったのだと思います。
それでは次回も宜しくお願いします。
以上
【画像・情報提供先】
・Wikipedia(http://ja.wikipedia.org/)
・ZDNET Japan(https://japan.zdnet.com/)
・Microsoft monoe's blog(https://blogs.msdn.microsoft.com/osamum/)
Windows 10 October 2018 Update - 半期に一度の恐怖
さて、また半期に一度、誰も望んでいない、「恐怖の時」が訪れたようです。
米Microsoft社は、現地時間、2018年10月2日に、『 Windows 10 October 2018 Update 』の提供を開始しました。
ところが、弊社メルマガの「気になる情報」でも紹介した通り、このメジャーアップデート提供開始直後から、Microsoft社のコミュニティには、次のような苦情が寄せられ始め、瞬く間に400件もの数に昇ったそうです。
『 Windows Updateは正常に終了したが、ドキュメント・フォルダ内のファイルが消えてしまった。 』
★弊社メルマガ:社内システムのクラウド化 2:株式会社エム・システム情報マガジン(第90号)
→ ../magazine/20181101.html
このため、Microsoft社では、急遽、この「 Windows 10 October 2018 Update 」の提供を中断すると共に、既に、メジャーアップデートを適用してしまった人のために、下記更新プログラムを発行せざるを得なくなってしまったようです。
●OSビルド「17763.1」の場合 :修正プログラム「KB4464330」
・正しくないタイミングでの計算により、「指定した日数よりも古いユーザ プロファイルを削除する」というグループ ポリシーの対象となるデバイス上のユーザ プロファイルが予想よりも早く削除されることがある問題を修正します。
・Windows カーネル、Microsoft Graphics コンポーネント、Microsoft Scripting Engine、Internet Explorer、Windows 記憶域およびファイル システム、Windows Linux、Windows ワイヤレス ネットワーク、Windows MSXML、Microsoft Jet データベース エンジン、Windows 周辺機器、Microsoft Edge、Windows Media Player、および Internet Explorer 用のセキュリティ更新プログラム。
●該当更新プログラムの情報
https://support.microsoft.com/ja-jp/help/4464330/windows-10-update-kb4464330
ちなみに、「KB4464330」を適用すると、OSビルドが「17763.55」になります。
「OSビルド」の確認方法に関しては、弊社の過去ブログを参照して下さい。(「winver」コマンド)
★過去ブログ:Fall Creators Update 〜 今度は何が・・・
また参考までに、これまでのバージョン情報を掲載しておきます。(※除くEnterprises)
項番 | 名称 | バージョン | リリース時期 | サポート終了 | 保守 |
1 | Windows 10(初期バージョン) | 1507 | 2015/07 | 2017/05/09 | × |
2 | Windows 10 November update | 1511 | 2015/11 | 2017/10/10 | × |
3 | Windows 10 Anniversary Update | 1607 | 2016/08 | 2018/04/10 | × |
4 | Windows 10 Creators Update | 1703 | 2017/04 | 2018/10/09 | × |
5 | Windows 10 Fall Creators Update | 1709 | 2017/10 | 2019/04/09 | ○ |
6 | Windows 10 April 2018 Update | 1803 | 2018/04 | 2019/11/12 | ○ |
7 | Windows 10 October 2018 Update | 1809 | 2018/10 | 2020/04/14 | ○ |
※Microsoft社は、当初、製品リリース後、5年はサポートするしていた契約を一方的に破棄し、次のエディションのWindows 10に関しては、メジャーアップデート提供開始後、18ヶ月(1年6ヶ月)しかサポートしないと言う方針に、ライフサクルポリシーを変更しています。
→ Home、Pro、 Pro for Workstation、 IoT Core
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本ブログは、2018年10月末頃に執筆したのですが、その後、2018年11月13日に、バージョン「1809」の再リリースを行ったようです。
この事は、Microsoft社の下記ページに記載されています。
https://support.microsoft.com/ja-jp/help/4464619/windows-10-update-history
しかし、再リリースを行った後も、何件も問題が発生している事を、Microsoft社も認識しており、この問題に関しても、上記ページに記載されています。
再リリース後も、直ぐに問題が発生していますので、はやり、下記のように、「メアリー・ジョー・フォーリー」氏の提言を受け入れるべきだと思います。
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全く、冗談のつもりの「恐怖」が、本当の「恐怖」に変わってしまったようです。
アメリカの著名なテクノロジーライター「Mary Jo Foley(メアリー・ジョー・フォーリー」氏は、今回のMicrosoft社の失態を見て、「Windows 10 のアップデート戦略を見直すべき」と提唱しています。
※ZDNET:https://japan.zdnet.com/article/35127057/
この記事の中で、彼女は、「数多くの新機能の提供ではなく、信頼性強化のためのアップデートを行うべきである。」と提言していますが、私も、まさに、その通りだと思います。
現在のCEOが就任した1年後(2015年)に「Windows 10」がリリースされ、その後、毎回の様にメジャーアップデートで失敗を重ね、それにも懲りず、また今回の大失敗とメジャーアップデートの提供中断、もういい加減、自らの戦略ミスを認めても良い頃だと思います。
彼女も次のように述べています。
『 自社の重要戦略が思い通りに進んでいないことを認めるのは難しいはずだ。この戦略が持続可能なものではないと認めるのではなく、基本的に機能しており、問題があったのは「ごく一部の顧客」だと主張し続ける方が簡単なのだ。 』
現在の「Windows 10」と「メジャーアップデート」は、全く上手く機能していないと思います。
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さて、そんな悲惨な状況の「Windows 10 October 2018 Update(Redstone 5)」ですが、今回、実装の有無は別として、次の様な機能を追加したようです。
1.「同期電話」アプリ :Windows 10 PC とスマートフォンのリンク機能
2.「切り取り領域とスケッチ」アプリ :キャプチャ・ペンツールによる描きみ・共有機能
3.クリップボードの強化 :コピー内容の履歴保存と、履歴からの貼り付け
4.表示文字の拡大 :テキストだけを拡大する機能
5.メモ帳の新機能 :ズーム、折返し検索、右クリック検索、等の機能追加
6.Bluetooth機能強化 :「Swift Pair」機能サポート
7.バッテリーヘルスモードを追加 :バッテリー寿命の低下を抑える機能の通知
8.サインイン時のセキュリティキー対応 :別売のセキュリティ用ハードウェアサポート
9.Microsoft Edge機能追加 :複数機能の追加
10.その他 :検索機能強化、絵文字追加、UpdateのAI化、等
このように、大きく9項目を、新機能として追加したようです。当然、「何だ !? たったこれだけ ?」と思う方も多いでしょう。私も、そう思います。
ところが、最後の「Microsoft Edge」に対しては、下記の通り、ユーザインターフェイスだけで5個ほど機能を追加していますので、まあ、そこそこ変わったのかな〜と言う印象です。
?ジャンプリスト機能
?ツールバーの再デザイン
?メディア自動再生制御
?ダウンロードメニューへの項目追加
?読み取りビューの強化
しかし、これら機能の追加に伴い、当然、これまで、今回追加した機能の代わりに提供していた何個かの機能が廃止されています。
廃止された機能は、次のような機能です。
・ホログラムアプリ
・Microsoftモバイルコンパニオン
・Distributed Scan Management (DSM)
・「unattend.xml」における「FontSmoothing」設定
・limpet.exe
・Trusted Platform Module(TPM)管理コンソール
・Windows Embedded Developer Update
まあ、普通の使い方をしていれば、廃止されても、特に影響は無いと思いますし、今回、代替機能が提供されていますので、そちらを使えば良いと思います。
されに、既に新規機能の開発が行われておらず、その内に廃止されると思われている機能もあるようです。
・Snipping Tool :「切り取り領域とスケッチ」に置き換えられる予定
・ディスク クリーンアップ :ストレージ センサーで代替
・CDF Dynamic Lock API :Windows 10「動的ロック」機能で代替
・OneSyncサービス :同期機能が「Outlook」アプリに組み込まれる
それでは、新機能を紹介します。
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■「同期電話」アプリ
何か変な機能名称ですが、本来は「Your Phone app」と言う名称のようです。
上記で説明した様に、「Windows 10 PC とスマートフォンをリンクする機能」となります。
しかし、元々、Windows 10には、「モバイルコンパニオン」と言うアプリが実装されており、このアプリでスマートフォンと接続する事が出来ました。
但し、このアプリは、Apple社「iTunes」の様に、データ転送が出来る訳でもなく、単にスマートフォンの状態を表示したり、OneDrive等のWebアプリをダウンロードしたりする事しか出来ない、いわゆる「使えないアプリ」でした。
そこで、今回、本当に、スマートフォンと同期接続し、スマートフォン内の画像を表示したり、テキストデータを送信したりする事が出来るようになったようです。
このため、前述の通り、この「モバイルコンパニオン」アプリは廃止されてしまっています。
何となく使えそうですが・・・但し、接続して使用出来るスマートフォンは、「Android」のみで、「iPhone」は、接続は出来るようですが、接続するだけで、後は何も出来ないようです。
また、このアプリを使用するためには、スマートフォン側にもMicrosoft用のアプリをインストールする必要があるようです。
しかし、実際の処、現在でも、スマートフォンをPCにUSBで接続すれば、スマートフォン側の画像をPCで取り出す事もできますし、「iPhone」であれば、「iTunes」や「iCloud」経由でmp3ファイルのやり取りが出来ます。
正直、私には、このアプリは不要です。
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■「切り取り領域とスケッチ」アプリ
次は、「切り取り領域とスケッチ」と言う、また変な日本語の名前を付けられたアプリです。
本来の英語名は「Screen Sketch」と言う名称なのですが、どうして、こんな変な日本語名称を付けるのか理解に苦しみます。
そのまま「スクリーンスケッチ」にすれば良いのにと思ってしまいます。
命名者の感覚を疑いたくなってしまいます。
さて、この「切り取り領域とスケッチ」ですが、画面に表示されている画像(キャプチャ)を、3種類の切り取り方法から選択した方法で切り取り、自由に加工できる機能と言うことです。
また、画像は、表示画面のみではなく、ファイルから画像を開いて編集する事もできるようです。
切り取り方法は、矩形(四角)で囲む、全画面、およびフリーハンドの3種類がありますし、また、3秒後、10秒後と言う遅延切り取り指示も行えるようです。
そして、肝心な加工ですが、画像の縮小は行えず、定規や分度器を表示させて直線や円形を描いたり、フリーハンドで描画したりする事が出来るようです。
要は、これも既存の「Snipping Tool」アプリのバージョンアップ版と言う位置付けとなっており、「Snipping Tool」は廃止予定となっています。
但し、「切り取り領域とスケッチ」は、元々は、PC用ではなくSurface等のモバイル端末を意識して開発されたアプリらしく、タッチペン(スタイラスペン)を意識した仕様になっており、非常に使い難いと言う評判です。
このため、「Snipping Tool」の廃止を惜しむ声が沢山あるようですが、Microsoft社も、本当は、その辺の事情が解っていたので、「Snipping Tool」の即時廃止を見送ったのかもしれません。
と言うことで、このアプリも、私的には不要アプリ扱いのようです。
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■クリップボードの強化
皆さん、「クリップボード」ってご存知ですか ?
Windows PCで、テキストや画像を「コピー」や「カット」した場合、そのテキストや画像を保存しておく場所の事です。
しかし、現状、この「クリップボード」の内容を確認するためには、どこかに、コピーしたデータを「貼り付ける」必要があります。
そこで、今回の新機能では、現在、何が「クリップボード」に保存されているのかを、目視確認する事が出来るように改良されたそうです。
さらに、現状では、最新の、つまり最後に「コピー/カット」したデータしか保存出来ない仕様となっていますが、今回の機能追加で、「コピー/カット」データを履歴として保存するも可能になったようです。
そして、履歴データから、データを貼り付ける事も可能になるそうです。
「Windowsキー + V」でクリップボード履歴を開く事が出来るようですが、これは、結構、便利な機能かもしれません。
但し、次のような制限があるそうです。
・対象は、書式なしテキスト、HTML、画像。
・データ容量には制限があり、個別データは1MBまで、全体は5MBまで。
・保持可能な個数は50個まで。
・「切り取り領域とスケッチ」も保持対象となる。
・履歴はPC再起動で初期化される。
また、この機能に関しては、もう1点、「クラウド同期」機能があります。
こちらは、同一「Microsoft ID」でログインしたデバイス同士で、クリップボードの内容を共有出来るようですが・・・クラウド同期の場合、100KB未満のテキストデータしか共有出来ないようです。
また、同期タイミングも微妙なようですので、こちらの「クラウド同期」は、イマイチかもしれません。
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■表示文字の拡大
この「表示文字の拡大」では、全体スケールを変更する事無く、テキストのサイズだけを大きくする事が出来る機能のようです。
例えば、この機能で、エクスプローラー画面において文字を拡大した場合、アイコンの大きさはそのままで、説明文のテキスト文字だけが大きくなる、と言う仕組みのようです。
設定は、「Windowsの設定」−「簡単操作」−「ディスプレイ」−「文字を大きくする」と言う順番で行う事になります。
表示されるスライダーにより、文字を最大225%まで拡大する事が出来るようですが、最小は100%で文字を小さくすることは出来ないようです。
「それで何が良くなるの ?」と言う事ですが、高解像度液晶ディスプレイなどを利用している場合に、高解像度の表示を生かしつつ、表示文字だけを大きくして使いやすくことが出来る、と言うウリ文句のようです。
しかし、「だから ?」と言う感じがします。
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■メモ帳の新機能
「メモ帳」とは、「Windows」に標準装備されているテキストエディタの事で、「Windows 1.0」の時代から付属している機能です。
但し、Windowsの初期バージョンから実装されている割に、全くと言って良いほど機能が追加されておらず、私も、HTML等のテキスト編集を行う場合には、別のテキストエディタを使っています。
今回、Microsoft社も、ようやくユーザの声に耳を傾け、何点か機能を改良したようです。
テキスト文字を改行する場合、目には見えませんが、改行場所には「改行コード」が埋め込まれています。
そして、この「改行コード」は、OSの種類により異なり、Windows OSの場合、その生い立ちの歴史から、MS-DOSと同様「CR+LF」と言うコードが埋め込まれています。
このため、Linuxアプリケーションに付属するReadMeファイルやインターネットからダウンロードしたテキスト等をメモ帳で表示させると、「Windows OS」は、「改行コード」を理解することが出来ないので改行せず、行が全てつながった状態になってしまっていました。
今回の機能追加では、MS-DOS/Windows標準の行末記号(CR+LF)以外、UNIX/Linux系の「LF」とmacOSの「CR」にも対応出来るようになったようです。
(2)ズーム機能追加
フォントサイズを変更することなく、文字を拡大(ズーム)できるようになりました。
メニューから選択するか、あるいは「Ctrl-+(プラス)」や「Ctrl-−(マイナス)」、「Ctrl+マウスホイール」により、ズームインおよびズームアウトできます。
そして、「Ctrl+0」で、デフォルト表示に戻すことが出来ます。
(3)検索の [折り返し] 機能追加
検索機能に、「[折り返しあり」 オプションが追加され、最後まで検索したら折り返して初めから検索できるようになりました。
処理可能な範囲の最後に達した後に最初に戻ることを、「ラップアラウンド」と呼ぶようです。
(4)Bing検索機能
テキストを選択して「右クリック」→「 Bing 検索」を選択すると、その選択した文字列をキーとして、 Bing 検索を行う事が出来るようです。
--------------------------------------------------------------------------------------------------------
その他にも、次の様に、多くの機能が追加されたようです。
・巨大なファイルを開くときのパフォーマンス向上
・Ctrl + Backspaceにより前の単語を削除可能に
・テキスト選択でのカーソル操作を改善
・ファイル保存の際に、行番号と列番号が1にリセットされないように
・画面に完全に収まらない行を正しく表示
・以前に入力した検索値が保存される
・テキストを選択しながら検索ダイアログを開くと自動入力される
かなり多くの機能が追加され、Microsoft社も、ようやくサードパーティ製品を意識し始めたようですが、「メモ帳」愛好家(こんな人達が居るとは思いませんでしたが)の方達からは、「プログラムが肥大化してパフォーマンスが低下するのでは ?」と言う心配も寄せられているようです。
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■Bluetooth機能強化
Bluetoothに関する機能も、強化が図られたそうです。
(1)「Swift Pair」のサポート
「Swift Pair」とは、新しい周辺機器が近くにありペアリング準備が整っていると接続のための通知が表示される機能です。
この機能の実装により、設定アプリを辿る必要が無くなるので、ユーザは簡単に接続することができるとしています。
但し、この「Swift Pair」と言う技術は、「Swift Pair」に準拠したBluetoothデバイスにのみ対応する技術なので、どんなBluetoothデバイスでも使えるとは限らないそうです。
また、この機能は、本来、前回のメジャーアップデート(Windows 10 April 2018 Update)で提供予定だった機能のようです。
(2)Bluetooth トラブルシューター改善
嘘か本当か解りませんし、どのような改善が施されたのかも不明ですが、「Bluetooth トラブルシューター」が改善され、以前よりも問題解決が簡単に行えるようになったと言っています。
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■バッテリーヘルスモードを追加
PCのバッテリーを、常に100%に充電したままにすると、全体的なバッテリー寿命にとって良くありません
そこで、一部のPCメーカーは、バッテリーが100%になると、バッテリーレベルを低レベルにして、バッテリー寿命の低下を抑える「バッテリーヘルスモード機能」を有効にしています。
該当PCにおいて、「バッテリーヘルスモード」が有効になっていて、かつ電源に長時間接続したままにすると「バッテリーヘルスモード」がオンになります。
今回の機能追加では、「バッテリーヘルスモード」が有効になった時点で、それを知らせる通知が表示されるようになるそうですが、どのような表示なのかは解りませんでした。
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■サインイン時のセキュリティキー対応
「Microsoftアカウント」にサインインする時に、「セキュリティキー」を使用してサインインできるようになったそうです。
って、皆さん、「セキュリティキー」ってご存知ですか ?
「セキュリティキー」とは、左の画像の様な物理デバイスで、サインインするために、ユーザ名やパスワードの代わりに、指紋や PINコードを登録したり、あるいはワンタイムパスワードを生成したりしてサインインするアクセサリーです。
この「セキュリティキー」は、PCと、USBキー、あるいはNFCリーダーを用いて接続する事になります。
つまり、「セキュリティキー」を使う場合、別売の「セキュリティキー」を購入する必要があると言う事になります。
また、この機能を使う場合、結構面倒な設定が必要になりそうです。
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■Microsoft Edge機能追加
前述の通り、「Windows 10 October 2018 Update」では、Microsoft社のWebブラウザ「Edge」に、かなりの改善を施したようです。
Microsoft社では、この「Edge」の普及に非常に注力しており、メジャーアップデートの度に、沢山の機能追加を施します。
その昔、と言っても数年前までは、Webブラウザと言えばMicrosoft社の「IE(Internet Explorer)」と言う時代もありました。
しかし、現在ではMicrosoft社製ブラウザのシェアは低下の一途をたどっています。
現在(2018年9月時点)でのWebブラウザのシェアは次の通りです。
種類 | メーカー | シェア(%) |
Chrome | 66.28 | |
Firefox | Mozilla | 9.62 |
Internet Explorer | Microsoft | 8.26 |
Edge | Microsoft | 4.08 |
Safari | Apple | 3.59 |
その他|-|8.17|
そこで、Microsoftは、失地挽回を図るべく、メジャーアップデートの度に、多くの機能を追加しているのですが、シェア低下には、歯止めがかからない状況となっています。
さて、今回は、前述の通り、大きく5個の機能が追加されているようですので、その内容を紹介します。
(1)ジャンプリスト機能
タスクバー上の 「Edgeアイコン」上で、マウスの右ボタンをクリックすると、ジャンプリストが表示されるようになったようです。
この「ジャンプリスト」には、利用頻度が高いWebサイトが表示され、リスト上のサイトをクリックすると、Webサイトに簡単にアクセスできるそうです。
また、Webサイトは、プッシュピンアイコン(マウスホバー時に表示)をクリックすることで、固定や固定を解除することができるようですが、Chromeだと、「新しいタブ」を開けば、利用頻度が高いサイトが表示されるので、この機能と同じだと思います。
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(2)ツールバーの再デザイン
この機能追加は、「ユーザからの強い要望を受けて追加した」との事ですので、これまでは、余程、使い難かったのだと思います。
右側に新旧の「設定」の画像を掲載しましたが、確かに現在(バージョン1803)の設定は、項目も少なく、サブメニューも無くて使い難い感じがします。
今回の修正では、一般的によく使用されるアクションを前面と中央に配置し、カテゴリー別にサブメニューを設けたようです。
要は、これもGoogle社のブラウザ「Chrome」を真似たデザインに変更しただけの話だと思います。
左側に、Chromeの設定メニューを掲載したので、比較すれば、よく分かると思います。
まあ、メニューには、各機能のアイコンも表示されている点が、Chromeと異なりますが、これは必要なのでしょうか ?
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(3)メディア自動再生制御
前回の「バージョン1803」で、これもChromeの真似で、タブの設定に「ミュート機能」が追加されましたが、今回は、さらに「詳細設定」が行える機能を追加したようです。
「設定メニュー」→「設定」→「詳細設定」で、3種類(許可/制限/禁止)の対応を指定出来るようです。
また、メディアの自動再生に関しては、サイト毎にも指定出来るようです。
Chromeの場合、Chrome側の独自ポリシーで、サイトのメディアを自動再生するか否かを決めていますので、Edgeの方が、利用者が自由に設定できるので、その分だけ自由度は高くなるみたいです。
しかし、数億個もあるWebサイトに対して、利用者が個別に自動再生の有無を設定するのは、逆に無理があるような感じがします。
ある程度、ブラウザ側で、自動再生の有無を決めてくれた方が親切な感じがします。
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(4)ダウンロードペインのメニューに項目追加
「ダウンロードペイン」とは、単に、過去にダウンロードした、画像とかファイル等を一覧表示する画面の事ですが、今回、この画面で表示されるメニューに項目を追加した、との事らしいです。
しかし、前述のEdgeにおける「新旧設定メニュー」を見てもらえば解りますが、現在、設定メニューには「ダウンロード」情報を表示させるための項目自体が存在しません。
それでは、今のEdgeでは、どこで過去のダウンロード情報を表示させるのかと言うと、「設定」の左側に並んでいる「ハブ」と呼ばれる部分にあります。(※図の赤丸部分)
現在は、このハブから「ダウンロード」を選択すると、過去のダウンロード情報が表示されるので、その状態でマウスを右クリックすると「このダウンロードは安全でないと報告する」だけが表示されます。
そこで今回、このメニューに上記の通り、「リンクのコピー」とフォルダー表示」を追加したようですが、これもChromeの真似のようです。
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(5)読み取りビューの強化
「読み取りビュー」と言う機能はご存知ですか ? この機能は、Edgeには、既に実装されている機能です。
「読み取りビュー」とは、Webサイトを開くと、ウザったい広告とか見たくもない余計な情報が表示されますが、これら余計な情報を削除してくれる機能です。
現在でも、この機能は使えますので、時間がある方は、ブラウザの上図の赤枠をクリックして見て下さい。表示内容が大きく変わると思います。
但し、この「読み取りビュー」の機能は、「読み取りビュー」に対応したページでしか使えません。非対応のページの場合、この「本マーク」自体表示されません。
以降で、この「読み取りビュー」に追加された機能を紹介します。
ちなみに、この「読み取りビュー」機能は、Chromeでは拡張機能で、Firefoxでは標準装備で提供しています。
?行フォーカス機能追加
この機能は、右の画像の様に、特定行にだけフォーカスを当てる機能です。
画面にビッシリと文字が表示されている時に、ちょっと目を離すと、何処を読んでいたのかが解らなくなる場合がありますが、このような事態を避けるため、読んでいる行だけをフォーカスしてくれるそうです。
「読み取りビュー」→「学習ツール」→「読み取りの設定」→「行フォーカス」をオンにする事で、この機能が使えるようになるそうですが、とても面倒な感じがします。
私は、文字に埋め尽くされた画面を読む場合、下部のように、読んでいる箇所をカーソルで選びながら読んでいます。
この方法だと、あんな面倒な操作は不要です。果たして、どちらが便利なのでしょうか ?
?文書校正ツール提供(※日本語版未提供)
この機能を使用すると、単語を音節で区切ったり、文章から品詞を抜き出したりして表示するようですが、日本語版には対応していないようですので、説明は割愛します。
?ページのテーマカラー追加
今回、選択できるカラーを追加したとの事ですが・・・それ以外、文字間隔の大小の指定がトグルボタンに変更されていますし、文字の大小に関しては、消えてしまっているようです。
これは、正直、レベルダウンではないでしょうか ?
?単語の定義ポップアップ表示
この機能は、「読み取りビュー」内の単語を選択すると、単語の定義がポップアップアップウィンドウに表示され、かつ「読み上げ」指示により、その内容を音声で読み上げてくれるようです。
「単語の定義」とは、その「言葉の意味」と同じ事だと思われます。
まあ、ChromeやFirefoxでは、拡張機能を使えば、似たようなアドオンは沢山見つかりますので、これも「何を今さら」感が拭えない機能です。
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■その他
その他、細々とした仕様変更や機能追加も沢山あり、本ブログでは紹介しきれません。
但し、マニア向けに提供していた「Insider Preview」 からは、複数個の機能がドロップアウトしているそうです。
現時点で確認が取れている追加機能を軽く列挙すると、次のような点が挙げられます。
・検索機能強化 :(上の画像)5個の検索モード/プレビュー追加
・絵文字の追加 :「Unicode 11」採用による157個の絵文字追加
・ダークエクスプローラー :ファイルエクスプローラーにダークモードが追加
・Windows UpdateのAI化 :学習機能(AI)がアイドル時間を学習し都合の良い時間帯を判断する
・Microsoft To-Doペン対応 :デジタルペンに対応
・VRに「懐中電灯」追加 :Mixed RealityにVR空間から現実世界を覗く「懐中電灯」機能追加
さらに、今回の「October 2018 Update」とは関係ありませんが、「Office」、特に「Outlook」にも改良が加えられているそうです。
「Outlook」に、次の2つの改良が行われているそうですが、こちら、済みませんが、ちょっと確認が取れていません。
●ドラッグ&ドロップ機能
メールをタスクにドラッグ&ドロップすると新タスクを生成し、タスクをカレンダーにドラッグ&ドロップすると新スケジュールを作成するそうです。
●受信トレイ改良
ある商品メーカーが、Microsoftにビジネスプロフィールを登録すると、Outlook上で検証済みであることを示すアイコンが表示されるので、ユーザは、連絡先情報、商品の配送状況、予約、店舗ロケーションにすばやくアクセスすることが出来るようになるそうです。
う〜ん、実際に試さないと、良く解らない機能のようです。
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今回は、Microsoft社の恐怖のメジャーアップデート「Windows 10 October 2018 Update(Redstone 5)」に関する情報を紹介しましたが如何でしたか ?
今回紹介した新機能のために、Microsoft社は、どれだけの信頼を失ったのでしょうか ?
「Windows 10 October 2018 Update」は、メジャーアップデートの提供中止と言う、これまで経験した事が無い大失敗を犯すだけの価値のあるものだったのでしょうか ?
非常に疑問の残るところではあるかと思いますが、まあ、Microsoft社は、今回の大失敗などケロッと忘れて、また半年後には、素知らぬ顔で、メジャーアップデートを行うと思います。
「ちょっと失敗しただけじゃん!」と言う、このMicrosoft社の「社風」は、何もアメリカ本土だけではなく、ここ日本の社員も同様のようです。
今回のブログを書くため、日本Microsoftの社員のブログも参考にしたのですが、この社員は、「Windows 10 October 2018 Update」が失敗して供給停止となっている事を知った上で、次のように言及しています。
『 テクニカルエバンジェリストという肩書はあるものの、以前とは仕事の内容がまったく違うので、このあたりの情報がまったく入ってこず、前回の Windows 10 April 2018 Update のときはEdge の新機能についての記事を投稿できませんでした。
そんな悔しさもあり、今回は配信当日に記事を公開しようと気合を入れて準備していたのですが、またもや不意を突かれたかたちとなってしまいました。
しかしながら担当案件が炎上中にも関わらず、1 〜 2 日遅れで記事が投稿できたことは非常に喜ばしく思っております。 』
メジャーアップデートが失敗しているにも関わらず、自分のブログが投稿出来たことが嬉しくて仕方がないようです。全く・・・信じられません。
このブログは、下記URLで、今でも配信しているようです。
★URL:https://blogs.msdn.microsoft.com/osamum/2018/10/04/new-feature-of-edgehtml/
一体、どういう神経をしているのか、私には判りかねます。
近頃、日本の製造業で、会社の信頼性を揺るがす事件が多発しています。
日産 | 検査データ改ざん、無資格検査。 |
スバル | 検査データ改ざん |
スズキ | 検査データ改ざん |
東洋ゴム | 断熱パネル耐火性能を偽装(2007年)、製品検査を実施せずに合格データ記載(2015年) |
神戸製鋼所 | アルミ製部材のデータ改ざん |
宇部興産 | 汎用樹脂などの品質不正 |
三菱マテリアル | 子会社による品質データ不正問題 |
川崎重工業 | 走行中の新幹線「のぞみ」(N700系)の台車に亀裂が発生 |
日立化成 | バックアップ電源用の鉛蓄電池で、顧客と取り決めた品質検査のデータを改ざん |
東レ | 子会社による製品データ改ざん |
KYB(カヤバ工業) | 検査データ改ざん |
当時、テレビでは「やっちゃえニッサン !」と言うCMが流れていましたが、本当に日産は「やっちゃった」ようです。
このように、日本の製造業では、毎月、あるいは毎年のように、自社製品の品質データ改ざんが、明らかになっています。
企業のトップは、「現場の判断で・・・」等と釈明していますが、それが「社風」と言う事だとは考えていないようです。
これらの事は、原因を突き詰めると、Microsoft社と同じ、「そういう社風」なのだと思います。
・データを改ざんしても大丈夫。
・顧客に迷惑を掛けても大丈夫。
このように、自分が良ければ、後は問題ないと考える企業が増えて行く事自体が問題です。
以前、別のブログで「お天道様が見てるぞ !」と言う言葉を取り上げましたが、今の日本には、本当に「お天道様」が必要な国になってしまったのだと思います。
それでは次回も宜しくお願いします。
以上
【画像・情報提供先】
・Wikipedia(http://ja.wikipedia.org/)
・ZDNET Japan(https://japan.zdnet.com/)
・Microsoft monoe's blog(https://blogs.msdn.microsoft.com/osamum/)